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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

奇妙な威圧感

2014-03-17 01:00:00 | 雪3年3部(亮蓮大学に~淳の父への本音)
「え?」



雪は彼からの問いに目を見開いた。

何故雪が河村亮に名刺を渡すのだと、改めて聞かれているのだった。

「だから‥ただ‥渡して欲しいって‥」



雪は言い知れぬ彼からのプレシャーに顔を青くした。

自らが望んだことでは無いにしろ、再び河村氏と関わっているのは確かだ‥。

淳は名刺を見つめながら、静かにこう彼女に言った。

「これ貰うね」



唐突な彼の申し出に雪は虚を突かれて聞き返したが、

淳は再び上のセリフを繰り返すだけだった。

「‥なんで先輩が‥?」



先ほど彼からされた質問を、雪は彼に返した。

しかし淳は彼女からの問いには答えず、微笑みを浮かべたままもう一度繰り返した。

「俺が伝えておくから」



雪は彼の虚飾に似た微笑みの前で、冷や汗がダラダラ流れていくのを感じた。

なるべく角の立たない言い方で、言葉を続ける。

「いや‥どうせまた喧嘩するでしょう?

先輩も河村氏も、お母さんの前ですらいがみ合ってたじゃないですか!

河村氏は店に居るんだし、私がただそのまま渡せばいい話じゃないですか‥。

これは、そこまでする問題なんですか?」




そう言って彼を説得しようとする雪の主張だが、

それを聞いた淳はニヤリと笑みを浮かべ、こう言った。

「ああ。大いに問題だね」



雪は幾分驚いて、あんぐりと口を開けた。

そんな彼女に構わずに、淳は自分の意見を流暢に語り始める。

「雪ちゃん、君は俺の彼女だろう。当然俺としてはこういったことは好ましくない」



理論や合理などでは説明の出来ない、しかし無視出来ないそんな感情に根ざした彼の意見。

しかし雪は自分にはそんな気が無いのに、変に亮を意識している淳に言葉を返そうとした。



けれど雪の言葉を切るように、淳は話を続ける。

「幼稚だとしても、俺はそれを受け入れることは出来ない。

そして君は俺の要求をのまなくちゃいけない。なぜなら、俺が君の彼氏だからだ」




「今まで君が亮と話をするのにも、

君のご両親のお店で亮が働くのにも、俺は全てに我慢してきた」




「だから雪ちゃん、君にもそれだけ我慢してもらわなくちゃ」



暗黙的に、聞く者に身動き一つ許さぬ彼の流暢かつ一方的な主張。独自の理論。

淳はじっと聞いている雪の肩に手を掛け、更に言葉を続けた。

「雪ちゃん、考えてごらん」



「俺の言ってることは間違ってる?」











淳、よく考えろ。 考えるんだ。









淳の性分を形作った、核になるもの。

それは彼の中に息づいていた。


そしてそれは彼女に向けられる視線の中に、肩を掴む手の力の中に宿っていた。







「‥‥‥‥」



雪は肩に手を置かれたまま、硬直したようにその場に佇んでいた。

じわり、と汗が浮かんで頬を伝う。肝が冷える、とはこういう感じであろうか‥。

先輩の話に納得しながらも‥



雪は彼から目が離せなかった。

その大きな目を見開いたまま、肩に掛かる重圧を感じていた。



語られた彼の意見に、頭の中では納得していた。

けれど、胸騒ぎがした。危険を知らせるシグナルが鳴っている。

再び感じる、この奇妙な威圧感‥



去年嫌というほど味わった、彼に関わる時感じるこの奇怪な感覚。

口角の上がったその口元に、じっと見つめてくるその視線に、何か暗いものが宿っている。

雪は元来の性分で、鋭敏にそれを感じ取る。

反論の言葉が喉まで出かかってる



しかし雪は言葉を紡ぐことが出来なかった。

それを阻んでいるのは、怖れや警戒という感情よりも、新たに生まれ出たあの気持ちだった。

‥だけど、争いたくない。ただ楽しく、仲良くしていたい‥。



雪の脳裏に、去年彼と繰り広げた冷戦の場面が浮かんで胸を傷ませた。

敵意と悪感情ばかりのあの日々に、もう戻りたくは無かった。



それよりも、彼氏彼女として笑い合っていたかった。

今年に入ってから彼に対して生まれた感情に、縋り付いていたかった‥。





それきり黙り込んだ雪に、淳は身体を屈めて近付いた。

俯き加減の、彼女の表情を窺うように。

「何考えてるの?」



暫しそのまま口を噤んでいた雪だが、不意に彼に向かって手が伸びた。

ぎゅっと、彼のお腹の辺りで弛むカーディガンを掴む。



その彼女の行動が、淳は幾分意外に感じ、目を見開いた。

怒るか逃げ出すか屈服するか‥予想したそのどれとも違っていたからだ。



そして雪は明るく努めながら、彼に一つ提案をし始める。

「それじゃあ、一緒に行きましょ!一緒に行って伝える分にはいいでしょう?!」



彼女はそう言って笑顔を浮かべた。

その笑顔は事を穏便に運ぶため、彼女が身につけた処世術だ。



淳はいつか見た彼女のその笑顔を思い出していた。

喧嘩する同期達に向けたその笑顔、その後浮かべていた疲弊した表情‥。

 


淳は息を吐き、暫し思案するように彼女を見つめていた。

共に亮のところへ行くという雪の妥協案に、淳としてはそうすぐには頷けない。



雪は申し訳無さそうに頭を掻きながら、彼の気持ちを慮って言葉を掛けた。

「‥先輩の話も分かります。気を遣わせちゃってごめんなさい」



そして雪は彼の服を掴みながら、亮と喧嘩しないでと彼に念を押した。

幾分甘えるような仕草で、伝えたいことを口に出す。

「‥喧嘩しないで下さいよ。河村氏とも、私とも‥」



身長の高い彼を、雪は上目遣いで見つめながら優しくそう言った。

淳の固く揺るがない心の琴線が、僅かに震える。



雪は子猫のような眼で彼を見上げていた。

紡ぐ言葉はないけれど、彼女の気持ちが視線越しに伝わっていく。



淳はうーんと唸りながら目を瞑り、天を仰いだ。

雪は服を掴んだままそんな彼を窺っている。



淳の顔が今度は下を向いた。呟くような言葉も添えて。

「可愛いとこは気に入ったけど‥」



淳は様々なファクターを考慮して、気持ちに折り合いをつけているらしかった。

そして導き出した結論を、再び天を仰いで口に出す。

「嫌なもんは嫌‥」



しかし言葉を続けることは出来なかった。いきなりお腹の辺りに激痛が走ったのだ。

「イタタタタタ!」

「一緒に行きますよ、ね?!」



ギューッと力を入れて、雪は淳のお腹をつねった。

分かった分かったと淳が口にしてようやく、その手の力は緩められた。



何すんのと聞く淳に、答えるは野暮だと返す雪。

結局二人は並んで歩き出した。

お腹を擦る淳と、そんな彼の背中を押して歩く雪‥。




二人は彼の車で、雪の家へと向かって行った。


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<奇妙な威圧感>でした。

淳の考える雪に対する在り方が、3部で定まった感じがしますね。

今回淳が雪に主張した考えは、「自分が我慢しているもの」と同じだけ彼女に求めるという因果応報に根付いたものであり、

これは元々の考え方に基づいたものなのですが、その根っこ‥動機が「嫉妬」というすごく感情的なところですよね。

1部2部では自分がそういった感情を持つことを受け入れられなかったり(合コンの時の嫉妬事件)、

変に雪に当たってそれに謝罪していたりもした淳ですが(聡美のお父さんが運ばれた病院での話)、

今回はその感情的な自分を肯定しつつ、雪を丸め込もうとするというか(笑)

結局根っこは変わらずに、少し進化したという感じでしょうか。

そんなことを少し思いました。


次回は<彼らの意図>です。


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