おはようございます。
暑さも少しずつ和らぎ、風が涼しくなってきていますね。
もう、秋の足音が聞こえてきている感じがしますねー。
蝉の音も、やわらぎつつあるし、季節の変わる時期に来ているような気がしますねー。
さてさて、今日も「大阪営業物語」始めていきましょうか。
あの頃の大阪が、懐かしく感じますねー。
「俺の奥さん落とした経緯なあ・・・」
と、白川はすでに日本酒にスイッチして、手酌で飲んでいる。
「大学からずっとつきあっていたんだっけ?」
と、僕が聞くと、
「いや、そうじゃないんだ。逆に大学時代からつきあっている女は、会社に入ると切れることが多いんや」
と、白川。
「ほう。それは俺も同じだったなー」
と、僕。
「相当好きや、言うとったなあ、鈴木は、そのおんなが・・・」
と、白川。
「おかげで、未だにひとりさ。そのおんなを超えるおんなに会ったことも、ないんで、ね」
と、僕。
「それより、白川の話だよ。大学時代、つきあってなかったんだったら、どういう話なの?」
と、僕。
「会社入って、3年目の話だよ。とにかく、毎日きつくてさ。いっつも終電か、あるいは、徹夜なんて事が続いた頃だった」
と、白川は思い出すように話す・・・。
「もちろん、出会いなんて、まったく無かった。合コンに出る時間すら、なかったよ。とにかく、働かされてた、身体がボロボロになるまでな・・・」
と、白川は話している。
会社の寮に居たけど、とにかく、精神的にもボロボロだった。毎日生きる気力も尽きかけてた・・・そんな頃だ、絵美子に会ったのは・・・。
通勤の為に、朝の御堂筋線に乗っていたら、偶然、絵美子に会ったんだ。
俺はボロボロで、全然気づかへんかったんやけど、あいつの方が俺を見つけてくれたんや・・・。
「白川さんですよね?わたし、一個下の三沢です」
って、満員電車の中で言ってくれたんや・・・。
その時の彼女の清楚な感じに俺はすぐにやられて・・・すぐに連絡先交換したんや。
それから、お互い、すぐに惹かれ合って・・・出会って3ヶ月で、もう結婚の話は決まっていた。
まあ、なんやかやで、実際に結婚するまで、一年かかったけど、運命の出会いって、あるもんやで。
運命のおんなに出会ったら、好きで好きでたまらんようになる。
いっつもそのおんなのことが頭から離れないんや・・・だから、そのおんなの為に生きていこうって、自然、そういう気にもなるし、相手もそうや。
だから、結婚って、出来るんや。
結婚って、そういうもんやで・・・。
「ふーん、そういうもんですか・・・」
と、僕は土佐の日本酒「酔鯨」をやりながら、静かに聞いている。
「そうなると、結婚して、まだ、2年そこそこってことになるけど・・・」
と、僕は少し酔った頭で言葉を探す。
「結婚って、いいもん?」
と、僕が聞くと、
「ああ。ええもんやで」
と、破顔する白川だった。
数日後、僕らは朝揃って、堂島の八津菱電機関西支社の営業事務所に顔を出していた。
そこには、営業一課の全員が集められていた。
宇賀神課長が皆にリストを配っていく。
それは僕も例外じゃなかった。
「今日はローラー作戦決行だ。各自、飛び込み営業やってこい。まあ、時期が時期だけにあまり期待は出来ないが、全力を尽くしてやってこい、以上」
と、宇賀神課長が叫ぶと、皆、一斉に外に飛び出ていった。
「鈴木。白川の報告で、お前が結構使えることがわかったからな。今日は営業として、動いてもらう。飛び込み営業は基本中の基本だからな。やってこい」
と、宇賀神課長は、僕にそう言うと、ニヤリと笑った。
と、白川が横に来てくれる。
「鈴木、飛び込み営業初めてだろ?お前なら、大丈夫だよ。なーに、相手の名刺を貰ってくればいいんだよ。名刺集めゲームだと思って気楽にやってこい」
と、白川は言ってくれる。
「お前の相手は、図書館じゃないか・・・課長も気を使ったんだよ。図書館システムなんて、数億するだろ。そんなの簡単に売れないからな。お前の場合、純粋に練習だ」
と、白川は説明してくれる。
「白川のリストは?」
と、僕が聞くと、
「汎用型のパソコン・サーバーだからな。これは売ってこないとあかんかもなー」
と、言いながら、白川は笑顔で出て行った。
僕も腹をくくって、事務所を出ようとすると、執務の島ちゃん(25)が、
「鈴木さん、がんばってねー」
と、笑顔で手を振ってくれた。
「しかし・・・営業をやりたくないから、SEになったようなもんなんだがな・・・」
と、僕は口にしながら、地下鉄御堂筋線に乗り込む。
僕は渡された営業リストを見ながら、最初の行き先を見定める。
「全部で八ヶ所かあ・・・今日中に回れるのかな。ま、回らないとどやされるんだろうけど」
と、僕はぶつぶつ言いながら、最初の飛び込み先を八尾図書館に決める。
「新今宮から関西本線だな。しかし、地図買っておいて、よかった・・・」
と、僕は地図で八尾図書館の位置を調べながら、少しワクワクする自分に気がついていた。
「なんだろう。人に出会えるのが、そんなに嬉しいのかな、俺・・・」
地下鉄御堂筋線は、そんな僕を乗せて、静かに走って行く。
「こんにちわ、どうも・・・八津菱電機の鈴木と言います。あのー・・・」
八尾図書館の館長室に通された僕は、40代後半と思われる品のいい女性を相手に話を開始する。
「まあ、ラインナップとしてはこんな感じで、予算に合わせて、毎年パワーアップも図れるという優れモノなんですよ。これが・・・」
などと、飛び込み営業初体験の僕にしては、セールストークを無難にこなしていた。
「はあ、確かに、今のシステムより、全然使い勝手が、良さそうですけど・・・」
と、女性館長は、それでも、こちらに合わせて話しをしてくれる様子。
それでも、
「ただ、図書館長と言えども、予算決めという話になるので、私の一存だけでは決められないんですの。申し訳ないですけれど・・・」
と、館長はやんわりと断ってくれる。
「いや、それはもう、わかっています。とりあえず、館長さんに、こういうシステムがあるということをアピールするのが、今回の狙いですから、見て頂ければ結構なんです」
と、そこは僕も鷹揚に話す。
「あ、そうですか?そういうことなら、わたしも、興味は、ありますから・・・」
と、途端に姿勢の変わる館長さんです。
「あのー、早速、質問なんですけど、いいでしょうか?」
と、なんとなく、真面目そうな館長さんが上目遣いで、僕に聞いてくる。
「ああ、もちろん、何でも聞いてください。疑問があるのであれば・・・」
と、僕が笑顔で言うと、
「先程、頂いたお名刺なんですけど・・・航空・宇宙システム課の方が、図書館システムの担当も、していらっしゃるんですか?」
と、半分、微笑しながら、館長さんが聞いてくる。
「あ、それですか・・・いやあ、うちの会社の方針として、何時どんな時でも、どんなシステムにも対応するのが、決まりですから、そういうことになっているんです。はい」
と、僕はちょっとしどろもどろになりながら、説明する。
「普段は、どんな仕事をされているんですか?鈴木さんは・・・」
と、少しいたずら好きな女性は、僕に聞いてくる。
「実は僕、普段は、関空の担当をしていて・・・でも、システム提案には、精通していますから、ご心配無く」
と、僕が言うと、
「ああ、関空の仕事・・・そうなの・・・合点がいったわ・・・そうなのね・・・」
と、彼女は言うと、
「お茶、もう一杯お注ぎするわね」
と、笑顔になるのでした。
僕は少しだけ、冷や汗をかいていました。
「ふうー。女性はおしゃべり好きだからな。しかし、初っ端から、ミスったが、名刺はこれしかないし、この手で今日は切り抜けるしかないな」
と、僕は八尾図書館を辞すと、腹をくくるのでした。
「図書館は、あと7箇所か。ま、おしゃべりをあまり盛り上げないようにしなくっちゃな。タイムリミットもあるんだし・・・」
と、ついおしゃべりを盛り上げる癖が出た僕でした。
「まあ、おしゃべり好きな僕の性格は、やっぱり、営業に向いているみたいだ・・・」
と、僕は、そんなことをつぶやきながら、関西本線八尾駅に向かうのでした。
「ただいまー」
と、その日、疲れきった僕は、それでも夕方5時前に、堂島の営業事務所に戻ってきました。
「おかえりなさい、鈴木さん。どうでした?初めての飛び込み営業。緊張しました?」
と、執務の島ちゃんが親しそうに話しかけてくれます。
「いや、おしゃべり好きな性格が功を奏してね。さらに図書館長は、全員女性だったから、女性好きな性格も幸いして、楽しく仕事してきたよ」
と、僕は島ちゃんの隣に腰掛ける。
「鈴木さんは、やさしい雰囲気を持っているもの。だから、そうなるかなって、思ってましたわ」
と、島ちゃんは、笑顔で話してくれる。
「そう言ってもらえるとありがたいね。っと、課長へ報告してこないと・・・」
と、僕はやおら立ち上がると、課長席にいる、宇賀神課長へ早速報告します。
「指定された八ヶ所の図書館、すべて回ってきました。これが、八枚の図書館長のお名刺です」
と、僕がリストと名刺を渡すと、
「ほう。全部回ってきたか。で、どうだった、手応えは?」
と、宇賀神課長が聞きます。
「まあ、おしゃべりは楽しく盛り上げてきましたから、八津菱に対するイメージは、よくなったんじゃないかと・・・いいイメージは持ってもらいました」
と、僕は報告します。
「あとは、予算決めの時期に重点的に営業をかければ、ウチのシステムの採用もあり得るかと、判断しました」
と、僕が言うと、
「うん。なかなか、いい発想だな。ま、基本中の基本は、クリアというところかな」
と、宇賀神課長は言ってくれます。
「まあ、まだ、基本中の基本だからな。手を抜くなよ。下がってよし」
と、宇賀神課長は、機嫌良さそうにオーケーを出してくれます。
僕は、疲れた身体を少しリフレッシュするべく、同じフロアにあるリフレッシュコーナーに出ていきます。
「コーヒーでも飲むか・・・」
と、僕が自動販売機でコーヒーを買っていると、ポンポンと背中を叩かれます。
「おう、鈴木。鎌倉から来てるって話は、本当だったんやな」
と、言葉がしたので、振り返ると、営業部では同期トップの水元(28)がそこには、いました。
「おー、水元、久しぶりだなあ。4年ぶりかあ。前に一緒に仕事してから」
と、僕が言うと、
「大阪空港の仕事やったな。ま、提案だけで、取れはせんかったけどな」
と、水元もコーヒーを飲んでいます。
「実はな、ちょっと不穏な噂を聞いたんで、お前に確認したくてな。中央の話やで。お前も少しは情報を持っているんや、ないか?」
と、水元は、小声で僕に、そうささやいてきました。
(つづく)
ってな感じでしたね。
まあ、今回はいろいろありましたけど、基本中の基本という感じですかー。
まあ、勉強勉強の日々でしたねー。
そんな日々を懐かしく思い出しますねー。
さてさて、今日も暑くなるんでしょうか。
残暑、厳しい折ですが、まあ、楽しくやっていきましょう。
日々精進精進ですねー。
ではでは。
暑さも少しずつ和らぎ、風が涼しくなってきていますね。
もう、秋の足音が聞こえてきている感じがしますねー。
蝉の音も、やわらぎつつあるし、季節の変わる時期に来ているような気がしますねー。
さてさて、今日も「大阪営業物語」始めていきましょうか。
あの頃の大阪が、懐かしく感じますねー。
「俺の奥さん落とした経緯なあ・・・」
と、白川はすでに日本酒にスイッチして、手酌で飲んでいる。
「大学からずっとつきあっていたんだっけ?」
と、僕が聞くと、
「いや、そうじゃないんだ。逆に大学時代からつきあっている女は、会社に入ると切れることが多いんや」
と、白川。
「ほう。それは俺も同じだったなー」
と、僕。
「相当好きや、言うとったなあ、鈴木は、そのおんなが・・・」
と、白川。
「おかげで、未だにひとりさ。そのおんなを超えるおんなに会ったことも、ないんで、ね」
と、僕。
「それより、白川の話だよ。大学時代、つきあってなかったんだったら、どういう話なの?」
と、僕。
「会社入って、3年目の話だよ。とにかく、毎日きつくてさ。いっつも終電か、あるいは、徹夜なんて事が続いた頃だった」
と、白川は思い出すように話す・・・。
「もちろん、出会いなんて、まったく無かった。合コンに出る時間すら、なかったよ。とにかく、働かされてた、身体がボロボロになるまでな・・・」
と、白川は話している。
会社の寮に居たけど、とにかく、精神的にもボロボロだった。毎日生きる気力も尽きかけてた・・・そんな頃だ、絵美子に会ったのは・・・。
通勤の為に、朝の御堂筋線に乗っていたら、偶然、絵美子に会ったんだ。
俺はボロボロで、全然気づかへんかったんやけど、あいつの方が俺を見つけてくれたんや・・・。
「白川さんですよね?わたし、一個下の三沢です」
って、満員電車の中で言ってくれたんや・・・。
その時の彼女の清楚な感じに俺はすぐにやられて・・・すぐに連絡先交換したんや。
それから、お互い、すぐに惹かれ合って・・・出会って3ヶ月で、もう結婚の話は決まっていた。
まあ、なんやかやで、実際に結婚するまで、一年かかったけど、運命の出会いって、あるもんやで。
運命のおんなに出会ったら、好きで好きでたまらんようになる。
いっつもそのおんなのことが頭から離れないんや・・・だから、そのおんなの為に生きていこうって、自然、そういう気にもなるし、相手もそうや。
だから、結婚って、出来るんや。
結婚って、そういうもんやで・・・。
「ふーん、そういうもんですか・・・」
と、僕は土佐の日本酒「酔鯨」をやりながら、静かに聞いている。
「そうなると、結婚して、まだ、2年そこそこってことになるけど・・・」
と、僕は少し酔った頭で言葉を探す。
「結婚って、いいもん?」
と、僕が聞くと、
「ああ。ええもんやで」
と、破顔する白川だった。
数日後、僕らは朝揃って、堂島の八津菱電機関西支社の営業事務所に顔を出していた。
そこには、営業一課の全員が集められていた。
宇賀神課長が皆にリストを配っていく。
それは僕も例外じゃなかった。
「今日はローラー作戦決行だ。各自、飛び込み営業やってこい。まあ、時期が時期だけにあまり期待は出来ないが、全力を尽くしてやってこい、以上」
と、宇賀神課長が叫ぶと、皆、一斉に外に飛び出ていった。
「鈴木。白川の報告で、お前が結構使えることがわかったからな。今日は営業として、動いてもらう。飛び込み営業は基本中の基本だからな。やってこい」
と、宇賀神課長は、僕にそう言うと、ニヤリと笑った。
と、白川が横に来てくれる。
「鈴木、飛び込み営業初めてだろ?お前なら、大丈夫だよ。なーに、相手の名刺を貰ってくればいいんだよ。名刺集めゲームだと思って気楽にやってこい」
と、白川は言ってくれる。
「お前の相手は、図書館じゃないか・・・課長も気を使ったんだよ。図書館システムなんて、数億するだろ。そんなの簡単に売れないからな。お前の場合、純粋に練習だ」
と、白川は説明してくれる。
「白川のリストは?」
と、僕が聞くと、
「汎用型のパソコン・サーバーだからな。これは売ってこないとあかんかもなー」
と、言いながら、白川は笑顔で出て行った。
僕も腹をくくって、事務所を出ようとすると、執務の島ちゃん(25)が、
「鈴木さん、がんばってねー」
と、笑顔で手を振ってくれた。
「しかし・・・営業をやりたくないから、SEになったようなもんなんだがな・・・」
と、僕は口にしながら、地下鉄御堂筋線に乗り込む。
僕は渡された営業リストを見ながら、最初の行き先を見定める。
「全部で八ヶ所かあ・・・今日中に回れるのかな。ま、回らないとどやされるんだろうけど」
と、僕はぶつぶつ言いながら、最初の飛び込み先を八尾図書館に決める。
「新今宮から関西本線だな。しかし、地図買っておいて、よかった・・・」
と、僕は地図で八尾図書館の位置を調べながら、少しワクワクする自分に気がついていた。
「なんだろう。人に出会えるのが、そんなに嬉しいのかな、俺・・・」
地下鉄御堂筋線は、そんな僕を乗せて、静かに走って行く。
「こんにちわ、どうも・・・八津菱電機の鈴木と言います。あのー・・・」
八尾図書館の館長室に通された僕は、40代後半と思われる品のいい女性を相手に話を開始する。
「まあ、ラインナップとしてはこんな感じで、予算に合わせて、毎年パワーアップも図れるという優れモノなんですよ。これが・・・」
などと、飛び込み営業初体験の僕にしては、セールストークを無難にこなしていた。
「はあ、確かに、今のシステムより、全然使い勝手が、良さそうですけど・・・」
と、女性館長は、それでも、こちらに合わせて話しをしてくれる様子。
それでも、
「ただ、図書館長と言えども、予算決めという話になるので、私の一存だけでは決められないんですの。申し訳ないですけれど・・・」
と、館長はやんわりと断ってくれる。
「いや、それはもう、わかっています。とりあえず、館長さんに、こういうシステムがあるということをアピールするのが、今回の狙いですから、見て頂ければ結構なんです」
と、そこは僕も鷹揚に話す。
「あ、そうですか?そういうことなら、わたしも、興味は、ありますから・・・」
と、途端に姿勢の変わる館長さんです。
「あのー、早速、質問なんですけど、いいでしょうか?」
と、なんとなく、真面目そうな館長さんが上目遣いで、僕に聞いてくる。
「ああ、もちろん、何でも聞いてください。疑問があるのであれば・・・」
と、僕が笑顔で言うと、
「先程、頂いたお名刺なんですけど・・・航空・宇宙システム課の方が、図書館システムの担当も、していらっしゃるんですか?」
と、半分、微笑しながら、館長さんが聞いてくる。
「あ、それですか・・・いやあ、うちの会社の方針として、何時どんな時でも、どんなシステムにも対応するのが、決まりですから、そういうことになっているんです。はい」
と、僕はちょっとしどろもどろになりながら、説明する。
「普段は、どんな仕事をされているんですか?鈴木さんは・・・」
と、少しいたずら好きな女性は、僕に聞いてくる。
「実は僕、普段は、関空の担当をしていて・・・でも、システム提案には、精通していますから、ご心配無く」
と、僕が言うと、
「ああ、関空の仕事・・・そうなの・・・合点がいったわ・・・そうなのね・・・」
と、彼女は言うと、
「お茶、もう一杯お注ぎするわね」
と、笑顔になるのでした。
僕は少しだけ、冷や汗をかいていました。
「ふうー。女性はおしゃべり好きだからな。しかし、初っ端から、ミスったが、名刺はこれしかないし、この手で今日は切り抜けるしかないな」
と、僕は八尾図書館を辞すと、腹をくくるのでした。
「図書館は、あと7箇所か。ま、おしゃべりをあまり盛り上げないようにしなくっちゃな。タイムリミットもあるんだし・・・」
と、ついおしゃべりを盛り上げる癖が出た僕でした。
「まあ、おしゃべり好きな僕の性格は、やっぱり、営業に向いているみたいだ・・・」
と、僕は、そんなことをつぶやきながら、関西本線八尾駅に向かうのでした。
「ただいまー」
と、その日、疲れきった僕は、それでも夕方5時前に、堂島の営業事務所に戻ってきました。
「おかえりなさい、鈴木さん。どうでした?初めての飛び込み営業。緊張しました?」
と、執務の島ちゃんが親しそうに話しかけてくれます。
「いや、おしゃべり好きな性格が功を奏してね。さらに図書館長は、全員女性だったから、女性好きな性格も幸いして、楽しく仕事してきたよ」
と、僕は島ちゃんの隣に腰掛ける。
「鈴木さんは、やさしい雰囲気を持っているもの。だから、そうなるかなって、思ってましたわ」
と、島ちゃんは、笑顔で話してくれる。
「そう言ってもらえるとありがたいね。っと、課長へ報告してこないと・・・」
と、僕はやおら立ち上がると、課長席にいる、宇賀神課長へ早速報告します。
「指定された八ヶ所の図書館、すべて回ってきました。これが、八枚の図書館長のお名刺です」
と、僕がリストと名刺を渡すと、
「ほう。全部回ってきたか。で、どうだった、手応えは?」
と、宇賀神課長が聞きます。
「まあ、おしゃべりは楽しく盛り上げてきましたから、八津菱に対するイメージは、よくなったんじゃないかと・・・いいイメージは持ってもらいました」
と、僕は報告します。
「あとは、予算決めの時期に重点的に営業をかければ、ウチのシステムの採用もあり得るかと、判断しました」
と、僕が言うと、
「うん。なかなか、いい発想だな。ま、基本中の基本は、クリアというところかな」
と、宇賀神課長は言ってくれます。
「まあ、まだ、基本中の基本だからな。手を抜くなよ。下がってよし」
と、宇賀神課長は、機嫌良さそうにオーケーを出してくれます。
僕は、疲れた身体を少しリフレッシュするべく、同じフロアにあるリフレッシュコーナーに出ていきます。
「コーヒーでも飲むか・・・」
と、僕が自動販売機でコーヒーを買っていると、ポンポンと背中を叩かれます。
「おう、鈴木。鎌倉から来てるって話は、本当だったんやな」
と、言葉がしたので、振り返ると、営業部では同期トップの水元(28)がそこには、いました。
「おー、水元、久しぶりだなあ。4年ぶりかあ。前に一緒に仕事してから」
と、僕が言うと、
「大阪空港の仕事やったな。ま、提案だけで、取れはせんかったけどな」
と、水元もコーヒーを飲んでいます。
「実はな、ちょっと不穏な噂を聞いたんで、お前に確認したくてな。中央の話やで。お前も少しは情報を持っているんや、ないか?」
と、水元は、小声で僕に、そうささやいてきました。
(つづく)
ってな感じでしたね。
まあ、今回はいろいろありましたけど、基本中の基本という感じですかー。
まあ、勉強勉強の日々でしたねー。
そんな日々を懐かしく思い出しますねー。
さてさて、今日も暑くなるんでしょうか。
残暑、厳しい折ですが、まあ、楽しくやっていきましょう。
日々精進精進ですねー。
ではでは。