<藤原弘達の“創価学会を斬る”シリーズ・2/7>
続・創価学会を斬る 藤原 弘達 昭和46(1971)/12 日新報道
------(P.97)---(以下、本文)-------
◆ 中国にふりまわされる公明党-①
公明党の今日の政策的柱の一つは、日中国交正常化にある。しかし、ここでも同党の“状況べッタリ追随”の生理が働いている。かって矢野書記長は、--
「私は、一部の方のように、中国は絶対平和主義だと断定するほどの勇気は持っておりません。山田(久就)さん、古井(喜美)さんに答えたとおり、中国には物理的な軍事能力がある、この存在は否定できないわけです。……可能性として、安保条約がなくなった。しかし中国はもう一〇〇パーセント膨張主義はとらないという保証は断言できない。だから私は条文では膨張主義をとらないとは言つていない。万が一、われわれの思わざる事態、つまり中国が膨張主義的な措置をとってきた場合、私はとらないということを期待していると確信はしたいんだが、それを一〇〇パーセント否定することはできない、という立場をとっているわけです。ですから一つの保留条件として、必ず膨張主義をとると言っているんじやない。もしも、とったときには、これはそちらに対する段階的解消のあり方というものも、再検討を加えられるべきだ。こういう意味で対応条件の一つとしてあげているわけですから、中国が必ずしも膨張主義をとるとは言っていない」「中国については、直接侵略の危険性はないと思っておりますが、間接侵略の意図、もしくは内乱、騒じょうを、わが国に期待する空気というか、傾向、これは否定できないという判断に立っております」と述べている。(毎日新聞社編『“公明党政権”下の安全保障』八〇~八一ページ)
矢野のいいたいことは、安保条約の“段陪的解消”の“段階的”ということは、日米関係の急変を避けるということが重要なわけだが、それ以外に「中国を一〇〇パーセント平和主義と断定することができない」という考えがふくまれているのだ、ということである。 また矢野は中国について直接侵略の危険性はなくとも、間接侵略の意図がある、これは否定することはできないのだということもいっている。今日の日中復交問題に関する論議とは、だいぶ異質のニュアンスが含まれていることが、この発言からうかがえるであろう。その意味でこの矢野発言は公明党の体質の側面を知るうえにも興味があろう。
他方中国側は中国側で、香港の中国系の新聞『大公報』で、四十五年三月十八日に公明党・創価学会を論評し、「日蓮正宗の装いをして日本軍国主義の侵略政策に奉仕している創価学会は、いま香港での活動を強化し、あちこちで人を集め、ひそかな目的を遂げようともくろんで人々の注意を引いている。創価学会は実際上、日本の統治者政党の活動に参画し、日本のファシスト、軍国主義統治政策に奉仕する組織になっている」ときめつけ、さらに「台湾独立策の陰謀と関係があるのではないか」という疑惑まで表明していたのである。(内藤国夫「公明党の素顔は変わったか」『諸君』四六年一〇月号による)
このように一方で公明党は、中国は一〇〇%平和主義とはいい切れないという疑念を表明し、間接侵略を恐れ、他方で中国側は、公明党を日本のファシスト、軍国主義統治政策に奉仕している、と批判し合っていたのである。
ところが、あにはからんや公明党は四十五年の党大会で中華人民共和国の承認を打ちだし、四十六年六月の参院選に入ってからは、六月八日に日台条約廃棄をはっきりと表明した。 まさに同じ日、それに合わせるかのように中国からの招待状が公明党にとどき、選挙中にかかわらず、十五日に竹入委員長を団長とする一行が中国を訪問したのである。そして中国で、公明党が言いだした五項目に中国側が全面的に賛成するという形で、共同声明が出されたのである。その五項目とは
①ーつの中国の立場をとること
②台湾は中国の一つの省であること
③曰台条約は不法であるから廃棄すること
④台湾および台湾海域における米軍の軍事行動は侵略行為であり、したがってこの撤退を求める
⑤安保常任理事国としての権利を中華人民共和国政府が回復すること、
この五つである。
中華人民共和国が中国大陸の八億の人民を統治していることは否定すべくもない事実である。台湾政府が中国全土を代表しているというのは、明らかにフィクションであり,合湾政府が現実に統治しているのは、台湾という領域と、台湾に住む一、四〇〇万の人々である。この差には月とスツボンの違いが感ぜられる。しかし中国問題を論ずるにあたつて台湾問題をぬきにするわけにはいかない。北京政府はいまだかって台湾を統治したことはない、ということもまた他面における厳然たる事実なのである。
中国は現在、大小の差はあるけれども、二つの政府を持っている。どちらを正統政府とするかは、中国の国内問題といえよう。そのことは日本が口出しして然るべきこととはいえない。
中国政府の国連加入は当然であり、世界の緊張緩和ということを考えるならば、中国政府があらゆる国際機構に参加したほうが望ましいことは疑いがない。
だが他面において、中国政府は現実的なしたたか者であるということを認識しておく必要があろう。中国が自民党日中復交派、社会党、公明党を通して狙っている対日政策は、とりあえずは日米離間であり佐藤政権打倒といえよう。このもくろみに民社党をも引き入れようとしているのである。中国政府はつねづね内政不干渉や民族自決を主張している。もし、それが本気であるならぱ、たとえ佐藤内閣が日本国民にとって如何に好ましくない政府であれ、佐藤内閣は日本国民が合法的手続きで選んだ政府だということを、中国に認識さすべきであろう。
中国政府は佐藤内閣が存続する限り日中復交はありえない。次ぎの内閣が日中復交を望むなら、それとは話し合おうという趣旨のことを言っているが、これは明らかに内政干渉といえないだろうか。日本が「毛さんは相手にせず、毛の系譜をつがない人なら相手にする」といったらどういうことになろうか。中国への内政干渉となろう。
日本の対中国政策を、国家利益や国際平和といった観点から、中国なりの批判を展開するのはともかくとして、中国とは直接的関連のない日韓条約に反対し、あるいは沖縄返還協定に口出しすることが、内政干渉とならないかどうか。それは日本が中ソ関係に口だしするようなものであるということを考えるベきである。佐藤政府はたしかに今の段階では国民の支持を受けていない(二三パーセントの支持、「読売新聞」四六・一〇・一九)。そしてこの政府はさまざまの面で悪政を残してきたといえるかもしれない。しかしともかく合法的手続きによって、日本国民の意思という形で成立した政府である。その政府を公明党はわざわざ公式の場で外国と一緒になって批判するばかりか、悪罵を浴せているのである。
むしろ公明党は中国に、それは内政不干渉の原則からいって許容される範囲を越えている、というべきであるにかかわらず、逆のことをしているのである。
また中国政府は日本の外交政策を鋭く批判し、日本の軍国主義化について攻撃を加え、佐藤政権を批判しているが、しかし、経済的な取引きだけはチヤッカリとしているということも知るべきだろう。周四原則とか、いろいろとむずかしい条件を出しているものの、貿易の取引先として日本は重要な地位を占めている。中国はさまざまな国から必要なものを輪入しているが、その中で断然大きな比重を占めているのは、実は非難してやまない日本なのである。たしかに日本と中国との間の国交正常化はなされていない。しかし中国が物を買う相手先の第一位を占めるのは日本であり、二位の西ドイツ以下をはるかに引き離している。また中国が輸出する相手国は、一位が香港、二位が日本ということで、これまた中国貿易に重大な地位を占めている。
要するに中国の貿易相手は、製品の質と価格によって定まっており、そこには明らかに経済的な合理主義が働いている。したがって曰中国交回復がなされていないということが、貿易関係の大きな障害になっているとは必ずしも思われない。
中国が国際社会に復帰し、国際会議に参加してゆくということはたしかに世界の緊張緩和にプラスであり望ましいことに違いない。しかし中国のマーケットに何か大きな期待をいだくとしたら、おそらくそれは期待はずれに終わるであろう。
-----(102P)----つづく--