母が「自分の事を伯母さんと呼ぶように・・・」と言い、自分を養父の家で育てようとしたことをがどうしても理解できずにいたドンソク。養父の家で女中のように働き、自分の養父と養母の介護までして、最後はその家から追い出され、済州島に戻って一人で暮らしていた母の事がどうしても理解できなかった彼に母は、その養父の法事に出席するために自分を送って欲しいと頼むのだ。癌も進行し、自分に残った時間がわずかであることをわかっていると思われるドンソクの母の願い。
文字も読めず、自分で生活の糧を得る事は難しいとドンソクの母はそんな道を選んだのだろう。息子を思って選んだ道は息子を苦しめる事になったけれど、それは彼女が辛い中で出来る一番いい選択だったのだ。私はそんな風にしか生きられなかった。でもそれしか知らなかったのだから謝らない・・・そんな言葉を息子にぶつけ、更に自分が生まれた場所に連れて行って欲しいという彼女。木浦にある彼女が幼い頃住んでいた村はすでに貯水池の底に沈んでおり見る事は出来ない。両親とも兄弟とも早くに死に別れ、結婚するも夫も娘も亡くした彼女。更に済州島に住みながらも韓国最高峰の漢拏山(ハルラサン)に登った事もなく、噴火口の白鹿譚を見たこともない彼女は、そこにも行ってみたいというのだ。
息子に多くを語る事のなかった母が、最期に少女のような笑顔を浮かべて、身体が動かない事が判っていながらも息子に次々とやりたい事を告げるのだ。
オムニバスドラマとはわかっているものの、イ・ビョンホン演じる息子とキム・ヘジャ演じる母のパートは、そのストーリーもその映像も一本の映画のようなボリュームだ。母は身体が動かず登山は断念し、息子のドンソクも天候に阻まれ噴火口の白鹿譚までたどり着く事は出来ない。それでも息子が撮影した動画を食い入るように見つける母の目には確実に白鹿譚が見えているのが、その表情からも伝わってくる。残された短い時間の中で、やり残した事を全部やっていこうとする母の思い。その少女のような笑顔に彼女が生きてきた人生までもが見えるような気分になってくる。
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何度も出てきた海のシーン、そして最後の漢拏山(ハルラサン)の登山シーン。済州島もこのドラマの大きな登場人物だったということに改めて気づく。