農工大のジュンイチ達と会った次の日、レイカは大学へ登校した。
春の陽気だったのが嬉しかったレイカは、白ベースのパステルカラーの華やかなワンピース姿だった。
お昼をちょっとだけ回った美術部の部室に顔を出すと、元部長の高橋ユキノ(22)が、いつものように手作りのお弁当を食べようとしていた。
「ユキノさん、一緒にお弁当食べましょう!」
と、レイカも自分のお弁当を広げる。
「あら、レイカ。春らしいワンピース。細身のレイカは、ほんとにワンピースが似合うわねえ」
と、ユキノは思わず笑顔になっている。
「昨日、水野くんといいことがあったんでしょう?・・・白状しちゃいなさいよ、レイカ!」
と、ユキノは自分のセッティングしたデートの結果を楽しみにしていた。
「それが・・・水野さんって、すごく気を使ってくれて・・・お互い後輩をひとり連れて行くことにしよう・・・って、提案されちゃって・・・」
と、レイカは、しっかりと昨日の話を順序よく話そうとした。
「え??・・・水野くんって、確かに、農工大のチカさんが言うように、女性の気持ちのわからないタイプの子のようね・・・ちょっと残念だったわね。レイカ」
と、ユキノは、レイカの気持ちが痛いほどわかるからか、そんな風に言葉にした。
「でもー・・・とっても楽しかったです。彼、気は弱いけど、わたしのこと一生懸命考えてくれてるし、彼なりに一生懸命なんだってわかることが出来たから・・・」
と、レイカは笑顔で報告する。
「そう。それはよかったわね。・・・飲み会での彼を見ると、女性の気持ちもわかってる、かなり大きな大人の男のように思えたんだけどなあ、わたしは・・・」
と、ユキノは言葉にする。
「ええ。実際は、大きいんだと思います。彼・・・ただ、シラフに戻ると、弱い弱い彼に戻っちゃうから、一生懸命なんだと思います。いつも・・・」
と、レイカは言葉にする。
「お酒を飲むと気持ち的に開放されて・・・地が出ているのね、彼・・・でも、相当大きな男よ。彼・・・」
と、ユキノは言葉にする。
「ええ。今回も一緒に飲むことは出来たから・・・同じようなことをアイも言ってました」
と、レイカ。
「そう。アイを連れて行ったの・・・彼女、相当やり手だから・・・甘え上手でちょっとした男なら掌の上で転がすくらいの玉だからね」
と、ユキノ。
「それを知っていたから、連れて行ったんですよ。彼女も彼のこと狙ってたみたいで・・・」
と、レイカ。
「あら。挑戦的なことをするのね。というか、アイなら、自分が勝てると思ったの?」
と、ユキノ。
「それもあるけど、アイの目で水野さんを見て貰って、わたしの感じてることが、本当に正しいことを証明したかったんです」
と、レイカ。
「なるほど・・・で、アイはどう言ってた?水野くんを見て・・・」
と、ユキノ。
「愛すべき男性だって・・・そして、女子なら、彼を開放してやるべきだって・・・」
と、レイカ。
「なるほどね・・・でも、確かにそうだわ・・・女性なら、愛すべき彼を絶対に開放してあげるべきだもの・・・それはわたしも同感」
と、ユキノ。
「そして、こうも言ってくれました。水野さんを一番上手に開放してあげられるのは、わたしだって」
と、レイカは言い、笑顔。
「ふふふ・・・あのアイがそう言うなら、間違いないでしょう。あなたも相当、男性をうまく使うタイプだもんね?」
と、ユキノは、目の前のレイカの顔を見ながら、そう言う。
「あなたに気のある男性を、その気持ちを見越して、うまーく動かしてきたものね・・・あなたは」
と、ユキノはニヤニヤしながら、レイカを見る。
「あーーーー・・・あれは、まあ、そういう気を持ってくれるのは有難いから、相手も動きたいかなーって」
と、レイカは少ししどろもどろ。
「まあ、男たちの気持ちを満足させるのもいいけど、そろそろ本気の恋をしたら・・・って言いたかったから、水野くんに本気の恋をしてるなら、私はいいけどね」
と、ユキノ。
「ええ。これは完全に本気の恋です。完全なる本気の恋に落ちてますから、わたし」
と、レイカ。
「なら、いいわ。リアルお嬢様も、本気になる時期が来たようね」
と、ユキノ。
「はい。わたし、毎日が楽しいんです。生まれて初めてくらいに、毎日が輝いていますから!」
と、レイカ。
「本気の恋をしてるって、ことよ。それは・・・うらやましいわ。レイカが」
と、ユキノは言ってくれる。
「ユキノさんだって、会社に入れば、そういう機会はたくさんありますから」
と、レイカが言うと、
「わたしは、自分を試すために会社に入るの。腰掛けではなく、本気で、自分の仕事にする気だもの。そこは本気なの」
と、ユキノは真面目に返す。
「まあ、わたしのことは、いいわ・・・それより、水野くん・・・本気で落としにいかないと、彼、恋の存在すら、理解しないかもしれないわよ・・・」
と、ユキノはレイカに釘を刺す。
「わかってます。わたしだって、今、わたしに出来る限りの手練手管を使う予定ですから、結果を御覧じろです」
と、レイカは自信ありげに話す。
「あのね・・・あなた、これ、初めて男性を本気で落とすんでしょ?それに女性のことをわからない男性は、ほんとに女性の恋を理解しないからね」
と、ユキノは真面目にアドバイス。
「そ、そうでした・・・でも・・・やれるだけのことはやるつもりですから。わたし」
と、レイカはキラキラ光る目で、真面目にそう言った。
「まあ、レイカの本気の恋が成就することを願っているわ・・・」
と、ユキノは、やさしく、そう言ってくれた。
「でも・・・僕には、愛される資格が、まだ・・・」
レイカはジュンイチのこの言葉が気になっていた。
美術部の部室を辞すると、レイカは家まで歩いて帰ることにした。
「1時間くらいは、歩きたいわ。せっかく春の気候になってきたんだし・・・」
レイカは元々歩くのが好きな子だった。
「名古屋では、よく歩いて食べ物屋さんとか行ったっけ。「あんかけパスタ」が懐かしいわ」
と、レイカは「名古屋めし」を懐かしく思い出していた。
「僕は自分にまだ、価値を感じられないんですよ。だから、女性に愛される資格がまだないんです。・・・特に美しい女性には・・・」
「水野さんはあの時、完全にわたしを意識して言葉を出していた・・・彼は恋愛を怖がっているのかしら」
と、レイカは歩きながら、考えていた。
「つーか、レイカちゃん、パスタ料理、俺のために作ってくれるって言ってたじゃん。それいつの予定?」
「彼はそういう言葉も出している。あれは、彼の本音よね、絶対・・・恋は進めたいけど、恋愛は怖い?・・・そういうことかしら・・・」
と、レイカは考えこんでいる。
「普段の気の小さい彼は、それでも、一番にわたしのことを考えてくれている。それはわかるの・・・」
と、レイカは思っている。
「一生懸命、わたしの為に、気を使ってくれているのは、明白だわ・・・気を使いすぎる程に・・・」
と、レイカは思っている。
「でも、本音では、恋を進めたいと思っている・・・きっとそういうことよね。つまり、私に迷惑がかからないように細心の注意を払って、進めようとしているってことだわ」
と、レイカは結論付ける。
「ふふ。良い結論じゃない。だったら、わたしの方から、攻撃をしかけるのみ、ね」
と、レイカは決意した。
「ああ。桜の蕾が膨らんで来ている!春は、もうすぐだわ!」
と、レイカは上機嫌で、笑顔で歩いて行った。
水野さんの笑顔が見える。目が笑っている、とってもいい笑顔。
わたしを上からのぞき込んでいる?彼、裸だわ・・・え?彼が上に乗ってるの?
わたしも裸だわ・・・わたし、彼に抱かれてる?
下腹部がなにか、もやもやして・・・。
「あ、夢・・・」
レイカは自宅のリビングのソファーで、ワンピース姿のまま、眠っていたのだった。
レイカは下腹部の感触に気づき・・・覗いてみると案の定、濡れていた。
「やだ・・・わたし、夢で濡れちゃうなんて・・・それだけ、彼に抱かれたいのかしら・・・」
レイカはパンツを脱いで、洗面所で水に浸してから洗剤で洗った。
「わたしも大人のオンナになりつつあるのね・・・お姉ちゃんがこんなところ見たら、びっくりしちゃうかも・・・」
と、レイカはくすりと笑った。
「わたし、本気で水野さんに抱かれたいんだ・・・水野さんのアソコ、逞しかったもん・・・妄想かしら・・・」
と、レイカは考える。
「確かに、彼のモノがわたしのヴァギナを刺激していたわ。わたしは、快感を感じていたもの・・・完全に妄想ね・・・」
と、レイカは少し苦笑する。
「リアルお姫様も、本能は抑えきれないのね・・・」
と、パンツを洗いながら、苦笑するレイカだった。
「水野さんに処女を捧げたい・・・わたし・・・」
レイカは密かな想いを言葉にしていた。
「リアルお姫さまは、さ、オナニーとか、しないの?」
高校生の頃、レイカが最も嫌っていた明和東高校一のイケメン、田口ユウ(18)が学校帰りに待ちぶせして、突然言ってきたことがあった。
「・・・」
レイカは怒りと恥ずかしさにいっぱいになりながら、無言で田口ユウを無視して歩いて行った。
「オナニーとか、絶対するよな。だって、オンナなんだから・・・快感が大好きなオンナなんだからさ!」
と、田口ユウは大きな声で背中に浴びせてきた。
レイカは肩をピクリともさせずに、怒りを沈め、冷静に歩き去った。
すぐに土岐田トオル(18)が自転車で追いついてきて、
「お前、変なこと言うなよ。相手を誰だと思っているんだよ」
と、田口ユウに言う。
「姫だから、堂々と言ってあげたんじゃないか。あのオンナだって、本性は、他のオンナと一緒だって、そう言ってやっただけじゃないか」
と、田口ユウは、悪びれもせず、そう答えた。
「姫なんて呼ばれてるけど、結局は、他のオンナとなんら変わらない、普通のオンナだよ。イケメンにエッチされたいって、普段から思っている、普通の女さ」
と、田口ユウは、それだけ言うと、どこかへ立ち去っていった。
土岐田トオルは、困惑しながらも、レイカに追いついて、その言葉をレイカにぶつけてみた。
「わたしは、絶対にオナニーなんか、しないわ。処女を好きなひとに捧げるまでは、綺麗にしておきたいの」
と、レイカは怒ることもなく、冷静に言葉にした。
「彼がしようとしていることは、わかったわ。わたしの心を乱し、わたしを普通のおんなと変わらないと言うことで、自分を信用させる。甘い手だわ」
と、レイカは言った。
「ま、彼はこれからも、性懲りもなく、今と同じような、刺激的な言葉を、わたしに向かって、吐き続けるわ。でも、そんなの、私には意味はないわ」
と、レイカは言う。
「確かに私は九条家のお嬢様であることに引け目を感じてる。でも、これとそれとは、違うわ。私にも大切なものがあるし、嫌いなものは嫌いなの」
と、レイカは言った。
「レイカは、強いな」
とだけ、トオルは言った。
「強くなくちゃ、九条家1000年の血を守れないわ」
と、レイカは言うと、ニコリと笑って、トオルと仲良く家路についた。
「オナニーは決してしないけど、夢を見て快感を感じて、濡れちゃうことは、あるのよね・・・」
と、レイカは高校時代より恋愛体質になっている自分をはっきり感じていた。
リビングのソファーに座りながら、レイカは考え事をしていた。パンツは洗ってから、まだ、新しいパンツを穿いていなかった。
「あの頃は、強かったわ・・・でも、今の私は本気で恋する乙女だもん・・・そういうことがあっても、別に問題はないわよね・・・」
と、思うレイカだった。
「本気で水野さんに、恋してるから、身体もこころも成長しているの。それだけのことよ・・・」
と、言葉にするレイカだった。
レイカは静かに立ち上がると、ワンピースを脱ぐ。
自分の全裸を姿見で、見てみる。
色白の細身の体は均整がとれていた。
胸はCカップで、身長は168センチ。体重は48キロで、スリーサイズは、86-58-84だった。
陰毛は少し濃い印象だった。
「水野さんに抱かれる為に、今まで綺麗にしてきたんだから・・・」
と、レイカは言葉にすると、自分自身を抱きしめてみる。
「水野さん、わたしの裸を見て、感じてくれるかな・・・」
と、言いながら、ため息をつくレイカだった。
「なんだか、ドキドキしてきちゃった・・・シャワーでも、浴びよう・・・また、濡れてきたら、困るもん!」
と、そのまま、シャワーを浴びに風呂場へ行くレイカだった。
乙女が恋する春の日は、のんびりと暮れていった。
(つづく)
→前回へ
→物語の初回へ
→「バレンタインまでにすべき10の事」初回へ
→「ラブ・クリスマス!」初回へ
春の陽気だったのが嬉しかったレイカは、白ベースのパステルカラーの華やかなワンピース姿だった。
お昼をちょっとだけ回った美術部の部室に顔を出すと、元部長の高橋ユキノ(22)が、いつものように手作りのお弁当を食べようとしていた。
「ユキノさん、一緒にお弁当食べましょう!」
と、レイカも自分のお弁当を広げる。
「あら、レイカ。春らしいワンピース。細身のレイカは、ほんとにワンピースが似合うわねえ」
と、ユキノは思わず笑顔になっている。
「昨日、水野くんといいことがあったんでしょう?・・・白状しちゃいなさいよ、レイカ!」
と、ユキノは自分のセッティングしたデートの結果を楽しみにしていた。
「それが・・・水野さんって、すごく気を使ってくれて・・・お互い後輩をひとり連れて行くことにしよう・・・って、提案されちゃって・・・」
と、レイカは、しっかりと昨日の話を順序よく話そうとした。
「え??・・・水野くんって、確かに、農工大のチカさんが言うように、女性の気持ちのわからないタイプの子のようね・・・ちょっと残念だったわね。レイカ」
と、ユキノは、レイカの気持ちが痛いほどわかるからか、そんな風に言葉にした。
「でもー・・・とっても楽しかったです。彼、気は弱いけど、わたしのこと一生懸命考えてくれてるし、彼なりに一生懸命なんだってわかることが出来たから・・・」
と、レイカは笑顔で報告する。
「そう。それはよかったわね。・・・飲み会での彼を見ると、女性の気持ちもわかってる、かなり大きな大人の男のように思えたんだけどなあ、わたしは・・・」
と、ユキノは言葉にする。
「ええ。実際は、大きいんだと思います。彼・・・ただ、シラフに戻ると、弱い弱い彼に戻っちゃうから、一生懸命なんだと思います。いつも・・・」
と、レイカは言葉にする。
「お酒を飲むと気持ち的に開放されて・・・地が出ているのね、彼・・・でも、相当大きな男よ。彼・・・」
と、ユキノは言葉にする。
「ええ。今回も一緒に飲むことは出来たから・・・同じようなことをアイも言ってました」
と、レイカ。
「そう。アイを連れて行ったの・・・彼女、相当やり手だから・・・甘え上手でちょっとした男なら掌の上で転がすくらいの玉だからね」
と、ユキノ。
「それを知っていたから、連れて行ったんですよ。彼女も彼のこと狙ってたみたいで・・・」
と、レイカ。
「あら。挑戦的なことをするのね。というか、アイなら、自分が勝てると思ったの?」
と、ユキノ。
「それもあるけど、アイの目で水野さんを見て貰って、わたしの感じてることが、本当に正しいことを証明したかったんです」
と、レイカ。
「なるほど・・・で、アイはどう言ってた?水野くんを見て・・・」
と、ユキノ。
「愛すべき男性だって・・・そして、女子なら、彼を開放してやるべきだって・・・」
と、レイカ。
「なるほどね・・・でも、確かにそうだわ・・・女性なら、愛すべき彼を絶対に開放してあげるべきだもの・・・それはわたしも同感」
と、ユキノ。
「そして、こうも言ってくれました。水野さんを一番上手に開放してあげられるのは、わたしだって」
と、レイカは言い、笑顔。
「ふふふ・・・あのアイがそう言うなら、間違いないでしょう。あなたも相当、男性をうまく使うタイプだもんね?」
と、ユキノは、目の前のレイカの顔を見ながら、そう言う。
「あなたに気のある男性を、その気持ちを見越して、うまーく動かしてきたものね・・・あなたは」
と、ユキノはニヤニヤしながら、レイカを見る。
「あーーーー・・・あれは、まあ、そういう気を持ってくれるのは有難いから、相手も動きたいかなーって」
と、レイカは少ししどろもどろ。
「まあ、男たちの気持ちを満足させるのもいいけど、そろそろ本気の恋をしたら・・・って言いたかったから、水野くんに本気の恋をしてるなら、私はいいけどね」
と、ユキノ。
「ええ。これは完全に本気の恋です。完全なる本気の恋に落ちてますから、わたし」
と、レイカ。
「なら、いいわ。リアルお嬢様も、本気になる時期が来たようね」
と、ユキノ。
「はい。わたし、毎日が楽しいんです。生まれて初めてくらいに、毎日が輝いていますから!」
と、レイカ。
「本気の恋をしてるって、ことよ。それは・・・うらやましいわ。レイカが」
と、ユキノは言ってくれる。
「ユキノさんだって、会社に入れば、そういう機会はたくさんありますから」
と、レイカが言うと、
「わたしは、自分を試すために会社に入るの。腰掛けではなく、本気で、自分の仕事にする気だもの。そこは本気なの」
と、ユキノは真面目に返す。
「まあ、わたしのことは、いいわ・・・それより、水野くん・・・本気で落としにいかないと、彼、恋の存在すら、理解しないかもしれないわよ・・・」
と、ユキノはレイカに釘を刺す。
「わかってます。わたしだって、今、わたしに出来る限りの手練手管を使う予定ですから、結果を御覧じろです」
と、レイカは自信ありげに話す。
「あのね・・・あなた、これ、初めて男性を本気で落とすんでしょ?それに女性のことをわからない男性は、ほんとに女性の恋を理解しないからね」
と、ユキノは真面目にアドバイス。
「そ、そうでした・・・でも・・・やれるだけのことはやるつもりですから。わたし」
と、レイカはキラキラ光る目で、真面目にそう言った。
「まあ、レイカの本気の恋が成就することを願っているわ・・・」
と、ユキノは、やさしく、そう言ってくれた。
「でも・・・僕には、愛される資格が、まだ・・・」
レイカはジュンイチのこの言葉が気になっていた。
美術部の部室を辞すると、レイカは家まで歩いて帰ることにした。
「1時間くらいは、歩きたいわ。せっかく春の気候になってきたんだし・・・」
レイカは元々歩くのが好きな子だった。
「名古屋では、よく歩いて食べ物屋さんとか行ったっけ。「あんかけパスタ」が懐かしいわ」
と、レイカは「名古屋めし」を懐かしく思い出していた。
「僕は自分にまだ、価値を感じられないんですよ。だから、女性に愛される資格がまだないんです。・・・特に美しい女性には・・・」
「水野さんはあの時、完全にわたしを意識して言葉を出していた・・・彼は恋愛を怖がっているのかしら」
と、レイカは歩きながら、考えていた。
「つーか、レイカちゃん、パスタ料理、俺のために作ってくれるって言ってたじゃん。それいつの予定?」
「彼はそういう言葉も出している。あれは、彼の本音よね、絶対・・・恋は進めたいけど、恋愛は怖い?・・・そういうことかしら・・・」
と、レイカは考えこんでいる。
「普段の気の小さい彼は、それでも、一番にわたしのことを考えてくれている。それはわかるの・・・」
と、レイカは思っている。
「一生懸命、わたしの為に、気を使ってくれているのは、明白だわ・・・気を使いすぎる程に・・・」
と、レイカは思っている。
「でも、本音では、恋を進めたいと思っている・・・きっとそういうことよね。つまり、私に迷惑がかからないように細心の注意を払って、進めようとしているってことだわ」
と、レイカは結論付ける。
「ふふ。良い結論じゃない。だったら、わたしの方から、攻撃をしかけるのみ、ね」
と、レイカは決意した。
「ああ。桜の蕾が膨らんで来ている!春は、もうすぐだわ!」
と、レイカは上機嫌で、笑顔で歩いて行った。
水野さんの笑顔が見える。目が笑っている、とってもいい笑顔。
わたしを上からのぞき込んでいる?彼、裸だわ・・・え?彼が上に乗ってるの?
わたしも裸だわ・・・わたし、彼に抱かれてる?
下腹部がなにか、もやもやして・・・。
「あ、夢・・・」
レイカは自宅のリビングのソファーで、ワンピース姿のまま、眠っていたのだった。
レイカは下腹部の感触に気づき・・・覗いてみると案の定、濡れていた。
「やだ・・・わたし、夢で濡れちゃうなんて・・・それだけ、彼に抱かれたいのかしら・・・」
レイカはパンツを脱いで、洗面所で水に浸してから洗剤で洗った。
「わたしも大人のオンナになりつつあるのね・・・お姉ちゃんがこんなところ見たら、びっくりしちゃうかも・・・」
と、レイカはくすりと笑った。
「わたし、本気で水野さんに抱かれたいんだ・・・水野さんのアソコ、逞しかったもん・・・妄想かしら・・・」
と、レイカは考える。
「確かに、彼のモノがわたしのヴァギナを刺激していたわ。わたしは、快感を感じていたもの・・・完全に妄想ね・・・」
と、レイカは少し苦笑する。
「リアルお姫様も、本能は抑えきれないのね・・・」
と、パンツを洗いながら、苦笑するレイカだった。
「水野さんに処女を捧げたい・・・わたし・・・」
レイカは密かな想いを言葉にしていた。
「リアルお姫さまは、さ、オナニーとか、しないの?」
高校生の頃、レイカが最も嫌っていた明和東高校一のイケメン、田口ユウ(18)が学校帰りに待ちぶせして、突然言ってきたことがあった。
「・・・」
レイカは怒りと恥ずかしさにいっぱいになりながら、無言で田口ユウを無視して歩いて行った。
「オナニーとか、絶対するよな。だって、オンナなんだから・・・快感が大好きなオンナなんだからさ!」
と、田口ユウは大きな声で背中に浴びせてきた。
レイカは肩をピクリともさせずに、怒りを沈め、冷静に歩き去った。
すぐに土岐田トオル(18)が自転車で追いついてきて、
「お前、変なこと言うなよ。相手を誰だと思っているんだよ」
と、田口ユウに言う。
「姫だから、堂々と言ってあげたんじゃないか。あのオンナだって、本性は、他のオンナと一緒だって、そう言ってやっただけじゃないか」
と、田口ユウは、悪びれもせず、そう答えた。
「姫なんて呼ばれてるけど、結局は、他のオンナとなんら変わらない、普通のオンナだよ。イケメンにエッチされたいって、普段から思っている、普通の女さ」
と、田口ユウは、それだけ言うと、どこかへ立ち去っていった。
土岐田トオルは、困惑しながらも、レイカに追いついて、その言葉をレイカにぶつけてみた。
「わたしは、絶対にオナニーなんか、しないわ。処女を好きなひとに捧げるまでは、綺麗にしておきたいの」
と、レイカは怒ることもなく、冷静に言葉にした。
「彼がしようとしていることは、わかったわ。わたしの心を乱し、わたしを普通のおんなと変わらないと言うことで、自分を信用させる。甘い手だわ」
と、レイカは言った。
「ま、彼はこれからも、性懲りもなく、今と同じような、刺激的な言葉を、わたしに向かって、吐き続けるわ。でも、そんなの、私には意味はないわ」
と、レイカは言う。
「確かに私は九条家のお嬢様であることに引け目を感じてる。でも、これとそれとは、違うわ。私にも大切なものがあるし、嫌いなものは嫌いなの」
と、レイカは言った。
「レイカは、強いな」
とだけ、トオルは言った。
「強くなくちゃ、九条家1000年の血を守れないわ」
と、レイカは言うと、ニコリと笑って、トオルと仲良く家路についた。
「オナニーは決してしないけど、夢を見て快感を感じて、濡れちゃうことは、あるのよね・・・」
と、レイカは高校時代より恋愛体質になっている自分をはっきり感じていた。
リビングのソファーに座りながら、レイカは考え事をしていた。パンツは洗ってから、まだ、新しいパンツを穿いていなかった。
「あの頃は、強かったわ・・・でも、今の私は本気で恋する乙女だもん・・・そういうことがあっても、別に問題はないわよね・・・」
と、思うレイカだった。
「本気で水野さんに、恋してるから、身体もこころも成長しているの。それだけのことよ・・・」
と、言葉にするレイカだった。
レイカは静かに立ち上がると、ワンピースを脱ぐ。
自分の全裸を姿見で、見てみる。
色白の細身の体は均整がとれていた。
胸はCカップで、身長は168センチ。体重は48キロで、スリーサイズは、86-58-84だった。
陰毛は少し濃い印象だった。
「水野さんに抱かれる為に、今まで綺麗にしてきたんだから・・・」
と、レイカは言葉にすると、自分自身を抱きしめてみる。
「水野さん、わたしの裸を見て、感じてくれるかな・・・」
と、言いながら、ため息をつくレイカだった。
「なんだか、ドキドキしてきちゃった・・・シャワーでも、浴びよう・・・また、濡れてきたら、困るもん!」
と、そのまま、シャワーを浴びに風呂場へ行くレイカだった。
乙女が恋する春の日は、のんびりと暮れていった。
(つづく)
→前回へ
→物語の初回へ
→「バレンタインまでにすべき10の事」初回へ
→「ラブ・クリスマス!」初回へ