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「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(12)

2013年12月11日 | 今の物語
えー、江ノ島と僕のロードレーサーですね。塗装は特注でフェラーリレッドを頼みました。

デザインも僕がやったんですけどね。今でも現役です。こいつ。



こんな世界の話です。懐かしいな・・。


日曜日の夕方・・・江ノ島の西浜には、鈴木サトルの姿があった。


近くのコンビニで500ml入りの缶ビールを4本といかくんとうまい棒をいくつか買ったサトルは江ノ島を見ながら、西浜でビールを飲んでいた。

「こうやって、月見ながら二人でビール飲んだこともあったっけ・・・」

と、サトルはつぶやく。

「こうゆう、安っちい飲み会も、あいつ嫌いじゃ無かったもんな。つーか、むしろ好きだったよな・・・」

と、サトルはつぶやいている。

「ミカさんは大人っぽいけど、ミクは、こういう子供っぽい遊びが好きだった・・・」

と、サトルは江ノ島を見ながら、ビールを飲み、つぶやいている。


「あのー、僕、自転車やってみたくて・・・ここなら、いろいろ揃えられるって聞いたんで・・・」

と、25歳のサトルが、葉山の自転車屋「Bonne route」に顔を見せたのは、3月下旬の春が始まる頃の季節だった。

その時、店番をしていたのが、ミクだった。その店はミクの実家の店だった。

「これから、始められるんですか?」

と、長い髪の毛の美しい、すらりとした肢体の美しい御手洗ミク(29)は、初心者の男性ということを頭に入れながら、流れるように説明していく。

「資金的には、どれくらいを考えていらっしゃるんですか?まあ、自転車は揃えるべきアイテムが結構あるんですよね・・・」

と、ミクはそう言いながらも、自転車のカタログを出してきて説明する。

「うちとしては、エントリーモデルとして、ティレックのこのあたりのモデルを推奨しています。これなら、レースにも出れますし、十分戦えるので・・・」

と、ミクはティレックの18万円のモデルを指し示していた。

「資金的には、25万円オーバーくらいまで考えています。ウェアとかメットなども入れて・・・」

と、サトルは言いながら、ミクと相談してズバズバ決めていく。

「決断、速いのね?」

と、ミクが笑顔になると、

「社会に出た男は、こうでなくっちゃ!」

と、サトルが笑顔で言った・・・その時、ミクの目がやさしく笑った・・・。


「アイウェアは別途買ったんだっけ、ま、10万円近くしたからなあ・・・最初はメガネ姿で・・・恥ずかしかったっけ・・・」

と、江ノ島を見ながら、缶ビールを飲み、いろいろ思い出しているサトルだった。


二人は毎週のように会って話しているうちに意気投合し・・・ミクがロードレーサー初心者のサトルを鍛えてくれるようになった。


サイクルウェア姿のミクはとてもチャーミングで、美しかった。

「わたし、結構イケてるでしょ?もう、29歳だけどねー」

と、笑うミクはとても29歳には見えなかった。

「三浦半島を南下してトレーニングしましょ。途中、佐島漁港で、海鮮丼でも食べましょ。あそこ鮮度抜群だから」

と、笑顔のミクは楽しそうに鍛えてくれた。

「ミクさんは、自転車は何年くらいやってるんですか?やっぱり子供の時から?」

と、サトルはミクの後ろについて走りながら、そんな感じで話しかける。

「最初にレーサーに乗ったのは、小学生の頃ね・・・確か父が子供用に作ってくれて・・・。あ、それからわたし双子なのよ。姉は今フランスにいるけどね」

と、ミクはミカについてもその時教えてくれたのだった。

「だから・・・もう20年近くのベテラン・・・安心して尾いて来て」

と、笑顔のミクは、チャーミングな笑顔で前を走って行く。

「綺麗なひとだよな・・・やっぱり・・・」

と、サトルは感じ・・・次に会った時には、もう告白をしていた・・・。


その場所こそ、この江ノ島の西浜だった。


「なあに、話があるって・・・」

と、トレーニング中、わざわざここに来て告白したサトルだった。

「ミクさん、あのー・・・俺、ミクさんに恋しちゃいました。ミクさんに惚れたんです。だからそのー、正式に僕と付き合ってくれませんか?」

と、サトルは単刀直入にミクに話した。


ミクはサトルの目をじっと見て・・・それから目の笑ういい笑顔になって、一言、

「いいわ。わたし、あなたの恋人になってあげる」

と、嬉しそうな表情でミクは言った。

「だから、あなたもわたしの素敵な恋人になって」

と、ミクは言うと、サトルを抱きしめながらキスをした。まだ、昼の12時前だった。


周囲の人間は、「お」という顔をしたが、ミクはそんなことなど気にしていなかった。

「そうと決まれば・・・そうね、まず、腹ごしらえしてから・・・行くべき所へ行きましょ」

と、ミクは言うと、赤いロードレーサーで、先に立って走り始めた。


途中、二人は、三笠會館で洋食のランチを食べると、近所のシティホテルにチェックインし、サトルはミクに抱かれた・・・ミクは上になってサトルをリードし、

ミクの大人の技に翻弄されっぱなしだったサトルは、その日、何度目かの射精をし、果てた・・・。

やさしいミクは舌で、気持ちよくそこを掃除してくれた・・・やさしい大人の女性・・・それがミクだった。


軽い疲れから寝入ったサトルが起きると、ミクがじっと見守っていてくれたことに気づいた。

「見ていてくれたの?ミク」

と、サトルが少し甘えるような声で言うと、

「大丈夫。あなたは私が守ってあげるから。これから、ずっとね・・・」

と、ミクはやさしい笑顔で言った。

サトルはその笑顔に抱きついてキスをすると、ミクもサトルをきつく抱きしめた。

「わたしがあなたを守るの。いつまでも、ね・・・」

こうして、二人の楽しい時間は始まっていった・・・。


「ミクはまるで・・・僕がまだ、中学生の頃に母を病気で亡くしたことを知っていたかのようだった・・・おんなの第六感だったのかな」

と、江ノ島を見ながら、ビールを飲むサトルだった。


それから二人の楽しい時間は続いていった。


ミクは平日は、自転車メーカーの「テレックジャパン」の社員だった。

平日は東京にある彼女のマンションから会社に通い、週末を実家で過ごしていた。


ミクは出来るかぎり週末はサトルと過ごしてくれた。


「大丈夫、わたしがあなたを守ってあげるから・・・」

と、言いながら、サトルを抱きしめるのがミクのいつもの癖だった。


サトルが母を中学生時代に亡くしている事を知ったミクは・・・さらにその言葉を言う機会が多くなった。


「サトル、私が全力で引くから、後ろから着いて来て・・・絶対に切れないでね・・・」

と、ミクは言うと、男性並みの脚力で、前を引いてくれた・・・サトルの脚力はみるみる鍛えられ、レースに出れる程になっていった。


「サトルは鍛えがいがあるわ・・・元々サイクリストの素養があったのね・・・いいお尻してるわ・・・それに肩甲骨のカタチが美しい」

と、言ってミクは時折サトルを抱きしめた・・・身体のデザインや美しさにこだわりがあるのが、サイクリストだった。


もちろん、ミクもそのひとりだった。

ミクはサイクリストとしてのサトルを愛し始めていた。


ミクとサトルはほとんど喧嘩をしたことがなかった・・・サトルはミクの優秀な練習生だったし、ミクはサトルの優秀なトレーナーだった。

「しかし、ミクの身体って完璧じゃないか?後ろで走ってて、そう思うよ。胸も大きいし、尻の筋肉も理想的、それでいて、締まっているところは完璧に締まっているし」

と、サトルは言葉にする。

「あのさ・・・今日も行かない?なんか、ミクの身体のデザイン見てたら、今日も、もよおしてきちゃって・・・」

と、サトルが言うと、

「そ。じゃ、行こうか」

と、笑顔をくれるミクだった。


二人はエッチの相性も良かった。


お互い好奇心旺盛だし、筋肉は鍛えられているし、心肺機能も高いから、高い持続力を保てた。


エッチが終わると、満足そうにミクはサトルの笑顔を眺める。

「気持ちよかった?今日はサービス多めにしてあげたのよ」

と、ミクはいたずらっ子のような表情で言葉にする。

「うん。気持ちよかった・・・もう、何回イッたかわからないよ・・・」

と、サトルは満足げに笑うのが常だった。


「ミク・・・どこにも行かないでね・・・僕はもうミクなしでは行きていけないから・・・ね、約束だよ」

と、サトルは言葉にすることがあった。深夜に突然目を覚まして、ミクが隣にいなかったりすると、サトルは激しく寂しがった。

「わたしにもトイレくらい行かせてよ・・・大丈夫。わたしはどこにもいかないわ。いつもサトルを見守っているから・・・大丈夫」

と、ミクはやさしい暖かい笑顔で言った。


「ミクはそう言ってたのに・・・結局、逝ってしまった・・・」

サトルは少し泣いていた・・・そのシーンが激しく頭の中に点滅している。


「後方で事故、後方で事故・・・集団はスピードを落とせ」

と、集団を全力で引くサトルの無線には、監督の声が響いた・・・稲村ヶ崎を登りきり、鎌倉湾を右に見ながら、由比ヶ浜方向に向かって走っている時だった。


雨が激しく打ち付けていた。


「どのチームに事故者が出たんです?」

と、無線で監督に聞くサトル・・・すぐ後ろにいたカズキも耳を済ませている。集団は少しパニックとなり、急速にスピードを落としていた・・・。


その時、サトルはなにかよくわからない悪寒のようなモノを感じていた。

ある種の虫の知らせのようでもあった。


「ミクだ。ミクが救急車で運ばれたらしい・・・」

監督からの声だった・・・明らかに狼狽している声だった。

「ミクが!」

サトルの記憶はそこで飛んでいる。


「だから・・・もう20年近くのベテラン・・・安心して尾いて来て」

そう笑ったチャーミングな笑顔のミクはもういない・・・。


「そういえば、ここで、二人して、缶ビール飲みながら、江ノ島の上に出る月をよく眺めてたっけ・・・」

と、やっと出てきた江ノ島の月をサトルは懐かしそうに眺めていた。

「相変わらず綺麗だ・・・ミクもこの月が好きだった・・・」

と、サトルは美しい月の風景にしばし見とれていた・・・。

「あ、そうだ・・・デジカメ・・・この風景、押さえておこう・・・」

と、サトルはつぶやく。

「「今日の一枚」ってところかな・・・ミクの思い出と共に・・・」

とつぶやきながら、サトルは、江ノ島上空の月の写真を撮った。


サトルは少し泣いていた。


つづく


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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(11)

2013年12月10日 | 今の物語
日曜日の夕方、ミウが昨日テルコと来た居酒屋「松野」に、またミウは顔を出していた。


昼間、テルコから、

「昨日は楽しかった。もしよかったら、今日もガールズトークしたいので、飲まないかい?」

というメールが届き、テルコと話していると、母親と話しているような、母親に許してもらっているような思いを感じたことを思い出し、ミウも、

「いいですね。行きます」

と返事をしたのだった・・・。


「テルコさん・・・来ました・・・」

と、テルコの座るテーブルに来たミウの足が少しだけ止まる。

「ミウちゃんとお酒を飲みながら、ガールズトークをしたって言ったら、興味持ったみたいだから、誘っただが」

と、テルコが言うそこには、咲田ヨウコの姿があった。

「お前が酒を飲めるっていうからよ、どんな話が出来るのか、見てやろうと思ってよ・・・」

と、ブスっとしている咲田ヨウコだった。

「どうせ、中身の無いお嬢さん話なんだろ。飲み会ってのはよ、自分の笑い話とか、つらい話とか、そういうのが出来ねえと失格だからな」

と、咲田ヨウコは飲み会の哲学の話をしている。

「お前の好みの男の話なんて、聞かされても不快なだけだからな。そういう話だけは、やめてくれよ」

と、咲田ヨウコは最初から牽制している。

「まあ、まあ、とりあえず生ビールで乾杯しようだが」

と、テルコがとりなしてくれる。

ミウら3人は生ビールを貰い、乾杯してから、3人とも最初の一口をゆっくりたのしむ。

「んぐんぐ、ぷはー・・・やっぱり、この瞬間だべや・・・最高に気分いいのわ」

と、テルコが豪快な感じで、言う。

「そうですね。美味しい、ビールが・・・」

と、ミウも言う。

「やっぱ、この瞬間だよなー」

と、そこは機嫌のいいヨウコだった。


「そういえば、昨日、聞き忘れたんだが、姫ちゃんって、一人娘なんだよな?」

と、テルコはミウに聞いてくる。

「そんな感じで、話してたから・・・母ちゃんとうまくいってないのは、それが理由だが?」

と、テルコはミウに言う。

その言葉に、ヨウコは静かにミウを見る。

「実は・・・今はひとり娘状態ですけど・・・実はわたしが大学3年生になるまで・・・弟がいたんです」

と、ミウは言う。

「弟・・・」

と、ヨウコが口にする。

「私が大学3年生の時、高校2年生で、サッカー部のキャプテンをやっていた、弟の姫島ユウ(17)は交通事故で亡くなりました」

と、ミウはビールのジョッキを置いて、静かに話し始める。

「朝早い時間に登校するために、信号待ちしていた弟達サッカー部の集団に酒酔い運転の車が突っ込んで・・・同時に5人もの人間が亡くなりました」

と、ミウは静かに話す。もう何度も話して・・・話し慣れているような感じだった。

「車を運転していたのは、大学に馴染めずお酒に逃げてばかりいた大学一年生の男性で・・・彼は事故後、自宅のアパートで自殺しました」

と、ミウは淡々としゃべっていく。

「事故を起こした男性の両親はすぐに謝りに来て、皆の前で土下座しましたけど・・・その両親も数日後には、自殺しているところが発見されました」

と、ミウは事実を確認するように話していく。

「そういう事実がありました・・・我が家はその事故が起こるまで、本当に明るい家族だったんです」

と、ミウは言う。

「弟はスポーツマンで、女性にも愛されていた・・・でも、将来は私みたいな女性と結婚するんだって言ってくれていました。それだけかわいい弟でした」

と、ミウは言う。

「弟の笑顔を中心に、わたしも、両親もいつも笑っているような、そんな家族だったんです。でも、その事故以来・・・まるで、笑いを忘れてしまったかのように・・・」

と、ミウは遠くを見るように言う。

「どんなに泣いても・・・どこにもぶつける先が無かったんです。弟も弟の友人たちも誰も悪くない・・・それなのに、理不尽な死が突然やってきて・・・」

と、ミウはいつの間にか涙を流していた。

「あの大学生の青年だって・・・その両親だって・・・死ぬことないじゃないですか?ちゃんと罪を償ってくれれば、ううん。私たちの思いをぶつける先になってほしかった」

と、ミウは涙声で言う。

「私たちの思いは、どこにもぶつけられずに・・・宙をさまよったままだった・・・それ以来、わたし達家族は、しっくりいかなくなってしまって・・・」

と、ミウは言う。涙を拭った。

「その頃から、母と・・・わたしはあまり上手くいかなくなっちゃったんです」

と、ミウは言う。

「父は・・・大学生の青年の両親に怒りをぶつけた事が・・・その両親の死につながったことを後悔しているみたいでした・・・それもやりきれなくて・・・」

と、ミウは言う。

「そんなことがあっただが・・・」

と、あまりの話に・・・少し引いていたテルコだった。

「弟・・・かわいがってたのか?」

と、ヨウコがミウに聞く。

「4歳年下で・・・サッカー部のキャプテンやってて、女性にモテてた・・・でも、わたしの事大好きで、よくわたしのアパートに遊びに来てたの。かわいかった」

と、ミウが言うと、

「つらかったか・・・弟の死・・・」

と、ヨウコが聞く。

「つらかったわ・・・それはそうじゃない・・・わたしの事全力で見てて、わたしの事大好きで、わたしがいないと寂しがって泣いちゃうようなそんな弟だったんだもん」

と、ミウは涙をボロボロ流しながら、泣いた。

「すまねえ、思い出させて・・・」

と、ハンカチをミウに貸すヨウコ。


「人生、いろいろな事があるんだなー」

と、テルコはビールを飲みながら、そんな感想を漏らす。

「おらもいろいろある方だと思ったが・・・姫ちゃんに比べたら、まだ、平穏な方だ。誰も死んでねえから」

と、テルコは言葉にする。

「姫ちゃんにも言ったが・・・娘とうまくいっでなくてな。皆、大なり小なり、いろいろあんだ」

と、テルコはヨウコに言う。

「おめーどうなんだ。そういう話、ねえだか?」

と、テルコはヨウコに振る・・・。

「俺は・・・」

と、ヨウコはビールを少し多めに飲むと、言葉を出し始める。

「俺は・・・父の顔は写真でしか知らねえ・・・横須賀基地の米兵だったんだ・・・でも、戦場で死んだらしい。それくらいしか、わからねえんだ」

と、ヨウコは言葉にする。

「ヨウコはハーフだったんだ?それでそんなに色が抜けるように白いのね」

と、ミウは言葉にする。

「ま、まあな・・・」

と、ヨウコは言葉にする。

「それで美しい顔をしているのね、ヨウコ」

と、ミウが言う。

「別に美しくは・・・ねえよ」

と、ヨウコは言う。

「んにゃ・・・ヨウコは自分が美しいことを知ってるべ?」

と、テルコが言う。

「え?」

と、ヨウコが戸惑う。

「いつも手鏡見ながら、髪型直してるべ。化粧なんかしなくても、すっぴんが美しいから、化粧もしてねえだが?」

と、テルコにズバリ言われて、少し黙るヨウコ。

「羨ましいな・・・肌も綺麗だし、ヨウコ・・・」

と、ミウが言うと、

「これしか・・・これしか、ねえし・・・俺の財産・・・」

と、ヨウコが静かに言う。

「これしか・・・なかったんだ・・・売り物になるモノは・・・」

と、ヨウコは静かに言う。

「売り物?」

と、テルコがポカンとして言う。

「いや、それはいいんだ・・・俺もあんまりいい目に会ってねえってことだ」

と、ヨウコは言う。

「だから、しあわせそうにしてる奴を見ると、つい、嫉妬しちまう・・・駄目なおんなさ」

と、ヨウコは言う。

「見えねえかもしれねえけど・・・これでも、大学に進学して将来に夢持っていたりしたこともあったんだ、俺・・・」

と、ヨウコは言う。

「どこの大学にいたんだが?」

と、テルコが聞く。

「東王大学文学部」

と、ヨウコは言う。

「名門だが・・・誰でも知ってる大学だが・・・」

と、テルコは驚く。

「お嬢さんが多かったけど、身入れて学問やってる女も多かったよ。皆、筋通して生きてる人間ばっかだった・・・俺は好きな場所だったんだ」

と、ヨウコは言う。

「その頃はどういう職種への就職を目指していたの?」

と、ミウが聞く。

「マスコミ関係を目指してた・・・でも、いろいろあって・・・大学続けられなくなって・・・自分で金稼がなくっちゃ生きていけなくなってよ・・・」

と、ヨウコは言う。

「大学の友人達が羨ましかった・・・なんで、俺はこんな運命なんだって、自分を呪った・・・だけど、仕方ねえ」

と、ヨウコは言う。

「それから、30になるまで・・・いいことなんて、ほとんど無かった・・・信頼してた男に金持ち逃げされたり・・・散々さ」

と、ヨウコは言う。

「だから、男も信じられなくなって・・・気づいたら、笑顔が消えてた・・・ざまあねえよ」

と、ヨウコは言う。

「男にお金持ち逃げされたって・・・いくらくらいの金額だが?」

と、テルコが質問する。

「500万くらいかな。恥ずかしいけど、結婚資金つーか、そういうつもりで貯めてたお金・・・馬鹿に持ち逃げされた本当の馬鹿は俺さ」

と、ヨウコが言う。

「実入りのいい仕事してたんだが?」

と、テルコが聞く。

「水商売だよ。キャバ嬢とか、いろいろやってた・・・」

と、ヨウコが言う。

「ヨウコなら売れっ子になれそうだもんね」

と、ミウが言う。

「やるしかなかった・・・俺にはそれしか手がなかったからよ」

と、ヨウコは言う。

「だからよ・・・俺はもう男なんて信じねえ・・・そう決めたんだ」

と、ヨウコはビールを飲み干す。

「おっさん、グレープフルーツサワーくれ」

と、ヨウコは店のおじさんに頼んでいる。

「男を信じねーか・・・それもっだい無くね?」

と、テルコが言葉にする。

「んなこと言ったって・・・信じられる男なんて・・・この世にいやしねえよ」

と、ヨウコは言葉にする。

「んにゃ、いるところにはいる。ぜってーいる。探し方が悪いんだ。なあ、姫ちゃんもそうおもわねえが?」

と、テルコは言う。

「実はわたしも・・・長く男性不信で・・・」

と、ビールを飲みながら言うミウ。

「姫ちゃんもそうだが?姫ちゃんも男に騙された口か?」

と、テルコは驚く。

「騙されたのとは・・・ちょっと違うかな・・・でも、信用出来なくなることがあったの・・・」

と、ミウは言葉にする。

「ふーん、信用出来る男を見つけられたのは、俺ひどりか・・・」

と、テルコは言葉にした。

「見つけたいな・・・そういう男・・・」

と、ミウが静かに言うと、

「見つけられるならな・・・」

と、ヨウコも静かに言った。


つづく


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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(9)

2013年12月09日 | 今の物語
「おまえのせいで・・・おまえが帰ってきたせいで・・・おとうさんは亡くなったのよ!」

と、母が怖い顔をして叫ぶ。

「わたしの大事な、大事な・・・わたしが一生を賭けて探しだした大事なあのひとをを・・・おまえが・・・」

と、叫ぶ母の目は怖かった・・・。


「夢か・・・」

日曜日の朝、ミウは身体中に汗をびっしょりかいて、朝の6時に目を覚ました。

「目が覚めたのが・・・深夜じゃなかっただけ、よかったようなものね・・・」

と、ミウはそのまま起きだし、水道の水をコップに移して飲むと・・・熱いシャワーを浴びる・・・。


「あれは、雨のひどい日だった・・・お父さんは目が悪かったのに・・・それでも出て行った・・・ほんとうに自殺だったのね・・・」

と、シャワーを浴びながらそのことを考えるとミウの目から涙が流れる。

「お父さん・・・なんで自殺なんてしちゃったの・・・あんなにやさしい・・・大好きなお父さんだったのに・・・」

と、ミウはシャワー浴びながら声をあげて泣いた。


いつまでも、いつまでも、ミウは泣き続けていた・・・。


日曜日、朝の10時半過ぎ・・・鈴木サトルは、藤沢駅北口にあるスポーツ自転車店「コギー藤沢北口店」にサイクルウェアのまま、顔を出していた。

「辻さん・・・マシンチェックいつものように頼みます。デパ地下で買い物してくるんで」

と、サトルは自分のマシンを辻店長に預ける。

「朝のトレーニングはどうだった?134号は相変わらず混んでたかい?」

と、自転車を渡されながら、辻は鷹揚に話している。

「えー、車はいつも通り混んでましたよ。自転車もけっこう走ってましたしねー」

と、サトルは笑顔で話している。

「じゃ、頼みますねー」

と、サトルは笑顔になると、サイクルウェアのまま、道路の反対側にあるデパ地下へと消えていく。


「しかし、サトルくんも・・・あの真っ赤な派手なサイクルウェアのまま、デパ地下へ出没するんだから、度胸あるわ」

と、辻店長は呆れ顔で、店員の嶋野に言葉をかける。

「ま、サイクリストはある意味、コスプレイヤーみたいなモノですからねー。ま、サトルさんところのチームは度胸あるひとばかりだし・・・」

と、苦笑する嶋野だった。

「そうだったな。つーか、八津菱電機マンは、皆、度胸あるのかもな」

と、ニヤリとする辻店長だった。

「そうですね」

と、嶋野も笑顔で同意した。


同じ頃、ミウは、日曜日の天気のいい月夜野の街を気分を変える為に散歩していた。

静かな街もなんとなくポカポカして・・・いい日よりだった。


ミウは結局、昨日の夜、サシ飲みをしてしまった先輩の豊島テルコ(60)との会話を思い出していた・・・。


「そういえば、姫ちゃんのお母さん、身体壊して大変なんだって?所長さんに聞いただが」

と、テルコはやさしい笑顔で聞いてくる。

「えー・・・まあ・・・そうなんですけど・・・」

と、ミウは少しうつむくように話す。

「テルさん、聞いていいですか?」

と、ミウは少し話しづらそうに聞く。

「ん?何でも聞いてくれ・・・姫ちゃんは娘みたいに感じるだが・・・」

と、豪快にレモンサワーのジョッキを空けながらテルコはそう話す。

「母親って、娘にどんな思いを持っているもんなんでしょう?」

と、ミウはテルコに真面目に聞いている。

「どんなって・・・なんだが?」

と、テルコは少しキョトンとする。

「そのー・・・進路っていうか、将来一緒に住んでほしいのか・・・それとも自由にしていいのか・・・とか、そういうこと・・・」

と、ミウは具体的に言葉にする。

「うーん、巷にはいろいろな女性がいると思うがら、俺の答えだけな・・・」

と、テルコは答える。

「俺は古い考え方かもしれねえが・・・まあ、仕事は東京で就職してもええけど、両親つーか、男親がよ、年取ってきたら・・・出来るだけ近くさ戻ってきてほしかったな」

と、テルコは真面目に答えている。

「年を取ってきたらっていうと・・・55歳を超えたらってことですか?」

と、ミウが聞く。

「まあ、サラリーマンには場所によって55歳で定年だからな・・・定年迎えっと男親はがっくり来るもんみたいだ」

と、テルコは答える。

「はい・・・」

と、ミウは言う。

「もちろん、おらも妻として、支えることには変わりはねえが・・・少しでも父ちゃん喜ばしてえって思うのが妻だが」

と、テルコは続ける。

「父ちゃんが、一番喜ぶのが娘の顔さ、見た時だ・・・それはどこの家族でも、変わらねえべ?」

と、テルコは言う。

「そうですね。わたしの家も・・・わたしが実家に帰るとまず父に会えるのが嬉しかったし、父も喜んでくれて・・・」

と、ミウは言う。

「そうだが・・・おらは、そんな父ちゃんの笑顔が見てえ・・・だがら、こうやって、仕事もしてる・・・」

と、テルコは答える。

「そういえば・・・テルさんの旦那さんは、今、どんな仕事を?」

と、ミウは質問する。

「元々は市場の関係者で仲買いさー、してたんだけど、40歳くらいから、野菜農家を片手間で始めてて・・・55歳で農家に専念してな・・・がんばってるんだ」

と、テルコは言う。

「酒一滴も飲めねえがら・・・こうやって、おらが、たまに外で飲むのも、許してくれてんだ・・・やさしい父ちゃんだ」

と、テルコは言う。

「それで娘さんは?」

と、ミウが聞く。

「東京で看護師してたんだけど、あるサラリーマンに見初められて・・・今、アメリカだ。ボストンっちゅーところへ住んでる。だから、たまにしか帰ってこねえ」

と、テルコは寂しそうに言う。

「そうだったんですか・・・」

と、ミウ。

「同じおんなとして考えたら・・・ユキはユキなりにしあわせをつかもうとがんばってるのかもしれねえ。あいつも必死だ」

と、テルコは少しさびしそうに言う。

「え?でも・・・サラリーマンで、アメリカにいるって言ったら・・・大きな会社なんじゃないですか?栄転っていうか・・・」

と、ミウが言う。

「大日本物産・・・旦那はそこのサラリーマンだ・・・エリートさんで・・・よくうちの娘なんか貰ってくれた・・・」

と、テルコは言う。

「大日本物産って・・・一流商社じゃないですか・・・すごいなあ、ユキさん・・・どうやったら、そんな男性捕まえられるんだろ」

と、ミウは少し笑顔になりながら、言う。

「看護師だったユキが交通事故で入院してた旦那さんを献身的に看護して・・・それがきっかけだ」

と、テルコは言う。

「へー、ドラマみたいな話ですね・・・あーあ、わたしも看護師になればよかったかなあ・・・」

と、ミウはため息をつきながら、言う。

「介護士は、看護師とは似て非なる仕事だかんな。相手はじっちゃんやばっちゃんばかりだからな。出会いはねーべ」

と、テルコは笑いながら、言う。

「そうですね。それは仕方ないけど・・・自分で選んだんだし・・・」

と、ミウは笑顔で言う。

「ところで、姫ちゃんは、なんでそったら事、俺に聞くんだ?」

と、テルコは真面目な顔で言う。

「姫ちゃんところも、あれか?母ちゃんとうまく行ってねえだが?」

と、テルコは真面目な顔して言う。

「さすがに先輩・・・よくわかりますね」

と、ミウは寂しそうに言う。

「そら、おらだって・・・何度ユキとぶつかったか・・・おらの考えが古すぎるんだけどな」

と、テルコ。

「それはわかってる。それはわかってるんだが・・・父ちゃんが寂しそうにしてると・・・たまんなぐなって・・・つい、ユキに電話して、戻ってこれねーか聞いちまう」

と、テルコ。

「今は無理だって、怒られる。まあ、その状況をわからねえではねえけど・・・でも、自分の父親だど・・・」

と、テルコ。

「父親が悲しい顔してんの、見てたら、たまらなぐなんねえか?特に一人娘だったら・・・責任感じねえもんか?」

と、テルコはミウに言う。

「それは感じますよ。それは・・・でも、人生どうにもならない時もあるって・・・今これをやらなければいけないって、そういう時だって、あるんです。娘だって」

と、ミウは自分の母親に言うように言葉にする。

「そーが・・・姫ちゃんは、ユキ側の立場の人間だもんな・・・そうが・・・」

と、テルコは少し寂しそうに話す。

「いや、すいません、テルさん・・・なんだか、母親に非難されているように感じて・・・」

と、ミウは謝り、すぐさま、

「ユキさん・・・アメリカのボストンは遠いし・・・お子さんなんかも、いて、大変な状況なんじゃないですか?」

と、言うミウ。

「5つと3つの男の子だ。かわいい盛りでな・・・父ちゃんは、その孫にもあいてえみてえだ。そりゃそうだ・・・年とったら孫に会うのは夢だべ」

と、テルコ。

「姫ちゃんも・・・早く子供産まねえと・・・女の賞味期限は、はええど」

と、テルコ。

「それは、わかってるつもりなんですけどね・・・そうですか、旦那さんの為に・・・娘さんに戻ってきて欲しいんだ」

と、ミウ。

「それはどこでも、そうなんじゃねえか?愛する者の笑顔を見たい・・・そりゃあ、誰だってかわんねえべ」

と、テルコ。

「そうですね・・・」

と、ミウ。

「姫ちゃんのおかあちゃん・・・なんか言っでねえが?父ちゃんのこと」

と、テルコ。

「言ってますよ。テルさんと同じです。父を、それはそれは愛していて、信頼していて・・・わたしとは喧嘩ばかり・・・」

と、ミウ。

「ほら、おんなじだべ・・・おんなは皆好きな男のために、生きてんだ・・・おらも、ユキも、姫ちゃんのおかあちゃんも・・・」

と、テルコ。

「姫ちゃんだって、まーさか処女じゃあんめい?」

と、テルコ。

「ええ。もちろん、男性に抱かれたことは、何度もありますよ」

と、ミウ。

「そっだら、気持ちいいの知ってっべ。好きな男が抱いてくれる時のいい顔知ってっぺ。思わず好きになるっべよ・・・愛しちまうべよ・・・」

と、テルコ。

「そうですね。それはわかります、わたしにも」

と、少し赤くなるミウ。

「おんなは、恋する為に生まれてくるんだ。一生尽くす男を探す為に生まれてくるんだ。それでそういう相手を見つけたら、その笑顔の為に生きるんだべや・・・」

と、テルコ。

「それが女だべ。違うが?姫ちゃん」

と、テルコは言う。

「いいえ・・・その通りです。テルさん・・・間違っていません。そのためにおんなは、生まれてくるんです」

と、ミウ。

「だったら、早く姫ちゃんも、そういう相手、みつけろ」

と、テルコは言うと、何杯目かのレモンサワーを飲み干した。

「すっがし、こういう話、楽しいなあ・・・姫ちゃんとこういう話したの、初めてだが」

と、テルコが言うと、

「そうですね。わたしもテルさんとこういう話が出来て楽しいです」

と、ミウは言う。

「これが、ガールズトークってやつか。おらたちも最先端だがー」

と、笑うテルコをミウはやさしい目で見ていた。


「女性はどこまでも行っても女性なのね・・・」

と、ミウは歩きながら、つぶやく。


そして、大きなため息をついたミウだった。


月夜野の街はポカポカと気持ちいい日よりだった。


つづく


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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(8)

2013年12月09日 | 今の物語
えーと、せっかくあるので、当時の「SUNDISH」でトレーニング途中でノンアルコールビールを飲んでる風景など・・・ま、こんな感じの風景でした。あの頃。

まあ、今よりかなり前の僕ですが、今より体重は重かったです。おいおい、こんな写真出すなよって感じですねー。当時やっていた写真ブログ用に撮ってもらった写真です。



ま、こんな世界の話です。参考になれば・・・。


「いやあ、しかし、稲村ヶ崎の「SUNDISH」のワタリガニのトマトクリームパスタは、いつ食べても美味いなあ」

と、サトルとはホビーサイクリストチーム「チームクリスプ」の同僚にして兄貴分の沢島カズキ(30)が言葉にする。


サトルとカズキは土曜日の朝10時、稲村ヶ崎にあるイタリアン・レストラン「SUNDISH」でノンアルコールビールを飲みながら、

ワタリガニのトマトクリームパスタを美味しそうに食べていた。


カズキは、サトルと同じ八津菱電機社員でもあった・・・彼は全国の競輪システムのシステムエンジニアを担当していた。


「朝6時半からトレーニングして・・・10時にここで、パスタってのが、土曜日の定番だよなー。朝はコンビニのお握り2個で済ませたから、腹が減って・・・」

と、カズキは言葉にしている。

「それに冷たいノンアルコール・ビールも、まあ、美味しい・・・最高に気分がいいなあ」

と、カズキは嬉しそうに言葉にしている。

「やっぱワタリガニのソースは最高ですね。ほんと、美味いす。最高っす」

と、サトルも言葉にしている。


「しかし、土曜日の朝10時っていう、この時間・・・この店から見る江ノ島が、とにかく綺麗だ・・・」

と、カズキが言うと、

「もう、僕は「今日の一枚」を撮り終えましたよ。いい天気だし、いい風景だ」

と、背中のバックに常にデジカメを入れているサトルだった。

「ザ・湘南って感じの風景だよなー・・・俺はここから見る相模湾の風景が一番好きだ・・・」

と、カズキは言葉にする。

「僕もです。素敵な海の風景ですよ」

と、サトルも言葉にしていた。


「で、サトルのブログにコメントしていたエマちゃんって・・・ほんとに女性なのか」

と、カズキがサトルに言う。

「よくわからないけど・・・まあ、当面は様子を見るつもりですけどね」

とサトルは言葉にする。

「まあ、でも・・・ネットにいる女性の多くは、ネットの匿名性に逃げ込んでいる、訳ありの女性だからな・・・」

と、カズキは言葉にする。

「まあ、それはわかっていますけど・・・ごくたまに、自分に自信のあるタイプの女性が・・・ネットのオープン性を利用して話しかけてくる場合もあるし・・・」

と、サトルは答えている。

「まあね・・・まあ、それはどうとも言えないけどな・・・」

と、カズキは言葉にする。

「それより・・・今日はこれから、三浦半島を回るか?逗子から葉山抜けて・・・南下して・・・宮川公園の風車、見に行こうぜ」

と、カズキは提案する。

「天気もいいし・・・今日はトレーニング日和でもあるしな」

と、カズキは笑顔になる。

「いいですね・・・午後・・・三崎の庄和丸へ行ってマグロのカマのステーキでも、つついてきます?」

と、サトルが言うと、

「いいね、いいね・・・まあ、ランチは1時ごろかな」

と、カズキが言うと、

「ま、いつもの予定通り・・・気持ちよく走っていきますか!」

と、サトルは笑顔になる。

サトルの背後には、稲村ヶ崎から見える、相模湾の海の風景がどこまでも広がっていた。


土曜日のお昼・・・朝日ヘルパーの待機所では、ミウ(32)と豊島テルコ(60)と咲田ヨウコ(30)がお昼ごはんを食べようとしていた。


豊島テルコはお手製のお弁当、咲田ヨウコはコンビニのお握り一つとわかめスープだった。

ミウはテルコの隣に座って・・・ローカロリー麺でもある、コン・フォーを作って食べていた。

「へー、姫ちゃん、何それ・・・ラーメンみたいだけど」

と、テルコが珍しそうに聞く。

「昨日、スーパーで安い商品を見つけて・・・ローカロリー麺なんです。こんにゃくと米粉で出来た麺で・・・」

と、美味しそうに食べるミウが説明する。

「ふーん、男でも出来たのか?それでダイエットか、わかりやすい女だな」

と、ヨウコが少しふてくされ気味に言う。

「え、そうなのかい、姫ちゃん?」

と、テルコは興味深そうに聞いてくる。

「そんなの見てりゃわかるよ・・・こいつ、今日だって嬉しそうな顔して出勤してきたし」

と、ヨウコはそのあたり、気に入らないらしい。

「別に恋人ってわけじゃないんですよ・・・」

と、ミウは少し自嘲気味に答える。

「恋人じゃない?」

と、テルコが言葉にする。

「ただ・・・なんとなく、少しずつ・・・自分が変わっていければなって、思って・・・それで・・・」

と、ミウは言葉にする。

「やっぱり、希望がないと・・・女性って、やっていけじゃないですか・・・わたし32歳だし・・・もう、若くないんだし・・・」

と、ミウは言葉にする。

「だったら、今の自分に出来ることを少しでも・・・ダイエットが少しでも出来たら・・・わたし、変われるかなって・・・つい思ってしまって・・・」

と、ミウは少し下を見ながら言葉にする。

「わたし、希望が持ちたいんです。希望があれば・・・女性はそれだけで生きていける・・・そうじゃないですか?」

と、ミウはあえてヨウコを見て言葉にする。

ヨウコはミウの視線を受け、少し下を向くと、

「そうだな。希望は誰にだって必要さ」

と、静かに言う。

「だがよ・・・この月夜野の街・・・若い男が全然居ないような・・・いても農家のせがれか商店のせがれくらいのもんだろ」

と、ヨウコは言う。

「こんな若い男が全然居ないような、こんな街に流れてくるような女が・・・希望を語れるのかよ」

と、ヨウコはミウを正面から見ながら言葉にする。

「好きな男の前で、本気で、希望なんか語れるのかよ」

と、ヨウコは強い口調で言うと、わかめスープを飲み干し、外へ出て行った。

「ヨウコはいつもあの調子なんだから・・・姫ちゃんは何も気にすることなんてないんだが。な、姫ちゃん」

と、テルコはミウにそう言う。

「はい・・・」

そう小さく言ったミウは、力ない笑顔で、テルコを見るだけだった。


「今日も風車は元気良く回ってるなー」

と、12時半過ぎに宮川公園に着いたサトルとカズキは、ブンブン大きな音をさせて回っている2基の風車を見ている。

「ここから見渡せる青い太平洋も好きだなあ・・・」

と、カズキはいつの間にか公園の端に行き、青い太平洋を満喫している。

「カズキさん、精悍ないい顔してる・・・写真撮ってあげますよ、こっち向いて」

と、サトルはすでにデジカメを構えている。

「お、おう。いつも悪いな」

と、カズキはグッジョブ!ポーズで決めている。

「オーケー。バッチリ撮れましたよ」

と、サトルが言うと、

「おしおし、俺もサトル撮ってやるよ」

と、カズキは笑いながらサトルのデジカメを受け取る。

「おまえも、惚れ惚れするような精悍な顔をしているぜ・・・男のサイクリストの顔だよ、その顔は」

と、カズキはサトルの笑顔を見ながら、そんな風に言葉にする。

「撮るぞ、はい、チーズ!と」

今度はカズキがサトルのデジカメでサトルを撮る。

「しかしさー俺、考えてたんだけど・・・そのエマって女さ・・・少し会話を交わしてみたら、ネカマかそうでないか、わかってくるんじゃないか?」

と、カズキが言葉にする。

「まあ、コメントのやりとりをある程度やれば・・・その人の本性がわかってくるっていうか・・・そういうもんじゃないか?」

と、カズキが言う。

「っていうか・・・まずは、ネットの匿名性に逃げ込んでいる訳ありの女性か?自分に自信のある、サトルが出会うべき女性か・・・それを見極めないとな」

と、カズキは言う。

「そうですね。僕もそこが最も重要かなって、考えているんです」

と、サトルは言う。

「まあ、おまえはおしゃべりも上手いしな・・・その女性の本音も引き出せるだろう・・・」

と、カズキは言う。

「どうでしょうね・・・最近、あまり本気で女性と話してなかったから・・・最近は適当に女性の相手をしていて・・・」

と、サトルは言う。

「どこかで、少し自信を無くしているかもしれない・・・」

と、サトルは少し暗い表情で言う。

「おまえ・・・ミクちゃん亡くした事・・・まだ、心の傷になってるんじゃないのか?それで女を本気の目で見れないと言うか・・・」

と、カズキがサトルの表情を見ながら言う。

「カズキさん・・・その話は・・・」

と、サトルは少し眩しそうな表情をしながら、カズキに言う。

「ビンゴか・・・まあ、あれは仕方が無かったんだ。おまえのせいじゃない。何度も言うようだがな」

と、カズキが言っても、何も言わず、ただ太平洋を見ているサトルだった。


カズキはそんなサトルを見て・・・何も言わずサトルの肩を叩いた。

「ランチ行こか・・・三崎で、マグロのカマステーキが俺たちを待ってる」

と、カズキは苦笑しながら、サトルに言うと、サトルも、

「はい。行きましょう」

と、言葉にして・・・サイクリスト二人は、三崎港に向けて、自転車を走らせていくのでした。


つづく


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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(7)

2013年12月06日 | 今の物語
月曜日の夜8時過ぎ・・・ミウは近所のスーパーで手早く買い物を済ませると、自転車で自宅アパートへ向かっていた。


ミウは少し元気がなかった。


「昨日は、帰りが遅くなったから、そのまま寝ちゃって・・・朝も早くに出たから、パソコンを立ち上げる暇がなかった・・・そんなところかしら・・・ニコラ・・・」

と、ミウはつぶやいている。

「ニコラ・・・まだ、全然わからないから・・・不安だな・・・どんな人かも、想像つかないし・・・」

と、ミウはつぶやいている。

「でも、あの写真から・・・スポーツマンってことは、わかるわ・・・綺麗な肩甲骨を持っている男性・・・20代かしらね・・・」

と、ミウはつぶやく。

「それに美しい写真が多いわよね・・・だから、美しいものの価値がわかって・・・それをこよなく愛する青年なんだわ・・・きっと・・・」

と、ミウはつぶやく。

「しかも、湘南に住んでいて・・・スポーツマンなんて、かっこいいじゃない・・・きっと素敵な人なのよ・・・」

と、ミウはつぶやく。

「でも・・・だからこそ、恋人がいるかもしれないわね・・・そうよね・・・その確率は、高い・・・か・・・」

と、ミウは少し暗い表情になる。

「でも・・・それでも・・・出会わなければ・・・何も始まらないもの・・・」

と、ミウは決意した表情になる。

「何も、始まらないもの・・・」

と、ミウは小さい声で繰り返す。

「それに・・・わたしのコメントが気に入らなかったら、削除だって出来るはずだもの・・・そうよ、だから、わたしのコメント、ニコラはまだ見ていないんだわ」

と、ミウはつぶやいている。

「それに・・・例えば、平日はどこかに出張して、仕事をしている人かもしれないし・・・まだ、全然可能性はあるのよ・・・」

と、ミウはつぶやいていた・・・。


その日から金曜日の夜に至るまで・・・ミウは毎朝と毎夜ニコラのブログを覗いた。


金曜日の夜に・・・ニコラのブログには男性の写真マニアと思われるサイバルというブログネームの男性と、カンノンと言うブログネームの男性がコメントをつけていた。


「この夕焼け美しいですね。夕景の比率をもう少し大きく撮るとさらにいい感じになりそうですね//サイバル」


「露出時間、もう少し取ってみては?また、週末逢えたら、写真撮らせてくださいね。今週も平日は関空ですか?//カンノン」


ミウはカンノンと名乗る男のコメントで事実を理解した。


「そうか・・・ニコラは平日は関空で働いている人なんだ・・・関空って大阪よね・・・航空会社のひと?それとも・・・とにかく関空の関係者なのね・・・」


と、ミウは理解した。


「そうか・・・だから、金曜日にコメントをつけるのか・・・となると、明日帰ってくるのかしら・・・ニコラ・・・」


と、ミウは久しぶりに笑顔になった。


「なんか、いろいろわかったし・・・元気になってきちゃった・・・」


と、ミウは嬉しそう。


「少し早いけど、今日はもう寝ちゃおう。明日の土曜日は仕事だけど・・・日曜日は休みだし・・・すべては明日の夜にわかるんだから」


と、ミウは嬉しそうに言うと、お風呂に入ってから、眠りについた。



同じ頃・・・スーツ姿のサトルは、関空発羽田行きの便で羽田空港に到着していた。


「はぁー、一週間がやっと終わった・・・まあ、僕はサポートだから、それでもいい方だけどね」


と、サトルは、明日も明後日も休みなく働く予定の主任システムエンジニアの多岐川ユウジ(34)の事を思っていた。


「やだやだ・・・週末すら、仕事なんて・・・死んじゃうよ、僕だったら・・・」


と、サトルは顔をしかめながら、ターミナルビルの動く歩道の上を足早に歩いて行った。


「あー、今日は疲れたし、バスで帰ろ、バスバス!」


と、サトルは重い荷物を持ちながら、バスのターミナルへ向かって歩いて行った。



同じ頃・・・鎌倉にある八津菱電機コンピューター製作所では、サトルとユウジの所属する課の課長飯島コウイチ(38)が所属する官公システム部の、


部長林ショウゾウ(48)に呼ばれていた。


「で、例の件・・・人選はどうなった?」


と林は、ギロリと大きな目で、第三課の課長飯島を睨む。


「ええ。少し若いですが、うちの鈴木にやってもらおうと思っています」


と、飯島は言葉にする。


「鈴木って、鈴木サトルか?」


と、林は飯島を見る。


「少し若すぎないか?」


と、林は言葉にする。


「それはありますが・・・奴には、周囲の人間に気に入られるという稀有な才能がありますから・・・その点は大丈夫か、と」


と、飯島は言葉にする。


「確かにそうだな・・・あいつはどこに出したって、やっていける人間ではあるな・・・」


と、林はひと通り考える。


「それに少々早いくらいの方が・・・鉄は熱いうちに打て、とも言いますし・・・」


と、飯島課長は言葉にする。


林部長は、少しの間考えていたが、、


「よし、了解した・・・このミッションは、鈴木で行こう」


と、笑顔になった。


飯島課長も、いい笑顔になった。



鈴木タケルは、八津菱電機の独身寮「パール湘南」に着くと、自分の部屋に直行した。


「うへー、疲れまくり・・・もうやだー・・・システムエンジニアって、何でこんなに忙しいの・・・」


と、サトルはつぶやきながら、スーツを脱いで、パジャマに着替えていく。


「まあ、空港の仕事はパッと見華やかな感じだけどさ・・・」


と、サトルは関空で買ってきた豚まん・・・「551蓬莱」のセットを電子レンジで温め、独身寮一階の自販機で買ってきた冷たい缶ビールと一緒に食べる。


「くうう・・・たまらない、大阪の豚まんは、ほんと、おいしいわ・・・やめられまへーん」


と、豚まんを食べながら、それをビールで流すサトルはたまらない表情をしていた。


「で、ブログどんなかな?」


と、サトルはパソコンを立ち上げ、自分のブログ画面に見入る・・・。


「わたしの住んでいる街も夜の月が綺麗な場所です。でも、この江ノ島の月も綺麗・・・ニコラさんは美しいモノが大好きな方なんですね//エマ」


「この夕焼け美しいですね。夕景の比率をもう少し大きく撮るとさらにいい感じになりそうですね//サイバル」


「露出時間、もう少し取ってみては?また、週末逢えたら、写真撮らせてくださいね。今週も平日は関空ですか?//カンノン」


鈴木サトルは、自分のブログについたコメントを静かに見ている。


「へー・・・3つね・・・というか、サイバルさんとカンノンさんは、鎌倉でたまに会うから知ってはいるけど・・・エマさんねー・・・」


と、サトルはエマのコメントを眺める。


「うん・・・なんとなく本当の女性のような気もするけど・・・美しいモノが大好きか・・・夜の月を愛する女性か・・・」


と、サトルはその言葉を頭の中で反芻する。


「うーん、ネカマ的な要素は、見られない・・・ような気もするけどね・・・」


と、サトルは思ったことを言葉にしてみる。


「わたしの住んでいる街も夜の月が綺麗か・・・美しいモノを好きなひとに悪い人はいない気がする・・・」


と、サトルは、少し酔った頭で、そんな風に考えていた。




土曜日の朝、ミウは朝起きるとシャワーを浴び、朝食を食べ・・・パソコンを立ち上げた。


「まあ、今日の夜、確認すれば、わかることだけど・・・」


と、少し思いながら、ミウはパソコンを起動し、ニコラのブログを見に行く。


「なんか、ニコラのブログを見に行くのが・・・わたしの毎日の日課になっちゃった・・・」


と、ミウはつぶやいている。


「わたしの中で・・・ニコラの妄想が・・・あの美しい肩甲骨を持った20代の青年が・・・いついちゃってる?」


と、ミウはつぶやいている。


「今日はどう、ニコラ!」


と、ミウはブラウザを立ち上げ、ニコラのブログにたどり着く。


「あ、コメントが返ってきてる。ニコラ、わたしのコメントに反応してくれたんだ!」


と、次の瞬間、やわらかい笑顔になるミウ。


「エマさんは、夜の月が綺麗な街に住んでいるんですか?その月も見てみたいものですね。また、今度機会があったら、湘南の美しい月を撮ることにします//ニコラ」


ミウは何度もニコラのコメントを読んだ。


「嬉しい・・・ニコラ・・・うん。今日の夜、コメントを返そう・・・なんだか、やさしい青年のような気がしてきたわ、ニコラ・・・」


と、ミウはつぶやくと、ルンルンな気持ちになりながら、パソコンを立ち下げ、会社の制服に着替え、バッグを持って、部屋を飛び出していくのだった。


ミウはとてもいい笑顔をしていた。


つづく


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「月夜野純愛物語!」(ラブ・クリスマス2)(6)

2013年12月06日 | 今の物語
「いやあ、お疲れ様です。今日は月曜日ですからね。疲れましたよ、もう、ほんとに・・・」

と、月曜日の午後8時頃、ミウは事務所に戻ると、待機所でお茶を飲んでいる同僚達に大きな声で声をかける。

「ほう、姫ちゃん、今日はいつになく元気だが」

と、柴田アキ(55)がちょっと驚いて、言葉にする。

「姫ちゃん、いつもより、綺麗だが」

と、村田ヒロコ(58)が言葉にする。

「なんだ、姫ちゃん、昨日の日曜日にいい男でも、出来たが」

と、豊島テルコ(60)が笑いながら、言葉にする。

「いえ。でも、元気になるきっかけを見つけたんです。じゃ、お先でーす」

と、ミウはいい笑顔で、事務所を出て行く。

「ふ。なんだありゃ」

と、暗い顔をしていた咲田ヨウコ(30)は言葉少なにタバコを吹かしていた。


夜に自転車を嬉しそうにこぐミウの頭上に、美しい月が出ていた。

「月夜野だもんね。夜見る月は、美しくなくっちゃ、嘘だわ・・・」

と、ミウはつぶやく。

「綺麗な月・・・まるで、わたしを見つめていてくれるようだわ・・・」

と、ミウはつぶやく。

「いいわよ。わたしに付いてきても・・・さ、一緒に帰りましょう」

と、ミウはやさしい笑顔でつぶやいていた。


ミウは自宅アパートに着くと、介護士のユニフォームを脱ぐとすぐにシャワーを浴びた。

ミウはルンルンな気分で髪の毛を洗い、身体を洗い、気持ちよくシャワーを浴び、気持ちよく身体を拭いた。


「チーズが残っているから、チーズ食べながら、白ワインを飲みましょう」

と、ミウは言葉にしながら、夕飯の準備をする。

パソコンを立ち上げ、早速昨日見つけたブログのページを開く。

白ワインをいれたグラスを横に置き、チーズを口に含みながら、白ワインを飲む。

「こんなに気分のいいのは、本当に久しぶりだわ・・・」

と、ミウは言葉にしながら、例の彼のブログのページを開く。

「えーと、彼のブログネームは・・・ニコラって言うのね・・・」

と、ミウは興味深く、ニコラのブログを覗く。

「えーと、この時間にコメントを書くのは・・・特に問題ないわよね・・・」

と、ミウは言葉にする。

「だって、朝書いていたら、いかにも、ニコラのブログに食いついている感が出ちゃうもの・・・」

と、ミウは用心しながら、ニコラに近づこうとしていた。

「まあ、ニコラの顔がわからないけれど・・・昨日は気づかなかったけれど・・・素敵な写真がたくさんアップされてる・・・」

と、ミウはニコラのブログを宝物のように扱った。

「顔は写らないようにしているけど・・・そうか、スポーツタイプの自転車を愛好するひとって、サイクリストって言うんだ・・・」

と、ミウはニコラのブログの写真を見ながら、そういう知識を仕入れていった。

「ニコラ・・・細身のスポーツマンなんだ・・・かっこいい・・・」

と、ミウは稲村ヶ崎を駆け上がるニコラを後ろから撮った写真に感動を覚えた。

「肩甲骨のカタチが美しい・・・」

と、ミウは白ワインに少し酔いながら、ボーっとしていた。

「背中からお尻までのボディラインが、ほんとに美しいわ・・・」

と、ミウはため息をついた。

「サイクリストの身体って、美しいのね・・・」

と、ミウは白ワインを飲みながら、思わず、笑顔になってしまう。

「ニコラって、若いのかしら・・・20代中盤くらい?」

と、ミウは言葉にする。

「年下も、いいかも・・・いやだ・・・もう、彼氏にした時のこと、考えている・・・」

と、ミウは言葉にする。

「綺麗なお尻・・・この筋肉の付き方・・・ぞくぞくしちゃうわ・・・」

と、ミウは顔を真赤にしてしまう。

「ふふ・・・ちょっと嬉しくなっちゃうな。こういう刺激、久しぶり・・・」

と、ミウは言う。

「えーと、ニコラとお近づきになりたいけど・・・まずは、会話を交わすことかしら・・・」

と、ミウは言葉にする。

「気に入った写真にコメントをつけてみよう・・・とにかく、わたしに出来ることをやれば・・・もし、相性が合えば・・・会話に発展するはずだし」

と、ミウは言葉にする。

「えーと、わたしのゾクゾクする写真・・・この肩甲骨の写真?・・・ううん、いきなり、身体なんか褒めたら、変なおばさんだと思われちゃう・・・」

と、ミウは言葉にする。

「無難な美しい写真を・・・えーと・・・あ、この江ノ島の上に月が出てる写真・・・これ、綺麗・・・これにコメントしよ」

と、ミウはお気に入りの写真を選ぶ。

「さっき、わたしについてきた「月夜野」の綺麗な月が・・・この月の写真を選べって、きっと言ってくれてるのよ・・・いいことはしておくもんだわ」

と、ミウは超ご機嫌だ。

「わたしの住んでいる街も夜の月が綺麗な場所です。でも、この江ノ島の月も綺麗・・・ニコラさんは美しいモノが大好きな方なんですね//エマ」

と、ミウはニコラのブログに、そのようにコメントを書いた。

「どんな風に、コメントを返してくるかな・・・ニコラ・・・」

と、ミウは自分のコメントに満足しながら、ニコラのブログのページを閉じた。

「どんな仕事をしている人なのかしら?ニコラ・・・サラリーマンなら、今日帰ってくるだろうし、明日の朝になれば、わたしのコメントに何か反応があるはずだわ・・・」

と、言葉にするミウ。


ミウはそうつぶやくと、久々にいい笑顔で、白ワインを飲んだ。

やさしい、いい笑顔だった。


ミウは稲村ヶ崎付近を歩いている。

その青年は134号線を江ノ島方面から、鎌倉方面へ向けて、赤いサイクルレーサータイプの自転車で駆け上がってくる。


ニコラだ。

顔はわからない。


赤と白と黒のかっこいいサイクルジャージに身を包んでいる。

そのニコラがミウの前を通り過ぎ、稲村ヶ崎を駆け上がっていく。


肩甲骨の美しさが目を引く。

背中から、腰のラインが艶かしい。


精悍なスポーツマンの姿が、そこにはあった・・・。


突き抜ける青空の下、サイクルウェア姿の精悍な後ろ姿のニコラは消えていった。


「ふう・・・よく寝たわ・・・熟睡したのね・・・」

と、ミウは次の日の朝、気持ちよく目覚めていた。

「まだ、6時前・・・だけど、熟睡したからか、気分は爽快・・・こんなこと、久しぶりね」

と、思わず、笑顔になるミウ。


「これも、ニコラのおかげね・・・ニコラさま様だわ」

と、さわやかな笑顔のミウはシャワールームに消える。


気持ちよく身体と髪の毛を洗ったミウは、身体をしっかり拭いて、シャワールームから出てくる。

「少しお腹が空いている・・・こんなこと、珍しいわ」

と、ミウは言葉にすると、食パンをトースターにセットし、インスタントコーヒーを入れる。


焼きあがったトーストにマーガリンを塗り、しゃくりとかじると、香ばしい匂いが鼻腔にやさしく広がっていく。

「朝食が美味しいわ・・・こんなの久しぶり・・・」

と、ミウは笑顔になりながら、つぶやく。

「ミルクが飲みたい・・・今日買ってこようっと」

と、ミウはつぶやき、ルンルンの気分で、朝食を食べ終わる・・・。


「熟睡も出来たし、朝も少し早く起きられて・・・朝食が美味しく感じられる・・・」

と、ミウはやさしい表情で言葉にする。

「そっか。女性には、男性に対する、毎日の恋ゴコロがとっても大切ってことね・・・それがあって、初めて、毎日が素敵に過ごせるってことね・・・」

と、ミウは理解する。

「そっか。そうなんだ・・・だって、昨日までとは、全然違うもの・・・朝一番が気持ちいいし、お腹も空くし、朝食が美味しいし・・・」

と、ミウは言葉にする。

「これ、ホルモンバランスって、奴かしら?今まで女性ホルモンが足りなかった?女性ホルモンって、恋をすると出るもの?」

と、ミウは言葉にする。

「いいわ。いずれにしろ、恋をしたから・・・実際にいる誰かに恋を感じられたから・・・バランスがよくなって、素敵な生活に戻れた・・・そういうことだわ・・・」

と、ミウは言葉にする。

「わかったじゃなーい・・・そういうことなのね・・・恋ゴコロって女性にとって、一番大切なものなんだ・・・」

と、ミウは新しい真理にでも、触れたように、納得して言葉にするのだった。


「じゃあ、また、恋ゴコロを燃やしちゃいましょうか?」

と、ミウは上機嫌でパソコンを立ち上げる。

「ニコラ・・・どんな言葉をくれてるかな?わたしにー」

と、ミウは上機嫌で、パソコンが立ち上がるのを待っている。

「よし・・・と、ニコラ・・・何て書いてくれたの?ま、まだ、様子見かもしれないけど・・・」

と、ミウはニコラのブログに飛んで行く・・・。


「何の書き込みもされてない・・・」

と、ミウはその事実に気付き、つい、立ち尽くしてしまった・・・。


つづく


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「月夜野純愛物語!」(ラブ・クリスマス2)(5)

2013年12月05日 | 今の物語
「愛しているよ、ミウ。僕らはもう大丈夫だ。二人でしあわせになっていこう!」

と、精悍な顔をした年上の男性が笑顔でミウに声をかける。

「わたしも、あなたと同じ夢を見るわ。あなたがこの世界で、頂点に立つのをサポートするのが、わたしの仕事だわ。わたし、がんばるから」

と、若いミウは、輝くような笑顔で、その男性を見つめている。

「わたし、今が、人生で、一番しあわせ!」

と、言葉にした若いミウは、その男性の頬にしあわせな表情でキスをしていた。


と、そこでミウは目を覚ます。

「・・・夢か・・・夢でも、ほんの少しだけ、しあわせを感じられたわ。今じゃあ、あんなしあわせ感・・・ううん、しあわせの欠片すら、感じることはないわ」

と、ミウは暗い表情でつぶやく。


日曜日の夕方6時頃、ミウは部屋で目を覚ましていた。

「そうか・・・わたし、ワインで眠ってしまったのね・・・」

と、ミウはつぶやいた。

「貴重な休みも、一瞬で終わっちゃった・・・また、お酒飲んだら、すぐに明日になっちゃう・・・地獄のような毎日にまた、逆戻りだわ・・・」

と、ミウはため息をついた。

「あんな夢・・・そんな時代も、わたしには、あったのに・・・今じゃ、しあわせの欠片すら、感じられないって・・・もう、いや・・・」

と、ミウの頬を思わず、涙がつたう・・・。

「わたし、おんななのよ・・・このままじゃ、駄目・・・おんなとして、駄目になっていくばかりだもん・・・」

と、ミウはうめくように言葉にする。

「わたし、もう32歳なのよ・・・おんなは二の腕から腐っていくっていうじゃない・・・わたしの二の腕、こんなよ・・・もう、おばさんだわ・・・」

と、ミウは涙ながらに言葉にする。

「いや・・・おばさんには、なりたくない。おばんって、呼ばれたくない・・・」

と、ミウは涙声で話す。

「わたし、好きな男に抱かれたいのよ・・・好きな男と一緒にイキたいのよ。しあわせな瞬間をつかみたいのよ・・・」

と、ミウは絶叫する。


「駄目だわ・・・こんな生活じゃ、ひととしても・・・もう、落ちるところまで、さらに落ちちゃう・・・それは嫌・・・嫌なの・・・」

と、ミウは涙声で言葉にする。

「オナニーと酒に逃げこむ生活は、もういや・・・このままじゃ、この街で、おばさんになって、醜く朽ち果てるだけだわ、わたし」

と、ミウは涙声で言葉にする。


「そうよ。絶対駄目、今のままじゃ・・・」

と、ミウはつぶやく。

「そうよ。出会いだわ・・・誰でもいい・・・素敵と思える男性と出会わなきゃ、わたし、さらに駄目になってしまう・・・」

と、ミウはつぶやき・・・いつの間にか立ち上がっていた・・・。

「「月夜野」の街で若い男性に出会えないなら・・・素敵な若い男性のいる場所に、わたしが行けばいいのよ。わたしが動けばいいのよ」

と、ミウはつぶやくと、自分のパソコンに電源を入れ、立ち上げていた・・・。

「絶対に、出会うの。絶対に・・・」

と、ミウはつぶやきながら、パソコンの画面に見入っていた・・・。


「よし、サトル、稲村ヶ崎を一気に駆け上がれ!」

と、チームメイトで兄貴役の沢島カズキ(30)が活を入れると、七里ヶ浜沿いの国道134号線で、先を引くサトルは、さらに気合を入れて自転車のペダルを漕いでいく。

「おっしゃーーー!」

と、叫びながら、走りに気合を入れていくサトルは、瞬間、突き抜ける光そのものになったような気がしていた。


鈴木サトル(28)は、八津菱電機の社員で、鎌倉にあるコンピューター製作所に勤務していた。

彼は、関西国際空港の担当で、システムエンジニアだった。そのサトルは週末になるとサイクリストとして、湘南の海岸沿いをレーサータイプの自転車で、

トレーニングを積んでいた。そして、時折、背中のポッケからデジカメを出し、湘南の美しい風景を切り取るのを趣味としていた。


独身寮の自分の部屋に帰りついていたサトルは、デジカメをパソコンに繋ぎ、写した写真をパソコンに落としていた。

「へー・・・今日もたくさん走ったけれど、写真もたくさん撮ったなあ・・・」

と言いながら、サトルはサイクルジャージから普段着に着替えていた。

「へえ・・・しかし、最近は、週末だけが、天国だよなあ・・・また、明日から地獄のような毎日が始まるか・・・うへーって感じ・・・」

と、サトルはつぶやく。

「と、今日の一枚は、どれにしようかな・・・一般ウケのいい写真をブログにアップしなくちゃね。勤務先が鎌倉でよかったよなー。自然と美しい写真をゲット出来るし」

と、サトルはつぶやくと、

「おし、これにしよう。夕日に染まる七里ヶ浜・・・これだな。・・・と、僕のブログにアップして・・・誰かコメントくれるかな?」

と、サトルは笑顔で、自分のブログに写真をアップする。


・・・と、部屋についている内線が鳴る。

プルル、プルル、プルル・・・。

「うん。誰だ?ま、高杉あたりだろう、おそらく・・・もちろん、今から部屋に来るって言うんだろうし」

と、つぶやいたサトルは内線に出る。

「おー、高杉か。うん、今帰ったとこ・・・おー、酒飲むか・・・ん?そうだな、スーパー行って、酒の肴の材料見つけてくるか。うん、寮の玄関で待ってる」

と、サトルは話し、内線は切れた。

「ま、日曜日の夜は飲まないとやってられないからなー。最も明日の朝がつらいけど・・・でも、日曜日の夜は飲まないと、ねー」

と、友人との飲みに気分はルンルンのサトルだった。

「さて、行くか・・・」

と、サトルは部屋を出て行った・・・。


サトルは、パソコンを立ち上げたまま、出て行った。

サトルのブログの写真ページ・・・そのページのコメント欄に言葉が並んでいた。

「素敵な写真ですね。湘南の七里ヶ浜に落ちる夕日ですか・・・わたしの住んでいる近くには海が無いので、正直うらやましいです」

「でも、この写真を見ていると・・・そこへ行けたみたいで嬉しいです」

と言う言葉だった。


コメント者の名前は、「エマ」だった。


次の日の朝5時・・・サトルは自分のベッドで寝ている所を携帯電話のアラームで起こされていた。

「糞ー。朝が来たか・・・ま、仕方ない・・・今日から仕事か・・・」

と、チカラなく言葉にするサトルだった。

「昨日は結局、高杉と外で飲んじゃったからな。10時過ぎには帰ってきたはずだけど・・・」

と、サトルは言葉にしながら、パソコンを立ち上げている。

「とにかく、シャワー浴びなきゃ」

と、サトルは言葉にすると部屋を出て行く。独身寮のシャワーは一階の共用部分に備えてあった。


「ふー、一息ついた・・・ぐだぐだだった身体がとりあえず、シャッキリした感じだけど・・・」

と、サトルは髪の毛を乾かしながら、自分のパソコンを覗きこむ

「と、メール関係は・・・とりあえず、友人からのメールは無いようだなあ・・・」

と、いろいろとチェックするサトルだった。

「ん、僕のブログにコメントが届きました?へー、そうなんだ」

と、メールボックスにブログにコメントが届いた旨のメールが届いていた。

と、サトルは自分のブログをチェックする。


「素敵な写真ですね。湘南の七里ヶ浜に落ちる夕日ですか・・・わたしの住んでいる近くには海が無いので、正直うらやましいです」

「でも、この写真を見ていると・・・そこへ行けたみたいで嬉しいです」

というコメントがエマという名前と共に、サトルのブログの写真に付いていた。


「へー・・・珍しいな。いつも写真を趣味にする男性からのコメントばかりなのに・・・エマって言うんなら、このひと、女性だよな?」

と、サトルは言葉にする。

「いや?ネカマが商品でも売りつけようとしているのかな。まあ、とりあえずは、歓迎のコメントだけ書いておくか・・・様子見だな」

と、ネットで数々痛い目に遭っているサトルは、そこは慎重に言葉を返していた。

「素敵なコメントありがとうございます。この写真がエマさんにとって、少しでも、しあわせを感じさせる写真になれたのなら、それは僕の喜びでもあります」

と、サトルはコメントを書き込み・・・パソコンを立ち下げ、荷物を入れたバックを手に持つと、急いで部屋を出て行った。


6時半過ぎに起きたミウは、すぐにパソコンを立ち上げ・・・冷蔵庫を開けるとトマトジュースの紙パックを取り出す。

ストローを挿し、朝ごはん代わりにトマトジュースを飲み干すミウ。


ほんの少しだけ身体が綺麗になったように感じる。


と、その時間の間にパソコンは立ち上がっている。

「えーと、昨日見つけた、素敵な写真のブログは・・・あ、これだわ・・・あ、コメントが返ってきている!」

と、ミウはつい笑顔になる。

「素敵なコメントありがとうございます。この写真がエマさんにとって、少しでも、しあわせを感じさせる写真になれたのなら、それは僕の喜びでもあります」

というコメントに少しだけ笑顔になるミウ。

「まあ、無難な言葉ね・・・型通りの言葉で、何の感情も入っていない・・・様子見てる感じ?」

と、ミウは思う。

「まあ、いいか。とりあえず、あの美しい写真を撮る人だもの・・・素敵な感性をしているのは確かだわ。美しいものを好きな男性」

と、ミウは言葉にする。

「鎌倉に住んでいるらしい・・・夕焼けの七里ヶ浜・・・こういう題名も、素敵だし・・・」

と、ミウはなんとなく宙を見つめる。

「うん。きっと素敵な男性に違いないわ・・・うん。小さな小さな・・・しあわせの鍵じゃないかしら・・・これ・・・」

と、ミウは自分に言葉を出してみる。

「うん。いいわ。少しだけ元気が出た・・・夢が出来た・・・それでいいの・・・」

と、ミウは言葉にすると、笑顔になって、パソコンを立ち下げ、介護士のユニフォームに着替えて、部屋を出て行った。


ミウは笑顔だった。


つづく

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「月夜野純愛物語!」(ラブ・クリスマス2)(4)

2013年12月05日 | 今の物語
ミウが鳴り出した携帯を見つめるとディスプレイに、

「ユカ」

と出ていた。

「わたしのブログの詩が更新されたの、見たのかしら?」

と、ミウは言葉にすると、改めて携帯に出た。

「もしもし、ミウ?」

と、ユカが話してくる。


潮田ユカ(31)は、ミウが東京で働いていた頃の同僚だった。

ユカは、出版社の清潮社に勤める、編集者。雑誌「Bon Voyage」の編集をしていた。


「ユカ・・・今はどこ?会社?それとも自宅?」

と、ミウは聞く。

「自宅よ。今日は休みが取れたの、もう3週間ぶりかしら・・・だから、今日はのんびりしてて・・・今、ミウのブログ見たら、詩が更新されてたから、電話してみたの」

と、ユカは言う。

「ずっと更新してなかったでしょう?」

と、ユカが言う。

「うん。詩を書く気になれなかったから・・・ずっと・・・」

と、ミウは言う。

「大変よね、介護の仕事って・・・いっつも帰り遅いんでしょ?」

と、ユカが言う。

「うん。その日によってマチマチだけどね・・・というか、夢が全然見れない場所だから、そっちの方がつらいかも・・・」

と、ミウは言う。

「でも、その道を選んだのは・・・」

と、ユカが言葉にする。

「そうね。わたし自身なんだし・・・それはそうなんだけど・・・」

と、ミウは少し言葉に詰まる。

「ミウは一緒に仕事をしている頃・・・とっても輝いていたわ・・・」

と、ユカが言葉にしてくれる。

「ふふ。そうね・・・あの頃は楽しかった・・・やりがいもあったし、手応えだって・・・」

と、ミウは遠くを見るような表情で言葉にする。

「でも、いいの。今の道を選んだのは、わたしなんだし・・・それは真実なんだし・・・今の人生を受け入れていかなくっちゃ・・・」

と、ミウは言う。

「やっぱり、つらい?」

と、ユカは聞いてくれる。

「下品な女性や、レディース上がりの怖い女性に囲まれているわ・・・」

と、ミウは言う。

「うーん、それ、職場環境としては・・・かなり最悪な感じね」

と、ユカは言う。

「うん。負けないようにはしているけど・・・たまに負けそうになるわ・・・現実に・・・」

と、ミウは言う。

「つらい時は電話して・・・仕事でいっぱいいっぱいの時は無理だけど・・・わたしには、あなたを助ける義務があるから・・・」

と、ユカは強い口調で言う。

「ありがとう・・・ユカにそう言われると素直に嬉しいわ・・・こころを開いておしゃべり出来るのは・・・正直、あなただけだから・・・」

と、ミウはポツリと言う。

「「月夜野」っていう町名に惹かれて、行ったのに、ね?そういう場所じゃ、なかった?」

と、ユカが聞く。

「自然は素晴らしいところよ。風景も綺麗・・・確かに月夜の晩は、綺麗な夜空になるけど・・・」

と、ミウは少し口ごもる。

「やっぱり、ひと・・・よね?」

と、ユカが言う。

「うん、ひと・・・」

と、ミウが言った・・・。


程なく、ユカからの電話は切れ、ミウはまた、ひとりぼっちになった・・・。


「ふぅ・・・」

と、ミウはポツリとため息を吐く。

「ユカの声を聞くと・・・正直、つらくなる・・・おしゃべりしている間は楽しいけれど・・・ありがたいとは思うけど・・・いろいろ思い出して、つらくなるわ・・・」

と、ミウは言葉にする。

「ユカとしゃべった後が、一番つらい・・・」

と、ミウはもう一度ため息をついている。


「あなたに会える日を心待ちにしています。あなただけを待ってるの・・・誰もいない部屋で・・・誰も愛せない部屋で・・・」


暗い顔をしてミウはブログに詩を書き込んでいた・・・つらくてつらくて、仕方が無かった・・・。


「誰も愛してくれない部屋で・・・」


と言う言葉をアップすると、ミウは膝を抱えて涙を流し始めていた・・・。


そして、ミウは、いつしか、右指をパンツの中に滑り込ませていた。

左手で、乳首をいじり・・・いつものように激しく自身を愛していく。


「駄目・・・逃げ場がない・・・こんなことをする以外・・・」


と言いながら、ミウはパジャマとパンツを脱ぎ、本格的にクリをいじりだす。


「ああ、気持ちいい・・・本当に気持ちいいの・・・」


と、クリをいじりながら、よだれを流すミウ・・・。


「ああ、誰かに見られたい・・・わたしのこんな駄目な姿・・・」


と、ミウはつぶやいている。


「男のモノも舐めたいわ・・・舐めながらクリいじったら、それは、それは、気持ちいいのに・・・」


と、ミウはつぶやいている。


「いいわ、男のモノにかぶりついている・・・そういう妄想をしながら、クリをいじればいいんじゃない・・・」


と、ミウはつぶやきながら、目をつぶる。


と、ミウの脳裏に勃起した男の太いイチモツが現れる。


「そう、これよ。これを私がしゃぶり尽くすの・・・ああ、気持ちいい」


ミウは目をつぶり、ヨダレを垂らしながら、さらに激しくクリをいじっていく。


「ああ、今度はそれをわたしのあそこに激しくぶちこんで・・・さあ、早くぅ」


と、ミウはつぶやくと・・・濡れそぼったヴァギナに右指を押しこんで行く。


「気持ちいい・・・ああ、それ、それがいいの・・・たまらない・・・そう奥まで突いて・・・もっと激しく・・・ねえ」


と、ミウは男に抱かれる自分を妄想しながら、さらに激しく指と腰を動かしていく。


「そうよ、もっと激しくクリをいじって・・・ああ、大きく勃起してる・・・わたしのクリ・・・だって、すごく感じるの・・・」


と、ミウは言葉にしながら、腰を激しく動かしていく。


「そう。そのまま、奥をかきまわして・・・ああ、気持ちいいいいいいい・・・・」


と、その刹那、ミウは絶叫と共にイッた。


局部はぐちょぐちょに濡れ・・・布団の上に、倒れて、痙攣するミウの姿がそこにあった・・・。

ミウは別世界へと旅立っていた。ミウは、すでに気持ち良さそうな表情で、眠っていた・・・。



「ミウ・・・ちょっとこの言葉、痛すぎじゃない?ミウって、もう32歳の大人の女性よ・・・」


と、ユカのマンションに来ていた、ミウの同期で、元同僚だった、ユカの同僚の小菅ミキ(31)が言葉にする。

「そうなの・・・さっき電話してみたけど、ミウ、かなりキテるみたい」

と、ユカが言葉にする。

「下品な女性とか、レディース上がりの元ヤンの女性とかに囲まれているんだって。ミウの介護士の職場・・・」

と、ユカが説明する。

「ふーん・・・まあ、でも、その道を選んだのは、ミウ自身なんだし・・・そればかりは、どうもしてあげられないわ」

と、ミキは言う。

「まあ、そうなんだけどね・・・」

と、ユカは言う。

「あの事件さえ、なければ、ね・・・」

と、ミキはため息をつく。

「そう。あの事件さえ・・・なければ・・・」

と、ユカも言葉にした。


「いつの間にか、疲れて、寝ちゃったのか・・・」

と、ミウはいつの間にか落ちた眠りから覚めて、言葉にする。

「11時か・・・もうすぐお昼ね・・・トマトソースのパスタ作って、ワインでも飲も・・・」

と、ミウは立ち上がり、狭いキッチンで、トマトソースを温め、パスタを茹でる・・・。

「えーと、白ワインを出して・・・休みの昼間から、パスタパーティーだわ・・・」

と、ミウは言葉にする。

「安い白ワインと安いパスタか・・・。いいわ、酔えればいいの、酔えれば・・・」

と、ミウは白ワインをゴクリと飲む・・・。

「ふう・・・安いワイン・・・安い味しかしない・・・」

と、ミウは言葉にする。

「せっかくの休みもどこに行くでもなく、朝はオナニーに逃げ込んで、昼から安い白ワインを飲んで・・・わたし、女性として、落ちるところまで、落ちちゃった・・・」

と、ミウは嘆く。

「ユカとしゃべっても・・・昔だったら、朝まで楽しくおしゃべり出来たのに、今じゃ10分と持たない・・・そりゃ、そうよね。歩いている道が全然違うんだもの」

と、ミウは言葉にする。

「ユカが気を使っているのがわかる・・・そう、要はわたしの話を本気で聞いてくれるひとなんて、この世にひとりもいないの・・・」

と、ミウは言う。

「わたしだってもう若くない・・・もう30歳超えちゃったし、職場は地獄だし、賃金は安いし、何より夢も希望も無いわ・・・」

と、ミウはワインを飲みながら言う。

「子供がいないことだけが、希望だと思っていたけど・・・」

と、ミウは言葉にする。

「逆に子供がいたほうが吹っ切れたかも・・・」

と、ミウはグラスのワインを飲み干し、乱暴にワインを注ぎ足す。

「ううん。今の賃金じゃ、子供に教育を受けさせることすら、出来ないわ・・・母親が酒浸りなんて・・・そんな姿も見せられないし・・・」

と、ミウは言う。

「休みの昼間に何もすることがない・・・友達は気を使って話してくれるだけ・・・平日は地獄・・・どうすればいいの?わたし・・・」

と、ミウはいつの間にか涙を流しながら叫んでいた。

「もういやなの・・・誰か助けに来て・・・こんな毎日・・・こんな毎日もう、たくさんなの・・・誰か、誰か、助けてよ・・・」

と、ミウは安ワインを飲みながら涙を流していた・・・。


潮田ユカと小菅ミキは街に出て、行きつけのイタリアン・トラットリア「ボーノ・ボーノ」に来ていた。

「一緒に入社した頃のミウは本当に輝いていたわよね」

と、ユカはボンゴレ・ロッソを食べている。ワイングラスにイタリアワインのサンタ・クリスティーナの白を注いでいる。

「ほんと・・・妹にしたいくらい、かわいかったし、輝いていたわ、あの頃のミウは・・・」

と、ミキはカルボナーラを食べながら話す。

「サンタ・クリスティーナは美味しいわね。休日の昼間って感じの華やかさがあるわ」

と、ミキはワイン通のところを見せる。

「あの子もワインが好きだった・・・よく一緒に飲んだのに・・・」

と、ミキは少し悲しそうな表情で話す。

「ミウは、高くて美味しいワインが大好きだったわよね・・・ソムリエ並のワインの知識も持ってたし・・・」

と、ユカは言葉にする。

「その知識がなまじあるだけに・・・ミウ・・・今、つらいはずだわ・・・」

と、寂しそうな表情になるミキだった。

「そんなにミキの事思ってるんだったら、ミキは、なぜ、ミウに電話してあげないの?」

と、ユカはミキに少し怒ったような表情で、言う。

「だって、今のあの子と・・・共通の話題なんて、ひとつも無いもの・・・それがわかってるから・・・気まずい思いをミウにさせたくないのよ・・・」

と、ミキは言う。

「あなただって、わかってるはずよ・・・ミウに電話したって、10分と持たないでしょ?お互い気まずい思いで電話を切る・・・毎回そうでしょ?」

と、ミキは鋭く言う。

「それはそうだけど・・・わたしには、ミウの話を聞く義務が・・・」

と、ユカは寂しそうに言う。

「それはあなたが勝手に思っているだけだわ・・・それはミウだって、わかっているはずよ・・・たぶん・・・」

と、ミキが言う。

「でも・・・わたしに今のミウに出来ることは、それくらいだから・・・」

と、ユカも寂しそうに言う。

「わたしは、今のミウを見たくないの・・・あんなに輝いていたミウを知っているから・・・今のミウで上書きしたくないの・・・」

と、ミキは言葉にしている。


「どうにか、出来ないかしらね」

と、ユカは哀しげに言葉にする。

「そうね・・・」

と、ミキはその言葉に返す言葉を見つけられないでいた・・・。


つづく

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「月夜野純愛物語!」(ラブ・クリスマス2)(3)

2013年12月04日 | 今の物語
9月下旬の平日の夜、ミウは、この「月夜野」に越してきて、「朝日ヘルパー」に就職した日に出席した、歓迎会の席を思い出していた。

皆、笑顔で歓迎してくれた。所長の竹島を始めとした同僚達・・・元ヤンの咲田も、その席には出席していた。

ミウの横には、世話焼き好きの豊島テルコが座り、一緒にビールを飲んでいた。


その時のシーンが頭に蘇る・・・。


「しかし、姫ちゃんも、よくもまあ、この街にやってきたもんだねえ」

と、テルコは話している。

「え?どういうことですか?」

と、ミウは思わず質問する。

「この街は・・・皆、19歳になると、都会にあこがれて出て行ってしまう街だからだ」

と、テルコは事も無げに言う。

「過疎という程じゃねえが・・・19歳から上の大人の男も、女も・・・皆、都会に行っちまうから、ジジババか、18歳までの子供しか残ってねえ」

と、テルコは言う。

「だから・・・出会いなんか、ねーぞ。まあ、農家の息子って手がねえではねえが・・・農家の息子も結構な歳寄りになっちまってるからな」

と、テルコは言う。

「俺にも娘がいるんだが・・・東京さ出てって・・・それ以来帰ってこねえ」

と、テルコは少し寂しそうに言う。

「孫もいるんだが・・・爺ちゃんも歳だから、近くに住めって、言ったって、言うこと聞かねえ・・・あいつら月夜野に戻ってくる気もねえみたいだ」

と、テルコは寂しそうに言う。

「どこでも、そうだ・・・だから、おらも働いてるってことだ。家にいたって仕方ねーし、少しでもゼニコ稼いだ方がええがらな」

と、テルコは言う。

「それが月夜野の真実だ。ジジババと子供の街だ・・・だから、この街で、出会いなんて考えても、無駄だからな」

と、テルコは言った。

「わたし、そういうのが、嫌で・・・男性と出会いたくなくて、この街に逃げてきたんです・・・」

と、ミウはポツリと言った。

「ほんとか、それ、お前」

その時、それまで静かにビールを飲んでいた咲田ヨウコが怒りの表情を顕にしながら、静かに聞いてくる。

「うん」

と、ミウがコクリと頷くと、ヨウコは、強い目でミウを見つめ、それから、下を向いて、また、ビールを飲み続けた。

「ヨウコも何かワケありみてえだ。あんなに美しい子が、この「月夜野」にいるなんて、おがしいからな」

と、テルコは小さな声で、ミウに告げた。


その時以来、ヨウコはミウに冷たくあたるようになった。


「だからよ、この街には、希望なんて、ねえんだ」

と、テルコは言う。

「「月夜野」なんて、へたに風流な名前がついてるもんでえ、勘違いして引っ越ししてくる奴もいるが・・・半年と持たねえ・・・皆、出てっちまう」

と、テルコは少しビールに酔いながら言葉にする。

「早くいえば、夢がねえ。そういう街だど。この「月夜野」って街は・・・それでも、我慢できるが?姫ちゃんよ」

と、テルコは言う。寂しそうに・・・。

「そういう街だから・・・引っ越してきたんです。わたし・・・」

と言ってミウは笑顔になった。でも、涙で少し笑顔がゆがんだ。


ヨウコはその歪んだミウの笑顔を静かに見ていた。


「夢の無い街かあ・・・」

と、ミウは、白ワインを飲みながら、そういう言葉にしていた。

「確かに・・・今まで働いてきて、若い男性に会ったことがないもんな、この街では・・・」

と、ミウは言葉にする。

「出会うのは、老人と子供ばかり・・・」

と、ミウは感慨深く、言葉にする。


「わたし、早くこの街を出たいの・・・」

仕事で知り合いになった農家の島田さんの高校生の娘「アキちゃん」が言葉にしていた。

「わたし、農家なんて継ぐ気ないし、東京でOLをやりながら、素敵な王子様を探すんだ」

と、目をハートマークにしながら言葉にしたアキちゃんの言葉を思い出す。

「だって、女性のしあわせは、出会う男性によって決まるでしょ?」

と、アキちゃんは話してくれた。

「そうね。そういうものよね・・・」

と、ミウは大人びて頷く。

「でも・・・なんでミウさんは、独り身で、この街にいるんですか?」

と、アキちゃんは不思議そうに聞く。

「え、それは・・・仕事がこの街にあるから・・・かな?」

と、ミウはしどろもどろになって答える。

「失礼かもしれないけど・・・介護士って、東京でも出来る仕事なんじゃないですか?」

と、アキは鋭く質問してくる。

「まあ、そうね・・・だとすれば・・・この街の自然が好きなのね、わたし・・・」

と、ミウは言う。

「この街の自然ですか?」

と、アキは不思議そうな顔をする。

「大人になるとわかるわ・・・東京の街なんかより、「月夜野」の自然の方がいいって思える日が・・・大人になると来るの・・・そういう時が・・・」

と、ミウは言う。

「ふーん・・・わたし、子供なんでしょうね。東京の方が全然好きだし、東京で、素敵な男性に出会って、お嫁さんになるのが、夢ですから・・・」

と、アキは言った。

「わたしも、あなたくらいの頃は、そう思っていたわ。そういう夢を持っていた・・・懐かしいわ」

と、ミウは言う。

「でも・・・自然こそが、わたし達にやさしくしてくれるのよ・・・」

と、ミウが言う。

「「月夜野」の自然・・・あなたも、この「月夜野」の街の語源になった、夜の月を見たことなあい?秋から冬は特に美しいって言うじゃない、「月夜野」の月は・・・」

と、ミウは言う。

「あー、わたし、そんなに注意して、月見てなかったかも?」

と、アキちゃんは言ってくれる。

「今度、一度、注意して、月、見てごらん。それはそれは美しいから」

と、ミウが言うと、

「わかりました。今度、注意深く、「月夜野」の月を見てみます」

と、素直なアキは笑顔で、言ってくれた。


「それに・・・」


と、ミウは言いよどむ・・・。

「人生って、そうそう、うまくいかない時もあるから・・・それも覚えておいて」

と、ミウが言うと、アキは少し不思議そうな顔をしてから、コクリと頷き、走っていった。


「しかし、姫ちゃんはなぜ、うちみたいな事務所で働くことを希望したんだ?」

と、所長の竹島と二人きりになった時、さらりと聞かれたことを思い出したミウだった。

「それは・・・わたし、おじいちゃん、おばあちゃん子だったので・・・そういう方をサポートしたいと長く思っていたので・・・」

と、ミウは言葉にした。

「ふうーん・・・殊勝な女性だなあ、姫ちゃんは・・・今どき、珍しいよ、そういう女性は・・・」

と、人のよい竹島は、笑顔で頷く。

「ただ・・・介護士の仕事は、こう言うとあれだが、全身を相手に密着させることだって普通にあるんだよ。それ耐えられる?」

と、竹島は確認する。

「だ・・・大丈夫です」

と、ミウは言葉にする。

「まあ、こう言うとあれなんだが・・・老人だって、男だからねー。わざと身体を押し付けてくる不心得な男性もたくさん、いるんだ」

と、竹島は言葉にする。

「と言うか、むしろ、姫ちゃんみたいな美しい女性だったら・・・下半身をわざと押し付けてくる男性だって、出てくる事だって、あるよ」

と、竹島は真面目な顔して言う。

「それでも、耐えられるかね?」

と、竹島は真面目な顔で聞いてくる。

「大丈夫です。仕事だと割り切れれば・・・それだって、仕事のうちでしょう?そう思えれば、わたしは、頑張れます」

と、ミウは笑顔で返す。

「そうか・・・まあ、それと姫ちゃんは、身体が小さいから・・・ちょっと大変かもしれんがな。肉体労働だし」

と、竹島が心配すると、

「いいんです。それ・・・それだから、いいんです」

と、ミウは強い口調で言う。

「え、どういうこと?」

と、竹島は聞く。

「私、親孝行しているつもりで、全力でやりたいんです。親孝行出来ていないから、だからこそ、親孝行の代わりに、自分を痛めつけたいんです」

と、ミウは強い口調で、竹島を見つめながら、言った。

「そうか・・・姫ちゃんは、強いんだな」

と、竹島は満足そう言った。


ミウは少しはにかみながら、笑顔になった。


「わたし・・・他の人の前では・・・いい子ぶりっ子しちゃうんだ・・・いつの間にか・・・」

と、ウィスキーの水割りを飲みながら、ミウは言葉にした。

「本音を隠して・・・他人によく思われたいって、わたし思ってるんだ・・・でも、それって、当たり前のことよね?」

と、ミウは自分に問いかける。

「だって、やさしくされたいもの・・・よく思われたいもの・・・それはいけないことなの?」

と、ミウは自分に言う・・・。

「いい子ぶりっ子・・・かあ・・・なんか、それもいやだな」

と、ミウはつぶやく・・・。


「でも・・・この街に・・・夢が無いのは・・・正直、つらいな」

と、ミウはつぶやく。

「せめて、出会いが・・・男性との出会いさえ、あれば・・・少しは違うのに・・・」

と、ミウは言葉にする。

「だめね、わたし・・・それ、諦めたから、この街に来たはずなのに・・・」

と、ミウは言う。

「でも・・・でも、男性との出会いを諦めたくない・・・やっぱり、わたしは・・・おんななんだわ・・・」

と、ミウは言葉にしていた。


そんな夜が明けた・・・次の日の朝の8時・・・日曜日の朝は気持ちのいい時間が流れていた。


ミウは朝ごはんを準備していた。

「オムレツを焼いて・・・と、サラダも出来たし、お新香も用意して・・」

と、ミウは楽しげに働いている。

「ふー。準備出来たわ・・・いただきます、と・・・」

と、ミウは少し嬉しそうに朝ごはんを食べだす。

「日曜日の朝は、さすがに気分がいいわね・・・今日は休みだし」

と、ミウは言葉にする。

「と言ったって、何の予定もないけどね・・・」

と、ミウは苦笑いしながら、朝ごはんを食べている。

「まあ、いいわ・・・買い物はしてあるから、一日家にいて、楽しめばいいし・・・のんびりしよう。たまの休みくらい・・・」

と、ミウは少しだけ笑顔でつぶやいている。

「ほんと、2週間ぶりかしら・・・休みが取れるなんて・・・」

と、ミウは白いごはんを口に入れながら、のんびりとした表情をしている。


食事を終えたミウは、パソコンを立ち上げ、ネットをやり始める。

「休みの朝、気持ちよい時間、どこまでも、歩いていきたい。わたしを待っている誰かのいる、そちらの方向へ」

ミウはいつものように、思いついた詩を自分のブログに書き込んだ。それだけで彼女は自分が何者かになれているような気がしていた。

「よし、アップ、っと。まあ、誰からもコメント貰えないけど・・・いいの。思ったことを言葉にするだけで、スッキリするから」

と、ミウが言葉にすると、少し間を置いて、ミウの携帯が鳴り始めた。


つづく


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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(2)

2013年12月03日 | 今の物語
未だに残暑の続く9月下旬、「月夜野」でのミウの退屈な毎日は、いつも通り続いていた。


ミウは、「朝日ヘルパー」の同僚達とは、付かず離れずの距離感を保って、過ごしてきていた。

「朝日ヘルパー」の同僚たちは、姫島ミウの付き合いが悪いのを、

「お酒に強くないから」

と、好意的に解釈し、いつしか、あまり、お酒に誘わないようになっていた。


代わりにお茶に誘われる事の方が、多くなったミウだった。


「でも、あれだが。姫ちゃんは、お酒弱いんだったら、何でストレス解消してんだ?」

と、同僚の豊島テルコ(60)は朝日ヘルパーの事務所の待機所で、お茶を飲みながらミウに聞く。


今日は珍しく待機時間の長いミウだった。


「そうですね。友人への電話かな。おしゃべりしているのが、一番のストレス解消になりますから」

と、ミウは正直に話す。

「まあ、そだな。おんなは、馬鹿話しゃべっていれば、辛いことなんて、忘れちまうからな」

とテルコは、がははと笑う。

「んでも、あれか?姫ちゃんは、男さ、いるだか?その綺麗な色白の身体さ、抱いてくれるような男はいるんだが?」

と、テルコは、聞きたいことをズバリ聞いてくる。

「いえ、そんな男性はいません・・・わたし、結構、男性不信気味だし・・・」

と、ミウは静かに答える。

「え、そうだが?もったいねえ・・・そんなに、やわらかそうな肌してんのに、男嫌いだか?」

と、テルコはミウの透けるように白い肌の手を触りながら、そう言う。

「嫌いというか・・・信用出来ないんです。男性というものが・・・」

と、ミウは力なく答える。

「姫ちゃん、まさか、おめえ、処女っつーことはねえよな?」

と、テルコは驚いた顔でミウに聞く。

「それは無いです。わたしだって、人並みに・・・その・・・」

と、ミウは言いにくそうにしゃべる。

「だよな・・・女の俺が見ても、しゃぶりつきたくなるような、女の色香を放ってるど、姫ちゃん・・・」

と、テルコは正直に思ったことを言う。

「そ、そうですか・・・困るなあ、そういうの・・・」

と、ミウは少し赤くなって、少しうつむく。

「そうか。それ、本意じゃねーだが・・・」

と、テルコは心配そうにミウに聞く。

「できれば、男性には、そっとしておいてほしい・・・今の私には、近くにすら、寄ってほしくないんです・・・」

と、ミウは心底迷惑そうに話す・・・。

「そうだか・・・そんなこと思ってただか・・・」

と、テルコは言葉にする。

「ええ・・・」

と、ミウが言うと、

「それはどうだか?」

と、ミウの背後に立って言葉にしたのは、日ごろからミウに良くない感情を持っている咲田ヨウコ(30)だった。

「あ、どうも」

と、ミウはぺこりと頭を下げる。ミウもいつも冷たく当たってくるヨウコが苦手だった。

「あんた、そんなこと言って、実は、男好きなんじゃないの?」

と、ヨウコはテルコの横に座るとタバコをぷかぷか吹かし始める。

「男好きがバレたくないから、近くに男を寄せたくない・・・違うかい?」

と、ヨウコはズバリと指摘してくる。


ミウはヨウコを見ているが、少し戸惑い、言葉にはしない。


「俺がレディースのヘッドやっている頃、俺を、あんたのような目で見てくる、お嬢様達がいたよ。毛並みがよくて、品がよくて、そんな奴ら」

と、ヨウコはミウの目を見つめながら、そう言う。

「レディースってのは、筋を通すのが決まりだ。皆、筋を通して生きてたよ。だが、お嬢様達は違った。皆、オトコ遊びして孕まされてすぐ退学さ」

と、ヨウコは言う。

「おまえ、そいつの仲間だろ。そういう目だ、おまえの目は」

と、ヨウコは指摘する。

「決めつけないでください。わたしは、ただ、男性が信じられないだけです」

と、ミウは静かに言う。

「じゃあ、なんで、そんな色香を放っているんだ?自然と身体が男を求めている証拠じゃないのかよ」

と、ヨウコは厳しく指摘してくる。

「それは私だって、一人の女性ですから・・・自然と男性を求めているのかもしれません。でも、気持ち的には、男性を拒否しているんです」

と、ミウはヨウコの目を見ずにそう話す。

「それがおかしいって俺は言ってるんだよ。どうせ、おまえ・・・毎夜毎夜、オトコの事を思って、オナニーでもしているんだろ。だから、色香を放つんだよ」

と、ヨウコは身も蓋も無いことを言ってのける。

「そんな・・・そんなこと絶対ありません!」

と、ミウは顔を真赤にしながら、言葉を返す。

「ふ。図星だろ。世の中知らないお嬢様の典型だよ。「絶対ありません」って言葉の本当の意味は、「はい。そうです。指摘通り、私は毎夜オナニーに狂ってます」ってこと」

と、ヨウコはズバリ指摘してくる。レディースのヘッドをやっていた経験は伊達じゃなかった。

「ま、お前の話なんて、誰が信じるか!人生甘く考えてるから、軽く人に中身を見抜かれるのさ」

と、ヨウコは言葉にすると、

「ああ、つまんねー。帰るわ、俺。もう出番もないし・・・」

と、ヨウコはタバコを煙草盆で消すと、ムカついた顔して出て行く。

「ほんと、お前、嫌いだわ、俺・・・」

と、ヨウコは吐き捨てるように言うと、ドアの外に消える。


「なんで、ヨウコは、姫ちゃんにつっかかるんだろうね?他の女性には、まあ、笑顔は出さないけれど、つっかかりはしないのに・・・」

と、テルコが不思議そうな顔をする。

「で、ほんとなの?毎日オナニーしてるって?」

と、テルコも聞いてくる。

「そんなことありませんよ。それにそんなこと、言葉にするひと、いるんですか?」

と、ミウは、赤い顔になりながら、自分のお茶を片付ける。

「わたしも帰ります。所長さんに言って、帰らしてもらいます。もう・・・」

と、ミウは言うと、待機所を出て行った。

「なるほど、図星だったんだ・・・姫ちゃん・・・」

と、テルコはつぶやき、のんびりお茶を飲んでいた。


「ったく、「デリカシー」という言葉を知らない人達ばかり、なのかしら?」

と、自分のアパートに戻ったミウは、ウィスキーの水割りを飲みながら、そんな風に憤慨していた。

「わたしだって、32歳よ・・・女ざかりの身体だって持っているわ・・・いつもストレスばかり感じる職場に、逃げ場のないこの生活・・・」

と、ミウは言葉にする。

「オナニーぐらいしなけりゃ、やってられないわよ・・・わたしは、正真正銘の女なんだもん・・・おんな盛りのおんななんだから・・・」

と、ミウは少しのアルコールに軽く酩酊しながら、服の中に手をツッコミ、乳首と局部をさすり始める。

「酔っ払った状態で、するのが、一番気持ちいいわ・・・ああ、感じる・・・いつもより感じやすい身体になってるのかしら・・・」

と、ミウはトロンとした表情で、指を微妙に動かしていく。

「もう少し酔いたい・・・水割りが美味しいわ」

と、ミウは水割りを飲みながら、さらにやさしく自分の身体を愛撫していく。

「乳首が立っちゃった・・・いつもより、敏感になってる・・・」

と、ミウは半分よだれを垂らしながら、やさしく乳首を愛撫する。

「そう。この感じ・・・そう、こうするの。こうすれば、いつものように・・・もっと気持ちよくなれる・・・」

と、ミウは恍惚とした表情で、敏感なところで、やさしく指を動かしていく。

「そう。舐めて・・・そう、そこを舐めてほしいのよ・・・ああ、欲しい、欲しくなってきちゃった・・・」

と、ミウはうっとりした表情で、指はなまめかしく動いている。

「もう、あそこも、濡れてきちゃった・・・こんなに・・・溢れてる・・・」

と、ミウは自分の指で、濡れた具合を感じながら、どんどん指を動かしていく。

「ああ・・・そう、その奥よ、そこを突いてほしいの・・・」

と、ミウは目をつむりながら、言葉にしている。

「ああ、クリが、こんなに勃起してる・・・身体が求めているのよ・・・欲しい・・・欲しいの・・・」

と、ミウは左手で、クリをいじりながら、右指をヴァギナの奥に指しいれる。

「ああ・・・気持ちいい・・・」

と、ミウは引きつり気味になりながら、快感を感じる・・・。

「このまま、動いて・・・そう、やさしく愛撫しながら、腰を動かして欲しいの・・・」

と、ミウは誰かを想像しながら、腰と指を動かしていく。

「ああ、だめ・・・イッちゃう・・・ああ・・・もうちょっと・・・」

と、ミウは自分で腰と指を動かしながら、激しく腰をグラインドさせていく。

「あ。イク・・・あ・・・ああ・・・」

と、ミウは突然止まり・・・身体中を突き抜けていく快感に身を委ねていた・・・。


甘い快感がヴァギナを中心にミウの身体中に広がっていった・・・ミウは日常を忘れることが出来た・・・。


「ふー・・・いつになったら・・・相手して欲しい男性に出会えるのかしらね・・・」

と、ミウはつぶやきながら、真面目な表情になりながら、ティッシュで、濡れたあたりを処理するのだった。


シャワーを浴び終えたミウは、身体を拭くと、狭いキッチンに座りこんだ。

「平日は、ストレスが溜まるばかり・・・ストレスを発散しないとおかしくなっちゃうわ・・・」

と、ミウはつぶやくと、ウィスキーの水割りを作り、口に含む。

「でも、一番のストレスは・・・この街に夢も希望も無いってことかしら・・・」

と、ミウは言葉にしていた。

「まあ、それを承知で、引っ越してきたんだけどね・・・」

と、ミウは言葉にすると・・・ミウは少し遠い目をして、過去のシーンを思い出すのだった。

「忘れたい思い出・・・それを忘れる為に」

と、ミウは静かに言葉にしていた。


つづく


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