秀作、佳作を上映 ミニシアターの草分け 閉館の「岩波ホール」
毎週のように映画館に通う習慣が出来たのは、学生時代からだった。好きな映画鑑賞が出来るならと、どこにでもフットワーク軽く通っていたが、この岩波ホールに行く時はちょっと身構えたりしたものだった。
「この映画が見たくて来た」という人だけでなく「岩波ホールで上映される映画ファン」という人が確実にいるという事が客席に座っただけでもわかったからだ。(上映開始時間がキチンと決まっているのも、固定ファンの人が見やすいようにという配慮があったのではないかと勝手に思っている。)私は見たい映画がある時に時々行くだけだったので、座席に着く時はいつも「ちょっとお邪魔します」という気持ちがあった。私にはそんな風に思える映画館だった。
2000年の春に上映されていた@玻璃(ガラス)の城は、何回か緊張しながら見た記憶がある・・・
米映画監督のピーター・ボグダノビッチ氏が死去 82歳 アカデミー賞ノミネートの「ラスト・ショー」など
ピーター・ボグダノビッチというと、「ラスト・ショー」の監督と紹介されることが多いが、私はペーパームーンも好きだ。
1973年に公開さたこの映画を見たのは、公開から何年も経った頃だった。
三鷹か五反田の名画座だったと思う。
三本立てのうちの一本だった。
地方を周り聖書を売りつける詐欺師とその手下として仕事をする幼い少女。地方を回るうちに疑似親子のような愛情が生まれてる二人を本当の親子あるライアン・オニールとテータム・オニールが演じ、少女役テータム・オニールはアカデミーの助演女優賞を受賞した映画だった。
ビデオもDVDもない時代は、見たい映画があったら、こんな風に時間を作り、映画館に行くしかなかった。話題に乗り遅れない為に話題作を倍速見る人がいるという今では考えられない位労力が必要だった。ただ、そんな思いをして観た映画の記憶は鮮明だ。
大人の女性になりたい少女が見よう見まねで振りかけた香水の香りがスクリーンからしてくるように感じた事、ペーパームーンの前で記念写真を撮る様子に胸がちょっと痛くなった事など今でも覚えている。
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動画配信サービスや、シネコンやDVDで見る映画も、手軽に楽しめてそれはとても楽しい。ただ、ミニシアターや名画座で見た映画は、映画の思い出だけでなく、スクリーンの大きさや椅子の座り心地、売店の場所や、チラシの置いてあるコーナーや果ては狭いトイレ事情まで・・・そんな事も映画の内容と一緒にいつまでも覚えているものなのだ・・・