ルーヴル美術館展 ~ 日常を描く ―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄 ~ ◇於:国立新美術館 ◇会期:2015.2.21.(土)~ 6.1.(月) ◇鑑賞日:2015.5.15. |
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国立新美術館で開かれている、ルーヴル美術館展に行ってきました。
展覧会テーマは「風俗画」。
西洋美術といえば、宗教的主題への知識が求められがちで、鑑賞時につい、
身構えてしまうのですが、「風俗画」は人々の日常がメインに描かれる為、
当時の社会的背景や宗教観があるに越したことは無いものの、
何となく気軽な気持ちで、見に行くことができました。
展覧会の構成は、以下の通り(印象に残った作品は、作品名と画家の名を記します)。
<プロローグI> 「すでに、古代において…」 風俗画の起源
■展示作品:7点
◇「アモルを売る女」 ジョゼフ=マリー・ヴィアン
<プロローグII> 絵画のジャンル
■展示作品:5点
◇「チェス盤のある静物」 リュバン・ボージャン
◇「農民の食事」 ル・ナン兄弟
<第I章> 「労働と日々」 ―商人、働く人々、農民
■展示作品:17点
◇「両替商とその妻」 クエンティン・マセイス
◇「台所の情景」 マルタン・ドロリング
◇「物乞いたち」 ピーテル・ブリューゲル1世
<第II章> 日常生活の寓意 ―風俗描写を超えて
■展示作品:13点
◇「聖家族」または「指物師の家族」
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン
◇「天文学者」 ヨハネス・フェルメール
◇「割れた水瓶」 ジャン=バティスト・グルーズ
<第III章> 雅なる情景 ―日常生活における恋愛遊戯
■展示作品:10点
◇「庭園での会話」 トーマス・ゲインズバラ
<第IV章> 日常生活における自然 ―田園的・牧歌的風景と風俗的情景
■展示作品:10点
◇「鹿狩り」 パウル・ブリル
<第V章> 室内の女性 ―日常生活における女性
■展示作品:11点
◇「読み方の練習」 ヘラルト・テル・ボルフ
<第VI章> アトリエの芸術家
■展示作品:10点
◇「アトリエの若い画家」 バーレント・ファブリティウス
◇「素描する少年」 ニコラ=ベルナール・レピシエ
◇「猿の画家」 ジャン・シオメン・シャルダン
◇「ルーヴル宮グランド・ギャラリーの改修計画、1798年頃」
ユベール・ロベール
初来日の「天文学者」が、やはり、展覧会的には目玉になるのでしょうか。
会期も後半の為か(しかも、平日)、それほど混んではいませんでしたが、
いちばん人が集まっていたのは、フェルメールのこの作品でした。
描かれている天球儀と、対になると考えられている「地理学者」の解説パネルも、
あわせて掲出されていましたが、こちらも是非、実物を見たいものです。
(2011年の「地理学者」来日時には、残念ながら見逃しています)
印象的な作品が多くあった展覧会ですが、何気に衝撃だったのは、
プロローグIIの絵画のジャンル分けとランク付について。
以前、マウリッツハイス美術館展 を見た際に、17世紀のオランダ絵画の黄金期には、
市民階級が絵画の新たな買い手となったことで、風俗画、風景画、静物画が
新しいジャンルとして発展したと記憶にあったのですが、
実際には、フランスで培われ、ヨーロッパ各国に広まった絵画理論の影響で、
オランダでも、理論的には歴史画が高位を占めていた、ということ。
更には、旧教国スペインから独立した新教国として、教会に飾る宗教画の需要が
減ったことで、画家がジャンル変更をしたり、日常描写の裏に宗教的寓意や教訓が
込められたり ・・ 等の、当時の背景を知ることができて、興味深かったです。