末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

ブルックリン

2016-08-16 08:49:58 | 映画のはなし
主演のシアーシャ・ローナンの演技が、何より素晴らしかったです。

シアーシャと言えば、「 つぐない 」で演じたブライオニー・タリスの少女らしい
"純粋さ" と "残酷さ" とを宿した瞳の演技が、未だに鮮明に記憶に残っていますが、
この「ブルックリン」で見せた、少女から大人の女性へと成長していく
主人公エイリシュの不安や戸惑い、自信や喜びといった揺れ動く心情を、
細やかに、丁寧に、適切に表現していく様が、とても見応えありました。

また、"細やか" で "丁寧" というキーワードは、本作品全体を示すものでもあります。

物語の舞台となる1950年代、エイリシュの故郷であるアイルランドの静かな田舎町と、
移民として暮らすことになる新天地アメリカのニューヨーク・ブルックリン。
アメリカで出会った "未来" を語るトニーと、"故郷の象徴" ともいえるビルの、二人の男性。
アイルランドからアメリカに向かって大西洋を渡る船旅のシーンも、初乗船時と再訪時の二回登場し、
一人の普通の人間が、人生の岐路で迷いながら選択をして、経験を積み、時を重ねていく様子が、
対比を駆使した巧みな演出と、意味をきちんと持たせてある美しい色彩でもって、語られていきます。

ポスター等に使われている、レンガ塀の前にたたずむエイリシュの姿は、
しっかり本編でも描かれますが、印象的な場面から切り取ってきた一コマなので、
鑑賞後もこのメインビジュアルを目にすると、何となく微笑ましい気持ちになるのが良いですね。

webで作品レビューを見たところ、終盤でのエイリシュの選択に賛否両論あるようですが、
この映画には、物事をキレイに描写しすぎていないところも何気にあって、
エイリシュ自身の描き方にも、ブルックリンの下宿先で同居する女性陣ほどではないながら、
女性特有の "意地の悪さ" や "狡猾さ" などがそれなりに垣間見られるし、
田舎と都会の良い面、嫌な面もしっかり伝わるので、同じく、リアルであると受け入れています。

なお、原作 では "1950年代" という時代の特性が色濃く出ているらしく、
映画は、より普遍的な要素をメインに刈り込んで、脚本をまとめてあるようです。

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ところで、映画「ブルックリン」のプログラムですが、購入したところ、
「FOX SEARCHLIGHT MAGAZINE vol.08 ブルックリン issue」と銘打たれていました。
FOXサーチライト・ピクチャーズの作品を映画館で見る機会が、あまり無かったので、
こんなのが出ているとは、まったく知りませんでした。

webで検索したところ、バックナンバーは以下の作品たちでした。
 vol.01 トランス
 vol.02 ザ・イースト
 vol.03 グランド・ブダペスト・ホテル
 vol.04 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
 vol.05 わたしに会うまでの1600キロ
 vol.06 わたしはマララ
 vol.07 マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章


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   映画 『ブルックリン』

  ◇原題:Brooklyn
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 )、IMDb ( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2016.8.3. 映画館にて