ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

〈正義〉の戦士の最期

2024-01-29 13:56:23 | 日記
NHKの朝ドラ「ブギウギ」を見終えたときだった。テレビの画面に「ニュース速報」のキャプションが流れ、「桐島聡」なる人物が死亡したことを、私は知った。唖然として、言葉が出なかった。いや、言葉は出たものの、私の頭は完全に思考停止の状態だった。
「そうか、死んだのか・・・」。この言葉が自分に対してのものだったか、目の前の妻に対してだったのか、自分でもよくわからない。


「桐島聡」なる人物のことは、きのうのブログで取りあげたばかりだった。50年ほど前、世間を震撼させた連続企業爆破事件の一つに関与し、「韓国産業経済研究所」なる企業に手製爆弾を仕掛け爆破させたとして、指名手配になっていた逃走犯。彼は過激派セクト「東アジア反日武装戦線」のメンバーだった。


きのうのブログで、私は70歳のこの男を、「〈正義〉の戦士」の年老いた姿として捉えた。その上でこう書いた。


「彼はこのセクトのメンバーとして(上官に命じられて敵と戦う兵士のように)、何の疑いも持たず、セクトが主張する〈正義〉を実行したのだろう。標的の爆破に成功したとき、彼は無事任務を遂行した達成感にとらわれたに違いない。」


それはそうと、彼はなぜこの期に及んで自分が指名手配中の人物だと名乗り出たのか。彼は「最期は本名で迎えたい」と思ったらしい。きのうのブログで、私は次のように書いた。


「これは、長年の逃亡生活が自分に充分納得できるものであり、『自分は本分を全うしたのだ』との達成感があったからこそ懐いた心境なのだろう。」


だが、今にして思えば、自分の死期を悟った彼は、長年の逃亡生活に自ら終止符を打ち、心安らかな充ち足りた心境であの世に旅立ちたいと考えたのかもしれない。


そう考えたとすれば、彼は自分の過去を顧み、自分の〈正義〉への思いに反省を加えて、被害者を悼む気持を綴った手記のようなものを書き残していた可能性がある。そのあたりのことは、今後の捜査で明らかになることだろう。


それにしても、こうも早く死期が訪れるとは・・・。それは、彼自身も思ってもみないことだったに違いない。

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