「おお~!これがA大かぁ!」

晴れやかな秋空に響き渡るのは、赤山蓮の声だった。
彼は河村亮と連れ立って、A大構内にいるのだ。
「俺んとこよりちょっと小さいかな~」

そりゃご立派だこと、と言いながら亮が耳をかっぽじり、蓮の隣を歩く。
A大に入ってもまるで驚きの無い亮に、蓮は質問してみた。
「亮さんここ来たことあるんすか?」「一回だけ‥」

亮の脳裏に以前A大に出向いた時の記憶が蘇る。
上京してすぐ、淳の様子を窺いに来てコソコソした記憶‥。

亮がここに来るのもあれ以来である。
そしてなぜ二人がA大に居るのかというと‥。
「亮さん!俺休みもらった~!」

ことの顛末は、蓮がそう言って亮の元に駆け寄ってきたことだった。
恨めしそうに雪の母を見る亮の視線を受けて、彼女は溜息を吐いて彼ら二人を外に放り出した。
「もうあんたら二人出ていきなさい。ちょっと気持ち切り替えて来て!」

相変わらずぼんやりしている亮の息抜きも兼ねて、二人は都心へと繰り出した。
真っ昼間っからホルモン焼き+焼酎を堪能し、蓮はこの後クラブへ行くことも計画していた。
亮を連れて行けば女の子がわんさと寄ってくるだろう‥。ヒッヒッヒ‥。

しかしそんな蓮の計画は途中で頓挫することとなった。
「I have no money...orz」

お金を出す気がまるで無い亮は、そんな蓮を前に憮然とした態度だ。
そして蓮は閃いたのだ。姉の大学が近いんだから、金の無心に行けばいいじゃないかと。
「電話出ね~!」

しかし物事はそう簡単に運ぶものではなく、蓮は姉と連絡がつかないことに焦り始めた。
「もしかして既に感付かれてる?!怖えーー!そんじゃメールを‥!」

蓮は超高速でメールを打った。一通じゃ弱いと思い、二通打った。
姉ちゃん!俺今姉ちゃんの大学に来てる!金が無い!ご飯おごって!
ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯!
早く早く早く早く!
姉ちゃんの学科に押しかけて皆に挨拶しちゃうかもよ~?!

ふふふ、と蓮は不敵の笑みを浮かべた。
「姉ちゃんはこういう気まずい展開が嫌いですからね‥」

だからすぐに飛んでくるだろうと言って、蓮はふふふと笑い続けた。
「ふふふふ‥ふふふふふふ‥」

しかし待てど暮らせど‥。
「‥‥‥‥」

返事来ねーじゃーん!!

orz....
鳴らない携帯を睨みながら、蓮は頭を垂れてどんよりした。
そんな中、すれ違う学生の中に亮の気を引くものがあった。

そちらをじっと見つめる。
バイオリンを持った学生だった。

彼女が行く先に何があるのか、亮は思って沈黙した。
彼の心にある何か熱いものが、疼くような感覚だった。

大学見物してくる、と言って亮はそのまま蓮と別れた。
早足でバイオリンの子の歩いて行った方向へと歩を進める。

蓮は「経営学科ってどこ~?!」と言って頭を抱えた。
そして頭の中に、A大で顔見知りのもう一人の顔が浮かんで来た。

小西恵だ。
「美大!そうだ美大へ行こう!キンカンに‥」

そう言って美大への道を踏み出そうとした蓮だったが、お財布の中身が空だと言うことを思い出し、
やはり止めようと言って引き返す。

しかし恵‥いやキンカンは幼馴染みだ。
そんなことは関係ないじゃないかという気持ちもあった。
「経営学科か?美大か? いやそもそもどこにあるのか知らねーし‥」

「‥‥‥‥」

暫しの葛藤の末、
最終的に蓮は「もう知らん!」と言って歩き始めた。

どこへ行くのかは分からないが、きっと運命が彼を会うべき人に会うために、導いてくれる‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼らのA大訪問>でした。
亮がA大に来るのは二度目ですね~。読者には懐かしいV字の記憶‥笑。

次回は<進行する彼ら>です。
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晴れやかな秋空に響き渡るのは、赤山蓮の声だった。
彼は河村亮と連れ立って、A大構内にいるのだ。
「俺んとこよりちょっと小さいかな~」

そりゃご立派だこと、と言いながら亮が耳をかっぽじり、蓮の隣を歩く。
A大に入ってもまるで驚きの無い亮に、蓮は質問してみた。
「亮さんここ来たことあるんすか?」「一回だけ‥」

亮の脳裏に以前A大に出向いた時の記憶が蘇る。
上京してすぐ、淳の様子を窺いに来てコソコソした記憶‥。

亮がここに来るのもあれ以来である。
そしてなぜ二人がA大に居るのかというと‥。
「亮さん!俺休みもらった~!」

ことの顛末は、蓮がそう言って亮の元に駆け寄ってきたことだった。
恨めしそうに雪の母を見る亮の視線を受けて、彼女は溜息を吐いて彼ら二人を外に放り出した。
「もうあんたら二人出ていきなさい。ちょっと気持ち切り替えて来て!」

相変わらずぼんやりしている亮の息抜きも兼ねて、二人は都心へと繰り出した。
真っ昼間っからホルモン焼き+焼酎を堪能し、蓮はこの後クラブへ行くことも計画していた。
亮を連れて行けば女の子がわんさと寄ってくるだろう‥。ヒッヒッヒ‥。


しかしそんな蓮の計画は途中で頓挫することとなった。
「I have no money...orz」

お金を出す気がまるで無い亮は、そんな蓮を前に憮然とした態度だ。
そして蓮は閃いたのだ。姉の大学が近いんだから、金の無心に行けばいいじゃないかと。
「電話出ね~!」

しかし物事はそう簡単に運ぶものではなく、蓮は姉と連絡がつかないことに焦り始めた。
「もしかして既に感付かれてる?!怖えーー!そんじゃメールを‥!」

蓮は超高速でメールを打った。一通じゃ弱いと思い、二通打った。
姉ちゃん!俺今姉ちゃんの大学に来てる!金が無い!ご飯おごって!
ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯!
早く早く早く早く!
姉ちゃんの学科に押しかけて皆に挨拶しちゃうかもよ~?!


ふふふ、と蓮は不敵の笑みを浮かべた。
「姉ちゃんはこういう気まずい展開が嫌いですからね‥」

だからすぐに飛んでくるだろうと言って、蓮はふふふと笑い続けた。
「ふふふふ‥ふふふふふふ‥」

しかし待てど暮らせど‥。
「‥‥‥‥」




orz....
鳴らない携帯を睨みながら、蓮は頭を垂れてどんよりした。
そんな中、すれ違う学生の中に亮の気を引くものがあった。

そちらをじっと見つめる。
バイオリンを持った学生だった。

彼女が行く先に何があるのか、亮は思って沈黙した。
彼の心にある何か熱いものが、疼くような感覚だった。

大学見物してくる、と言って亮はそのまま蓮と別れた。
早足でバイオリンの子の歩いて行った方向へと歩を進める。

蓮は「経営学科ってどこ~?!」と言って頭を抱えた。
そして頭の中に、A大で顔見知りのもう一人の顔が浮かんで来た。

小西恵だ。
「美大!そうだ美大へ行こう!キンカンに‥」

そう言って美大への道を踏み出そうとした蓮だったが、お財布の中身が空だと言うことを思い出し、
やはり止めようと言って引き返す。

しかし恵‥いやキンカンは幼馴染みだ。
そんなことは関係ないじゃないかという気持ちもあった。
「経営学科か?美大か? いやそもそもどこにあるのか知らねーし‥」

「‥‥‥‥」

暫しの葛藤の末、
最終的に蓮は「もう知らん!」と言って歩き始めた。

どこへ行くのかは分からないが、きっと運命が彼を会うべき人に会うために、導いてくれる‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼らのA大訪問>でした。
亮がA大に来るのは二度目ですね~。読者には懐かしいV字の記憶‥笑。

次回は<進行する彼ら>です。
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