「裏切りの街」 2016年 日本
監督 三浦大輔
出演 池松壮亮 寺島しのぶ 中村映里子 落合モトキ
駒木根隆介 佐藤仁美 平田満
ストーリー
7月、フリーターの若者・菅原裕一(池松壮亮)は恋人・鈴木里美(中村映里子)と東京のアパートで同棲しながら“ヒモ男”として怠惰な生活を送っていた。
ある日他の女とエッチがしたくなった裕一はネットの出会い系サイトを通じて“トモ”と名乗る年上の女と会うため荻窪へと向かう。
お互いプロフィールを誤魔化して会った裕一と中年女性・橋本智子(寺島しのぶ)はしばらく会話をするが、それだけで満足した彼女は連絡先を教えて帰ってしまう。
智子には夫・浩二(落合モトキ)がおり、夫はいい人で夫婦生活に不満らしい不満もなく夜の営みもあったが、どこか物足りなさを感じていた。
1週間後、裕一は智子の携帯電話に連絡して再会すると、彼女は人妻であることを打ち明け裕一も恋人がいることを告げる。
3回目のデートで裕一と智子は男女の関係となり、時々里美と浩二に嘘をついて2人で会っては気軽に不倫を楽しむようになる。
9月、いつものように智子に会った裕一は、彼女から妊娠が発覚したが夫に内緒で堕ろすことにしたことを告げられて動揺する。
後日裕一は男のけじめとして智子の堕胎手術費用を出すと同時に不倫関係を終わらせることを告げ彼女もそれを受け入れる。
しかし帰宅後智子は、母子手帳を見つけた浩二に妊娠を知られて「俺の子生んでくれるよね?」と言われ、「堕ろす」とは言えずつい頷いてしまう。
実は数日前に智子のメールを覗いていた浩二は妻と裕一の浮気に気づいており、彼を街に呼び出すことに。
寸評
共同生活をしていても二人の間に秘密があることは当然である。
ホンネを語れば軋轢が生じることが分かっているので、取り繕いもするだろうし、黙っていることだってある。
それゆえに、そのことが判明した時には一悶着があるであろうことも想像できる。
どこかに不満を抱える二組の男女が繰り広げる秘密の行為が生々しく描かれていく。
始まりは里美と同棲している裕一の出会い系サイトへのアクセスである。
裕一は里美のヒモ的な生活を送っており、彼女から毎日2000円を貰っている。
里美はダメ男にそこまでするかと言いたくなるほど献身的である。
彼女の寛容さで維持されている関係のように見えるが、裕一は彼女とのセックスも煩わしく思うようになっているにもかかわらず都合よく関係を維持している。
見ているこちらがイライラしてくるほど里美は裕一への献身ぶりを見せているのだが、実のところ彼に対して不満を内在させていることが分かる。
その場面は強烈で、男性観客は女性の本心を知る思いがしてドキッとするであろう。
浩二と智子の夫婦間には隙間風が吹いていそうだが、二人は幸せを装っているように見える。
浩二は智子に自分に対して不満に思う事はないのかと聞くと、智子は不満などありませんと答えるのだが、二人の会話は白々しい。
智子は専業主婦としてテレビ番組を見て過ごしているようだが、どこかに満足できないものがあり、出会い系サイトを閲覧し投稿している。
浩二は智子に対しては優しいし、思いやりを持って接しているように見えるが、それもご機嫌取りであったことが判明してくる。
一方の智子も不倫を隠すために帰宅時には浩二の為に何かを買ってくる。
欺瞞に満ちた夫婦関係であるが、形の上で夫婦関係だけは維持している。
夫婦が円満に過ごすためには欺瞞とまではいかなくても、ある程度の装いは必要だと思うが、あまりにも希薄な夫婦関係である。
そのような関係が智子を不倫に走らせたのだろうが、出会い系サイトを通じて裕一と智子が関係を持つようになっていく過程がリアルに見える。
浩二と裕一が出会うシーンが面白い。
智子の妊娠を疑った浩二は裕一に智子とはいつからの関係だと問い詰める。
裕一は浩二の詰問に耐え切れず1ヶ月前からと嘘をつく。
浩二は安心して妊娠2ヶ月だから俺の子だと告げるが、裕一は自分の子供だと確信する。
そのやり取りも面白いが、浩二が裕一に語って聞かせる内容が予想を超える内容となっているのも面白い。
生まれてきた子供の血液型は整合性を持っていたのだろうか。
裕一と智子が再会するシーンは思わせぶりで上手い結末だ。
その後の四人の生活が目に浮かぶ。
この不倫騒動の一番の被害者は自ら招いたこととはいえ智子だったように思う。
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