「恐怖の報酬」 1953年 フランス

監督 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
出演 イヴ・モンタン シャルル・ヴァネル
ペーター・ヴァン・アイク フォルコ・ルリ
ヴェラ・クルーゾー ウィリアム・タッブス
ダリオ・モレノ ジョー・デスト
ストーリー
中央アメリカのラス・ピエドラスという町は世界各国の食いつめ者が集るところだ。
コルシカ人マリオもその例外ではなかったが、彼には酒場の看板娘リンダという恋人がいた。
そんな町へ、パリで食いつめた札つき男ジョーが流れてきてマリオと親しくなった。
ある日町から500キロ先の山の上の油井が火事になり、多くの犠牲者が出た。
石油会社では緊急会議の結果、山上までニトログリセリンを運び上げ、それによって鎮火することにした。
危険なニトログリセリン運搬の運転手は賞金つきで募集され、多く集った希望のない浮浪者の中からマリオ、ビンバ、ルイジ、スメルロフの四人が選ばれ、選に洩れたジョーは大いに不服だった。
翌朝三時、マリオとルイジとビンバは約束通りやって来たがスメルロフは姿を見せず、ジョーが現れた。
ジョーが代りに加ってマリオとジョーの組が先発、三十分遅れてルイジとビンバの組が出発した。
マリオの組は、ジョーが意外に意気地がなくて後から来たビンバ組に追いこされてしまった。
ビンバ組の車は道路をふさいでいる大石のためストップしてしまったが、沈着なビンバは少量のニトログリセリンを使用して大石を爆破し、無事に通りぬけることができた。
そのあとは坦々とした行進がつづいたが、突如ビンバの車が大爆発を起し、跡かたもなくけし飛んだ。
爆発のあとは送油管が切れて石油がたまりかけていた。
早くここを通りぬけないと油に車をとられて二進も三進も行かなくなるとマリオの悪戦苦闘が始まる。
やがてニトログリセリンのおかげで火事は消しとめられ、マリオは賞金四千ドルをもらったのだが・・・。
寸評
物語は食い詰め者がたむろしている中米の発展途上国の町から始まる。
マリオとジョーは口笛がきっかけでお互いがフランス人であることを知り仲良くなる。
この出会いは二人の最後の会話をしんみりとさせるための伏線となっている。
ルイジは余命が幾ばくも無いと医者から診断され故郷へ帰ることを夢見ているが、その事はその後あまり描かれてはいない。
マリオ、ジョー、ビンバ、ルイジにマリオの恋人リンダという登場人物が紹介されていくが、この人物紹介ともいえる導入部分の描写はちょっと長い気がする。
映画が始まって30分ばかりの間に描かれたことが後半に上手く生かされていたようには思えなかった。
いよいよ二組がトラックにニトログリセリンを積んで出発するが、それからの描写はこの映画の見どころ感タップリでスリルとサスペンスに富んでいる。
油田火災を消すためにわずかの衝撃で大爆発を起こすニトログリセリンを運ぶというだけの話なのだが、どうしてどうして観客を引き込む力を持った演出がなされている。
油田火災やニトログリセリンの爆発があるが、いわゆるそれらを描くスペクタクル映画ではない。
ニトログリセリンを使った爆破に関するエピソードは度々登場するが、そのどれもが直接的に描くことをしていなくて、例えば事務所の所長がニトログリセリンがどれほど危険かを示すために一滴落として爆発させるシーンがあるが、その爆発シーンは音だけと言ってもいいものだ。
また行く手を阻む巨石の爆破シーンでも、直接巨石が爆発によって粉砕されるシーンはない。
先行するビンバ達の車が大爆発を起こすシーンも然りである。
しかし巨石の爆破シーンにおける観客をハラハラドキドキさせる演出は上手い。
ビンバが息をつめてニトログリセリンを注ぎ込む。
見守る3人にも緊張感が漂うが、3人が行う仕草を短いショットで何度も挟み緊張感を盛り上げていく。
見ている僕たちも思わず拳に力が入ってしまうシーンとなっていた。
さらに最終目的であったニトログリセリンを使って大火災を沈下させることにおいては、報奨金をマリオに渡すシーンによって計画が成功裏に終わったことを示し、ニトログリセリンを設置する場面や、その爆発によって油田火災が終息すると言うシーンは全く描かれていない。
一大スペクタクルシーンとなる場面がすべて割愛されているのは監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの意図に他ならないと思うので、彼は登場人物の描写、とくにマリオという男の描写に重きを置き、サスペンス性を追求したかったのだろうと僕は推測する。
描かれた男たちは、命を懸けて一攫千金を夢見て吹き溜まりに生きているのだが、彼らが醸し出す生き様も見所の一つとして成功している。
彼等の人物描写が単調となりがちな道中物語を上手くつないでいる。
最後は歓喜に沸く町の人々のダンスとマリオの運転がシンクロし最後を迎えるが、結末が予測できてしまうのが少し残念な気がしないでもない。

監督 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
出演 イヴ・モンタン シャルル・ヴァネル
ペーター・ヴァン・アイク フォルコ・ルリ
ヴェラ・クルーゾー ウィリアム・タッブス
ダリオ・モレノ ジョー・デスト
ストーリー
中央アメリカのラス・ピエドラスという町は世界各国の食いつめ者が集るところだ。
コルシカ人マリオもその例外ではなかったが、彼には酒場の看板娘リンダという恋人がいた。
そんな町へ、パリで食いつめた札つき男ジョーが流れてきてマリオと親しくなった。
ある日町から500キロ先の山の上の油井が火事になり、多くの犠牲者が出た。
石油会社では緊急会議の結果、山上までニトログリセリンを運び上げ、それによって鎮火することにした。
危険なニトログリセリン運搬の運転手は賞金つきで募集され、多く集った希望のない浮浪者の中からマリオ、ビンバ、ルイジ、スメルロフの四人が選ばれ、選に洩れたジョーは大いに不服だった。
翌朝三時、マリオとルイジとビンバは約束通りやって来たがスメルロフは姿を見せず、ジョーが現れた。
ジョーが代りに加ってマリオとジョーの組が先発、三十分遅れてルイジとビンバの組が出発した。
マリオの組は、ジョーが意外に意気地がなくて後から来たビンバ組に追いこされてしまった。
ビンバ組の車は道路をふさいでいる大石のためストップしてしまったが、沈着なビンバは少量のニトログリセリンを使用して大石を爆破し、無事に通りぬけることができた。
そのあとは坦々とした行進がつづいたが、突如ビンバの車が大爆発を起し、跡かたもなくけし飛んだ。
爆発のあとは送油管が切れて石油がたまりかけていた。
早くここを通りぬけないと油に車をとられて二進も三進も行かなくなるとマリオの悪戦苦闘が始まる。
やがてニトログリセリンのおかげで火事は消しとめられ、マリオは賞金四千ドルをもらったのだが・・・。
寸評
物語は食い詰め者がたむろしている中米の発展途上国の町から始まる。
マリオとジョーは口笛がきっかけでお互いがフランス人であることを知り仲良くなる。
この出会いは二人の最後の会話をしんみりとさせるための伏線となっている。
ルイジは余命が幾ばくも無いと医者から診断され故郷へ帰ることを夢見ているが、その事はその後あまり描かれてはいない。
マリオ、ジョー、ビンバ、ルイジにマリオの恋人リンダという登場人物が紹介されていくが、この人物紹介ともいえる導入部分の描写はちょっと長い気がする。
映画が始まって30分ばかりの間に描かれたことが後半に上手く生かされていたようには思えなかった。
いよいよ二組がトラックにニトログリセリンを積んで出発するが、それからの描写はこの映画の見どころ感タップリでスリルとサスペンスに富んでいる。
油田火災を消すためにわずかの衝撃で大爆発を起こすニトログリセリンを運ぶというだけの話なのだが、どうしてどうして観客を引き込む力を持った演出がなされている。
油田火災やニトログリセリンの爆発があるが、いわゆるそれらを描くスペクタクル映画ではない。
ニトログリセリンを使った爆破に関するエピソードは度々登場するが、そのどれもが直接的に描くことをしていなくて、例えば事務所の所長がニトログリセリンがどれほど危険かを示すために一滴落として爆発させるシーンがあるが、その爆発シーンは音だけと言ってもいいものだ。
また行く手を阻む巨石の爆破シーンでも、直接巨石が爆発によって粉砕されるシーンはない。
先行するビンバ達の車が大爆発を起こすシーンも然りである。
しかし巨石の爆破シーンにおける観客をハラハラドキドキさせる演出は上手い。
ビンバが息をつめてニトログリセリンを注ぎ込む。
見守る3人にも緊張感が漂うが、3人が行う仕草を短いショットで何度も挟み緊張感を盛り上げていく。
見ている僕たちも思わず拳に力が入ってしまうシーンとなっていた。
さらに最終目的であったニトログリセリンを使って大火災を沈下させることにおいては、報奨金をマリオに渡すシーンによって計画が成功裏に終わったことを示し、ニトログリセリンを設置する場面や、その爆発によって油田火災が終息すると言うシーンは全く描かれていない。
一大スペクタクルシーンとなる場面がすべて割愛されているのは監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの意図に他ならないと思うので、彼は登場人物の描写、とくにマリオという男の描写に重きを置き、サスペンス性を追求したかったのだろうと僕は推測する。
描かれた男たちは、命を懸けて一攫千金を夢見て吹き溜まりに生きているのだが、彼らが醸し出す生き様も見所の一つとして成功している。
彼等の人物描写が単調となりがちな道中物語を上手くつないでいる。
最後は歓喜に沸く町の人々のダンスとマリオの運転がシンクロし最後を迎えるが、結末が予測できてしまうのが少し残念な気がしないでもない。
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