末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

M・ヤンソンス指揮 / コンセルトヘボウ管弦楽団 in 所沢

2006-11-30 14:38:24 | 音のはなし
私の、いちばん好きなオーケストラ、
オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団。
先週、西日本よりスタートした来日公演が、ついに首都圏入りしました。


コンセルトヘボウ管弦楽団 2006年日本公演 in 所沢

   【日時】 11月28日(火) 19:00開演

   【会場】 所沢市民文化センター・ミューズ アークホール

   【曲目】 ベートーヴェン : 交響曲第8番 へ長調 作品93

         《 休憩 》

         マーラー : 交響曲第1番 ニ長調 「 巨人 」


   【演奏】 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

          指揮 / マリス・ヤンソンス
2006来日公演案内_コンセルトヘボウ管 in 所沢
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・・ 本物だ ・・
目の前で奏でられる音を耳にして、
真っ先に浮かんだ思いが、これでした。

コンセルトヘボウ管を紹介するフレーズの一つに、
“ ビロードの弦 ” という言い回しがあるけれど、この表現は、伊達じゃない。
しっとりとした艶やかな音色に、ホールが満たされていきます。

彼らの音が、重なれば重なるほど、
ステージからは、瑞々しさが際限なく溢れ出し、
吸い込まれそうな錯覚にとらわれては、
クラクラと、陶酔感に浸ってしまいました。
こちらの期待を裏切ることなく、来てほしい時に、来てほしいだけ、
きっちりと、豊潤な音色で迫ってくるのが非常に心地良い。

このオーケストラは、
一体どこまで、音を響かせることができるのだろう。。

1曲目のベト8は名演でした。
思わず、そのままアンコールを掛けたくなってしまったくらいに。
弦セクションを中心として、引き締まった音色ながら、
とても円やかな響きでもって綺麗に動きをそろえる、その調和が見事。
ベト8ってこんなに魅力的だったんだと、認識を新たにしました。

前・後半のあいだに設けられた休憩は20分でしたが、
その合間を縫って、舞台の配置が、マーラー仕様の大編成に整えられます。
今回、私は3階左手のバルコニー席だった為、
ベト8ではゆとりのあったステージが、
椅子と譜面台によって見る間に埋め尽くされていく様や、
コンバスをごっそりと、舞台の逆側に移動させていく様子などを、
上からじっくりと眺めることができたのは、面白かったですね。
視覚的にも好奇心を煽ってくるフルオケの大編成は、やはり良いなぁ。

そして ― 。 いよいよ、マーラーです。
第一音が鳴った瞬間から、
マーラー的心象風景の小宇宙が、そこには広がっていきます。

マーラーの1番は、耳に馴染みの良い旋律がわりと多く、
うっかり、それに身を任せて油断してしまうと、
突如として、不安を掻きたてるような生々しい音に切り替わり、
呆然とさせられる代物でもあります。
慣れないうちは、その落差に翻弄されることもしばしばで、
けれど、敢えて聴き込んでいくうちに、一度でも波長が合ってしまったら最後、
却って、それがクセになるのだから、とんでもない!

しかも、今は、コンセルトヘボウ管による演奏を、
ライヴで堪能しているのです。

圧巻は、4楽章の前半。
地を這うように轟くティンパニーの音とともに繰り出された、
オケ全体の音で、お腹のあたりに響いてくるような振動を感じました。
こちらは3階席だというのに、まったく、何という臨場感なのか。。
続く旋律の部分では、全てを抱いてつつみ込む弦の響きと、
その波間に溶け込みながらも、くっきりとした輪郭を伴っている管楽器群という、
私の理想とするコンセルトヘボウ管の黄金バランスが、効果的に展開。
一瞬、泣きそうになってしまったほど、素晴らしかったです。

アンコールの演奏はありませんでしたが、
それでも、この日のコンサートに満足を覚えなかった観客は、
多分、いなかったのではないでしょうか。
奏者全員が舞台を降りるまで、割れんばかりの拍手を送り続け、
それでも鳴り止まない拍手に応えて、再び、ヤンソンス氏が登場。
客席から差し出された花束を、笑顔で受け取っていたマエストロは素適でした。

  *~*~*~*~*~*

会場となったアークホールは、西武線の航空公園駅が最寄りとなります。
電車を利用してきた観客は、帰路、皆がこの駅へ向かいます。
首都圏で行なわれる、今年のコンセルトヘボウ管の来日公演では、
唯一、完売とならなかった所沢会場でしたが、
それでも、8割以上は入っていたであろう状況だった為、やはり結構な人出でした。
客層的には、年配のご夫婦や友人同士という組み合わせが多かったようですが、
電車を待つあいだのホームや、乗り込んだ車内のあちこちで、
一緒にプログラムを開きながら、にこやかに会話をしている姿を、
何組も目にしたことが印象に残っています。
最後まで、嬉しい余韻を味わうことのできた夜でした。