「許さないわよ、赤山雪」
そう言って静香はギリッと歯を食いしばった。
みるみる形相が歪んで行く。
バンッ!
静香は勢い良くドアを開けると、怒りにまかせて出掛ける準備を始めた。
じっとしてなんかいられない。
「ぶっ飛ばしてやるわ」
「あたしの人生を滅茶苦茶にしやがって!」
しかしドアを出る直前に、散らかっていた部屋の中で蹴躓いてしまった。
「うっ!」
「くうっ‥」
胸の中でメラメラと炎が燃える。
静香は這いつくばった格好のまま、低い声で呟いた。
今自分がこうなってしまった原因になった人物達の名を、次々と。
「あのクソ女の次はババアで‥その次は淳‥次は亮‥会長‥あたしをシカトした奴ら全員!!」
その時静香は気付かなかった。今携帯に一通のメールが届いていることを。
「一緒に美術館へ行かないか?」と、佐藤広隆からのメッセージが入っていることを。
「全員ブッ殺してやる‥!!」
静香は目の前の憎しみに囚われ、どこへも行くことが出来ないで居た。
するとそんな静香の元に、一人の人物がやって来るー‥。
カチャッ
「!!」
思わず静香は音のした方を振り返った。
トントン、と誰かが扉をノックしている。
「り‥亮‥?」
静香は掠れた声でそう言った後、一目散に扉の方へ走った。
「亮?!」
たった一人の肉親が、自分の元へ帰って来たのだとー‥。
「りょ‥」
しかしそこに立っていたのは、見たこともない人物だった。
男は静香のことをジロジロと見た後、ニヤリと口角を上げる。
「あぁ、これがその姉ちゃんか」
そして静香は、男の背後でガチャリとドアが閉まる音を聞いたー‥。
一方雪は、大学のベンチに未だ腰掛けているところだった。
遠藤の隣で、彼から貰った缶コーヒーに口をつける。
けれど心は落ち着かなかった。
握り締めた携帯が、ずっとチカチカと点滅している。
その点滅を見た遠藤が、それについて言及した。
「さっきからずっと携帯が鳴ってるが‥青田からか?」
「あ‥いえ‥」
静香さんからか‥と思いながら雪はメールボックスを覗いてみた。
静香からのメールが随分と溜まっている。
着拒中だからめっちゃメール送ってくるな。今来たのは‥
そしてメールを開いた途端、画面いっぱいに文字が表示された。
どうして電話出ないの?あたしお金無くてもう何日もご飯食べてないんだけど。
あたしの携帯今調子悪くていつ切れるか分かんないの。ねぇ電話出てよ!
アンタ最後まであたしの勉強見てくれるんでしょ?マジで頼れる人が居ないし、誰一人として電話に出てくれないの。
来てくれそうなのアンタだけなのよ。お願い、見捨てないで‥マジ腹ペコなのよ‥
思わず目が点‥。
見なきゃよかったと後悔する雪を、遠藤は不思議な顔で見つめている。
「お先失礼します」「おお」
雪はそう言ってスックと立ち上がると、遠藤に向かって深々とお辞儀をした。
「ありがとうございました」
遠藤は駆けて行く雪の背中を無言で見つめていたが、やがて前を向き口を開いた。
礼儀正しく情に厚いその後輩に向けてのエールを、空に放つ。
「そうだ」
「心のままに走って行けばいい」
遠藤からのアドバイスは、冬の空へと溶けて行った。
かつて押し殺した自分を赦すような心持ちで、遠藤はずっと空を見上げていた‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<囚われた虎(1)ー来訪ー>でした。
ここの静香のセリフで出てくる「ババア」ですが、
これは「叔母さん」、つまり河村教授(おじいちゃん)が亡くなった後亮と静香を引き取って虐待したあの叔母さんのことです。
「叔母‥」と呟くのも変なのでBBA呼ばわりしてしまいました‥ 叔母さんサーセン!
そして遠藤さんからのアドバイス‥染みますね。
心のままに生きていけなかった遠藤さんが言うからこその重みというか。
さて次回は急展開!吉川社長が静香の元に‥!
次回<囚われた虎(2)ー耳鳴りー>へと続きます。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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そう言って静香はギリッと歯を食いしばった。
みるみる形相が歪んで行く。
バンッ!
静香は勢い良くドアを開けると、怒りにまかせて出掛ける準備を始めた。
じっとしてなんかいられない。
「ぶっ飛ばしてやるわ」
「あたしの人生を滅茶苦茶にしやがって!」
しかしドアを出る直前に、散らかっていた部屋の中で蹴躓いてしまった。
「うっ!」
「くうっ‥」
胸の中でメラメラと炎が燃える。
静香は這いつくばった格好のまま、低い声で呟いた。
今自分がこうなってしまった原因になった人物達の名を、次々と。
「あのクソ女の次はババアで‥その次は淳‥次は亮‥会長‥あたしをシカトした奴ら全員!!」
その時静香は気付かなかった。今携帯に一通のメールが届いていることを。
「一緒に美術館へ行かないか?」と、佐藤広隆からのメッセージが入っていることを。
「全員ブッ殺してやる‥!!」
静香は目の前の憎しみに囚われ、どこへも行くことが出来ないで居た。
するとそんな静香の元に、一人の人物がやって来るー‥。
カチャッ
「!!」
思わず静香は音のした方を振り返った。
トントン、と誰かが扉をノックしている。
「り‥亮‥?」
静香は掠れた声でそう言った後、一目散に扉の方へ走った。
「亮?!」
たった一人の肉親が、自分の元へ帰って来たのだとー‥。
「りょ‥」
しかしそこに立っていたのは、見たこともない人物だった。
男は静香のことをジロジロと見た後、ニヤリと口角を上げる。
「あぁ、これがその姉ちゃんか」
そして静香は、男の背後でガチャリとドアが閉まる音を聞いたー‥。
一方雪は、大学のベンチに未だ腰掛けているところだった。
遠藤の隣で、彼から貰った缶コーヒーに口をつける。
けれど心は落ち着かなかった。
握り締めた携帯が、ずっとチカチカと点滅している。
その点滅を見た遠藤が、それについて言及した。
「さっきからずっと携帯が鳴ってるが‥青田からか?」
「あ‥いえ‥」
静香さんからか‥と思いながら雪はメールボックスを覗いてみた。
静香からのメールが随分と溜まっている。
着拒中だからめっちゃメール送ってくるな。今来たのは‥
そしてメールを開いた途端、画面いっぱいに文字が表示された。
どうして電話出ないの?あたしお金無くてもう何日もご飯食べてないんだけど。
あたしの携帯今調子悪くていつ切れるか分かんないの。ねぇ電話出てよ!
アンタ最後まであたしの勉強見てくれるんでしょ?マジで頼れる人が居ないし、誰一人として電話に出てくれないの。
来てくれそうなのアンタだけなのよ。お願い、見捨てないで‥マジ腹ペコなのよ‥
思わず目が点‥。
見なきゃよかったと後悔する雪を、遠藤は不思議な顔で見つめている。
「お先失礼します」「おお」
雪はそう言ってスックと立ち上がると、遠藤に向かって深々とお辞儀をした。
「ありがとうございました」
遠藤は駆けて行く雪の背中を無言で見つめていたが、やがて前を向き口を開いた。
礼儀正しく情に厚いその後輩に向けてのエールを、空に放つ。
「そうだ」
「心のままに走って行けばいい」
遠藤からのアドバイスは、冬の空へと溶けて行った。
かつて押し殺した自分を赦すような心持ちで、遠藤はずっと空を見上げていた‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<囚われた虎(1)ー来訪ー>でした。
ここの静香のセリフで出てくる「ババア」ですが、
これは「叔母さん」、つまり河村教授(おじいちゃん)が亡くなった後亮と静香を引き取って虐待したあの叔母さんのことです。
「叔母‥」と呟くのも変なのでBBA呼ばわりしてしまいました‥ 叔母さんサーセン!
そして遠藤さんからのアドバイス‥染みますね。
心のままに生きていけなかった遠藤さんが言うからこその重みというか。
さて次回は急展開!吉川社長が静香の元に‥!
次回<囚われた虎(2)ー耳鳴りー>へと続きます。
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