ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

不満の理由は

2017-09-22 11:56:16 | 日記
片麻痺もあながち悪くはないな。自由に出歩けないのも、悪くはないな。
そんなふうに感じたのは、旧友から届いたメールに目を通しているときで
ある。具体的に書くと差し障りがあるから、譬え話をすることにしよう。
登場する「旧友」は、もちろん架空の人物であって、実在する誰かではな
い。

ある日、旧友に数年ぶりで、ばったり出会ったとしよう。「やあ、久しぶ
り、元気かい?」と挨拶の言葉を掛けたが、旧友はなぜか不機嫌な面構え
で、私をじろりとにらみ返す。そして、「なんだ、その態度は!」と怒鳴
るのである。

「ぷりぷり当たり散らす」という言い方がある。「ぷりぷり」とは、辞書
によれば、「不機嫌で取りつくしまのないさま」、「当たり散らす」と
は、「自分の不愉快を原因として、関係のない周囲の人にまでわけもなく
怒り散らす」ことだという。旧友の態度に、私がいだいたのは、「こいつ
はなぜ、ぷりぷり当たり散らすのだろう」という疑問だった。そして、
思ったのである。「何か嫌なことでもあったのかな?こいつは案外、不満
の多い毎日を過ごしているのではないだろうか・・・。」この旧友は、五体満
足で、見たところ、手脚の動作に不自由はなさそうだ。身体の衰えもさほ
どではなく、年相応であるように見えた。聞いた話では、彼は定年退職し
てから写真撮影を始め、野鳥などを撮り歩いているという。また、自宅近
くに畑を借りて、野菜栽培に精を出したりもしているという。

私は旧友の心境を理解しようとして、想像上で、彼の立場に自分の姿を投
げ入れてみた。私の立場に彼の姿を重ね合わせてみた。私は釣りが趣味
で、身体が元通りになったら釣り三昧の生活を送りたいと思っている。そ
の思いが叶ったとき、私の生活はどういうものになるだろうか。旧友が野
鳥を追いかけるように、私がヤマメやイワナや、アジやクロダイを追いか
けられるようになったら、私の精神状態はどういうものになるだろうか。

おそらく私の精神生活は、今よりもはるかに不満の多いものになるだろ
う。今、私はブログの文章を書き綴ることによろこびを感じ、満足を見出
しているが、「釣りに(行けるのに!)行けない」ことがストレスの種に
なり、不満の種になって、ブログの文章を書き綴るよろこびに浸ることが
できなくなるだろう。釣りに出かければ出かけたで、「ブログ書きに専念
できない」ことがストレスの種になって、釣りの時間を純粋に楽しむこと
ができなくなるだろう。

「その出ずることいよいよ遠(とお)ければ、その知ることいよいよ少な
し(遠くへ出かければ、出かける程に知ることは少なくなっていく)」

これは老子の言葉だが、この「知ること」を「知的満足を得ること」と置
き換えれば、この言葉は、片麻痺が治り、釣りができるようになった私の
姿を、みごとに言い当てている。

だから私は思うのである。片麻痺の現状もあながち悪くはないな、と。

このことを気づかせてくれた旧友には、感謝しなければならない。八つ当
たりによって受けた不快な気持ちは、どこかに消えたと言えば嘘になる。
だが、とりあえず、谢谢。


*前回のブログ記事に誤りがありました。お詫びして訂正します。
 ×「北朝鮮をめぐる事態は、まさに(1)から(2)へと進み」
→○「北朝鮮をめぐる事態は、まさに(2)から(3)へと進み」
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