正月も無事過ぎた、1月6日の午後3時頃。東堂アイリと鈴木タケル、そして、アミとマキが新宿にあるカフェ「ラッフェン」に集っていた。
「まさか、お3人と平日の午後3時に会えるとは思いませんでしたね」
と、鈴木タケルは、にんまりとしながら、暖かいキャラメルマキアートを飲んでいた。
「わたしとマキはすぐ近くで取材があったし、アミは今日はお休みとってるから」
と、アイリは手短に説明・・・相変わらずテキパキしている。
「僕は今日はお休み・・・なにしろ、正月も仕事だったから、代休だね。いわゆる」
と、タケルはのんびり話す。
「空港というところは、年末年始は書き入れ時なんでね・・・自然、エラーも増えるんで、我々システムエンジニアは、現場待機になっちゃうんだよ」
と、タケルは自分の仕事の大変さについて説明していた。
「ほんと、大変ね、タケルくん・・・あのイブ以来、休んでいないんだって?」
と、マキは、にこやかにタケルに話しかける。
「そういうこと・・・あのイブの夜も、案外疲れたけどね・・・な、アイリ」
と、タケルは嬉しそうに話す。
「あらあら・・・湘南ベイヒルトンホテルのロイヤルスイートは、どんな使い心地だった?」
と、やわらかな笑顔で聞いてあげるアミだった。
「けっこう、ゴージャスでやわらかいベッドだったよな、アイリ」
と、タケルもやわらかな表情だ。
「そうね・・・広いベッドで、びっくりしちゃった・・・」
と、アイリも鷹揚に答えている。
「でもさ、回らなかったよな・・・ベッド・・・」
と、タケルは笑顔で話している。
「もう・・」「タケルくんったら・・・」
と、マキとアミが、少し赤くなりながら、ツッコミを入れている。
「まあ、いつものタケルだわ・・・」
と、アイリは嬉しそうな表情だ。
「じゃ、私達は、お仕事してきます。またね」「またねー」
と、アイリとマキが仕事復帰・・・今日はお休みのタケルとアミは、まだ、のんびりしていくらしい。
「アミちゃんは今日はなぜに、お休みなの?」
と、タケルはなんの気なしに聞いている。
「休暇が溜まっちゃってて・・・妹のマミも今日休暇とるって言ったから、二人で久しぶりに飲もうかって話にもなったの」
と、アミはしっかり説明している。
「へー、そういうことなんだ。マミちゃんって、どんな子なの?」
と、タケルはアミの妹に興味があるらしい。
「そうねー・・・一言で言えば、わたしの性格に似てるけど、わたしを少し臆病にした感じかな」
と、アミは笑顔で話す。
「へー・・・アミちゃんを臆病に、ねー。アミちゃんは何にでも好奇心旺盛だし、恋愛にも体当たりって感じだけど・・・妹ちゃんは臆病なの?」
と、タケル。
「臆病過ぎる程、臆病じゃないけど・・・少し奥手かな・・・」
と、アミ。
「彼女、そろそろ来る頃だから・・・タケルくんなら、自分の目でマミの性格を見抜けると思うわ」
と、アミ。
「じゃあ、ちょっとくらい話してから、帰ろうか・・・姉妹の飲みの邪魔をしちゃいけないしね」
と、タケル。
「ほんとだったら、ずっと居て欲しいけど・・・マミが気を使うといけないから、今日は涙を飲んで、妹をとるわ」
と、アミ。
と、そこへ、アミの妹、嶋田マミ(26)が登場する。
赤い度付きのメガネに、髪の毛はクビくらいの長さの、少し寸胴気味な女性だった。身長は160センチくらいだった。
「あら、お姉さん・・・こちらの男性は、どんなひとなんですか?」
と、マミはすぐに反応。
「こちら、アイリのフィアンセの鈴木タケルさんなの・・・マミもアイリは、知ってるわよねー」
と、アミ。
「はい、もちろん、よく知ってますけど・・・そうですか、アイリさんの旦那さんになるひとですか・・・」
と、マミ。
「初めまして・・・アイリのフィアンセの鈴木タケルです。八津菱電機でシステムエンジニアをやっています」
と、タケルはニヤリとした表情で、マミと握手する。
「あ、ども。嶋田アミの妹で、女性雑誌の編集をやってます、嶋田マミと言います。よろしくお願いします」
と、マミはタケルの手を両手で押し抱くと、深く挨拶しながらおでこをタケルの手に押し付けた。
「いやあ、こちらこそ、どうもどうも」
と、タケルも少しうろたえ気味。
「だいたい、わかったでしょ?こんな妹なの・・・だから、かわいくてしょうがないの・・・」
と、アミも少し困ったような、やわらかい表情だ。
「うん。でも、いい感じだよ。なんか、男性には、モテるタイプなんじゃないかなー」
と、タケルが言うと、
「そう思うでしょ?でも、本人に自信がこれっぽっちもないもんだから・・・なんとなく結婚には適さない男性を選んじゃうのよ・・・」
と、アミが苦言を呈している。
「いやー、そんなこと言ったってお姉さん・・・わたしだって、これでも、がんばっているつもりなんですよ・・・」
と、マミ。
「それは、わかるけど・・・今年はバレンタイン・デーまでに、いい男を探して、告白するくらいの勢いが欲しいわねー」
と、アミ。
「はい。それはお姉さんに言われたら、それはがんばります。がんばりますけど・・・わたしになんて、なびいてくれる男性がいるかどうか・・・」
と、マミは自信なさげ。
「でも、マミちゃんさー。そういう自信無さげな所に惹かれる男性だって、いるもんだよ。仕事の出来る男は、そういう女性を守りたいと思うものさ・・・」
と、タケルも言葉を出す。
「そうでしょうか・・・そんなもんでしょうか・・・」
と、赤いメガネをずりあげながら、マミは疑問を払拭出来ない。
「そうか・・・だったら、こうしましょう。タケルくんは何でも出来るから・・・このマミに、バレンタインまでに男性に告白出来る強い自信をつけてあげてくれない?」
と、アミはタケルに提案している。
「え?この俺が?」
と、タケルはびっくりしている。
「そうよ。そうだわ・・・タケルくんなら、マミをわたし以上に、自分に自身のある一流の女性に仕上げてくれるわ・・・ね、それくらい出来るでしょう?」
と、アミがはしゃぎながら言うと、
「今年のバレンタインって・・・あと一ヶ月余りだぜ・・・」
と、タケルが言うと、
「タケルくんは、ハードルが高ければ、高いほど、燃えるんじゃなかったの?」
と、アミが言う。
「それは、まあ、そうだけど・・・」
と、タケルはマミを見る。
「どうでしょうか・・・タケルさん・・・」
と、メガネをずり上げながら、タケルを見るマミ。
「わかった。俺も男だ。乗りかかった船だ・・・やってみよう、マミちゃん」
と、タケルは、マミの目を見つめながら、コクリと頷くと、その頷きに合わせるように、マミもコクリと頷く。
「よかった。タケルくんなら、あなたを絶対に素敵な女性に変えてくれるわ。今以上に素敵なマミに」
と、アミが言うと、マミもなんだから、嬉しそうな表情になるのだった。
「って、言ったって・・・俺、そんなの初めてだぜ・・・」
と、急に真面目な表情になる、鈴木タケルだった。
アミとマミは、嬉しそうな表情で、ひとり訝しがる鈴木タケルだった。
「っつー話なんだけどさ」
と、タケルは金曜日の夜、アイリのマンションで、直接、アイリに打ち明けていた。
「そうか・・・アミの妹のマミちゃんね・・・わたしも知っているけど、いい子よね。性格は少しおもしろいっていうか、のらりくらりなところがあるけど・・・」
と、マミを知るアイリは言葉に出す。
「あのさ、まず、女性である、アイリに聞きたいんだけど、基本、女性は男性にモテたいもんだよな?」
と、タケルはアイリに直接聞く。
「そうね。もちろん、そう。タケルみたいな素敵な男性に、いつか嫁ぎたい、そんな男性の子供を産みたい、そして、育てたい・・・大抵の女性はそう思ってるわ」
と、アイリ。
「そうか。まず、そこが基本だから・・・そこが明らかになれば・・・まあ、とにかく、俺なりのやり方でやってみるかな・・・」
と、タケル。
「タケルにアイデアは、あるの?・・・その、マキちゃんを素敵にする、具体的な方法みたいな、ものは」
と、アイリ。
「まあね・・・俺だって、高校生の頃とか、全然モテなくて、悩んだ方だからね。そこから抜け出してきた過去があるから・・・それをやれば、いいかなって考えている」
と、タケル。
「ふ・・・そうね。タケルって高校時代とか、大学生の頃に、ちゃんと苦労を経験しているから・・・今が素敵なんだもんね」
と、アイリはやわらかい表情。
「まあね・・・若い頃は苦労は買ってでもしろ・・・なんて言われたけど、僕の場合、高校の頃から、いきなりネガティブだったからなあ・・・」
と、タケルもやわらかい表情。
「今はその経験が僕の尊い味方だよ・・・「ネガティブをポジティブに変えていける力」そのものだからね」
と、タケルは自信のある表情だ。
「ただ・・・」
と、タケルは少し曇りがちな表情になる。
「それは男性を素敵に変えていく、言わば男性専用の方法なんだ・・・」
と、タケルは考えこむ・・・。
「だから、アイリも今回は助けてくれよ・・・他ならぬ、アイリの親友アミちゃんの願いごとなんだから・・・」
と、タケルが言うと、
「そうね・・・それはもちろん、協力は惜しまないわ」
と、アイリも笑顔で言う。
「となると・・・まずは、アミちゃんと僕ら二人で話し合う必要があるな・・・マミちゃんについて・・・」
と、タケルが言うと、アイリもコクリと頷いていた。
1月上旬の土曜日の午前11時半頃。アミとマキがアイリのマンションに顔を出していた。
「ごめんねー、うちのマミのことで・・・こんなに集まって貰っちゃって・・・」
と、アミはアイリとタケル、マキに謝っている。
「いいわ、別にわたし、今日一日暇だったし・・・タケルくんとも会えるし、そっちの方がいいもの!」
と、マキは上機嫌だった。
「マキちゃんもマミちゃんのことは知っているって言うし・・・たくさんの女性の意見を聞きたいからさ」
と、タケル。
「でも、マミちゃんって、女性から見ると、ほんとにかわいいんだけどな・・・男性はなぜ彼女の良さがわからないかなー」
と、マキは自分なりの意見を主張している。
「わたしも、同意見だわ。マミちゃんって、女性としての魅力をたくさん持っているのに・・・男性はその魅力に気づかないだけなのかしら・・・」
と、アイリ。
「私は姉だから・・・やっぱり贔屓目に見ちゃうのよ・・・マミのこと、かわいく感じちゃうし・・・だから逆に男性である、タケルくんに、マミを素敵な女性にして欲しいの」
と、アミ。
「じゃあさ、具体的に彼女の魅力について、言葉にしてくれない?3人さん・・・」
と、タケル。
「うーん、まず、マミちゃんの雰囲気よね・・・「わたし女性として魅力ないんですぅー」って言ったりして、ちょっと自信の無さげなところとか、キュンキュンしちゃう」
と、マキ。
「うん。わたしもそこは大きいかな。「それは私だって男性にモテたいですよ、でも・・・」なんて感じて、メガネとか、ずり上げられたりすると、わたし、もうダメ」
と、アイリも笑顔で、マミを評価している。
「うん。わかるわかる・・・「お姉さん・・・それは私だってお姉さんの言うことは聞きたいですよ。でも・・・」なんて思いつめた表情で言われたら、わたしも、もうダメ」
と、アミも笑顔で、マミのことを評価している。
「ふーん・・・それっていわゆる「萌え」ってことね」
と、タケルは、ニヤリと笑いながら言葉にする。
「つまり、男性がドジっ子に惹かれる理由と同じで、男性の場合、父性本能を攻撃されるんだけど、女性の場合は、マミちゃんに、母性本能を攻撃されてるんだ」
と、タケルはさらりと読み解いてしまう。
「確かに「ドジっ子」の恋愛攻撃力は高い。だけど、「ドジっ子」攻撃には、最大の弱点がある・・・そこが問題なんだ」
と、タケルはひとりごちた。
「最大の弱点って、何なの?」
と、アイリが興味深そうに聞くと、
「それはね・・・」
と、笑顔で話し始めるタケルだった。
週末はまだ、始まったばかりだった。
(つづく)
→「ラブ・クリスマス!」初回へ
「まさか、お3人と平日の午後3時に会えるとは思いませんでしたね」
と、鈴木タケルは、にんまりとしながら、暖かいキャラメルマキアートを飲んでいた。
「わたしとマキはすぐ近くで取材があったし、アミは今日はお休みとってるから」
と、アイリは手短に説明・・・相変わらずテキパキしている。
「僕は今日はお休み・・・なにしろ、正月も仕事だったから、代休だね。いわゆる」
と、タケルはのんびり話す。
「空港というところは、年末年始は書き入れ時なんでね・・・自然、エラーも増えるんで、我々システムエンジニアは、現場待機になっちゃうんだよ」
と、タケルは自分の仕事の大変さについて説明していた。
「ほんと、大変ね、タケルくん・・・あのイブ以来、休んでいないんだって?」
と、マキは、にこやかにタケルに話しかける。
「そういうこと・・・あのイブの夜も、案外疲れたけどね・・・な、アイリ」
と、タケルは嬉しそうに話す。
「あらあら・・・湘南ベイヒルトンホテルのロイヤルスイートは、どんな使い心地だった?」
と、やわらかな笑顔で聞いてあげるアミだった。
「けっこう、ゴージャスでやわらかいベッドだったよな、アイリ」
と、タケルもやわらかな表情だ。
「そうね・・・広いベッドで、びっくりしちゃった・・・」
と、アイリも鷹揚に答えている。
「でもさ、回らなかったよな・・・ベッド・・・」
と、タケルは笑顔で話している。
「もう・・」「タケルくんったら・・・」
と、マキとアミが、少し赤くなりながら、ツッコミを入れている。
「まあ、いつものタケルだわ・・・」
と、アイリは嬉しそうな表情だ。
「じゃ、私達は、お仕事してきます。またね」「またねー」
と、アイリとマキが仕事復帰・・・今日はお休みのタケルとアミは、まだ、のんびりしていくらしい。
「アミちゃんは今日はなぜに、お休みなの?」
と、タケルはなんの気なしに聞いている。
「休暇が溜まっちゃってて・・・妹のマミも今日休暇とるって言ったから、二人で久しぶりに飲もうかって話にもなったの」
と、アミはしっかり説明している。
「へー、そういうことなんだ。マミちゃんって、どんな子なの?」
と、タケルはアミの妹に興味があるらしい。
「そうねー・・・一言で言えば、わたしの性格に似てるけど、わたしを少し臆病にした感じかな」
と、アミは笑顔で話す。
「へー・・・アミちゃんを臆病に、ねー。アミちゃんは何にでも好奇心旺盛だし、恋愛にも体当たりって感じだけど・・・妹ちゃんは臆病なの?」
と、タケル。
「臆病過ぎる程、臆病じゃないけど・・・少し奥手かな・・・」
と、アミ。
「彼女、そろそろ来る頃だから・・・タケルくんなら、自分の目でマミの性格を見抜けると思うわ」
と、アミ。
「じゃあ、ちょっとくらい話してから、帰ろうか・・・姉妹の飲みの邪魔をしちゃいけないしね」
と、タケル。
「ほんとだったら、ずっと居て欲しいけど・・・マミが気を使うといけないから、今日は涙を飲んで、妹をとるわ」
と、アミ。
と、そこへ、アミの妹、嶋田マミ(26)が登場する。
赤い度付きのメガネに、髪の毛はクビくらいの長さの、少し寸胴気味な女性だった。身長は160センチくらいだった。
「あら、お姉さん・・・こちらの男性は、どんなひとなんですか?」
と、マミはすぐに反応。
「こちら、アイリのフィアンセの鈴木タケルさんなの・・・マミもアイリは、知ってるわよねー」
と、アミ。
「はい、もちろん、よく知ってますけど・・・そうですか、アイリさんの旦那さんになるひとですか・・・」
と、マミ。
「初めまして・・・アイリのフィアンセの鈴木タケルです。八津菱電機でシステムエンジニアをやっています」
と、タケルはニヤリとした表情で、マミと握手する。
「あ、ども。嶋田アミの妹で、女性雑誌の編集をやってます、嶋田マミと言います。よろしくお願いします」
と、マミはタケルの手を両手で押し抱くと、深く挨拶しながらおでこをタケルの手に押し付けた。
「いやあ、こちらこそ、どうもどうも」
と、タケルも少しうろたえ気味。
「だいたい、わかったでしょ?こんな妹なの・・・だから、かわいくてしょうがないの・・・」
と、アミも少し困ったような、やわらかい表情だ。
「うん。でも、いい感じだよ。なんか、男性には、モテるタイプなんじゃないかなー」
と、タケルが言うと、
「そう思うでしょ?でも、本人に自信がこれっぽっちもないもんだから・・・なんとなく結婚には適さない男性を選んじゃうのよ・・・」
と、アミが苦言を呈している。
「いやー、そんなこと言ったってお姉さん・・・わたしだって、これでも、がんばっているつもりなんですよ・・・」
と、マミ。
「それは、わかるけど・・・今年はバレンタイン・デーまでに、いい男を探して、告白するくらいの勢いが欲しいわねー」
と、アミ。
「はい。それはお姉さんに言われたら、それはがんばります。がんばりますけど・・・わたしになんて、なびいてくれる男性がいるかどうか・・・」
と、マミは自信なさげ。
「でも、マミちゃんさー。そういう自信無さげな所に惹かれる男性だって、いるもんだよ。仕事の出来る男は、そういう女性を守りたいと思うものさ・・・」
と、タケルも言葉を出す。
「そうでしょうか・・・そんなもんでしょうか・・・」
と、赤いメガネをずりあげながら、マミは疑問を払拭出来ない。
「そうか・・・だったら、こうしましょう。タケルくんは何でも出来るから・・・このマミに、バレンタインまでに男性に告白出来る強い自信をつけてあげてくれない?」
と、アミはタケルに提案している。
「え?この俺が?」
と、タケルはびっくりしている。
「そうよ。そうだわ・・・タケルくんなら、マミをわたし以上に、自分に自身のある一流の女性に仕上げてくれるわ・・・ね、それくらい出来るでしょう?」
と、アミがはしゃぎながら言うと、
「今年のバレンタインって・・・あと一ヶ月余りだぜ・・・」
と、タケルが言うと、
「タケルくんは、ハードルが高ければ、高いほど、燃えるんじゃなかったの?」
と、アミが言う。
「それは、まあ、そうだけど・・・」
と、タケルはマミを見る。
「どうでしょうか・・・タケルさん・・・」
と、メガネをずり上げながら、タケルを見るマミ。
「わかった。俺も男だ。乗りかかった船だ・・・やってみよう、マミちゃん」
と、タケルは、マミの目を見つめながら、コクリと頷くと、その頷きに合わせるように、マミもコクリと頷く。
「よかった。タケルくんなら、あなたを絶対に素敵な女性に変えてくれるわ。今以上に素敵なマミに」
と、アミが言うと、マミもなんだから、嬉しそうな表情になるのだった。
「って、言ったって・・・俺、そんなの初めてだぜ・・・」
と、急に真面目な表情になる、鈴木タケルだった。
アミとマミは、嬉しそうな表情で、ひとり訝しがる鈴木タケルだった。
「っつー話なんだけどさ」
と、タケルは金曜日の夜、アイリのマンションで、直接、アイリに打ち明けていた。
「そうか・・・アミの妹のマミちゃんね・・・わたしも知っているけど、いい子よね。性格は少しおもしろいっていうか、のらりくらりなところがあるけど・・・」
と、マミを知るアイリは言葉に出す。
「あのさ、まず、女性である、アイリに聞きたいんだけど、基本、女性は男性にモテたいもんだよな?」
と、タケルはアイリに直接聞く。
「そうね。もちろん、そう。タケルみたいな素敵な男性に、いつか嫁ぎたい、そんな男性の子供を産みたい、そして、育てたい・・・大抵の女性はそう思ってるわ」
と、アイリ。
「そうか。まず、そこが基本だから・・・そこが明らかになれば・・・まあ、とにかく、俺なりのやり方でやってみるかな・・・」
と、タケル。
「タケルにアイデアは、あるの?・・・その、マキちゃんを素敵にする、具体的な方法みたいな、ものは」
と、アイリ。
「まあね・・・俺だって、高校生の頃とか、全然モテなくて、悩んだ方だからね。そこから抜け出してきた過去があるから・・・それをやれば、いいかなって考えている」
と、タケル。
「ふ・・・そうね。タケルって高校時代とか、大学生の頃に、ちゃんと苦労を経験しているから・・・今が素敵なんだもんね」
と、アイリはやわらかい表情。
「まあね・・・若い頃は苦労は買ってでもしろ・・・なんて言われたけど、僕の場合、高校の頃から、いきなりネガティブだったからなあ・・・」
と、タケルもやわらかい表情。
「今はその経験が僕の尊い味方だよ・・・「ネガティブをポジティブに変えていける力」そのものだからね」
と、タケルは自信のある表情だ。
「ただ・・・」
と、タケルは少し曇りがちな表情になる。
「それは男性を素敵に変えていく、言わば男性専用の方法なんだ・・・」
と、タケルは考えこむ・・・。
「だから、アイリも今回は助けてくれよ・・・他ならぬ、アイリの親友アミちゃんの願いごとなんだから・・・」
と、タケルが言うと、
「そうね・・・それはもちろん、協力は惜しまないわ」
と、アイリも笑顔で言う。
「となると・・・まずは、アミちゃんと僕ら二人で話し合う必要があるな・・・マミちゃんについて・・・」
と、タケルが言うと、アイリもコクリと頷いていた。
1月上旬の土曜日の午前11時半頃。アミとマキがアイリのマンションに顔を出していた。
「ごめんねー、うちのマミのことで・・・こんなに集まって貰っちゃって・・・」
と、アミはアイリとタケル、マキに謝っている。
「いいわ、別にわたし、今日一日暇だったし・・・タケルくんとも会えるし、そっちの方がいいもの!」
と、マキは上機嫌だった。
「マキちゃんもマミちゃんのことは知っているって言うし・・・たくさんの女性の意見を聞きたいからさ」
と、タケル。
「でも、マミちゃんって、女性から見ると、ほんとにかわいいんだけどな・・・男性はなぜ彼女の良さがわからないかなー」
と、マキは自分なりの意見を主張している。
「わたしも、同意見だわ。マミちゃんって、女性としての魅力をたくさん持っているのに・・・男性はその魅力に気づかないだけなのかしら・・・」
と、アイリ。
「私は姉だから・・・やっぱり贔屓目に見ちゃうのよ・・・マミのこと、かわいく感じちゃうし・・・だから逆に男性である、タケルくんに、マミを素敵な女性にして欲しいの」
と、アミ。
「じゃあさ、具体的に彼女の魅力について、言葉にしてくれない?3人さん・・・」
と、タケル。
「うーん、まず、マミちゃんの雰囲気よね・・・「わたし女性として魅力ないんですぅー」って言ったりして、ちょっと自信の無さげなところとか、キュンキュンしちゃう」
と、マキ。
「うん。わたしもそこは大きいかな。「それは私だって男性にモテたいですよ、でも・・・」なんて感じて、メガネとか、ずり上げられたりすると、わたし、もうダメ」
と、アイリも笑顔で、マミを評価している。
「うん。わかるわかる・・・「お姉さん・・・それは私だってお姉さんの言うことは聞きたいですよ。でも・・・」なんて思いつめた表情で言われたら、わたしも、もうダメ」
と、アミも笑顔で、マミのことを評価している。
「ふーん・・・それっていわゆる「萌え」ってことね」
と、タケルは、ニヤリと笑いながら言葉にする。
「つまり、男性がドジっ子に惹かれる理由と同じで、男性の場合、父性本能を攻撃されるんだけど、女性の場合は、マミちゃんに、母性本能を攻撃されてるんだ」
と、タケルはさらりと読み解いてしまう。
「確かに「ドジっ子」の恋愛攻撃力は高い。だけど、「ドジっ子」攻撃には、最大の弱点がある・・・そこが問題なんだ」
と、タケルはひとりごちた。
「最大の弱点って、何なの?」
と、アイリが興味深そうに聞くと、
「それはね・・・」
と、笑顔で話し始めるタケルだった。
週末はまだ、始まったばかりだった。
(つづく)
→「ラブ・クリスマス!」初回へ