天狗になる
天狗とは、「人の形をしている、顔が赤い、鼻が高い、翼があって空を飛ぶことができる怪物」のことをいうが、また、高慢なことや高慢な人のことも指す。「天狗になる」ということは高慢になるということであり、慢心している状態になることである。
天狗と関わりがあるのかどうか、「鼻が高い」とは「自慢げである」ことを表すが、悪い意味ばかりではなく、「あんたが100点取って、私も鼻が高いわ」などと母親が子供を褒めるような場面でも使われる。また、「あなた鼻が高くていいわねぇ」と、鼻ぺチャな女性が鼻の高い美人を羨ましがる時にも使われる。
高慢な性格をしているわけでは無いだろうが、テングチョウという名のチョウがいる。今帰仁の現場へ出た時に発見した。遠目にはアカタテハに似ていたのだが、アカタテハより小さい。ヒメアカタテハがアカタテハより一回り小さいと紹介したが、こっちはさらに小さい。で、二回り小さいということにしておこう。翅の表の模様はアカタテハに似ているが、裏の模様が全然違う。そして何より、テングチョウは唇が突き出ている。その突き出た唇が鼻に見えて、鼻の高いテングの名がついたというわけである。
じつは、写真を撮った時はヒメアカタテハの個体変異であろうと思っていた。
「これ、ヒメアカタテハって言うんだ。」と写真を見せながら同僚に自慢した。
「ん?これ、テングチョウじゃないですか。」と若いTに教えられた。知ったかぶりして天狗になっていた私の鼻を、Tは見事にへし折ってくれた。
「鼻を折る」は「相手の慢心をくじく。恥をかかせる。」(広辞苑)ということ。
テングチョウ(天狗蝶):鱗翅目の昆虫
テングチョウ科 北海道~南西諸島(宮古諸島以外)、他に分布 方言名:ハベル
上顎が発達して頭の先に長く突き出ているのを、天狗の鼻に見立ててこの名がある。アカタテハに似ていたのでタテハチョウ科の仲間かと思ったが、テングチョウ科。
分布は広い。上記の「他」には、アフリカ北部、ヨーロッパ南部、中央アジア、東南アジア、中国中南部、朝鮮半島などが含まれている。
成虫は、植物の新芽の開く頃に多く見られるらしい。よって、春に多い。
前翅長24ミリ内外。成虫の出現時期は周年。幼虫の食草はクワノハエノキなど。
沖縄産翅裏
沖縄産表
倭国産
記:ガジ丸 2006.5.8 →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行