ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

モンテーニュ『エセー』を読む悦楽

2023-09-22 15:08:19 | 日記
このところ暇を見つけてはモンテーニュ『エセー』の森をほっつき歩いている。きっと金言がころがっているはずだ、ーーそう思いながら歩いていると、何やら自分が金鉱掘削人(ゴールド・ハンター)になった気がしてくる。金言はあちこちにころがっているはずだ。ーーそういう確信のもとにこの密林を探索するのは、私にとってたまらない悦楽なのである。


「わざわざそんなことをしなくても」
と言う人がいるかもしれない。
「モンテーニュの名言なんて、ネットをググればいくらでも出てくるではないか」


それは私も知っている。だが、ネットをググって出てくる「モンテーニュの名言」なるものは、モンテーニュ『エセー』の森に散在する「金言」と決定的に何かが違っている。そんな気がするのだ。


まず「名言」があり、「名言」だけがある、というわけではない。モンテーニュの場合、様々な事例から一つの格言を導き出してくる帰納の試みがあり、一つの命題を手がかりに様々な事例に言及して、その命題の妥当性を検証しようとする演繹じみた試みがある。


金言にしろ、格言にしろ、その命題とそれにまつわる様々な事例との関連を見なければ、モンテーニュを読む醍醐味の大半は失われると言ってよい。


ところがである。その意味では、『エセー』の大半を占める実に様々な事例を読み落とすわけにはいかないのだが、この「様々な事例」こそ複雑に錯綜していて、これらを読むとき、私は密林にでも迷い込んだような暗澹たる気持ちになってしまうのである。苦あれば楽あり、楽あれば苦あり、ということだろうか。


まあ、苦をも楽しむ覚悟で、今後はのんびりモンテーニュ『エセー』の密林を逍遥することにしよう。


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