Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

囚われた虎(5)ー連鎖ー

2017-03-24 01:00:00 | 雪3年4部(穴〜囚われた虎)
さて、時は三十分ほど前に遡る。

雪は携帯画面に表示された地図を見ながら、狭い道を歩いていた。



「メールによるとこの辺のはずなんだけど‥」



まだ夕方だというのに辺りはひっそりと静まり返っており、人っ子一人歩いていなかった。

視線の先に目当ての場所らしき建物が見えるが、電気もついていない住戸ばかりだ。

「‥‥‥‥」



雪の胸中がグルグルとざわめく。

なんか‥嫌な予感‥。てかどうして電話出ないんだろ‥

ずっと掛けて来てたのはそっちじゃんかよー‥




久々に感じる不吉な予感を感じながら携帯を睨んでいた時だった。

不意に背後から声が掛かる。

「あ、あの‥」







振り返ると、そこに一人の男が立っていた。

「君、確か亮の彼女‥」「あなたは‥」



その顔には見覚えがあった。

以前河村氏と一緒に居る時に、大学で見掛けた顔だ。



しかし今男のその顔は、痛々しいまでに傷だらけだった。

「あの、大丈夫ですか?顔‥」

「亮は一緒に行こうって言ってくれたけど、断ったらこの有様で‥」



「はい?それってどういう‥」

「君、今から亮の家行こうとしてるんだよね?」「‥?」

「だから‥亮のお姉さんから連絡受けて行こうとしてるんだろ?」「あ、はい。そうです」



「‥‥‥‥」



雪の返答を聞いて、男は俯いた。おずおずと、”亮の彼女”に向けて忠告を始める。

「な‥中には絶対入っちゃダメだよ。危険だから早く帰った方が良い。

今、亮の家の中には社長が居るんだ」
「社長さんなら‥」

「亮が持ち逃げした金を回収しに来た、元ヤクザ者なんだよ」「へっ!?」



「そ、それじゃ静香さんは‥?」

「金を受け取るまでは多分大丈夫だと思うけど‥」



「見張りするって言って出て来たけど‥

俺も今が最後のチャンスだと思って逃げようかと‥。君も逃げた方が良いよ」




「‥‥‥」



男の話を聞けば聞くほど、雪は胸の中に恐ろしいほどの不安が広がって行くのを感じていた。

とりあえず冷静に、現状を言葉にしてみる。

「つまり、今家の中に静香さんとその社長さんが一緒に居るってことですよね?

静香さんからお金を回収しようとしてるんですか?」


「うん。亮は元金は返したけど利子分は返さなかったんだ。まぁ、利子とかおかしな話なんだけど‥」

「それじゃ通報しましょうよ!監禁みたいなものじゃないですか!」



危険を感じた雪がそう言うも、男は目を逸らしてどもるだけだった。

「あ‥いや‥」



「お‥俺はもうこれ以上関わりたくないんだ!

とにかくそういうことだから、もう帰りなよ。分かったね?!」




男はそう言って逃げ出してしまった。

雪は判断を委ねられたまま、ただその場に立ち尽くすー‥。









そして時は数分前に戻る。

家から出て来た静香が、雪の前に現れた時へ。



「来たのね」



「あたし携帯壊れちゃってて、アンタからの電話出れなくって!

慌てて出て来たからこんな格好なのよ」




「うーっ寒!」



雪がチラリと上を見上げてみると、窓辺に佇む人影が見えた。明らかに監視されている。

脳裏に、先程静香から送られてきたメールの文面が蘇った。

どうして電話出ないの?あたしお金無くてもう何日もご飯食べてないんだけど。
あたしの携帯今調子悪くていつ切れるか分かんないから電話出てよ!
アンタ最後まであたしの勉強見てくれるんでしょ?
マジで頼れる人が居ないし、誰一人として電話に出てくれないの
来てくれそうなのアンタだけなのよ
お願い、見捨てないで。マジ腹ペコなのよ‥




嘘。

「とりあえず、中に‥」



真っ赤な、嘘。

騙された。



この人は私を‥



ドス黒い感情が、胸の中に渦巻いて行く。



目の前が真っ暗になりそうなその揺らめきの中で、

雪はただ無言でその場に立ち尽くしていた。



中へと促しても動かない雪を前にして、静香は曖昧な笑みを浮かべている。



雪は静香の裏切りと相対しながら、胸の中の葛藤と現状を冷静に客観視し始めた。

このまま見捨てて逃げようか?



既に警察にも通報したから、後は自分で何とかしろって言えばいい。

一緒に中に入ったところで女二人で何が出来る?私まで危ない目に合うだけだ。

一体どうして私は、こんな人相手に‥




どうしてまた繰り返すの‥



握った拳が、怒りに震える。

以前似たようなことがあったことを、否応なく思い出してしまう。

「逃げるよ!」



ホームレスに絡まれた平井和美の手を引っ張って逃げたあの時

「あんたに関係ないでしょう?そうやって出しゃばって、

良いことでもしたつもり?」




振り絞った勇気を、ぺしゃんこに潰された。

止せば良いのに深入りして、結果自分が傷ついて終わる。

そんな感情の消耗は無意味だと、あの時身を持って知ったはずだった。

そのはずなのに‥。




次に思い出したのは、平井和美からあの時のことを聞かされた時のことだ。

「あたしはあなたが危険な目に合うかもしれないって言ったのに、

青田先輩はそのまま行ってしまって」




雪は出来るだけ冷静に、あの時の記憶と感情をなぞる。

あの話を聞いた時、私はどう思ったっけ‥?







不審者と自分しか居ない夜の学校。振り下ろされるガラス瓶。

泣けない自分の感情を溢れさせるかのように、流れて行く真っ赤な血液‥。



あの時自分は、こう思ったはずだ。

危うく大事になるところだったのに、

先輩がそのまま行ってしまったことが、悔しかった。

一番助けて欲しい時に、助けてくれなかったのだと。










雪の手の中に、切れない輪があった。

それはあたかもメビウスの輪のような、重たい鎖で出来た切れない輪が。



静香の笑顔が引き攣って固まる。

家の中には、明らかに危ないあの男が待っている。







氷のように冷たい静香の手が、小刻みに震えていた。

これは必死に助けを求めて震えた、いつかの自分の手と同じー‥。



「静香さん」






「正直、もう誰を助けたところでただのおせっかいなんじゃないかって思ってたんです。

結局自分が傷つくことになるんだし‥」




「だからもう二度とそんなことしないって思ってたんです」

「はぁ?」



「何言ってんの?ほら早く‥」



「だけど‥」






「!」



「静香さん」



心は決まった。

雪はこの負の連鎖を、断ち切る決断を下したのだ。


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<囚われた虎(5)ー連鎖ー>でした。

最後の方、前回の静香側からのコマも追加しました。

雪の葛藤がすごく丁寧に描いてある回でしたね。

そして結果同じ行動になるとしても、きっとそれがメビウスの輪を断ち切ることになると信じてます!

頑張れ雪ちゃんー!

次回<囚われた虎(6)ー逃走ー>へと続きます。


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