おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~

2017-11-15 15:00:23 | 映画
「ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~」 2017年 日本


監督: 滝田洋二郎
出演: 二宮和也 西島秀俊 綾野剛 宮崎あおい 鎌田正太郎
    竹野内豊 笈田ヨシ 大地康雄 兼松若人 竹嶋康成

ストーリー
絶対味覚=“麒麟の舌”を持つ佐々木充は、依頼人が人生最後に食べたい料理の再現を請け負う“最期の料理人”として知られる男。
ある日、中国料理界の重鎮・楊晴明から破格の依頼が舞い込む。
それは、かつて満州国で天才料理人・山形直太朗が考案したという伝説のフルコース“大日本帝国食菜全席”のレシピを再現してほしいというものだった。
楊は1930年代、満州で山形直太朗の調理助手としてメニュー作成に協力したが、消息を絶った直太朗とともにレシピ集も散逸されたという。
そしてその直太朗もまた“麒麟の舌”を持つ料理人であった。
元・天皇の料理番として宮内省に勤めていたが、「大日本帝国食菜全席」作成のため、満州に渡る。
やがて、メニュー開発をすすめるうちに、日本と他国の料理を融合して新たなレシピを生み出すことが、民族間の相互理解の助けとなり「料理をもって和を成せる」という考えに至る。
その理想に人生すべてを捧げることとなるが、太平洋戦争開戦直前にレシピ集とともに消息を絶ったのであった…。
充は、関係者たちの証言を集めながら山形を巡る謎を解き明かし幻のレシピの再現に挑むむが、やがて70年の時をつなぐ壮大な愛の物語を知る…。

寸評
現代と1930年代を行き来しながら、天才料理人・山形直太朗の人生と消えた幻のレシピの行方を追う充の旅を平行して描きながら、なぜレシピは消えたのか、山形が料理に込めた思いをミステリー風に描き、歴史に翻弄された人々の姿を描いていく手法は手堅いものの、どこか物足りなさを感じてしまうので残念に思う。
一番の原因は現代パートを受け持つ二宮和也の高額な報酬でしか仕事を受けないというキャラクターが描き切れていないことだ。
絶対味覚を持つ天才料理人だということも、現代と過去のパートをつなぐ要因の一つでもあるのに描き切れていたとは言い難い。
山形の過去のパートが歴史的背景もあってドラマチックだから、ダブル主演のはずが西島秀俊の単独主演みたいになってしまっていて、二宮和也の良さが出ていなくて物足りなさを感じさせる。
佐々木充という青年の自分探しと成長の物語でもあるはずなのだが、どうもその部分が欠落していたように思うのだ。

満州における関東軍の陰謀やら、人々のつながりが解き明かされていく後半は盛り上がる展開なのだが、しかしそれは余りにも駆け足すぎたように思う。
日本統治下の満州で、料理によって民族間の相互理解を目指した山形の尊い志を通じて、平和を願う崇高なテーマがもっと前面に出て来るべきだったように思う。
しかし、食べ物がメインとなっている映画に共通の食欲をそそるようなシーンは健在だった。
満漢全席を超える、「大日本帝国食菜全席」という究極のフルコースの美しい料理や、それに使用する食材とレシピの成り立ちなどに興味を沸かせる。
美味そうだなあ~と、ついよだれをこぼしそうになる。
食べ物映画の醍醐味である。

滝田洋二郎監督がロマンポルノから飛び出して1986年に「コミック雑誌なんかいらない!」で登場した時には、その新鮮さに驚愕したものだが、その後は時折僕の感性に合う作品を提供しながら、半分は興味をそそらなかったり期待を裏切る作品を提供する監督でもある。
今回はちょっと期待を裏切られたかなあ・・・。


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