おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

闇の列車、光の旅

2023-05-08 06:07:23 | 映画
「闇の列車、光の旅」 2009年 メキシコ / アメリカ


監督 ケイリー・ジョージ・フクナガ                         
出演 エドガル・フローレス  パウリナ・ガイタン
   クリスティアン・フェレール  テノッチ・ウエルタ・メヒア
   ディアナ・ガルシア  ルイス・フェルナンド・ペーニャ
   エクトル・ヒメネス  ヘラルド・タラセナ       

ストーリー
ホンジュラスに暮らす少女サイラ。
父親は彼女が幼いときにアメリカへと渡った不法移民。
ある日、その父親が強制送還され戻ってきた。
そして、今度はサイラも連れて再びアメリカを目指す。
だがそれは、グアテマラとメキシコを経由する長く危険な旅だった。
なんとかメキシコ・チアパス州まで辿り着いたサイラたちは、アメリカ行きの列車の屋根に乗り込む。
そこには、同じようにアメリカを目指す移民たちがひしめきあっていた。
そんな無防備な移民たちを待ち構えていたのがリルマゴ率いるメキシコのギャング団でスマイリーやカスペルは移民たちのなけなしの金品を強奪。
さらにリルマゴは泣き叫ぶサイラに銃をつきつけて暴行しようとするが、以前同じような経緯で恋人を亡くしたカスペルは、手にした鉈をリルマゴに向けて振り下ろし、リルマゴを殺してしまう。
裏切り者として組織から追われる身となってしまったカスペル。
そんな彼にサイラは命を救われた恩を感じ、淡い恋心を抱くようになる。
ある朝、カスペルがこっそり列車を降りたとき、サイラは父に黙って彼の後を追った。
サイラを連れてかつての仕事仲間の家に向かったカスペルは、車両運搬の積荷に紛れて国境の町へ向かう手はずを整えてもらう。
だが目的地への途中、列車で一緒だった男から、サイラの父が国境巡視隊に見つかり列車から転落死したことを知らされる。
やがて二人が、川を越えてアメリカへ渡る日がやって来た。
「何が何でもお父さんの家族を見つけろ」というカスペルの励ましを受け、川に足を踏み入れるサイラ。
カスペルが川岸で見守る中、渡し人の先導で泳ぎだしたサイラは、無事対岸へ辿り着いたかに見えたのだが……。


寸評
ホンジュラス、グアテマラ、メキシコを縦断する列車の沿線に広がる貧しそうな街並みがこの映画の雰囲気を盛り上げる。
大都会が出現するのはアメリカに入ってからであり、それまでは低所得と思われる人々だけが登場する。
沿線の人々は、列車の屋根に乗る不法移民を目指す人々に果物を投げてやる者もおれば、石を投げつける者もいる。
時々国境巡視隊に追われて逃げまどいながらも新天地を目指している。
それを襲うのが鉄の団結を誇るギャング団で、青年カスペルや少年スマイリーもそれに属している。
カスペルはマルタと恋愛関係にあるが、ギャング団の中でしか生きられない彼はその立場に戸惑っているようでもある。
カスペルと行動を共にするスマイリーもなんとなくそんな彼を慕っているようなのだが、その関係が丁寧に、それでいてオーバーでなくごく自然に描かれているのでラストがことさら切なく感じられた。
話は悲しみに満ち溢れている。
マルタはふとしたことでリルマゴに殺されてしまう。
そのマルタを殺されたこともあってカスペルはギャング団のボスであるリルマゴを殺してしまう。
彼もまた逃げるしかなくなってしまい、同じようにアメリカを目指すことになる。
ギャング団のネットワークは強力で密告されたりしてカスペルは追い詰められていくが、ギャング映画ではないので派手な銃撃戦を繰り返しながらの逃亡ではない。
あくまでも追手と警備隊の目を逃れてひたすらアメリカを目指す。
その間にサイラの父親も亡くなってしまう。
川を渡ればアメリカだというところで悲劇がおこるが、ほとんど唯一といってもよい救いはサイラが執拗なまでに覚えさせられた電話番号に電話して通じたことだ。
しかもそのシーンは極めて短い、まるで瞬間映像を見るような短さだったことがむしろ余韻を大いに高めた演出となっていた。
貧困がもたらす悲劇といったものを遺憾なく描いた秀作である。
監督のケイリー・ジョージ・フクナガは名前からして日系で、これがデビュー作らしいが今後も頑張ってほしい。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿