末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

旧作覚書き:「あの頃ペニー・レインと」ほか2作品

2005-11-30 22:21:52 | 映画のはなし
今月みた映画 ( 旧作 ) の覚書きです。
すべてDVD鑑賞で、たぶん ネタバレあり です。

*~*~*~*~*~*~*~*~*

★ あの頃ペニー・レインと
 ( 原題 : Almost Famouse / 公式サイトIMDb
   ペニー・レインが最後に見せた粋なはからいに、
   思わず、やられた! と大泣きしてしまいました。 いい女だなぁ。
   世の中的には、結構評判の良いこの作品ですが、
   それでも、前半部分は割りと冷めた目で見てしまっていましたね。
   ロックの世界に魅せられた15歳の少年が、記事を書き、
   ローリングストーン誌からも執筆依頼を受け、
   目下売り出し中であるバンドのツアーに同行するあたりの経緯が、何とも。。
   この作品は、C・クロウ監督自身の体験を下敷きに描かれているので、
   あながち、あり得ない嘘ではないのだと、頭では理解しているのですが、
   事実は小説よりも奇なり ・・ と言うのでしょうか、
   あまりにトントン拍子だと、フィクションとしては却ってしらけてしまうものです。
   でも、熱に浮かされるようにして飛び込んだ世界で、その裏側を目の当たりにし、
   虚しさを味わいながらも、へんに腐れたりしなかった主人公の真摯な姿には、
   素直に好感を抱いてしまいました。ちゃんと、引き際もわきまえていましたしね。
   好きなことを仕事にするって、多分、誰しも一度は憧れることだと思いますが、
   実際には “ 楽しい ” だけですむ筈もなく、自問自答を繰り返しながら、
   それでも自分は続けていくのか。。という厳しい道なわけです。
   正直、私みたいなヘタレな甘ちゃんでは、到底かなわない無理なお話。
   だから ・・ ということもないのですが、余暇で楽しむフィクションの世界くらい、
   どこかに希望を残すような、暖かみのある展開には心和まされてしまいます。
   ( いかにも作り事めいた、ご都合主義な演出はキライですけれど。。 )
   あと、オープニングとエンディングの映像へのこだわりが、かなり良かった ^ ^

★ 21グラム
 ( 原題 : 21Grams / 公式サイトIMDb
   “ 時間軸をバラバラにした編集 ” って近頃の流行りなんでしょうかね?
   公開終了からだいぶ経ったものの、当時、結構な話題作だったこともあり、
   未見とはいえ概要はそれなりに知っている。。という状況で見たのですが、
   この作品、まったく情報を仕入れずに鑑賞していたら、
   物語を把握するまでに、相当の労力を要したんじゃないかというくらい、
   時間的経過が、見事なまでに前後バラバラに入れ替えられていました。
   その為なのかなぁ。。魂の重さ ( と言われている ) 数値を
   タイトルに持ってきているにも関わらず、どこか、
   フィルターを通しながら、登場人物たちの行動を見ている感が強いため、
   鑑賞後も、予想したほどには重苦しい気分に捕らわれません。
   物語終盤、新しい魂を宿していることを思いがけず知ることとなった女、
   心臓移植をしても結局は魂を手放す羽目に陥った男、
   絶望と虚しさに苛まれた魂を抱えて生きつづけなければならない男。。
   という三人の姿が映し出されます。
   ある事故をきっかけに失われた“ 21グラム ” と、
   それによって、自分たちの “ 21グラム ” の運命が翻弄された瞬間を、
   三者三様に呆然と振り返っているかのような、あの最後の姿こそが、
   実は、この作品の始まりにあたるのだろうか。。と漠然と思いました。

★ 猟人日記
 ( 原題 : Young Adam / 公式サイトIMDb
   DVDジャケットの あまりに恰好良い咥え煙草ユアン に惚れ (笑) 、レンタル決定。
   しかし、この邦題な上に、ショップでも “ ミステリー ” に分類されていたため、
   すごく怖い作品なのかとビクビクしながら見てみましたが、全然違いました。。
   ホントにもう、こういうのは 紛らわしいから やめてください。
   確かに、ある意味 “ コワイ ” 作品ではあります。
   原題が示す通り、人間の < 未熟な部分 > を、
   陰鬱なイギリスの空のしたで、淡々と救いようなく描いていますから。
   この作品も、時間軸をところどころ入れ替えてはいますが、あまり混乱はなく、
   ユアン演じるジョーという男の、いつだって自己憐憫と自己欺瞞でかためた、
   もっともらしく自分を正当化することしか念頭にない様子が強調されて、効果的。
   そして、ジョーの愚劣さ加減をどこかで察知しているにも関わらず、
   彼と関係を結んでいく女たちだって、いわば同じ穴のムジナであり、
   人間は、やっぱり弱い生き物なんだな ・・ と思わされます。
   それにしても、役者陣が素晴らしく良かったです。
   ユアンは表情がくるくる変わり、別人にしか見えない時すらありました。
   おまけに、最低な人間でありながら、女たちが彼に対して甘いというのも
   頷ける説得力があるんですよね。 この人、本当にチャーミングだなぁ。
   ティルダさんは、疲れ切った労働者階級の中年女なオーラが
   全身から漂っていて、存在感がすごい。
   これまで見たことのある彼女の作品では、飄々と浮世離れした これ とか、
   神々しさすら感じさせた これ 、作中での変貌ぶりも印象的だった これ など、
   日常とは一線を画した設定のものばかりだったので、
   こんなにも、生活臭をまとった役に違和感がないことに驚きました。
   寝取られ夫を演じたピーター・ミュランも、哀切たっぷりの背中が泣ける。。
   とても、見応えのある作品でした。