末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

ウルフウォーカー

2020-11-22 08:46:11 | PJ版:役者のはなし
「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」 を手掛けた、
アイルランドのアニメーション・スタジオ、カートゥーン・サルーントム・ムーア監督 による
ケルト三部作の完結編「ウルフウォーカー」を見てきました。

前二作が持っていた、この制作チームの美点が欠けることなく、
寧ろ深化して作中の随所に宿るような、素晴らしい三作目でした。

まずは、最大の特長とも言える、絵の美しさ!
アニメと絵画が融合したような、絵本を思い起こさせる印象は以前と同様ですが、
絵柄のタッチがより躍動感あふれるものにアップデートされていて、
'ウルフウォーカー' という題材を表現しきるために、一層の磨きがかけられた魅力に感心します。

そして、丁寧で巧みな物語の展開も、変わらず上手いと思いました。
'人' と '狼' の魂が一つの身体に共存している、アイルランドの伝説に基づいた 'ウルフウォーカー' 。
本作の背景には、こうした昔話や伝承文芸をベースにしている要素と、
イングランドの清教徒によるカトリックのアイルランド侵攻といった歴史的要素とが、織り込まれていますが、
支配者層と抑圧された被支配の側との間にある緊張感や、蹂躙される伝統と文化、
追い詰められる者たちの忍耐と恐怖が、しっかりと描かれています。
一方で、このシリーズのもう一つの特長である、作り手の '生きるものへの眼差しの優しさ' も、
ちゃんと、全編通して伝わるようになっており、緩急のある語りのリズムとともに、
ストーリーテリングのバランスが非常に優れていました。

イングランドの妖精に由来する名を持つロビンと、アイルランドの神話の女王と同じ名前のメーヴ。
彼女たち二人が、子どもならではの強みと弱みの間で揺れ動く様も、感情豊かに描写されていて、
夜の森を、狼の姿で自由に駆け巡るシークエンスは、束縛や制約からの解放を象徴しているようであり、
世界観に見事にマッチした挿入歌 'Running With The Wolves' とあわせ、忘れがたい最良シーンの一つになっていますし、
この場面を経ているからこそ、後半のクライマックスである、人間vs狼の戦いで試練に立ち向かった二人が
(父との対立と救済のために戦うロビン、母の生命を癒すべく自身の限界に挑むメーヴ)、
打ち克ち、掴み取ったものは、ひときわ輝かしく、見ていて実に引き込まれました。

ベテラン俳優がボイス・キャストを務めた大人組も、
ショーン・ビーン は演じた父親の役柄によく合っていたし、
護国卿の サイモン・マクバーニー は声の演技だけでもさすがの存在感でした。
また、ロビンの賢い相棒である、ハヤブサの仲間コチョウゲンボウのマーリンや、
プロローグから節目々々に登場しては、確実にインパクトを残していく羊飼いの親爺さんなど、
脇で光るキャラクターたちも良かったです。

中世アイルランドのキルケニーの町と、深い森を舞台に、
濃密で豊潤な物語の世界をたっぷりと堪能しました。

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とても大好きなシリーズなので、
これまでの二作品と同じく、今回も映画館で2回見ました。

鑑賞したのは、YEBISU GARDEN CINEMA 。
来年3月より、入居施設の改装に伴う休館に入る そうですが、
一日も早い営業再開を待ちたい映画館です。

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   映画 『ウルフウォーカー』

  ◇原題:WolfWalkers
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 )、IMDb ( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2020.11.13. & 11.19. 映画館にて
       ♪Sean Bean / Bill Goodfellowe

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