ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

キャッサバ芋

2012年09月21日 | 飲食:食べ物(材料)

 そこはかと無いジャガイモ

 キャッサバという名の観葉植物があることを私は若い頃から知っていた。タピオカという名の澱粉があることはそれからずっと後、オジサンと呼ばれる歳になってから知った。もっとも、オジサンと呼ばれる歳になってからもう20年ばかりは過ぎているので、タピオカの存在を知ってからもそれくらいの年月は経っている。
  「キャッサバの塊根を磨り潰して採れた澱粉がタピオカである」ことを知ったのはそれよりもまだずっと後だが、それでも、少なくとも10年くらい前には知っている。芋が食えるのであれば、自給自足芋生活を目指している私なら早速畑に植えても良さそうなものだが、「塊根を磨り潰して澱粉を採る」のは面倒そうだと思い、躊躇っていた。

 「タピオカの芋はそのまま煮て食べても美味しい」と、脱サラ農夫の友人Tから聞いたのは去年の初め頃だったか、それからしばらくして叔父からも「タピオカからは澱粉も採れるけど、芋を煮て食べたりもする。」と聞き、「これはぜひ畑に植えなくては」と思ったら、その叔父から「挿し木で簡単に増えるから今度取りに来たらいい、何本か準備しておく」と話はとんとん拍子で、すぐに貰いに行った。去年6月のこと。
  貰った枝を8本ばかり早速挿し木した。それらはすくすく育って大きくなって、その年の12月には地上部が枯れた。キャッサバ芋の掘り時だと思ったが、その頃はたぶん甘藷も採れていて、キャッサバ芋まで消費する余裕が無いと思って、掘らなかった。

 一旦地上部の枯れたキャッサバは、温かくなるとまたすくすく育ち、大きくなって、夏には去年の2倍位に広がった。「今年の冬は食わなきゃ」と思っていたら、8月初めにやってきた台風11号のお陰で、キャッサバの1本が根こそぎ倒れ、その根に芋がいくつも着いていたのを発見し、「食えそうじゃ無ぇか」と、収穫して食った。
 キャッサバ芋は大小合わせて8個ばかり。その半分を煮て食った。形は甘藷(サツマイモのこと)だが、食べると味も食感もホクホクのジャガイモにほとんど近い。食感はジャガイモより少し固め、味はジャガイモよりも無味無臭かもしれない。
 煮たキャッサバ芋、繊維が縦に流れていて、指で縦に割ると簡単にほぐれていく。中央に細いけれどもとても固い繊維が1本走っていて、それは食えないので取り除き、適当な大きさ(フライドポテト位の)にほぐし分けたキャッサバ芋をバターを絡めるようにして炒める。形はバラバラのデコボコだが、これはもう匂い(バターの匂いだが)も味(バターの味だが)もジャガイモのバター炒めと区別できないものであった。

  「ジャガイモよりも無味無臭」と書いたが、そうでは無いかもしれない。どう表現したらいいのか喩えが見つからないのでそう書いた。とにかく癖はほとんど無い。
 後日、残ったキャッサバ芋を蒸して食ってみた。塩などで味を付けなくてもそのまま普通に食えた。なので、何かしらそこはかとない味があるのだと思われる。とはいえ、その日、その蒸したキャッサバ芋のほとんどはマヨネーズを付けて食った。たぶん、塩を付けて食えば日本酒の肴になると思うが、その日の酒はワインだったので。
 
 
 
 
 キャッサバ(cassava):鉢物・野菜
 トウダイグサ科の常緑低木 原産分布はブラジル、中南米 方言名:キーウム
 キャッサバという名前の由来は文献に無く、不明。原産地の言葉かもしれない。学名の属名はManihotと言い、和名の別称としてマニホットとある。
 方言名のキーウムは木の芋という意味。ただ、『沖縄植物野外活用図鑑』は方言名をタピオカとしてあった。タピオカはtapiocaと書き、たぶん英語。地下に大きな塊根ができ、それから採れる澱粉をタピオカという。沖縄では古くから馴染みのある食べ物で、澱粉も塊根もその親であるキャッサバも共にタピオカと呼ぶこともあったのであろう。
 高さは3mほどに留まり、細い葉は涼しげな感じを受ける。で、観葉植物としても利用されるのであるが、しかし何といっても、タピオカ澱粉は大事な食料。サツマイモと並んで、熱帯地方の重要な主食の一つとなっている。そのまま煮て、食える。

 記:2012.8.31 ガジ丸 →沖縄の飲食目次