末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

裏切りのサーカス

2012-06-11 22:48:07 | PJ版:役者のはなし
東西冷戦下の1970年代前半、イギリス。
英国情報局秘密情報部〈MI6〉と、ソ連国家保安委員会〈KGB〉との情報戦が熾烈を極める中、
ロンドンのケンブリッジ・サーカスに本部を置く英国情報部〈通称:サーカス〉の中枢に、
ソ連の二重スパイ〈もぐら〉が長年にわたり、潜入しているとの情報がもたらされます。

疑惑の対象となっているのは、4名の幹部たち。

 ○パーシー・アレリン  (暗号名:ティンカー ※鋳掛け屋)
 ○ビル・ヘイドン     (暗号名:テイラー  ※仕立て屋)
 ○ロイ・ブランド      (暗号名:ソルジャー ※兵士)
 ○トビー・エスタハイス (暗号名:プアマン  ※貧乏人)

引退していた初老の元諜報部員ジョージ・スマイリーは、
政府次官のオリヴァー・レイコンから〈もぐら〉調査の極秘指令を受けて、
英国情報部スカルプハンターの責任者ピーター・ギラムと、
元ロンドン警視庁特別保安部警部のメンデルとチームを組み、秘密裏に捜査を進めていきます。

途中、ギラムの部下であるリッキー・ターが掴んだ情報や、
かつて、英国情報部のチーフだったコントロールが独断で〈もぐら〉調査を手掛けたものの、
ブダペストへ派遣した工作員のジム・プリドーが被弾し、失敗した作戦の真相などを探りながら、
スマイリーは、遂に、〈もぐら〉を誘き出すための罠を仕掛けることになります。

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公開から1ヶ月半近く経ってしまいましたが、ようやく見に行ってきました。

原作は、スパイ小説の大家で、自身も実際に英国情報部に所属していた経歴を持つ、
ジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』。

出演俳優は、主演のG・オールドマンをはじめ、J・ハートやC・ファースといったベテラン勢に、
このところの活躍振りも目覚ましい、B・カンバーバッチに、T・ハーディ。
また、最近鑑賞した複数の作品で、印象に残るサブキャラクターを演じて記憶に引っかかっている、
T・ジョーンズ、M・ストロング、C・ハインズなど、豪華な顔ぶれで、期待値もぐんと上がります。

しかし、今回、私は大失敗をしてしまいまして、現時点で原作は未読なのですが、
(原作付きの作品の場合、映画鑑賞前には読まないことにしているので)
映画の公開にあわせて発売された原作の新訳版について、Webで調べていた際に、
ネタバレを踏んでしまったのです ―― 。
「〈もぐら〉は誰か」「死んだのは誰か」「誰が生きているのか」

・・ 致命的ですね。
なので、少しでも記憶が薄まってくれればと、映画館へ行くタイミングを遅らせてはみたものの、
こんなときに限って、なかなか忘れることもできずに(苦笑)。
まぁ、〈もぐら〉の正体だけは、キャスト的に予想がついたような気もしなくはないですが。

さて、こんな状況で見に行ったために、映画の面白さが半減したかと言えば、そんな事も無く、
むしろ、しっかり原作を読んでから鑑賞した方が、細部まで楽しめたのではないかと思いました。

何よりもまず、登場人物の呼び名の多さに、混乱させられるのです。

各々の主要人物が、ファーストネーム、ラストネーム、コードネームが混在して呼ばれるため、
初見で「いまのは誰のこと?」と瞬時で判断するのは、かなり大変でした。
特に、この映画は派手で目立つようなアクションとは、とんと無縁な上に、
登場人物たちも寡黙で、必要以上の事は喋らないため、
ちょっとした仕草や、微かな表情の変化から、人間関係や情報を推測していかなければならず、
正直、字幕で示された人物の名前にばかり気を取られている場合では無いのですよー。

ところで、今回の鑑賞で、とても印象に残っている場面が二つあります。

一つ目は、スマイリーが、やはり同じく英国情報部を退職した元調査員のコニーを訪れた帰り際に、
「よくないことだったら、二度とこないで。あなたたちを昔のままに覚えておきたいの」と、
コニーから告げられる場面。

二つ目は、最後のシークエンス(プログラムによると、原作から改変されているようですが)で、
ある人物が、狙撃後に流した涙について。

彼らのように、イギリスは勿論、世界の歴史をも左右するような任務に就くことすら当たり前の、
オックスブリッジ出身のエリートたちであっても、嫌になるくらい "人間" なのだな ・・ と、
しみじみと感じさせられました。 期待、裏切り、落胆、喪失、嫉妬、執着心 etc... 。
どんなに優秀でも、人間は機械ではない以上、程度の差こそあれ、感情に囚われてしまうのですね。

このあたり、映画では尺の関係で、ちょっとした場面でさり気なく示されているだけだったので、
レビューを書き終わったら、原作に取り掛かって、存分に味わいたいです。

この作品は、映画 ⇒ 原作 ⇒ 映画 の順で二度見した方が、確実に面白いと思います。
見終わった直後よりも、しばらくしてから、じわじわっと来る作りになっていますし、
「リピータ割引キャンペーン」なるものも、都合良く実施中ですしね。
とにかく、原作を早く(しかし、じっくりと)読んで、再度、映画館に足を運ぶことを目指します!

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  映画 『裏切りのサーカス』

  ◇原題:Tinker Tailor Soldier Spy
  
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版
         IMDb ( 関連ページ

  ◇原作:
   「 ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ
   (ジョン・ル・カレ著/早川文庫)

  ◇鑑賞日:2012.6.7. 映画館にて
      
♪Benedict Cumberbatch / Peter Guillam
Tinker Tailor Soldier Spy


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