末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

旧古河庭園 (2)

2006-05-28 21:53:08 | 日々のはなし

旧古河邸本館


*~*~* 旧古河邸 と 庭園の歴史 *~*~*

 【 明治 】
   明治の元勲・陸奥宗光の次男・潤吉 ( 後の古河家2代目当主 ) が、
   足尾銅山で財を成した古河財閥の創始者、古河市兵衛の養子に入る。
   この時、宗光の別邸があった武蔵野の土地が古河家所有となり、
   現在の旧古河庭園の地はこれにあたる。

    ※宗光の別邸は現存していない。

 【 大正 】
   1917 ( 大正6 ) 年、古河家3代目当主・虎之助が現在の洋館と庭園を築く。
   洋館と洋風庭園の設計は、鹿鳴館で有名な英国人建築家J・コンドル、
   日本庭園の作庭は、京都の庭師 「 植治 」 こと小川治兵衛 ( 七代目 ) による。
   虎之助がこの洋館で暮らしたのは9年間で、以後は古河家の迎賓館として使用。

    ※現存する J・コンドル の建築 … ニコライ堂 ( 基本設計は別 )、旧岩崎邸
                         旧島津邸 ( 現・清泉女子大学 ) など。

    ※七代目・小川治兵衛無鄰庵 ( 旧山縣有朋別邸 )や、
                    平安神宮 、円山公園など有名な庭園を多く手掛ける。

 【 昭和 ~ 平成 】
   戦後GHQが接収・使用。
   接収解除後は国に所有権が移り、洋館はしばらく無人の状態が続く。
   その後、地元の要望などで、東京都が国から無償で庭園を借り受けて一般公開へ。
   洋館については、1982~89 ( 昭和57~平成 1 ) 年にかけて修復工事を行ない、
   現在は、(財)大谷美術館が管理をしている。
   大正初期の庭園の原型を留める貴重な事例として、今年1月、国指定名勝となる。


*~*~*~*~*~*~*~*~*


旧古河邸本館 【 1階間取図 】


 ◇ ホール ◇
   天井と壁 ( 上部 ) は、白い漆喰で塗られています。
   梁と腰壁、南西側に作られた暖炉のマントルピースは檜。
   シャンデリアの真鍮部分と硝子のグローブは、当時のものが現存、
   ホールをはじめとして、洋館内に敷かれた絨毯は、
   掃除がしやすいよう、床面積より小さめに裁断してあります。
   ( ↑当時の絨毯止め釘の位置から判明した習慣だそうです )
   蔦におおわれた、修復前の洋館の写真が掛けられていました。


 ◇ ビリヤード室 ◇
   ビリヤード台の色にあわせて、青~緑系の色調で整えられた部屋。
   当時置かれていた8脚のビリヤード台は大変重かった為、
   床に直接置くことはせず ( 床が抜けてしまうので ) 、
   脚の位置にあわせて床を刳り貫き、地面からレンガ製の土台で支えて設置。
   部屋の北西にある暖炉の上には、虎之助の写真が飾られています。


 ◇ サンルーム ◇
   ビリヤードの合間に、喫煙室としても使用されたそうです。



 <写真右奥より>

 玄関ポーチ
 ↓
 ビリヤード室
 ↓
 サンルーム


 ◇ 書斎 ◇
   ビリヤード室から書斎につながる扉は、
   檜の一枚板に飾り枠を嵌め込んでいく造りなので、釘は未使用とのこと。
   南西に位置する、暖炉のマントルピースが大きな鏡になっているのは、
   姿見としてではなく、部屋を広く見せる為の視覚効果の演出が目的だそう。
   造りつけの書棚の木材は楢です。


 ◇ 応接室 ◇
   バラの咲く花壇がよく見えるこの部屋は、別名 “ 薔薇の間 ” と呼ばれ、
   天井や壁紙、暖炉に施された装飾は、すべてバラの花で統一。
   こちらのマントルピースも、庭の景色を映しだす大きな鏡になっていますが、
   裏側に銀メッキが貼られているそうなので、影がやや黄色味を帯びることで、
   天井に映えるシャンデリアの反射光と、色調が計算されている気がします。
   なお、この部屋の壁紙は、襖と同じ 「 袋張り 」 の手法が用いられていて、
   湿気が多い日本の気候を配慮した造りになっているとのこと。




 <写真中央より>

 書斎
 ↓
 応接室
 ( 薔薇の間 )


 ◇ ブレックファースト・ルーム ◇
   家族用の食堂で、朝食時以外にも使用したそうです (笑)
   日常使いの部屋のため、床は板張りで、装飾もやや控え目。
   とは言え、隣りのディナー・ルームと二部屋続きで使用することを考慮し、
   間仕切りは和室の発想で引戸でしつらえ、色調も同系色で揃えるなど、
   シンプルながらも、きちんと整えられています。




 <写真手前より>

 応接室
 ( 薔薇の間 )
 ↓
 ブレックファースト
 ルーム
 ↓
 ディナー・ルーム


 ◇ ディナー・ルーム ◇
   お客様をもてなす、いわゆる晩餐用の食堂。
   この部屋の腰壁が他よりも高くなっているのは、格式の高さを示すと同時に、
   長テーブルの端と端で会話をする際の、相手の声がよく聞こえるようにと、
   音響効果の工夫を兼ねたものなのだそう。
   天井から吊り下げられた照明には、滑車が目立たないように取りつけられていて、
   高さを変えることで、光の加減を調整することが可能。
   また、別館との間に配膳用の小窓を設けることで、厨房や配膳室の存在、
   使用人の気配などを、必要以上に感じさせないよう配慮してあるそうです。
   楢で造られたマントルピースには、精緻な薔薇の彫刻が施されています。







<写真> ディナー・ルームの出窓


コメント