ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ムーチー

2011年03月17日 | 飲食:果物・菓子

 ゲットウの香り

 センター試験のあった土曜、日曜日は、「雪が降るので、受験生は早めに家を出た方が良い」などというニュースが流れた。今年は全国的に寒いようだ。ここ沖縄も、1月としては珍しいくらい寒かった。これから2月いっぱいにかけて沖縄はもっとも寒い時期となる。ムーチービーサ(餅寒さ)という言葉があり、ムーチーの日が来ると寒くなるという意味なんだが、今期の冬はムーチーの日が来るだいぶ前から寒くなっている。

 その前日の金曜日、スーパーへ行ったらムーチーの材料、餅粉、ムーチーガーサなどが売られていた。「ほう、ムーチーの日が近いのか。ガジ丸HPで紹介しなくちゃ。」と思って、馴染みの喫茶店へ行き、店長(オバサン)と客(オバサン)の二人に、
 「スーパーでムーチーの材料が売られていたんだけれど、ムーチーの日って近いの?いつなの?」と訊いた。オバサン二人は顔を見合わせて、
 「えっ!もうそんな時期なの。ムーチーって新暦だと2月頃じゃないの」と言う。カレンダーを持ってきて確かめるが、喫茶店に置いてあるカレンダーはヤマトゥ(倭の国)風のカレンダーなので、旧暦の行事が記載されていなかった。
 「毎年、たいてい2月に入ってからよ」と言うオバサン二人の言葉を信じて、ムーチーに関する記事は次回載せることにした。沖縄のスーパーも本土並みに準備が早くなったのだろうか、せっかちなこったと思いながら、それでも一応、家に帰ってから我が家のカレンダーを確認する。ガス屋さんから貰った我が家のカレンダーには旧暦も、沖縄の行事もしっかり載っている。調べると、ムーチーの日は1月17日だった。スーパーの店長は真っ当なウチナーンチュで、けしてせっかちな性格ではなかったようだ。

 旧暦12月8日、鬼餅の行事がある。その日にムーチーを仏前に供え、厄払いとする。何故に餅が鬼を追い払うために必要なのかについては雑談の「鬼より怖い先公より怖い」で述べているので、ここではムーチーの作り方などを記す。
  餅粉に水を加えて、こねて、サンニン(月桃)の葉で包んで、蒸す。作り方は以上だが、餅粉をこねる時に、砂糖や黒糖を混ぜたりして甘い味の餅にするものもある。最近では紅芋の粉を混ぜたりして、そういう風味を出したものもある。カーサムーチーのカーサは葉のことで、サンニンの葉を指す。サンニンの葉は良い香りがするので、餅そのものに味をつけなくても美味しく感じる。包まれた一枚の餅の大きさは幅5cm前後、長さ15cm前後、サンニンの葉を剥いた中の餅の厚みは5~10ミリくらい。

  沖縄口で餅はムチと言う。アンムチ(餡餅)などと言う。それをムーチーと伸ばすと “餅の日”つまり鬼餅の日を指すことに(たぶん)なる。そして、ムーチーといえばカーサムーチーがすぐに思い浮かぶ。それほどウチナーチュには親しまれている餅。昔は各家庭で作り、各家庭それぞれの味のムーチーがあった。私の母親もよく作っていた。子供がいると子供の歳の数だけムーチーを吊るした。干し大根を吊るすみたいな感じ、ただし、ムーチーを吊るすのは軒下では無く家の中。姉の分、弟の分、私の分をそれぞれ母親は吊るしてくれた。自分の分を一つ取っては食い、また一つ取っては食い、が楽しかった。
      
 明日(17日)がムーチーの日。特に私の好物では無い(葉を剥がして食べるのが面倒臭い)ので、買ってまで食べるということは去年まではなかったが、今年はガジ丸HPに写真を載せようと思い、さっきスーパーへ行って3枚買ってきた。何の味付けも無い白餅と、紅芋餅、黒糖餅の3種。1枚120円。スーパーにはムーチーの材料だけでなく、そういうできあがったムーチーもたくさん売られていた。最近は各家庭で作ることも少なくなったようで、出来合いのムーチーを籠に入れる客が多くいた。
      
 記:ガジ丸 2005.1.16 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行