「悪人」 2010年 日本
監督 李相日
出演 妻夫木聡 深津絵里 岡田将生 満島ひかり
塩見三省 池内万作 光石研 余貴美子
井川比佐志 松尾スズキ 山田キヌヲ
韓英恵 中村絢香 宮崎美子 永山絢斗
樹木希林 柄本明
ストーリー
土木作業員の清水祐一は、長崎の外れのさびれた漁村で生まれ育ち、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。
佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代は、妹と二人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日。
そんな孤独な魂を抱えた二人が偶然出会い、刹那的な愛にその身を焦がす。
しかし祐一は、連日ニュースを賑わせている殺人事件の犯人だったのだ…。
数日前、福岡と佐賀の県境、三瀬峠で福岡の保険会社のOL・石橋佳乃の絞殺死体が発見された。
事件当夜に佳乃と会っていた地元の裕福な大学生・増尾圭吾に容疑がかかり、警察は彼の行方を追う。
久留米で理容店を営む佳乃の父・石橋佳男は一人娘の死に直面し、絶望に打ちひしがれる中、佳乃が出会い系サイトに頻繁にアクセスし、複数の男相手に売春まがいの行為をしていたという事実を知らされる。
DNA鑑定から増尾が犯人ではないことが判明、新たな容疑者として金髪の男、清水祐一が浮上する。
幼い頃母親に捨てられた祐一をわが子同然に育ててきた、祐一の祖母・房枝は、彼が殺人事件の犯人だと知らされ、連日マスコミに追い立てられていた。
一方、警察の追跡を逃れた祐一は光代のもとへ向かい、佳乃を殺めたことを打ち明ける。
光代はその事実に衝撃を受けるが、警察に自首するという祐一を光代は引き止める。
生まれて初めて人を愛する喜びを知った光代は、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かうのであった…。
寸評
殺人事件を介した加害者と被害者の家族の対比が切ない。
被害者の父(柄本明 )は殺された一人娘の佳乃(満島ひかり)を溺愛しているが、事件を通じて娘の実態を知ることになる。
その言いようのないはけ口を母親でもある妻(宮崎美子)に向ける。
加害者の祖母(樹木希林 )は祐一(妻夫木聡 )を捨て去った母親(余貴美子 )に代わり、自分一人で育てたことを自負している。
しかし、事件がきっかけで母親と会っていたことを知り、しかも小遣いをせびっていたことを気付かされ、唯一とも思える誇りを傷つけられる。
それでもわが孫を思い続けることしか出来ない肉親の情が痛々しい。
深津絵里がモントリオール映画祭で主演女優賞を受賞したことで話題の映画となっているが、彼女はもちろんながら、主演男優としての妻夫木聡もなかなか良い味を出していた。
そして助演陣も柄本明、樹木希林、岡田将生なども熱演していたが、とりわけ満島ひかりがいい。
みえっぱりで嫌味な女を見事に演じていて、加害者である祐一に対する同情をさそう役を見事にこなしていた。
あまりの熱演で、殺人犯擁護に陥ってしまいそうなほどである。
僕はこの作品における満島ひかりの演技を見て、「この人はスゴイ!」と思わず唸った。
殺人犯以外の悪人が次々と登場する。
人を小馬鹿にしている裕福な大学生(岡田将生)とその取り巻き連中。
老人をカモにする悪徳商法の連中。
他人のことなどお構い無しの傍若無人なマスコミ。
祐一を捨て去った母親。
もちろん、殺された保険外交員の女性までも悪人である。
その他にも自分が育てた子だと占有する祖母や、子供の非行を母親のせいにする身勝手な父親も悪人と言えなくもない。
それでも一点の光明を散りばめて救いを見出している。
増尾のくだらない取り巻き連中のなかに、その生き方に反発するようになる男を存在させている。
祖母に対して押し寄せるマスコミに一括するバスの運転手などである。
また叔母である祐一の祖母夫婦を気遣う甥っ子の存在や、店に出ることがなかった佳乃の母親が理髪店の鏡を拭きながら夫の帰りを待つ姿などもそうである。
なにより今まで通り努めている光代の姿が救いであって、暗くなって重い気持ちになってしまいそうなこの作品をつなぎ止めていた。
「やはり殺人犯なのだから悪人なんですよね」とつぶやく光代の向こうに巻きつけられたスカーフは、これを初めての給料で祖母に贈る優しい心根を持っていた少年が孤独に陥って、出会い系サイトにしか行き場がなくなってしまう今の薄っぺらな世の中に対する警鐘の様な気もした。
監督 李相日
出演 妻夫木聡 深津絵里 岡田将生 満島ひかり
塩見三省 池内万作 光石研 余貴美子
井川比佐志 松尾スズキ 山田キヌヲ
韓英恵 中村絢香 宮崎美子 永山絢斗
樹木希林 柄本明
ストーリー
土木作業員の清水祐一は、長崎の外れのさびれた漁村で生まれ育ち、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。
佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代は、妹と二人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日。
そんな孤独な魂を抱えた二人が偶然出会い、刹那的な愛にその身を焦がす。
しかし祐一は、連日ニュースを賑わせている殺人事件の犯人だったのだ…。
数日前、福岡と佐賀の県境、三瀬峠で福岡の保険会社のOL・石橋佳乃の絞殺死体が発見された。
事件当夜に佳乃と会っていた地元の裕福な大学生・増尾圭吾に容疑がかかり、警察は彼の行方を追う。
久留米で理容店を営む佳乃の父・石橋佳男は一人娘の死に直面し、絶望に打ちひしがれる中、佳乃が出会い系サイトに頻繁にアクセスし、複数の男相手に売春まがいの行為をしていたという事実を知らされる。
DNA鑑定から増尾が犯人ではないことが判明、新たな容疑者として金髪の男、清水祐一が浮上する。
幼い頃母親に捨てられた祐一をわが子同然に育ててきた、祐一の祖母・房枝は、彼が殺人事件の犯人だと知らされ、連日マスコミに追い立てられていた。
一方、警察の追跡を逃れた祐一は光代のもとへ向かい、佳乃を殺めたことを打ち明ける。
光代はその事実に衝撃を受けるが、警察に自首するという祐一を光代は引き止める。
生まれて初めて人を愛する喜びを知った光代は、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かうのであった…。
寸評
殺人事件を介した加害者と被害者の家族の対比が切ない。
被害者の父(柄本明 )は殺された一人娘の佳乃(満島ひかり)を溺愛しているが、事件を通じて娘の実態を知ることになる。
その言いようのないはけ口を母親でもある妻(宮崎美子)に向ける。
加害者の祖母(樹木希林 )は祐一(妻夫木聡 )を捨て去った母親(余貴美子 )に代わり、自分一人で育てたことを自負している。
しかし、事件がきっかけで母親と会っていたことを知り、しかも小遣いをせびっていたことを気付かされ、唯一とも思える誇りを傷つけられる。
それでもわが孫を思い続けることしか出来ない肉親の情が痛々しい。
深津絵里がモントリオール映画祭で主演女優賞を受賞したことで話題の映画となっているが、彼女はもちろんながら、主演男優としての妻夫木聡もなかなか良い味を出していた。
そして助演陣も柄本明、樹木希林、岡田将生なども熱演していたが、とりわけ満島ひかりがいい。
みえっぱりで嫌味な女を見事に演じていて、加害者である祐一に対する同情をさそう役を見事にこなしていた。
あまりの熱演で、殺人犯擁護に陥ってしまいそうなほどである。
僕はこの作品における満島ひかりの演技を見て、「この人はスゴイ!」と思わず唸った。
殺人犯以外の悪人が次々と登場する。
人を小馬鹿にしている裕福な大学生(岡田将生)とその取り巻き連中。
老人をカモにする悪徳商法の連中。
他人のことなどお構い無しの傍若無人なマスコミ。
祐一を捨て去った母親。
もちろん、殺された保険外交員の女性までも悪人である。
その他にも自分が育てた子だと占有する祖母や、子供の非行を母親のせいにする身勝手な父親も悪人と言えなくもない。
それでも一点の光明を散りばめて救いを見出している。
増尾のくだらない取り巻き連中のなかに、その生き方に反発するようになる男を存在させている。
祖母に対して押し寄せるマスコミに一括するバスの運転手などである。
また叔母である祐一の祖母夫婦を気遣う甥っ子の存在や、店に出ることがなかった佳乃の母親が理髪店の鏡を拭きながら夫の帰りを待つ姿などもそうである。
なにより今まで通り努めている光代の姿が救いであって、暗くなって重い気持ちになってしまいそうなこの作品をつなぎ止めていた。
「やはり殺人犯なのだから悪人なんですよね」とつぶやく光代の向こうに巻きつけられたスカーフは、これを初めての給料で祖母に贈る優しい心根を持っていた少年が孤独に陥って、出会い系サイトにしか行き場がなくなってしまう今の薄っぺらな世の中に対する警鐘の様な気もした。
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