*~*~* 旧古河邸 と 庭園の歴史 *~*~*
【 明治 】 明治の元勲・陸奥宗光の次男・潤吉 ( 後の古河家2代目当主 ) が、 足尾銅山で財を成した古河財閥の創始者、古河市兵衛の養子に入る。 この時、宗光の別邸があった武蔵野の土地が古河家所有となり、 現在の旧古河庭園の地はこれにあたる。 ※宗光の別邸は現存していない。 【 大正 】 1917 ( 大正6 ) 年、古河家3代目当主・虎之助が現在の洋館と庭園を築く。 洋館と洋風庭園の設計は、鹿鳴館で有名な英国人建築家J・コンドル、 日本庭園の作庭は、京都の庭師 「 植治 」 こと小川治兵衛 ( 七代目 ) による。 虎之助がこの洋館で暮らしたのは9年間で、以後は古河家の迎賓館として使用。 ※現存する J・コンドル の建築 … ニコライ堂 ( 基本設計は別 )、旧岩崎邸 、 旧島津邸 ( 現・清泉女子大学 ) など。 ※七代目・小川治兵衛 … 無鄰庵 ( 旧山縣有朋別邸 )や、 平安神宮 、円山公園など有名な庭園を多く手掛ける。 【 昭和 ~ 平成 】 戦後GHQが接収・使用。 接収解除後は国に所有権が移り、洋館はしばらく無人の状態が続く。 その後、地元の要望などで、東京都が国から無償で庭園を借り受けて一般公開へ。 洋館については、1982~89 ( 昭和57~平成 1 ) 年にかけて修復工事を行ない、 現在は、(財)大谷美術館が管理をしている。 大正初期の庭園の原型を留める貴重な事例として、今年1月、国指定名勝となる。 *~*~*~*~*~*~*~*~* |
◇ ホール ◇ 天井と壁 ( 上部 ) は、白い漆喰で塗られています。 梁と腰壁、南西側に作られた暖炉のマントルピースは檜。 シャンデリアの真鍮部分と硝子のグローブは、当時のものが現存、 ホールをはじめとして、洋館内に敷かれた絨毯は、 掃除がしやすいよう、床面積より小さめに裁断してあります。 ( ↑当時の絨毯止め釘の位置から判明した習慣だそうです ) 蔦におおわれた、修復前の洋館の写真が掛けられていました。 ◇ ビリヤード室 ◇ ビリヤード台の色にあわせて、青~緑系の色調で整えられた部屋。 当時置かれていた8脚のビリヤード台は大変重かった為、 床に直接置くことはせず ( 床が抜けてしまうので ) 、 脚の位置にあわせて床を刳り貫き、地面からレンガ製の土台で支えて設置。 部屋の北西にある暖炉の上には、虎之助の写真が飾られています。 ◇ サンルーム ◇ ビリヤードの合間に、喫煙室としても使用されたそうです。 |
<写真右奥より> 玄関ポーチ ↓ ビリヤード室 ↓ サンルーム |
◇ 書斎 ◇ ビリヤード室から書斎につながる扉は、 檜の一枚板に飾り枠を嵌め込んでいく造りなので、釘は未使用とのこと。 南西に位置する、暖炉のマントルピースが大きな鏡になっているのは、 姿見としてではなく、部屋を広く見せる為の視覚効果の演出が目的だそう。 造りつけの書棚の木材は楢です。 ◇ 応接室 ◇ バラの咲く花壇がよく見えるこの部屋は、別名 “ 薔薇の間 ” と呼ばれ、 天井や壁紙、暖炉に施された装飾は、すべてバラの花で統一。 こちらのマントルピースも、庭の景色を映しだす大きな鏡になっていますが、 裏側に銀メッキが貼られているそうなので、影がやや黄色味を帯びることで、 天井に映えるシャンデリアの反射光と、色調が計算されている気がします。 なお、この部屋の壁紙は、襖と同じ 「 袋張り 」 の手法が用いられていて、 湿気が多い日本の気候を配慮した造りになっているとのこと。 |
<写真中央より> 書斎 ↓ 応接室 ( 薔薇の間 ) |
◇ ブレックファースト・ルーム ◇ 家族用の食堂で、朝食時以外にも使用したそうです (笑) 日常使いの部屋のため、床は板張りで、装飾もやや控え目。 とは言え、隣りのディナー・ルームと二部屋続きで使用することを考慮し、 間仕切りは和室の発想で引戸でしつらえ、色調も同系色で揃えるなど、 シンプルながらも、きちんと整えられています。 |
<写真手前より> 応接室 ( 薔薇の間 ) ↓ ブレックファースト ルーム ↓ ディナー・ルーム |
◇ ディナー・ルーム ◇ お客様をもてなす、いわゆる晩餐用の食堂。 この部屋の腰壁が他よりも高くなっているのは、格式の高さを示すと同時に、 長テーブルの端と端で会話をする際の、相手の声がよく聞こえるようにと、 音響効果の工夫を兼ねたものなのだそう。 天井から吊り下げられた照明には、滑車が目立たないように取りつけられていて、 高さを変えることで、光の加減を調整することが可能。 また、別館との間に配膳用の小窓を設けることで、厨房や配膳室の存在、 使用人の気配などを、必要以上に感じさせないよう配慮してあるそうです。 楢で造られたマントルピースには、精緻な薔薇の彫刻が施されています。 |
<写真> ディナー・ルームの出窓 |