偶然記念物
これまで多くのチョウを紹介してきたが、それらの多くは、私の住む那覇から職場のある宜野湾市近辺にいて、そこで写真も撮っている。また、それらの多くは、会いたいと思って出合ったのではなく、偶然出合って、写真を撮って、調べたら何それというチョウであったというもの。県の天然記念物に指定されているフタオチョウなんかもその一つで、宜野湾市の嘉数高台公園で偶然出会い、後で調べて驚いたもの。
昆虫図鑑を見るようになってほぼ5年になるが、チョウの中では、「これはなかなか出会えないだろうな、ヤンバル(山原、沖縄島中北部の通称)辺りまで行かないとダメだろうな。」と思っていたのがフタオチョウ、嘉数高台公園で見た時は、名前は思い出せなかったが、「これは確か珍しいチョウであった」ということは思い出せた。
「これはなかなか出会えないだろうな」と思うチョウがもう一種ある。コノハチョウ。コノハチョウもフタオチョウと同じく県の天然記念物に指定されている。フタオチョウは名前と姿を記憶していなかったが、コノハチョウは、図鑑を見て、頭の中にしっかりとインプットされている。図鑑を見るようになってからずっとインプットされている。名前と姿を記憶していて、ずっと会いたいと思っていたチョウであった。
今年8月29日、末吉公園を散策し、公園の西端にある橋を渡っている時に、橋のすぐ下、川の上をヒラヒラしているものが目の端に映った。「あれ、もしかしたら・・・」と思い、炎天下の下、約30分ほど立ち止まって、シャッターチャンスを待つ。
「まさか、こんなところで、」と思いつつ、5、6m先の草の葉に止まったところを写真に撮る。翅をちょっと開いた時の写真も撮れた。「間違いない。」と思う。
コノハチョウは翅裏が木の葉模様になっているから、その名がある。それはその通りだが、翅表は青地に橙色という派手な模様となっていて、それとすぐに判る。
コノハチョウ(木の葉蝶):鱗翅目の昆虫
タテハチョウ科 沖縄島、石垣島、西表島、東南アジアなどに分布 方言名:ハベル
名前の由来は、『沖縄昆虫野外活用図鑑』に「翅を閉じた時の姿が枯葉に似ており、和名はそれに由来する。」とあり、それは間違いないと思う。広辞苑にも「木の葉蝶」と字があり、「裏面は枯葉に似るので、擬態の好例として有名」と説明されている。
「擬態の好例」、翅裏は確かにそうなのだが、翅表は青地に橙色という派手な模様となっていて、よく目立つ。飛んでいる時は翅表をしっかり見せるし、止まった時もしばらくは、翅表を広げたりしているので、翅裏の擬態はあまり意味がないのではないかと私は思う。なお、翅裏の色彩模様は個体差が大きいとのこと。
分布は沖縄島、伊平屋島、石垣島、西表島、中央アジア、東南アジア、台湾、東アジアとなっていて、沖縄産は固有亜種とのこと。
前翅長40~50ミリ内外、成虫の出現は周年で、最盛期は7~9月。幼虫の食草はセイタカスズムシソウ、オキナワスズムシソウ。
翅裏
翅表
記:ガジ丸 2009.9.6 →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行