Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

知らないふりをして

2013-10-07 01:00:00 | 雪3年2部(塾にて~告白)
西日が二人を照らす頃、雪と淳は買い物リストを持って大学構内を歩いていた。

紙が陽を反射して眩しい。淳は手で囲いを作りながらメモを覗き込んだ。

雪がリストを読み上げる。

「品川さんがドーナツとピザと果汁100%のオレンジジュースにお菓子適当に‥。

‥木口さんもなんかゴチャゴチャ書いてありますね」




遠慮無くズラズラと書かれたリクエストは、数だけでも膨大だ。

しかも遠藤さんからの要望は、「XX屋限定手作りチョコレート、苺入り」という限定されたものだった。ここから結構遠い。

先輩が車を出してくれるというので、雪はその言葉に甘えて先輩について歩いた。

「あれ? 前と車が違うような‥」



駐車場で先輩が解錠した車は、以前と違うものだった。

「うん。別の車」と言う先輩の言葉に、雪は貧富の差をシミジミと感じたのだった‥。





車に乗った雪の髪の毛を、淳はじっと眺めていた。



そしてまず、一つ目のトラップを仕掛けた。彼女は引っかかるだろうか?

「俺があげた髪留め、何で付けないの?気に入らなかった?」



雪は先輩に向き直ると、「昨日まではつけていたんです」と言った。先輩がこの頃来ないので見せられなかったけど、とも。

淳は「昨日まで」という言葉を確かに聞いた。そして昨日見たあの画像を思い出す。



一つ目のトラップは実証された。

淳は自分の推測が当たっていたことも含め、笑顔で彼女に「そっか」と答えた。














車は走り出し、窓の外の景色は飛ぶように流れて行く。

大人しく座っている雪に対して、淳は二つ目のトラップを仕掛けることにした。

「最近塾の方はどう?何か変わったことはない?」



雪は真っ直ぐ前を見て運転する彼の横顔を見た。

先輩が紹介してくれた塾だ。彼は雪の身に何か困ったことはないかと心配してくれている。



お陰様で、と答えかけたが、脳裏にあの男の姿が浮かんだ。

ケケケケ おいおい無視すんじゃねーよ ケケケケケ‥



雪は河村亮のことを先輩に言うかどうかということを、暫し考えた。

今までの彼らの反応を見ていると、互いに関わり合いたくないようだし、決して愉快な話では無さそうだった‥。

亮が言った、あの言葉が脳裏を掠める。

これ、淳のせいなんだ



知りたくないといえば嘘になる。

しかし今の自分の立場では、下手に口出しするような問題でも無い気がしている。

雪は暫し黙り込みながら、どうしたものかと思案していた。




一方淳は、雪の口から河村亮の名が出て来ないことを受けて、質問を変えた。

ネズミ捕りに仕掛けた餌を、サラミからチーズに替えるように。

「雪ちゃんってモテそうだよね。塾で気になってる子とかいないの?」



予想通り、彼女は幾分慌てた。

「?!え?!そんなこと無いです!それに気になるも何も‥」



変な人達ばかりだし、と雪は答えた。脳裏には、亮の顔が浮かんでいた。








河村亮の名が出るか?

淳は彼女が言葉を続けるのを待った。



雪は何の気なしに見た先輩の瞳の前で、凍りつくように固まった。



全てを見透かすようなあの瞳。深い闇が見え隠れする。

冷たい汗が頬を伝い、雪は思わず俯いた。「い‥ません‥」と、小さく答えるのが精一杯だった。



ふぅん‥と淳は曖昧なニュアンスの相槌を打った。

言わないか‥。



淳はそれならばと、彼女に釘を刺すことに決めた。

「そっか。もし何かあったら必ず俺に言うんだよ」






「‥はい‥」



彼の発するそれは優しい言葉のはずなのに、その口調は警告にも似ていた。

雪の第六感が、どこかおかしいと反応しているが、雪はそれ以上は考えず言葉通りの意味で受け取り、返事をした。

「心配して下さって、どうもありがとうございます‥」



「いいえ」



それ以来車中には沈黙が落ち、唸るエンジンの音だけが聞こえている。

雪は心がざわめくのを感じた。



いつか彼に肩を掴まれた時に感じたそれと、

似たようなざわめきだった。










その後の二人は、変わった様子もなく買い物に勤しんだ。

大きなカートを押しながら二人は歩き、



共にお菓子を選んだりした。



(先輩の選んだにんじんタルトは、雪には不評で却下となった)

試食をしたり、

  

(先輩はポンテギに続き、イカの塩辛も食べられないことが発覚した)

店内をにこやかに歩く二人の姿は、傍目から見れば新婚夫婦のようにも見えるようだが、どうであろうか?











事務室に戻り、買ってきたものをテーブルに並べると、その美味しそうな料理の数々に品川さんがはしゃいだ。



遠藤は気まずい顔をしていたが、品川さんと木口さんの勧めもあって雪と淳もテーブルを囲んだ。

特に雪はこき使われた分、たらふく食べてやると意気込んで色々つまみはじめた。



遠藤のリクエストで買ってきた手作りチョコレートは、テーブルに並べられることなく彼のカバンに仕舞われた。

それを見て品川さんが彼女へのプレゼントかとまたはしゃいだが、遠藤は「ほっとけ!」とツレなかった。



エクセル対決前とは考えられないほど賑やかに、事務室での時間は流れていった。







就業が終わる頃、夕方の空は曇っているせいかいつもより暗い色をしていた。

そんな中、明るい別れの挨拶をしながら品川さんが雪と淳に手を振る。遠藤はムッツリとしながら、足早に帰って行った。



今日は塾のない日。

今日先輩が来たら、今日こそ夜ご飯をご馳走しようと思っていた雪だが‥。

「‥‥‥‥」



先輩はお腹をさすりながら、「お腹いっぱいで吐きそう」とまで言っている。

実は雪も同じだった。二人して食べ過ぎてしまったようだ。



なぜだか笑いがこみ上げてくる。雪と先輩はその場で自虐的に笑い合った。


淳は夕食の約束を雪が律儀に果たそうとしているところを感じて、彼女を見やった。



生真面目な彼女が自分との夕食のために、一生懸命場所だとか価格だとかを悩んでいる姿が、淳は嫌いじゃなかった。

「そろそろ帰ろうか。一緒に行こう」



そう言って淳は彼女の方を見た。

脳裏にはあの画像がまた浮かんでくる。



あの時感じたあの不愉快を、淳は持て余したまま今日を迎えた。

胸の中で燻ぶっている熱が、彼女の隣に淳を立たせる。

「送ってくよ」



彼女の隣に居るのは自分だ。

燻るそれが、胸の内に熱く火をつけた。

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<知らないふりをして>でした。

さて先輩の車が代わりましたね!以前のプジョーから、今回はポルシェ、カイエンだそうです。



また高級車を次々と‥。雪ちゃん絶対値段知らずに乗ってるんだろうな‥。

買い物の場面で、またウサギ出て来ましたね!にんじんタルト‥。却下!!


次回は<もう一人の自分>です。

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