おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

嫌われ松子の一生

2019-04-17 08:07:56 | 映画
「嫌われ松子の一生」 2006年 日本


監督 中島哲也
出演 中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 香川照之
   市川実日子 黒沢あすか 柄本明
   木村カエラ 柴咲コウ ゴリ 谷原章介

ストーリー
53才で殺害死体として発見された川尻松子(中谷美紀)の半生を、甥の笙(瑛太)がたどっていく。
福岡で生まれ、病弱な妹の久美(市川実日子)と育った少女時代を経て、松子は中学の教師となった。
しかし、教え子の龍(伊勢谷友介)が起こした窃盗をかばったことでクビになり退職。
その後は実らぬ恋愛を繰り返しながら堕落し、ようやく得た新たな仕事は中州にあるソープ嬢だった。
松子は努力を重ねて店のトップへ登りつめるが、風俗業界の変化の波に追われ雄琴の店へと移る。
そこで同棲していた男の浮気を知った松子は、逆上して殺害してしまう。
逃亡して上京した松子は理髪店を営む島津(荒川良々)と出会い、彼の優しさに触れて同棲を始める。
ようやく得たささやかな幸福もつかの間、殺人事件を捜査していた警察に逮捕される松子。
8年間の刑期を終えた松子は島津の店へ向かうが、すでに彼は家庭を築いていた。
落胆した松子を支えるのは、刑務所内で同じ囚人仲間だった沢村めぐみ(黒沢あすか)との友情だった。
そして松子が、いまではヤクザとなった教え子の龍と再会する。
お互いにすがる相手のいない二人は激しく求めあうが、その関係も龍の逮捕によって断ち切れた。
ひとりアパートに閉じこもるようになった松子は、アイドルの追っかけだけを楽しみに生きる。
無残に肥満化した松子は、公園で不良中学生たちから撲殺されるが、死体から離れた松子の魂は故郷へと向かって飛翔する。
そんな松子の人生は不幸だけではなかったのだろうと、甥の笙は安堵した。


寸評
松子は客観的に見れば不幸な人生だったと思うが、常に前向きで、人を愛し、人につくしている。
怨む事もある人間を許し、そして愛する事が出来た神様的人間だったのだ。
やたらと登場する花は、その希望に満ちた人生の象徴だったのではないかと思う。
観客の女性客からはすすり泣きが漏れていたけれど、それは同姓として松子に同化し、そのかわいそうな切ない人生に対する憐れみの気持ちがあったせいだと思う。
異性の僕としては涙はなくて、むしろ彼女の生きていくバイタリティに感心し、引きこもりの彼女が中学生に注意する凛とした態度に、教師だったこともある彼女の人生に対するプライドのようなものを感じて感動した。

彼女にも、慕う妹がいて、陰ながら心配していた父があり、そして最後まで心配してくれた親友も居たのだ。
人はけっして一人ではないのだと思う。
僕は人からつまらない人生を送った奴だったとか、不幸な人生だったとか言われたくない。
少なくとも自身においては満足な人生だったと言って死にたいものだと思っている。
晩年になった今はそうありたいと悪戦苦闘しているのも事実なのだが・・・。
原作はどうなのかは知らないけれど、荒川を見ては故郷の川を思い出して泣いていた彼女が、落ちぶれても尚且つ希望を見出した所で息絶えるエンディングは、悲惨な結末としては救いを持っていて良いと思う。
人の幸せは他人によって測れないからからなあ~。

「下妻物語」の中島哲也監督は前作と同様にポップな映像処理で刻んでいき、流れる挿入歌と相まって、暗く落ち込む話を希望に満ちたものに変化させていたと思う。
本作の映像も視覚効果に強い中島監督らしく、原色を鮮やかに使ったポップかつ現代的なものだ。
松子視点の世界はミュージカルシーンとして表現され、中谷美紀が明るく楽しく歌い、踊る。
松子がヒモのためにソープ嬢となり体を売るエピソードも、BONNIE PINKの明るい曲に乗せた2分間の踊りにしてしまっていて暗さはまったくない。
このような手法を使いながら松子の悲惨な人生を中島監督は明るく描いている。
その結果、僕は悲壮感を全く感じなかった。
中谷美紀が、男を見る眼がない為にろくでもない人生を送った松子を熱演しているので、このヒロインを「バカだったかもしれないが、純粋に愛を求め続けた愛すべき女」として、観客の共感を得るだけのキャラクターに昇華させていたと思うし、それが冒頭に書いた女性観客のすすり泣きにつながったのだろう。

とにかく、遊び心が満載された作品だった。
一見コメディ風でありながら、ファンタジー風でもあり、エロティックでもあり、サスペンス性もあり、ヤクザ映画的でもあり、ミュージカル風でもある。
片平なぎさのサスペンス劇場はやりすぎだと思うけど・・・。
中谷美紀は僕の中では伊東美咲や仲間由紀恵などと同一線上の女優さんなのだが、彼女たちよりは断然いい。
中谷美紀はこの作品で女優として開花したと思う。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿