Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

霧煙る関係

2013-10-22 01:00:00 | 雪3年2部(密会~再会)


未だ激しく降る雨が、古い家の屋根に当たって大きな音を立てる。

遠藤修は恋人の部屋で横たわりながら、一人その雨音を聴いていた。



時たま吹き荒ぶ風が、立て付けの悪い窓枠を揺らす。



遠藤は机の上に置かれた時計を見た。

8時14分。

ここでこうして横たわったまま、もう三時間が経つ。

傍に置かれた携帯には、”発信 秀紀”の履歴が並ぶ。



もうずっと秀紀とは、音信不通だ。


遠藤はこの部屋で、押入れに隠してあった重箱を見つけていた。



見たことのないYシャツを目にしていた。



自分の知らない彼が、分かち合えない時間が、彼の心を孤独にする。


遠藤は以前秀紀から言われた留守の理由、”急な同窓会”を思い出していた。

今回は一体どんな言い訳が出てくるのやら‥。




皮肉に似た気持ちが心を意地悪く揺らす。

遠藤はのっそりと起き上がり、秀紀にメールを打った。

まだ帰らないみたいだから、もう俺は帰るよ。これ見たら連絡‥




こんな文面を、もう何度打っただろう。


こんな気持ちを、もう何度味わっただろう。




遠藤は虚ろな気持ちのまま、一人空を見つめた。


身体が鉛のように重い。


心が錆びついた鎖のように、ギシギシと音を立てて軋む。



「は‥」




声にならない溜息が、口から漏れる。


彼は疲れていた。

ただ横になっていただけなのに。

それだけなのに。





否、と遠藤は思う。

この虚無を孕んだ疲弊は、今に始まったことではない。

この暮らしが始まってから、ずっとまとわりついていたものだ。



秀紀がここに住むようになってから、一日も疲れない日なんて無かった



一日も‥









街は、未だに激しく降る雨で煙る。

一人の部屋で聴く雨音に別れを告げて、遠藤は秀紀の部屋を出た。



するとアパートを出た所で、一人の男とすれ違った。

俯いていた遠藤は気が付かなかったが、男の方が遠藤に気づき、振り向いた。





「こんばんは」



またお会いしましたね、と男は遠藤の顔を見て言った。


目立たないように目深に帽子を被っていた遠藤だったが、すぐに顔が割れたことに抵抗を感じた。




男は尚も遠藤に話しかけてくる。

「お友達に会いに来たんですか? けどあいにく会えなかったのかな?」

「おじさんは留守みたいですねぇ?」



遠藤の表情に不審の色が浮かぶ。

全て把握しているようなこの男に、何か不穏なものを感じた。


男は更に秀紀の動向を言及する。

「近頃よく外出されてるみたいですよ?夜も遅いみたいだし。

浪人生って聞きましたけど、何をなさっているのやら。ご存知ですか?」




男の細い目が、何かを探るような視線で遠藤を射た。

しかし遠藤は男を睨み、「あんたに何の関係がある?」と言い捨てて背を向けた。



背後で男が謝罪の言葉を口にするが、遠藤はそれに構わず早足でその場から去った。

激しい雨の中を、一人帰っていく。



男はしばしその後姿を眉根を寄せて見ていたが、じきにまた元行く道を歩き出した。










暗い雨が、遠藤の心を濡らす。

疲弊した精神にその雨は、冷たく染み渡っていく‥。



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<霧煙る関係>でした。

切ない回でした。無気力な遠藤さんが、悲しいですね。。


さて次回は、久しぶりのあの人が!

<再会>です。

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