ツツが無い
「つつがなくお過ごしのことと存じます」という文章を手紙や葉書に添える女性は上品だと思う。私は好きである。彼女が若ければ大好きになるはず。彼女が美人であれば恋に落ちるはず。彼女が金持ちだったら「結婚してくれー」と叫ぶかもしれない。
「つつがなく」、漢字で書けと言われたら書けないが、「恙無く」を見れば、「あー、それそれ」と解る。「病気など無く、元気で」という意味であることも何となく理解している。であるが実は、今回調べるまで私は「つつ」だけで病気を指しているのだと思っていた。「そつがない」と「つつがない」は文法的に同じ並びだと思っていた。
「そつがない」の「そつ」は「むだ。無益。てぬかり。ておち」(広辞苑)といった意味。よって「そつがない」は「むだが無い」、「てぬかりが無い」などとなる。それと同じように「つつがない」も「つつ(=病気)」が無い、のだと間違って覚えていた。大学は日本文学科だったのに情ないことである。まぁ、劣等生だったからしょうがない。ちなみに、恙だけで「つつが」と読み、「病気、心配」(広辞苑)のこと。
私の畑には3月になって昆虫がうじゃうじゃと湧いてきて、今(6月)までに100種を超える虫の写真を撮っている。そんな中で、畑の東側境界、雑木やススキなどが蔓延って藪となっている一角にシマグワの木があり、その葉の上に目立つ虫がいた。
金色に輝いて、体長も10ミリほどあり比較的大きく、何匹もいるので目立っていた。葉の上でじっとしているので、写真も撮り易かった。
家に帰って図鑑を見る。候補は3種、オオミドリサルハムシ(紹介済み)、アカガネサルハムシ、そして、ツツサルハムシ。オオミドリ サルハムシは体色が違い、アカガネサルハムシは大きさが違う、ということで、写真はツツサルハムシと判定。
ツツサルハムシと決まったのは良かったのだが、名前の由来がさっぱり見当つかない。オオミドリサルハムシは「大きな緑色のサルハムシ」で、アカガネサルハムシは「銅色のサルハムシ」と判り易いが、ツツとはいったい何だ?
ツツを考えて、「つつが無い」のツツかもしれないと思って、恙無いを調べて、劣等生だった日本文学科卒は卒業後30年余も過ぎて、言葉を一つ覚えたというわけ。
なお、『学研生物図鑑』に、名にツツのつく虫の項で「糞で卵を包む」とあり、その糞が筒状になっている?とヒントらしき記載もあったが、正しいかどうか不明。
ツツサルハムシ(つつさる葉虫):甲虫目の昆虫
ハムシ科 沖永良部島、沖縄島、石垣島、朝鮮半島、他に分布 方言名:不詳
名前の由来は資料が無く不明。ハムシについては広辞苑に葉虫と漢字があり、「成虫・幼虫ともに植物の葉を食害」することからで間違いなかろう。サルについては前にオオミドリサルハムシの項でも「見た目が猿に似ているということはない。木登りが上手なのかもしれない」と書いたが、結果、不明。ツツもまったく想像できない。体が筒状になっているわけでもない。全国津々浦々にいるわけでもない。
体長は8~9ミリ内外。金緑色の光沢を持つが、まれには緑青色、赤銅色の個体もいるとのこと。初め、アカガネサルハムシかオオミドリサルハムシかと判断しかけたが、「体背面にまばらに白色の剛毛がある」のと「上翅基部は強い点刻で、中央より後半部で強い横皺状になる」といった特徴から、写真のものは本種だと判断した。「触角は黒色で、基部2、3節は赤褐色」という特徴もある。成虫の出現は4月から8月。
もう一つ、寄主はシマグワで「シマグワの葉上でよく見られる」とあり、私の畑でもシマグワの葉の上に本種がたくさんいる。イヌビワにも時々遠征している。
交尾
記:2014.6.11 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行