「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「いつか、桜の樹の下で」(1)

2013年03月20日 | アホな自分
3月14日・・・その日は、ホワイトデーだった。日曜日の空は気持ちよく晴れていた。

九条レイカ(21)は、約束の場所である、吉祥寺のカフェ「アルカンシェル」に急いでいた。

「ふーん、吉祥寺って、こんな場所だったのね。来たことなかったから・・・この街はデートに良さそう・・・」

と、レイカはのんびり思っていた。

「えーと、あった、あった。ここが「アルカンシェル」ね・・・」

と、レイカは指定されたカフェ「アルカンシェル」をすぐに見つける事ができた。

「えーと、来てるかな、彼・・・」

と、カフェに入っていくと、マスターらしき男性とホールスタッフの女性と目的の男性が笑顔で話し込んでいた。

「しかし、ユキさんは、「華可憐」辞めて、ここを手伝うことにしちゃうとはねー。ま、女性は切り替えが早いから」

と、その男性はしゃべっている。

「まあ、マミちゃんがその代わりに会社辞めて、「華可憐」に就職しちゃったから・・・まあ、当然って感じだけどね」

と、笑顔の男は笑顔のレイカに気づく。

「お、レイカちゃん、割りと早かったねー。ま、レイカちゃんは、女性にしては、地図得意にしてるし、当然か」

と、その男は笑顔で言ってくれる。

その男は、レイカのいとこ・・・鈴木タケル(27)だった。

「じゃ、マスター、ユキさん、あっちの席に移ります」

と、鈴木タケルは言って、別の席に移動してくれる。

「しかし、レイカちゃんは、相変わらず美しいねー。ま、リアルお姫様だから、当然か」

と、タケルはそう話す。

「そんなリアルお姫様だなんて・・・こんな街ナカで・・・なんか、少し恥ずかしいです」

と、レイカはそんな風に話す。

「ははははは。まあ、いいじゃないか、実際、君のお父さんに至るまで千年の歴史が続いてきた古い血脈なんだから」

と、タケルは笑顔でそんな風に話す。

「まあ、よくうちの血脈が、そんな古い血脈と結びついたよ・・・まあ、それはいいとして・・・」

と、タケルは、自分のバックにおもむろに手を突っ込むと、

「これ・・・バレンタインデーのチョコのお返し・・・あの時はプライベート的にてんやわんやで・・・わざわざアイリの家まで来てくれて、ありがとうね」

と、タケルはバレンタインデーのてんやわんやを懐かしく思い出していた・・・。


その日まで、マミちゃんのバレンタインを成功させる為に動いていた鈴木タケルは、バレンタインデーの昼間、中抜けして東堂アイリのマンションまで駆けつけたのだった。

もちろん、アイリとバレンタインデーを過ごす為に・・・と、言ってもアイリの部屋でランチを食べてくつろぐ・・・それくらいしか、時間はなかった・・・。

「おかえりなさい、タケル・・・」

と、アイリは鈴木タケルがマンションにやってくるといっぱいの笑顔で歓待した。

「なんだか、久しぶりだわ・・・マミちゃんの為に働いているタケル・・・全力投球だったもんね」

と、アイリは用意したランチをタケルと食べながら、笑顔笑顔になる。

「まあね。今夜がクライマックスだから、どうなるかは、まだ、わからないけれど・・・打てるだけの手は打っておいたから・・・まあ、なんとかなるだろう・・・」

と、さすがにタケルは疲れた表情を見せていた。

「でも、美味しいよ、このランチ・・・スパークリングワインも、これくらいの量なら、夜に支障はないだろう・・・」

と、タケルは久しぶりにこころからくつろいでいた。

「考えてみれば、タケルはクリスマスから、ずっと激闘の日々だったもんね。ニューヨークでは、CIAの仕事もしたし・・・そういえば、この間、驚く人が訪ねてきたわ」

と、アイリはタケルに笑顔で報告している。

「驚くひと?・・・誰?」

と、タケルはポカンとアイリを見る。

「ほら、イブで出会ったCIAのマリー・スイフトさん・・・仕事で日本に来てたらしくて・・・日曜日の昼間に突然やってきて、びっくりしちゃった」

と、アイリは笑顔で報告する。

「マリーが?あいつ、俺のところには顔出さなかった癖に・・・何をやってるんだ、あいつら・・・」

と、タケルは仕事仲間のマリーに冷たい。

「「パティズ・ディッシュ」で二人でパンケーキを食べたの。そういえば、その店の本店って、ニューヨークにあるんだって?マリーがそんなことを言ってたわ」

と、アイリは笑顔。

「「パティズディッシュ」?・・・そう言えば、僕もマリーとニューヨークのその店でパンケーキを一緒に食ったよ・・・朝早い時間に・・・」

と、タケルは苦い顔をして話す。

「それより、マリーは何をしに来たんだ?僕に用があったわけじゃないだろうし・・・」

と、タケルが疑問を示すと、

「わたしと話が合いそうだから、会いに来たって言ってたけど・・・確かに話が合いそうだわ。マリーは・・・」

と、アイリが言う。

「そういうもんなの?・・・まあ、プライベートで会いに来たのなら、別に問題はないけどね・・・」

と、タケルは話している。

「それから、今朝、タケルのいとこのレイカちゃんから電話があったわよ。毎年恒例のバレンタインデーのチョコ。今年もあげていいかって?確認の・・・」

と、アイリは目が無くなりそうな笑顔で話している。

「ほんと、九条レイカちゃんって、かわいいわよね・・・肌が透けるように美しいし、目がくりっとしていて・・・ああいう子を、リアルお姫様って言うのよね・・・」

と、アイリは九条レイカを無条件に褒めている。

「で、彼女、いつ頃来るって?」

と、タケルは真面目に聞いている。

「1時過ぎには、って言ってたから、もうすぐじゃない?」

と、アイリは笑顔で言う。

「レイカちゃんに会えるの、わたし的にも嬉しいな。あんな綺麗なお嬢さん、ちょっと普段は見かけること無いし・・・」

と、アイリはどこか楽しげに話している。

と、そこへ

「カンコーン」

と呼び鈴が鳴る。

「レイカちゃんだわ、きっと」

と、アイリは嬉しそうに玄関に消える。


すぐに女性たちの話し声が聞こえ・・・アイリとレイカが部屋に入ってくる。


「おう、レイカちゃん・・・いつも申し訳ないね」

と、タケルはレイカが顔を見せると、嬉しそうに笑顔で話す。

「タケルお兄ちゃん・・・いえ、タケルさん・・・フィアンセのアイリさんがいるのに、こちらこそ、わがまま聞いて貰って、すいません・・・」

と、レイカはアイリとタケルに深々とお辞儀をしている。

「アイリはそれはそれは寛大なお姉さんだからね・・・それに、僕も実際、こんなに大きくなるまで、バレンタインデーのチョコをくれ続けてくれて、普通に嬉しいんだ」

と、タケルも笑顔。

「レイカちゃんは特別だもん。こんなに可愛い妹が、本当に出来たみたいで・・・それにタケルを好きだってことは、同じ女性として共感出来るしね」

と、アイリも嬉しそうな笑顔。

「わたしもアイリさんみたいな素敵なお姉さんなら・・・これからも、よろしくお願いします・・・」

と行儀よくあいさつするレイカだった。


「レイカちゃんの手作りチョコ、実際、美味しかったよ・・・毎年腕をあげてる感じだね、レイカちゃん」

と、タケルは「アルカンシェル」で、レイカの前に座りながら、話している。

「アイリも絶賛してたし、レイカちゃん、パティシエとか、すぐにでもなれちゃうんじゃない?」

と、タケルは笑っている。

「いえ・・・それに、お返しのこのゴディバのチョコ・・・かなり高いんじゃないですか・・・」

と、レイカはそっちの方を心配している。

「まあ、君の家ほど、僕のポケットは裕福じゃないけど・・・このところ、特別ボーナスを貰う機会に恵まれてね。まあ、レイカちゃん家レベルのチョコは買えたかな」

と、タケルは笑っている。

「そういうの、気にしないでって、いつも言ってるのに、お兄ちゃん・・・」

と、レイカは二人きりの時のしゃべりに戻っている。


「いいんだよ。今回は特別さ・・・レイカちゃんが、自宅が裕福であることをある意味、引け目に感じながら生きていることも、僕は知ってる・・・」

と、タケルは静かに言う。

「お兄ちゃん・・・」

と、レイカ。

「でも、そんなの引け目に感じる必要はひとつもないんだ。レイカちゃんは、どっかりと腹を据えて生きていけばいいんだから」

と、真面目な目をして、タケル。

「お兄ちゃん・・・」

と、レイカ。

「遠慮してばかりいても、駄目だぞ、レイカ・・・欲しいものは取りに行かないと、実際、取れない。積極的に自分の為に動くんだ」

と、真面目な目をして、タケル。

「レイカは周りがいつもやってくれるから、今まで無理不自由なくやってこれたけど、これからは、違うからな。それをよくよく理解しないとね」

と、タケルは強い目をして、レイカに言う。

「お兄ちゃん・・・」

と、レイカ。


「で、恋に落ちた相手ってのは、どんな奴なんだ?」

と、鈴木タケルはニヤリとしながら、聞いてきた。


カウンターの向こうで、マスターとユキが楽しそうにしゃべっていた。


つづく

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