末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

娘よ

2017-04-29 13:11:54 | 映画のはなし
日本公開された "初のパキスタン映画" である、「娘よ」を見てきました。
(先日鑑賞した「 汚れたミルク 」も、パキスタンが舞台の作品でしたが、
 あちらの製作国には、パキスタンは入っていないようです。)
本作は、パキスタン生まれの女性監督による長編デビュー作で、
実際にパキスタンで起こった実話に触発され、構想に10年をかけたそうです。

<あらすじ>
 パキスタンの山岳地帯で繰り返される、部族間の衝突による紛争と報復の連鎖。
 和解の条件として、部族長ドーラット・ハーンの10歳になる娘ザイナブを、
 敵対する老部族長トール・グルに嫁がせることが要求されます。
 ザイナブの母親アッララキは、幼い娘の人生を守るため、娘を連れて村を脱出。
 途中、強引に乗り込んだトラックの運転手ソハイルに助けを求めながら、
 命を懸けた逃避行を決行します。


部族の掟、独自の慣習、何よりも重んじられる "男たち" の名誉。
これらの前で「女性」は、家族である男たちにとっての「財産」にすぎず、
すなわち、何か争いが起きた際には「罪の代償」として、
"強制的に" 相手方へ譲渡されるのが "当たり前" な社会の存在を描いている訳ですが、
現代の日本で生活していると、なかなか理解が及ばない面もありつつ、
しかし、例えば携帯電話など、本編にふつうに登場する日常アイテムを通して、
まぎれもない、現実の問題・出来事であると認識させられます。

一方で、エンターテイメント作品としての要素も大いに盛りこまれ、
雄大な自然のなかで繰り広げられる逃走劇には、カーチェイスがあり、
土地を流れる大河の伝説を語りあう場面では、若く美しい母親と、
かつて、愛に生きた過去を持つトラック運転手との間に、
仄かにロマンスが芽生えつつあることも窺がわれます。
そして、作品全体を通じ、色彩豊かな画面の "美しさ" が印象に残ります。

パキスタンの国事情に詳しくないので、プログラムが必読状態でしたが、
本作は、パキスタン国内での公開時に大ヒットしたそうです。
少し前に、パキスタンで「名誉殺人」に対する法改革が行われる旨を
ニュースで読んだ気がするのですが、実現には障壁も多いような内容だったかと。。
映画は基本、娯楽に位置づけられるものだと思っていますが、
プログラムに掲載された監督メッセージにも書かれているように、
「どれだけの犠牲を払えば、自由、尊厳、愛を得ることができるのか」が、
作品に触れた人たちのなかに残り、いずれ、変革をもたらす大きなうなりとなって、
良い方向へつながっていけばと思います。

久しぶりに、岩波ホールで鑑賞しました。
同ホールでの上映作品は、プログラムにシナリオ収録があるとばかり思い込んでいたのですが、
残念ながら、本作のプログラムには収録がありませんでした。
編集方針が変わってしまったのかな?

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   映画 『娘よ』

  ◇原題:Dukhtar
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 )、IMDb ( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2017.4.22. 映画館にて