スベルべママが所用で帰宅したその時、一台のバイクが長岡方面から走って来た。
通過するかと思ってみていると、農天市場の上手の入り口から入って来た。
「寒いー、焼き芋ありますか」なんて、焼き芋釜にしがみつく様に暖を取る。
ま、おつむはともかくとしても、この衣服でのオートバイは寒いなんて言葉では済まされない。
帰って来たスベルべママと事情を聴くと、なんと働いている群馬から稲刈り手伝いに実家の佐渡島に帰り、
再び職場の群馬に帰るのに、この失礼ながらオンボロ「スーパーカブ」で帰るのだという。
スベルべママはいったん帰宅し、古着を持ってきた。
スベルべが最近着ていない、冬のジャンパーなどを持ってきたのでした。
ところが、結構体格の良い男で、ウインドブレーカーのズボンははけない。
そこで、スベルべママ持参の足首カバーでスニーカーの上を覆うことに。
「でも、その格好での三国峠越えは絶対に無理だから、途中で雨具のズボンだけでも買う事」とスベルべは指示。
オートバイが体温を奪い、そして体感温度は気温よりもずっと下がることを身をもって知っていますから。
「手袋は?」なんてスベルべママの質問に「軍手です」なんて答え。
「無理無理ー、軍手の下にこれを着けて」とスベルべママは軽トラからビニール手袋を。
この他に、上着のポケットには暖房代わりの焼き芋を二つ。
そして、襟元にも小さな焼き芋を一個入れて、非常食兼暖房にして身支度を整えます。
無謀と言うか、若さと言うか、馬鹿さと言うかこの男は礼を言いながら去りました。
「気をつけてな」「無理をしないでね、無事に帰ったら電話をくれるのよ」と送り出す。
熱々の焼き芋と、焼き芋釜の温かさで元気を取り戻し、再び国道を走り始めました。
「ねー、無事に帰ったかなー」なんて心配をしながら21時過ぎに就寝。
すると、21時半ころに家電に着信があり、こんな夜中に誰だろうと思いつつ受話器を取る。
「今晩はー、あのー昼間お世話になったものです。無事に到着しましたので報告とお礼です」なんて。
農天市場では私たちの話を聞いていたお客さんが「湯沢から来たけれど、向こうはすごい雨よ」なんて言う。
そんなことから、本当に心配していたのに、無事を聞き安心して眠りについたスベルべ夫婦でした。