きのうの夕餉の食卓で、次のようなニュースを聞いた。
「全国で唯一、県庁所在地にある松江市の島根原子力発電所2号機について、島根県の丸山知事は、2日の県議会で再稼働に同意する考えを表明しました。
(中略)
理由については『産業や生活のために電力を維持する必要があり、現状では原発が一定の役割を担う必要がある』としています。」
(NHK NEWS WEB 6月2日配信)
このニュースを聞きながら、私は次のように考えた。原発の再稼働か。政府の思わく通り、国のエネルギー政策は着実に軌道に乗っている感じだな。
テレビの画面に映し出された島根県知事の会見の模様を見て、私の脳裏に、次のような考えがひらめいた。
この人、いかにも官僚のような顔つきをしているよな。ーーそうだ、この人はきっと経産省の回し者なのだろう。原発推進といえば、何といっても経産省だからな。経産省は、自らが立案した原発推進策を確実に実行に移すために、原発の立地県に身内を県知事として送り込んだのだ。送り込まれた丸山氏の方だって、お里である中央官庁の丸抱えとはいえ、知事選に当選するためには、それなりの努力をしたに違いない。いやはや、政府もずいぶん手の込んだやり方をするものだ。
念のために、私は自室に戻ってタブレットを取り出し、ネットで丸山氏の経歴を調べてみた。結果はといえば、私の憶測は間違っていた。丸山氏は経産省ではなく、総務省出身のお役人だった。
だが、丸山知事が「国策を実行するために、原発立地県に送り込まれた政府のエージェント」だという私の憶測は、間違っていなかったと思う。県知事とは、そもそもそういう存在である。歴史を遡れば、明治初期の廃藩置県以来、県知事は中央政府の意向の執行代理人(エージェント)としての役割を果たしてきた。そういう役割遂行の仕組みを取り仕切ったのが、旧内務省、自治省といった行政機関である。これらは現在の総務省の前身であり、現在の総務省といえば、丸山知事の出身母体にほかならない。
島根原発再稼働をめぐる今回の丸山知事の見解は、中央政府の公式見解と見るべきだろう。