礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

洋洋社「新日本建設叢書」の発刊の辞(1946)

2015-03-15 08:44:51 | コラムと名言

◎洋洋社「新日本建設叢書」の発刊の辞(1946)
 
 一昨年の三月二三日、当ブログに、「中野五郎『デモクラシーの勝利』(1946)を読む」というコラムを寄せた。その冒頭は、次の通り。

 敗戦直後、洋洋社という出版社から、「新日本建設叢書」というシリーズが発行された。その第一輯は武野藤介〈タケノ・トウスケ〉『外人の観た日本人』(一九四六年二月)、第二輯は、中野五郎『デモクラシーの勝利』(一九四六年三月)。
 先日、この第二輯を入手した。二段組六四ページで、定価は二円(税込)。著者の中野五郎の肩書は、「朝日新聞社前ニューヨーク特派員」。【以下略】

 こう書いたとき、手元に、武野藤介『外人の観た日本人』と中野五郎『デモクラシーの勝利』の二冊があった。その後、両方とも見当たらなくなってしまったが、先日、部屋を片付けていたところ、『外人の観た日本人』だけが出てきた。
 本文が二段組六四ページであることは、『デモクラシーの勝利』と同じ。奥付によれば、定価は「一円七十銭」である。発行日は、「昭和二十年二月一日」と印刷されているが、昭和二一年(一九四六)の誤りであろう。
 表紙見返しに、「この叢書刊行の主題」という文章が載っている。本日は、この文章を紹介してみよう。改行は原文のまま。

 この叢書刊行の主題
 我々は今、正直に旦つ率直に敗戦の事実を認めてゐる。日本人の一人一人の身
に、その脳裡に、泌々とこれを感じとつてもゐる。而もこの焦土と、道義頽廃の
中から、歯を噛む後悔に奮ひ立つて、我々は新しき日本を建設しなければならな
いのだ。それがためには、その敗因を徹底的に糺明するも可し、死人を鞭打つが
如きも敢てこれを行ひ、否、われとわが心の悪徳もこれを剔抉しなければなら
ぬ。これ即ち小社が本叢書を刊行する所以である。その所期するところのもの
に、本日、これを読んで直ちに明日の新日本建設に役するもの。而して、その理
想とするものは、所謂、ポツダム宣言の忠実なる履行こそ、日本人そのものの進
むべき唯一無二の幸福の道なることの認識、且つ永遠に、一兵の武備なき日本
が、世界の平和と人類の文化に貢献することによつて、他国民の信頼に価する日
本と日本人を創り、そこに日本将来の大国としての発展の端緒を見出したい。

「泌々と」の読みは、〈シミジミト〉である。「剔抉」は、〈テッケツ〉と読み、「えぐりだす」という意味である。

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