Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

2017-03-08 01:00:00 | 雪3年4部(穴〜囚われた虎)


ふと空を見上げながら、雪が言った。

「あれ?」



「今ポツッと雨降って来なかった?」

「そう?分かんなかったけど」



雪が夜道を恵と共に歩いていると、ふとポケットの中の携帯が震えた。

ディスプレイには「河村静香」と表示されている。

「明日雪降るんじゃない?」



けれど雪はその着信を無視して、再び携帯をポケットに仕舞い直した。

「ううー、最近特別寒いよね、雪ねぇ」



そう言って身を寄せてくる恵の手を取り、雪は笑顔を浮かべる。

「手袋ないの?ほら、ポケットに手入れて」






二人は楽しそうに笑い合いながら、その場から歩き出した。

そしてそんな二人の背中を、少し離れた場所から見ている人物が居た。






河村静香。

携帯を持つ手が震えている。

「無視かよ‥?」



「店休んでる上に電話まで‥」



「無視かよっ‥!!」



高ぶる感情に任せて、静香は携帯をガラス戸に投げつけた。

ガシャンという音と共にガラスにはヒビが入り、傷の付いた携帯は地面に転がる。



胸の中に燃える炎が、全てを焼き尽くそうとしていた。

「あああっ!!」



「これのどこがあたしの味方だよっ‥!!」



まるで真っ暗な穴に吸い込まれて行くような気分だった。

震える静香の隣で、深い孤独が口を開けて待っている。

「もう本当に誰も居ない‥誰もっ‥」



「そもそも一体誰のせいで‥」



そう言って静香は歯をギリリ、と食い縛った。光はだんだんと遠ざかる。

「許さないから‥あたしを捨てるならー‥」





静香は床に置かれた携帯に視線を走らせた。

この中に、自分を穴に落とした奴らの連絡先が入っている‥。












そこに縁のある者が見れば、垂涎物のコレクションの数々。



それは整然と、秩序を守られ飾られていた。



一番見栄えの良い棚に飾られているのは、選りすぐりのお気に入りだった。

サインボール、蝶の標本、限定物のラジコンカー。







青田淳は、それらを暗い瞳で見つめていた。

かつての自分が、大切に守って来たそのコレクション。

けれど今その価値が、意味が、ゆっくりと傾いで崩れて行く‥。











その頃雪は、ぼんやりと明かりのついた寝室に寝転んでいた。

天井を見つめながら、昨日去って行った亮の背中を思い出す。

河村氏は一度も振り返らずに、前を向いて去って行った。







横に置いてある携帯がチカッと光った。きっとまた静香からの着信だろう。

雪は憂鬱な気持ちを押しながら、画面を立ち上げる。

そろそろ静香さんに応えるか‥

なんだか河村氏が行っちゃったことで孤独感が増して、私への執着が強まってる気がする




そう思いながらも、雪は携帯を置き目を閉じた。

いずれにしても勉強の約束もあるし、そろそろ会わなきゃいけないんだけど‥



私も‥静香さんもだけど、お互い余裕が無い状況で‥



瞼の裏に、真っ暗な穴が口を開けて待っている。

少しでも気を緩めれば、身体ごと持って行かれそうな深い闇が‥。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<穴>でした。

なんだか不穏な雰囲気ですね‥。

ていうか静香‥本当に依存体質なんですね。これをなんとかしないことにはラストは見えてこないような。


次回は<開かない扉>です。

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