○〝乱脈経理…創価学会VS国税庁の暗闘ドキュメント、矢野絢也…講談社…2011/10刊〟より
◆修正申告のタイミング
四月一一日、国税庁から学会本部に修正申告の日付を四月三〇日ではなく、五月七日にした
らどうかとの打診があった。おそらく通常国会の終了時期をにらんでのことだろう。
この年の通常国会は五月八日に一五〇日間の会期を終え、閉幕する見通しだった。国税庁と
すれば、国会閉幕前日に学会が修正申告をすれば新聞で報じられるのは閉幕日の八日になり、
国会で追及されずに済むと考えたのだと思われる。私は「それでよいのではないか」という感
想を学会側に伝えておいた。
四月一二日、秋谷氏から「矢野さんが言うとおり、国会のからみもあり修正申告は五月七日
でいいのではないか」との連絡があった。
この日の朝日夕刊は、ルノワール事件で行方不明となった約一五億円のうち、少なくとも三
億円分の小切手が架空のフランス人「ハーマー•ワーウィック」名で換金されたとみられると
報じていた。結局、この「ハーマー•ワーウィック」名で裏書きされた三枚、つまり三億円の
行方が最後まで判明せず、学会あるいは関係者の裏金に消えたと囁かれることになる。
四月一五日、朝日新聞が社説でルノワール事件を取り上げた。社説は「絵の取引にかこつけ
て巨額の裏金づくりが行われたとも推測できる」「幹部が取引の場に同席していたとされる創
価学会の対応も釈然としない」などとし、「金額の大きさからみて、日常的な裏金づくりとい
────────────────改頁──────185
うより、相当特殊な背景の存在がうかがわれる。その意味でもあいまいな決着では済まされま
い」と事件の徹底解明を求めていた。
四月一六日、角谷長官から電話があつた。角谷氏は「国会で質問があり、曖昧なことは許さ
れない。ルノワール事件では二人が行方不明になつている」と、厳しい口調だった。
二人とは先の「立花」の女性役員と、アート•フランスの社長のことだ。二人は疑惑の中心
人物とみなされ、事件発覚の三月未以降、消息を絶っていた。
国税庁の山口直税部長からも電話があった。「矢野さんも大変ですね」と言うので「はい」
と私が嘆息すると、山口氏は学会の体質に呆れつつ、「乱脈すぎる」と突き放すように言い、
私に同情していた。
四月一八日、同日発売の『週間新潮』(四月ニ五日号)が、学会の税務調査について、第一次
調査結果は四月末から五月初めにかけて出る見通しで、事情通の話として「墓苑事業のうち墓
石販売を、収益事業と認定し、その利益を課税対象にした」と伝え、申告漏れの額を三○億〜
四○億円程度と報じた。
四月二二日、この記事について国税庁の山口氏から電話でクレームがあつた。
「とにかく口を固くしてほしい。財産目録は六月に、貸借対照表などと一緒に三点セットで出
してもらう」
私は山口氏の話を八尋氏に伝え、財産目録を出すように求めた。
四月二三日、修正申告を発表する学会の記者会見でのコメントについて、八尋氏から相談を
────────────────改頁──────186
受けた。私は、コメントの内容について池田名誉会長の了解を得ているのかと思い、「名誉会
長が知らないと後で困るのは君たちだ」と八尋氏に釘を刺した。会見でコメントを出したもの
の、後で池田氏から「オレは知らん。秋谷と八尋が勝手にやったことだ」とハシゴを外された
ら困るからだ。『月刊ペン事件』訴訟など、過去に何度も池田氏に煮え湯を飲まされてきたの
で念を入れたのである。(『黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録』〈講談社〉参照)
八尋氏は「そうさせていただきます」と言い、秋谷氏が、申告前に学会の県長会に事前の根
回しをしたがっていると話した。そのため、申告日を五月七日から国会終了日の八日にずら
し、五月六、七日の両日に県長会を開きたいと言っているという。しかし、いまさら国税庁と
約束した予定を変えられるはずもなく私は聞き流した。
四月二四日、ルノワール事件に関して学会幹部職員から興味深い話を聞いた。
四一億円もの値段で学会がルノワールの絵画を購入したことは、学会内でも不評を買ってい
た。特に家計を預かる婦人部の会員たちの不満が強かった。それで学会本部では、「ルノワー
ルの絵は、本当は一〇○億円もの価値があった。それを安く池田名誉会長が買ってくださった
のだ」と婦人部に説明しているというのだ。「そんな説明、誰も信用していませんよ」。この幹
部は吐き捨てるように言った。
四月二五日、東京国税局と学会が修止申告について打ち合わせをした。打ち合わせ後、国税
庁の山口部長と私は電話で話した。山口氏にょると、読売新聞の記者が国税庁側に「学会と公
明党幹部から修正申告と納税額を聞いた」と言って事実関係の確認を求めてきたという。読売
────────────────改頁──────187
の記者は「申告漏れ二○億円、法人税の納税が六億円程度で、言われているほど金額が大きく
ない。記事を書く」と言っていたそうだが、結局、記事が出たのは申告の翌日だった。
◆大喜びした池田氏
池田氏ら学会|1-脳は納税額が減ったことを喜んでいたが、私を呆れさせたのは学会の本部幹
部会でのある幹部の発言だ。この幹部は納税額が減ったことについて「信心が勝った」と勝ち
誇った挙げ句、「魔にけるな」「また財務をよろしく頼む」と会員に新たな寄付を呼びかけた
のだ。
脱税やルノワール事件で大騒ぎしているのに、会場では「これは魔である」「魔を乗り越え
よう」という呼びかけが何度も繰り返された。「まだ暴走財務をやるのか……」。私は学会の金
に対する異常なまでの執着に啞然とした。
その日の八尋氏からの電話連絡。
「今日、東京同税局と打ち合わせをした。申告漏れが二三億円、法人税六億四〇○〇万円だ。
吉川課長の話では〝今回ふれなかったところは来年度にやります〟ということだった。記者コ
メントについて大山副会長に話したら〝レポートにまとめてくれ〟と言われた」
同日、公明党の石田委員長は都内での講演で「学会に定期調査がないことこそ不自然で、是
正しなければならない問題も当然出てくると思う。しかし学会が悪いとか、脱税とか、大騒ぎ
すべき筋合いのものではない」と発言をしていた。
────────────────改頁──────188
第一次調査が片付いたのを受け、私は四月二六日、山口部長と電話で話した。山口氏は「(第
一次と違って第二次の税務調査は)聖域なしに公益•収益会計の区別なく行う」と従来の方針を
告げた後、「めげずに(譲歩を求めてあれこれ)言ってくるのに感心した。矢野さんが好きにな
った」と言つて笑った。多分皮肉だろうが、人間味を感じてホロリとした。
八尋氏からも修正申告がらみで連絡があった。八尋氏が修正申告の際の記者会見コメントに
ついて報告したところ、池田名誉会長は「税金が少ない。もっと大きくてもよい」と喜んでい
たというのだ。さんざん私に税金を値切らせておいて、「税金が少ない。もっと大きくてもよ
い」とは大言壮語好きの池田氏らしい。私は「お気楽すぎる」と嘆息し、「一将功成りて万骨
枯る」という諺を思い浮かべた。
また八尋氏は「矢野さんの働きは秋谷氏が名誉会長に話すとのこと。大山副会長には私から
話してある」と言つていたが、私には、秋谷氏らが池田氏にキチンと報告するとは思えなかっ
た。学会の幹部たちは、成果が上がると自分の功名話にして、都合のいいように池田氏に報告
し、利用価値がなくなると使い捨てにした。それが学会という組織の中で生き残り、出世する
ための彼らの常套手段だった。だが私は功名意識でやっていた訳ではなかった。「お家の一大
事」と思ったから、それこそ命がけで取り組んだだけである。私は自分の行動が池田氏に伝え
られるかどうかなど、心情的にはどうでもよかった。むしろ「一段落ついたいまこそ、キッパリ国税問題から手を引きたい」と心の中で願った。
八尋氏の話に、私が「ふーん」と気のない返事をしていたら、八尋氏は「ルノワール事件が
────────────────改頁──────189
らみで調査官が美術館に調査にきたことを秋谷氏に話した。秋谷氏は困った顔をして『矢野さ
んにやってもらうしかない。ょろしく頼んでくれ』と言っていた」と言った。私は「いい加減
にしてほしい。ここまで何回、国税に頭を下げてきたことか。内輪にいてあれこれ言つている
だけの人に交渉してもらいたい」と怒気を込めて言った。
宗門戦争も激化していて、学会幹部職員が「四月二八日に本山から使者がきて戦闘開始にな
る。破門になるかもしれない」と心配していたことを八尋氏に話すと、「本山は学会青年部が
大石寺に乱人すると言って予防策を講じ、マスコミにも連絡している。こちらは何もしないの
に」と笑っていた。
すると人れ替わりに公明党幹部から電話が入った。宗門戦争のせいで折伏ができないらし
く、「折伏の代わりに票を増やすという方針だ。参議院と衆議院の候補を早く決めることにす
る」。
五月六日、八尋氏と修正申告について打ち合わせ。八尋氏は「県長、本部長会で税のことを
説明する。マスコミが報道する前に先手を打って準備する」と話して、聖教新聞に掲載する修
正申告のコメント文を私にファックスで送ってきた。「訂正の必要があれば直してほしい。朝
日と読売は一面トップの扱いのようだ。六億円という申告漏れの金額も両社は知っているらし
い」と八尋氏は語った。
五月七日、修正申告の当日。私は迷惑をかけた国税庁の角谷長官、山口部長、吉川課長に電
────────────────改頁──────190
話でお礼を言った。その後、八尋氏を通じて秋谷氏から「一度慰労の一席を設けさせてほし
い。今後は泰然自若で行くしかない。矢野さんの言うとおりだ。洪水が終わるのを待つしかな
い。くれぐれもよろしくお伝えください」という伝言が伝えられた。
学会本部幹部職員からは宗門戦争について連絡があった。寺院を通して参詣登山した学会員
は自動的に学会を退会したとみなすとのこと。破門された場合、最も困るのは信仰の対象であ
るご本尊の問題だが、これについて幹部職員は「いままでいただいていたご本尊を流用してい
るが数が足りない。新しい会館がオープンするとご本尊を備えねばならないが、数が足りない
のでおそらく模刻している。模刻がバレるので新しい会館オープンのことは聖教新聞に載せな
いみたいだ。宗門から模刻をチェックされるのを恐れているようだ」と解説してくれた。この
後学会は宗門への配慮をいっさいしなくなり、徹底的に罵倒するようになる。
また池田氏の近況について幹部職員は「名誉会長は相当苛立っている。本部幹部会では〝寺
はいらない。葬式もいらない〟とほのめかしているが、皆、困つている。しかも名誉会長は最
近〝俺の体にさわると病気が治る、長生きする〟と言っている。頭がおかしいんじやないか」
と溜め息をついていた。
五月八日、朝日新聞が一面トップで学会の修正申告を報じた。読売新聞も一面と政治面、社
会面で大きく取り上げた。
修正申告の内容をまとめておくと、一九八七年から三年間で総額二三億八○○〇万円の申告漏れがあり、法人税約六億四〇○〇万円を管轄の四谷税務署に納付した。またこの他に過少申
────────────────改頁──────191
告加算税として約六○○〇万円が追徴されることになつた。
学会は一九九〇年までに全国五力所に二一万基を超える大規模墓苑を建設し、一基当たり四
〇万〜九○万円で会員に販売してきた。修正申告の中心は会員に販売した二一万基の墓石と納
骨室の販売収入だが、このぅち戸田記念墓地公園一九七七年完成)、富士桜自然墓地公園一
九八○年完成)は既に三年の課税時効が成立していたため、追加募集分を除く大半の墓石販売
収入が課税を免れた。これにより学会の墓石販売収入の大部分に当たる八○億円以上が課税対
象から外された。
一方、墓苑収人で課税対象になったのは、戸田記念墓地公園、富士桜自然墓地公園で追加募
集して得た墓石収人とその運用益、さらに中部池田記念墓地公園(一九九〇年完成)など三墓
苑の事前預かり金(学会員から預かった予約金)の運用益が中心だった。戸田記念墓地公園と富
士桜自然墓地公園で追加募集した墓石は約五〇〇○基、中部池田記念墓地公園など三墓苑で募
集したのは約一二万基。しかし、中部池田記念墓地公園など.三墓苑は開園が一九九○年で購入
者への引き渡しが済んでおらず、販売収入は税務上「預かり金」とみなされて所得にならない
ため、三ヵ所に関しては預かり金の運用益のみが申告漏れとみなされた。
────────────────改頁──────192
墓苑以外では聖教新聞社の申告漏れ分(二億円強)も修正申告に含まれている。
学会の墓苑には、この他にも群馬県渋川市に「はるな平和墓苑」(一九八七年完成・二万四八
○○基•所有者は財団法人平和墓苑)があるが、こちらは東京国税局の管轄外で、このときの申
告漏れには含まれなかった。修正申告に当たり、学会は事前の打ち合わせどおり広報室長がコ
メントを発表した。以下は読売新聞に載ったコメントだ。
「墳墓地の貸付業は非課税、といぅ法人税法の規定などから墓地と墓石、納骨施設が一体とな
った規格型墓地は、当然、非課税と認識していた。しかし、(非課税は土地だけという)当局
と、見解が食い違い、同種事業に対する課税のバランスも考慮する当局の方針を受け入れ、不
本意だが修正申告した。経理不正はいっさいない」
私の目を引いたのは読売新聞が「第二次調査」に言及していたことだった。読売は、今後、
関東信越国税局がはるな平和墓苑の調査を行い、修正申告を求める方針であり、一五億円が行
方不明になっているルノワール事件の解明を進めつつ学会と幹部の経費の支出面などについて
も調査する方向で検討していると報じた。「幹部の経費」が池田名誉会長の公私混同問題を指
しているのは明らかだった〟
これに対し学会は今回の調査で「経理に不透明な部分はないことが証明され、調査はすべて
終わった」とコメントしていた。
読売は「帳簿を開示するだけで数か月もかかった」「山崎正友•元学会顧問弁護士の学会恐
────────────────改頁──────193
喝事件でも、脅し取られた三億円の多くが、今回、申告漏れが見つかった墓苑事業特別会計か
ら支出された」などと書いていて、税務調査の内容をかなり詳しく把握している様子だった。
国税庁の現場あたりからある程度のリークを受けていたのだろう。前年六月から一〇ヵ月もの
異例の長期調査を強いられた現場の苛立ちが紙面の行間ににじみ出ていた。
私は、読売の記事を読みながら「国税庁はこれから厳しく攻めてくるだろう」と思った。
◆墓苑会計にメス
五月九日、八尋氏からルノワール事件について電話があった。
《「検察、内偵を進めているらしい。あって不思議はない」》
五月一三日、国税庁の角谷長官、山口部長と、八尋氏を交えて会談。角谷氏は「二一日、共
産党がルノワール事件の質問をやる。自分が答弁に立つ。まだ失踪している女性役員ら二人は
出てこない。検察もルノワール事件について関心はあるが、こちらとしては、まず国税庁が材
料を集め、検察には材料が集まってから動いてほしいとしか言えない」と、苦渋に満ちた表情
で語った。
五月一五日、安倍晋太郎元外相が順天堂大学医学部附属順天堂病院で死去した。総理にもう
一歩のところでの無念の死。来日したソ連のゴルバチョフ大統領とも病気を押して会談。安倍
氏側が発表した病名は胆石だったが実際は膵臓がんだったという。本当にお気の毒で病院に弔
問にうかがった。
────────────────改頁──────194
この日は学会本部で突拍子もない事件が起きていた。朝六時過ぎに、男がクレーン車で学会
本部に乗りつけ、クレーン車のァーム先端部から本部北側三隅のベランダに移り、立てこもっ
たのである。男はJR東海の社員で学会員だった。男は池田名誉会長に抗議する垂れ幕二枚を
掲げる用意をしていたが、現場にかけつけた四谷署員に取り押さえられた。男は取り押さえら
れる前に、包丁で自分の左腹部を刺し、病院に運ばれた。相次ぐ不祥事と宗門戦争への抗議だ
ったようだ。八尋氏は「事情がわからないが男は血まみれだった」と興奮気味に話していた。
五月一六日、大阪に行き、西口良三総関西長と関西文化会館で会った。西口氏は「八尋から
話を聞いている。八尋は『矢野さんは凄い』と感嘆していた」と嬉しそうに語り、こう続け
た。
「八尋は池田名誉会長を守っている。秋谷にも言わずに処理することもある。要の人物だから
矢野さんはぜひ八尋を守ってくれ。権力の怖さを痛感した。矢野さんがやり抜くなら党に対し
て、関西として意見を言う。市川などけしからん」
西口氏の言葉は、八尋氏がルノワール事件で池田氏を守っている、と私には受け取れた。そ
れにしても、困難極まる裏工作をみんなが私に押し付けようとするのは困ったことだった。
私が「いまはケジメのときだから、国税はバトンタッチをしたい」と国税との交渉から降り
たい旨を伝えると、西口氏は「それは絶対にダメだ。欠野さんしかいない」と強い口調で反対
し私を説得した。
私の選挙区の事実上の最高司令官からこう言われては、私もむげに断れない。だが辞める決
────────────────改頁──────195
意は変わらなかった。私は自分の気持ちを丁寧に説明して、「国税の担当を替わる。次の選挙
の出馬も辞退する」と述べた。私の辞意を聞いて西口氏らは、かなり狼狽しているょうだっ
た。
五月一七日、八尋氏から「今日、はるな墓苑に関東信越国税局が調査にくる。書類上の話で
済みそうだ。だがTBSなどがはるな墓苑の調査について熱心に取材しているのが気掛かり
だ。表面化した以上、書類所上の調査でも申告漏れの額に大小の差が出るだろう」と電話連絡が
あった。
はるな平和墓苑の調査が始まったのは五月二一日。調査には関東信越国税局の資料調査課の
課長ら四人が訪れた。課長は「東京国税局とは別に独自の立場で調査したい」と話したとい
う。はるな平和墓苑はオープン当初、一万八〇〇〇基だったが、その後、迫加募集し、当時は
二万五〇〇〇基あった。もっとも関東信越国税局は「独自の立場で」と言うが、墓石と納骨室
の収入に課税されることは決まっているので、問題はどちらの基数を課税基準にするかだけだ
った。
党の常任企画会議の後、公明党の中央執行委員会開催。石田委員長と市川書記長から「本当
にご苦労様でした」とねぎらいの言葉をかけられた。このときのやりとりが、私の手帖に残っ
ている。
《矢野「いえいえ、皆さんのお蔭で。私は端役でした。端役ですが、私の力量ではもう無理で
す。やっと終わったので選手交代をやりたいと八尋を通じて秋谷会長に言ってある。あと、税
────────────────改頁──────196
務調査は公私混同など聖域が残っている」
市川「事務レベル同士の対応でムリか」
矢野「ムリと思う」
市川「秋谷会長のところに矢野さんがくると、会長から『あんたは席をハズしてくれ』と言わ
れる。会長は矢野さん以外に広げる気持ちはない。また竹入さんと矢野さんのような力を石田
さんと私に持たせたくないから多分ムリ。むしろこれからの方が微妙に難しいのでは」
矢野「これから大変というのは、その通り。もっと大変かもしれん。でも市川君は優秀だし、
肝も据わっている。私も裏で力いっぱい応援するから、国税の担当を替えて欲しい」
石田「矢野さんの気持ちはわかるが、話は極めて専門的かつ微妙。私たちはさっぱりわからな
い。矢野さんに続けてもらうしかない」》
五月二二日、八〇年に起きた山崎正友元顧問弁護士による学会恐喝事作に関して、共産党が
参議院で質問した。この事件の解決のため、字会側が支払った三億円が墓苑事業特別会計から
出ていたことを追及したのである。彼らはこの事件当時の東京地検による北条浩会長(当時)
の供述調書を独自に入手し、「山崎元顧問弁護士が学会から脅し取った三億円は墓苑事業特別
会計から出ていた。墓苑事業が長い間、非課税だったのはおかしい」と迫った。これに対し法
務省の井嶋一友刑事局長は「供述調書にそう書いてあるのは事実だが、答弁するのは控えた
い」と答えた。また学会広報室はマスコミの取材に「三億円は墓苑会計から支出されたが、役
員会で承認されており、裏金、簿外資金ではない」とコメントした。
────────────────改頁──────197
その日の八尋氏からの電話。
「はるな平和墓苑だが、追加募集分のプラス七〇○〇基は、設置許可がおりない段階で国税が
それを収入に入れるのはおかしい。共産党の質問もあり、とにかくよろしくお願いしたい」
五月二三日、国税庁の吉川課長に電話をした。吉川氏は「共産党の質問は本線(第二次調
査)と関係がなかつた」とし「はるな平和墓苑は一万八〇〇○基で計算すると、そちら(財
団)が損になる。プラス七〇〇〇のほうがお得ですよ」と忠告してくれた。そのまま八尋氏に
伝えておいた。
その後、仏は角谷国税庁長官との電話で、ルノワール事件が急展開していることを知つた。
角谷氏が言った。
「検察が三菱商事を調査したらしい。八尋氏の事情聴取を早くやりたいと現場、調査一部が言
つてきている」
急いで八尋氏に確認すると「三菱商事からは音沙汰がない。検察に口止めされているらし
い。調べる。はるな平和墓苑のこともあるのに私の事情聴取とは困ったことだ」と頭を抱えて
いた。私は「国税にルノワール事件について何かスジ(狙い)があるよぅな気がする」と感想
を話した。
この日は国税庁の山口部長とも電話でやり取りした。山口氏は共産党が追及している山崎元
顧問弁護士に学会から支払われた「三億円の出所が焦点になっている」と説明、三億円が墓苑
事業会計から支出されていることから、第二次調査で「これに課税しないのはマズイ」と話し
────────────────改頁──────198
ていた。
「取りはぐれは裏の補助金に当たる。これは憲法に反するのではないか。これでは検察•警察
も怒るだろぅ」と山口氏は語気を強めた。
憲法八九条は国家が宗教団体に「公金の支出」をすることを禁じている。税金を取らないで
見過ごすことは国家が宗教体に補助金を与えるのも同然だから憲法に違反するといぅ論理で
ある。
山口氏との電話が終わると、八尋氏から「ルノワール事件で特捜部が動いているらしい」と
急ぎの電話が入った。八尋氏は、自分の弁護のために福島啓充副会長(元検事)ら二人の弁護
土に動いてもらうと話していた。八尋氏が続けた。
「三菱商事が(行方がわからない)ー五億円について決算で使途不明金扱いにした。三菱商事
からの連絡はないがファックスでその旨の通知が来ていた。学会の別の幹部二人のところに検
察が来ているかもしれない」
この日の午前の決算発表で、三菱商事は、ルノワール絵画取引がらみのー五億円について
「この金の使途については説明することができない。当局の指摘に従い、この金を課税対象の
交際費として申告し直す」と説明した。同社の太田信一郎専務は使途不明金扱いにしたことに
ついて「売り先を特定できない取引をした当方にも手落ちがあった」と話し、五億円の仲介手
数料を受け取ったとされるコンサルタント会社経営者の役割は「わからない」とし、「今後は
当局が(八尋副会長以降の)金の流れについて解明し、関係者が修正申告することを期待する」
────────────────改頁──────199
と語つた。
────────────────◇────────────(引用ここまで、つづく)
今回のコメントは、前回と同じく、前大阪市長の〝平松〟さん…その3…で、再々登場です。
平松…「ハッハッハッ…とにかくですね、前回の府・市ダブル選挙‥公明の固定票8割が〝平松〟‥ここで、橋下が動いた?‥公明からが先との説(維新のシンパ)があるが、わしは、橋下だと思う。そう選挙協力、先の先の衆議院選挙(小選挙区)で大阪4と兵庫2の、(他は東京1のみ、詳細はパス)創価学会の池田名誉会長が、悪事を逆手にして築いた〝常勝関西〟の初の全敗、この敗北に池田はキレに切れていた。脳溢血とか脳梗塞で倒れた噂の原因とも言われている。‥時の神崎公明委員長・北側副委員長・冬柴国土大臣(順に東京・大阪・兵庫)落選、又、矢野元公明委員長の〝黒い手帖返還訴訟事件〟で敗北もし、このブログの〝乱脈経理=脱税教唆〟続いて〝池田の黒い影=暴力団?〟の出版の噂もでていた」
「〝創価学会を守れ!!、師匠を守れ!!〟〝貴様はす何様のつもりだ!!〟〝師匠が地獄なら、弟子も地獄ダ〟〝お前はなんの役にもたたない!!〟‥等々‥何日も荒れ続けたらしい?
昨日までラブラブの西口関西長(副会長)にも、お前はクビだ!!‥東京に来て〝俺の尻を拭いて修行しろ〟‥もっとも、これは‥半分冗談というか‥ヘッヘッ!!‥。
え?‥コメント、元にもどします‥橋下市長の大阪市議会‥維新が断トツだか、中選挙区制なので議員数で過半数は難しい、公明が一番憎いが‥一番弱点を持っている‥次の衆議院選挙(小選挙区)で、関西のこの6つ‥維新の候補者なしです。応援もします。‥その代わり、大阪市議会の都構想‥住民投票まで協力して下さい。提案は、橋下からだと思いますよ?‥公明からの提案なら?、橋下は疑ったはずですよ‥池田の〝ウソつき〟〝はしごはずし〟や〝池田恫喝教・傲慢教・詭弁、すり替え、自分教・ブーメラン教〟〟のことは、府長・市長になる前から知っていた筈ですからね‥しかも、弁護士ですよ‥これを〝上手の手から水漏れる!!〟〝魔は天上界に住む!!〟徒然草の〝木登りの男!!〟〝猿知恵!!〟まァ‥、こんなところ‥〝ハニートラップ〟‥あんさん‥都市伝説中毒でっせ!!‥ハッハッハッ…愉快!!、愉快!!‥」
(誤字・脱字、文法無視、パクリ・援用・重複・勝手編集も‥笑って♪♪‥許して♪♪‥)
◆修正申告のタイミング
四月一一日、国税庁から学会本部に修正申告の日付を四月三〇日ではなく、五月七日にした
らどうかとの打診があった。おそらく通常国会の終了時期をにらんでのことだろう。
この年の通常国会は五月八日に一五〇日間の会期を終え、閉幕する見通しだった。国税庁と
すれば、国会閉幕前日に学会が修正申告をすれば新聞で報じられるのは閉幕日の八日になり、
国会で追及されずに済むと考えたのだと思われる。私は「それでよいのではないか」という感
想を学会側に伝えておいた。
四月一二日、秋谷氏から「矢野さんが言うとおり、国会のからみもあり修正申告は五月七日
でいいのではないか」との連絡があった。
この日の朝日夕刊は、ルノワール事件で行方不明となった約一五億円のうち、少なくとも三
億円分の小切手が架空のフランス人「ハーマー•ワーウィック」名で換金されたとみられると
報じていた。結局、この「ハーマー•ワーウィック」名で裏書きされた三枚、つまり三億円の
行方が最後まで判明せず、学会あるいは関係者の裏金に消えたと囁かれることになる。
四月一五日、朝日新聞が社説でルノワール事件を取り上げた。社説は「絵の取引にかこつけ
て巨額の裏金づくりが行われたとも推測できる」「幹部が取引の場に同席していたとされる創
価学会の対応も釈然としない」などとし、「金額の大きさからみて、日常的な裏金づくりとい
────────────────改頁──────185
うより、相当特殊な背景の存在がうかがわれる。その意味でもあいまいな決着では済まされま
い」と事件の徹底解明を求めていた。
四月一六日、角谷長官から電話があつた。角谷氏は「国会で質問があり、曖昧なことは許さ
れない。ルノワール事件では二人が行方不明になつている」と、厳しい口調だった。
二人とは先の「立花」の女性役員と、アート•フランスの社長のことだ。二人は疑惑の中心
人物とみなされ、事件発覚の三月未以降、消息を絶っていた。
国税庁の山口直税部長からも電話があった。「矢野さんも大変ですね」と言うので「はい」
と私が嘆息すると、山口氏は学会の体質に呆れつつ、「乱脈すぎる」と突き放すように言い、
私に同情していた。
四月一八日、同日発売の『週間新潮』(四月ニ五日号)が、学会の税務調査について、第一次
調査結果は四月末から五月初めにかけて出る見通しで、事情通の話として「墓苑事業のうち墓
石販売を、収益事業と認定し、その利益を課税対象にした」と伝え、申告漏れの額を三○億〜
四○億円程度と報じた。
四月二二日、この記事について国税庁の山口氏から電話でクレームがあつた。
「とにかく口を固くしてほしい。財産目録は六月に、貸借対照表などと一緒に三点セットで出
してもらう」
私は山口氏の話を八尋氏に伝え、財産目録を出すように求めた。
四月二三日、修正申告を発表する学会の記者会見でのコメントについて、八尋氏から相談を
────────────────改頁──────186
受けた。私は、コメントの内容について池田名誉会長の了解を得ているのかと思い、「名誉会
長が知らないと後で困るのは君たちだ」と八尋氏に釘を刺した。会見でコメントを出したもの
の、後で池田氏から「オレは知らん。秋谷と八尋が勝手にやったことだ」とハシゴを外された
ら困るからだ。『月刊ペン事件』訴訟など、過去に何度も池田氏に煮え湯を飲まされてきたの
で念を入れたのである。(『黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録』〈講談社〉参照)
八尋氏は「そうさせていただきます」と言い、秋谷氏が、申告前に学会の県長会に事前の根
回しをしたがっていると話した。そのため、申告日を五月七日から国会終了日の八日にずら
し、五月六、七日の両日に県長会を開きたいと言っているという。しかし、いまさら国税庁と
約束した予定を変えられるはずもなく私は聞き流した。
四月二四日、ルノワール事件に関して学会幹部職員から興味深い話を聞いた。
四一億円もの値段で学会がルノワールの絵画を購入したことは、学会内でも不評を買ってい
た。特に家計を預かる婦人部の会員たちの不満が強かった。それで学会本部では、「ルノワー
ルの絵は、本当は一〇○億円もの価値があった。それを安く池田名誉会長が買ってくださった
のだ」と婦人部に説明しているというのだ。「そんな説明、誰も信用していませんよ」。この幹
部は吐き捨てるように言った。
四月二五日、東京国税局と学会が修止申告について打ち合わせをした。打ち合わせ後、国税
庁の山口部長と私は電話で話した。山口氏にょると、読売新聞の記者が国税庁側に「学会と公
明党幹部から修正申告と納税額を聞いた」と言って事実関係の確認を求めてきたという。読売
────────────────改頁──────187
の記者は「申告漏れ二○億円、法人税の納税が六億円程度で、言われているほど金額が大きく
ない。記事を書く」と言っていたそうだが、結局、記事が出たのは申告の翌日だった。
◆大喜びした池田氏
池田氏ら学会|1-脳は納税額が減ったことを喜んでいたが、私を呆れさせたのは学会の本部幹
部会でのある幹部の発言だ。この幹部は納税額が減ったことについて「信心が勝った」と勝ち
誇った挙げ句、「魔にけるな」「また財務をよろしく頼む」と会員に新たな寄付を呼びかけた
のだ。
脱税やルノワール事件で大騒ぎしているのに、会場では「これは魔である」「魔を乗り越え
よう」という呼びかけが何度も繰り返された。「まだ暴走財務をやるのか……」。私は学会の金
に対する異常なまでの執着に啞然とした。
その日の八尋氏からの電話連絡。
「今日、東京同税局と打ち合わせをした。申告漏れが二三億円、法人税六億四〇○〇万円だ。
吉川課長の話では〝今回ふれなかったところは来年度にやります〟ということだった。記者コ
メントについて大山副会長に話したら〝レポートにまとめてくれ〟と言われた」
同日、公明党の石田委員長は都内での講演で「学会に定期調査がないことこそ不自然で、是
正しなければならない問題も当然出てくると思う。しかし学会が悪いとか、脱税とか、大騒ぎ
すべき筋合いのものではない」と発言をしていた。
────────────────改頁──────188
第一次調査が片付いたのを受け、私は四月二六日、山口部長と電話で話した。山口氏は「(第
一次と違って第二次の税務調査は)聖域なしに公益•収益会計の区別なく行う」と従来の方針を
告げた後、「めげずに(譲歩を求めてあれこれ)言ってくるのに感心した。矢野さんが好きにな
った」と言つて笑った。多分皮肉だろうが、人間味を感じてホロリとした。
八尋氏からも修正申告がらみで連絡があった。八尋氏が修正申告の際の記者会見コメントに
ついて報告したところ、池田名誉会長は「税金が少ない。もっと大きくてもよい」と喜んでい
たというのだ。さんざん私に税金を値切らせておいて、「税金が少ない。もっと大きくてもよ
い」とは大言壮語好きの池田氏らしい。私は「お気楽すぎる」と嘆息し、「一将功成りて万骨
枯る」という諺を思い浮かべた。
また八尋氏は「矢野さんの働きは秋谷氏が名誉会長に話すとのこと。大山副会長には私から
話してある」と言つていたが、私には、秋谷氏らが池田氏にキチンと報告するとは思えなかっ
た。学会の幹部たちは、成果が上がると自分の功名話にして、都合のいいように池田氏に報告
し、利用価値がなくなると使い捨てにした。それが学会という組織の中で生き残り、出世する
ための彼らの常套手段だった。だが私は功名意識でやっていた訳ではなかった。「お家の一大
事」と思ったから、それこそ命がけで取り組んだだけである。私は自分の行動が池田氏に伝え
られるかどうかなど、心情的にはどうでもよかった。むしろ「一段落ついたいまこそ、キッパリ国税問題から手を引きたい」と心の中で願った。
八尋氏の話に、私が「ふーん」と気のない返事をしていたら、八尋氏は「ルノワール事件が
────────────────改頁──────189
らみで調査官が美術館に調査にきたことを秋谷氏に話した。秋谷氏は困った顔をして『矢野さ
んにやってもらうしかない。ょろしく頼んでくれ』と言っていた」と言った。私は「いい加減
にしてほしい。ここまで何回、国税に頭を下げてきたことか。内輪にいてあれこれ言つている
だけの人に交渉してもらいたい」と怒気を込めて言った。
宗門戦争も激化していて、学会幹部職員が「四月二八日に本山から使者がきて戦闘開始にな
る。破門になるかもしれない」と心配していたことを八尋氏に話すと、「本山は学会青年部が
大石寺に乱人すると言って予防策を講じ、マスコミにも連絡している。こちらは何もしないの
に」と笑っていた。
すると人れ替わりに公明党幹部から電話が入った。宗門戦争のせいで折伏ができないらし
く、「折伏の代わりに票を増やすという方針だ。参議院と衆議院の候補を早く決めることにす
る」。
五月六日、八尋氏と修正申告について打ち合わせ。八尋氏は「県長、本部長会で税のことを
説明する。マスコミが報道する前に先手を打って準備する」と話して、聖教新聞に掲載する修
正申告のコメント文を私にファックスで送ってきた。「訂正の必要があれば直してほしい。朝
日と読売は一面トップの扱いのようだ。六億円という申告漏れの金額も両社は知っているらし
い」と八尋氏は語った。
五月七日、修正申告の当日。私は迷惑をかけた国税庁の角谷長官、山口部長、吉川課長に電
────────────────改頁──────190
話でお礼を言った。その後、八尋氏を通じて秋谷氏から「一度慰労の一席を設けさせてほし
い。今後は泰然自若で行くしかない。矢野さんの言うとおりだ。洪水が終わるのを待つしかな
い。くれぐれもよろしくお伝えください」という伝言が伝えられた。
学会本部幹部職員からは宗門戦争について連絡があった。寺院を通して参詣登山した学会員
は自動的に学会を退会したとみなすとのこと。破門された場合、最も困るのは信仰の対象であ
るご本尊の問題だが、これについて幹部職員は「いままでいただいていたご本尊を流用してい
るが数が足りない。新しい会館がオープンするとご本尊を備えねばならないが、数が足りない
のでおそらく模刻している。模刻がバレるので新しい会館オープンのことは聖教新聞に載せな
いみたいだ。宗門から模刻をチェックされるのを恐れているようだ」と解説してくれた。この
後学会は宗門への配慮をいっさいしなくなり、徹底的に罵倒するようになる。
また池田氏の近況について幹部職員は「名誉会長は相当苛立っている。本部幹部会では〝寺
はいらない。葬式もいらない〟とほのめかしているが、皆、困つている。しかも名誉会長は最
近〝俺の体にさわると病気が治る、長生きする〟と言っている。頭がおかしいんじやないか」
と溜め息をついていた。
五月八日、朝日新聞が一面トップで学会の修正申告を報じた。読売新聞も一面と政治面、社
会面で大きく取り上げた。
修正申告の内容をまとめておくと、一九八七年から三年間で総額二三億八○○〇万円の申告漏れがあり、法人税約六億四〇○〇万円を管轄の四谷税務署に納付した。またこの他に過少申
────────────────改頁──────191
告加算税として約六○○〇万円が追徴されることになつた。
学会は一九九〇年までに全国五力所に二一万基を超える大規模墓苑を建設し、一基当たり四
〇万〜九○万円で会員に販売してきた。修正申告の中心は会員に販売した二一万基の墓石と納
骨室の販売収入だが、このぅち戸田記念墓地公園一九七七年完成)、富士桜自然墓地公園一
九八○年完成)は既に三年の課税時効が成立していたため、追加募集分を除く大半の墓石販売
収入が課税を免れた。これにより学会の墓石販売収入の大部分に当たる八○億円以上が課税対
象から外された。
一方、墓苑収人で課税対象になったのは、戸田記念墓地公園、富士桜自然墓地公園で追加募
集して得た墓石収人とその運用益、さらに中部池田記念墓地公園(一九九〇年完成)など三墓
苑の事前預かり金(学会員から預かった予約金)の運用益が中心だった。戸田記念墓地公園と富
士桜自然墓地公園で追加募集した墓石は約五〇〇○基、中部池田記念墓地公園など三墓苑で募
集したのは約一二万基。しかし、中部池田記念墓地公園など.三墓苑は開園が一九九○年で購入
者への引き渡しが済んでおらず、販売収入は税務上「預かり金」とみなされて所得にならない
ため、三ヵ所に関しては預かり金の運用益のみが申告漏れとみなされた。
────────────────改頁──────192
墓苑以外では聖教新聞社の申告漏れ分(二億円強)も修正申告に含まれている。
学会の墓苑には、この他にも群馬県渋川市に「はるな平和墓苑」(一九八七年完成・二万四八
○○基•所有者は財団法人平和墓苑)があるが、こちらは東京国税局の管轄外で、このときの申
告漏れには含まれなかった。修正申告に当たり、学会は事前の打ち合わせどおり広報室長がコ
メントを発表した。以下は読売新聞に載ったコメントだ。
「墳墓地の貸付業は非課税、といぅ法人税法の規定などから墓地と墓石、納骨施設が一体とな
った規格型墓地は、当然、非課税と認識していた。しかし、(非課税は土地だけという)当局
と、見解が食い違い、同種事業に対する課税のバランスも考慮する当局の方針を受け入れ、不
本意だが修正申告した。経理不正はいっさいない」
私の目を引いたのは読売新聞が「第二次調査」に言及していたことだった。読売は、今後、
関東信越国税局がはるな平和墓苑の調査を行い、修正申告を求める方針であり、一五億円が行
方不明になっているルノワール事件の解明を進めつつ学会と幹部の経費の支出面などについて
も調査する方向で検討していると報じた。「幹部の経費」が池田名誉会長の公私混同問題を指
しているのは明らかだった〟
これに対し学会は今回の調査で「経理に不透明な部分はないことが証明され、調査はすべて
終わった」とコメントしていた。
読売は「帳簿を開示するだけで数か月もかかった」「山崎正友•元学会顧問弁護士の学会恐
────────────────改頁──────193
喝事件でも、脅し取られた三億円の多くが、今回、申告漏れが見つかった墓苑事業特別会計か
ら支出された」などと書いていて、税務調査の内容をかなり詳しく把握している様子だった。
国税庁の現場あたりからある程度のリークを受けていたのだろう。前年六月から一〇ヵ月もの
異例の長期調査を強いられた現場の苛立ちが紙面の行間ににじみ出ていた。
私は、読売の記事を読みながら「国税庁はこれから厳しく攻めてくるだろう」と思った。
◆墓苑会計にメス
五月九日、八尋氏からルノワール事件について電話があった。
《「検察、内偵を進めているらしい。あって不思議はない」》
五月一三日、国税庁の角谷長官、山口部長と、八尋氏を交えて会談。角谷氏は「二一日、共
産党がルノワール事件の質問をやる。自分が答弁に立つ。まだ失踪している女性役員ら二人は
出てこない。検察もルノワール事件について関心はあるが、こちらとしては、まず国税庁が材
料を集め、検察には材料が集まってから動いてほしいとしか言えない」と、苦渋に満ちた表情
で語った。
五月一五日、安倍晋太郎元外相が順天堂大学医学部附属順天堂病院で死去した。総理にもう
一歩のところでの無念の死。来日したソ連のゴルバチョフ大統領とも病気を押して会談。安倍
氏側が発表した病名は胆石だったが実際は膵臓がんだったという。本当にお気の毒で病院に弔
問にうかがった。
────────────────改頁──────194
この日は学会本部で突拍子もない事件が起きていた。朝六時過ぎに、男がクレーン車で学会
本部に乗りつけ、クレーン車のァーム先端部から本部北側三隅のベランダに移り、立てこもっ
たのである。男はJR東海の社員で学会員だった。男は池田名誉会長に抗議する垂れ幕二枚を
掲げる用意をしていたが、現場にかけつけた四谷署員に取り押さえられた。男は取り押さえら
れる前に、包丁で自分の左腹部を刺し、病院に運ばれた。相次ぐ不祥事と宗門戦争への抗議だ
ったようだ。八尋氏は「事情がわからないが男は血まみれだった」と興奮気味に話していた。
五月一六日、大阪に行き、西口良三総関西長と関西文化会館で会った。西口氏は「八尋から
話を聞いている。八尋は『矢野さんは凄い』と感嘆していた」と嬉しそうに語り、こう続け
た。
「八尋は池田名誉会長を守っている。秋谷にも言わずに処理することもある。要の人物だから
矢野さんはぜひ八尋を守ってくれ。権力の怖さを痛感した。矢野さんがやり抜くなら党に対し
て、関西として意見を言う。市川などけしからん」
西口氏の言葉は、八尋氏がルノワール事件で池田氏を守っている、と私には受け取れた。そ
れにしても、困難極まる裏工作をみんなが私に押し付けようとするのは困ったことだった。
私が「いまはケジメのときだから、国税はバトンタッチをしたい」と国税との交渉から降り
たい旨を伝えると、西口氏は「それは絶対にダメだ。欠野さんしかいない」と強い口調で反対
し私を説得した。
私の選挙区の事実上の最高司令官からこう言われては、私もむげに断れない。だが辞める決
────────────────改頁──────195
意は変わらなかった。私は自分の気持ちを丁寧に説明して、「国税の担当を替わる。次の選挙
の出馬も辞退する」と述べた。私の辞意を聞いて西口氏らは、かなり狼狽しているょうだっ
た。
五月一七日、八尋氏から「今日、はるな墓苑に関東信越国税局が調査にくる。書類上の話で
済みそうだ。だがTBSなどがはるな墓苑の調査について熱心に取材しているのが気掛かり
だ。表面化した以上、書類所上の調査でも申告漏れの額に大小の差が出るだろう」と電話連絡が
あった。
はるな平和墓苑の調査が始まったのは五月二一日。調査には関東信越国税局の資料調査課の
課長ら四人が訪れた。課長は「東京国税局とは別に独自の立場で調査したい」と話したとい
う。はるな平和墓苑はオープン当初、一万八〇〇〇基だったが、その後、迫加募集し、当時は
二万五〇〇〇基あった。もっとも関東信越国税局は「独自の立場で」と言うが、墓石と納骨室
の収入に課税されることは決まっているので、問題はどちらの基数を課税基準にするかだけだ
った。
党の常任企画会議の後、公明党の中央執行委員会開催。石田委員長と市川書記長から「本当
にご苦労様でした」とねぎらいの言葉をかけられた。このときのやりとりが、私の手帖に残っ
ている。
《矢野「いえいえ、皆さんのお蔭で。私は端役でした。端役ですが、私の力量ではもう無理で
す。やっと終わったので選手交代をやりたいと八尋を通じて秋谷会長に言ってある。あと、税
────────────────改頁──────196
務調査は公私混同など聖域が残っている」
市川「事務レベル同士の対応でムリか」
矢野「ムリと思う」
市川「秋谷会長のところに矢野さんがくると、会長から『あんたは席をハズしてくれ』と言わ
れる。会長は矢野さん以外に広げる気持ちはない。また竹入さんと矢野さんのような力を石田
さんと私に持たせたくないから多分ムリ。むしろこれからの方が微妙に難しいのでは」
矢野「これから大変というのは、その通り。もっと大変かもしれん。でも市川君は優秀だし、
肝も据わっている。私も裏で力いっぱい応援するから、国税の担当を替えて欲しい」
石田「矢野さんの気持ちはわかるが、話は極めて専門的かつ微妙。私たちはさっぱりわからな
い。矢野さんに続けてもらうしかない」》
五月二二日、八〇年に起きた山崎正友元顧問弁護士による学会恐喝事作に関して、共産党が
参議院で質問した。この事件の解決のため、字会側が支払った三億円が墓苑事業特別会計から
出ていたことを追及したのである。彼らはこの事件当時の東京地検による北条浩会長(当時)
の供述調書を独自に入手し、「山崎元顧問弁護士が学会から脅し取った三億円は墓苑事業特別
会計から出ていた。墓苑事業が長い間、非課税だったのはおかしい」と迫った。これに対し法
務省の井嶋一友刑事局長は「供述調書にそう書いてあるのは事実だが、答弁するのは控えた
い」と答えた。また学会広報室はマスコミの取材に「三億円は墓苑会計から支出されたが、役
員会で承認されており、裏金、簿外資金ではない」とコメントした。
────────────────改頁──────197
その日の八尋氏からの電話。
「はるな平和墓苑だが、追加募集分のプラス七〇○〇基は、設置許可がおりない段階で国税が
それを収入に入れるのはおかしい。共産党の質問もあり、とにかくよろしくお願いしたい」
五月二三日、国税庁の吉川課長に電話をした。吉川氏は「共産党の質問は本線(第二次調
査)と関係がなかつた」とし「はるな平和墓苑は一万八〇〇○基で計算すると、そちら(財
団)が損になる。プラス七〇〇〇のほうがお得ですよ」と忠告してくれた。そのまま八尋氏に
伝えておいた。
その後、仏は角谷国税庁長官との電話で、ルノワール事件が急展開していることを知つた。
角谷氏が言った。
「検察が三菱商事を調査したらしい。八尋氏の事情聴取を早くやりたいと現場、調査一部が言
つてきている」
急いで八尋氏に確認すると「三菱商事からは音沙汰がない。検察に口止めされているらし
い。調べる。はるな平和墓苑のこともあるのに私の事情聴取とは困ったことだ」と頭を抱えて
いた。私は「国税にルノワール事件について何かスジ(狙い)があるよぅな気がする」と感想
を話した。
この日は国税庁の山口部長とも電話でやり取りした。山口氏は共産党が追及している山崎元
顧問弁護士に学会から支払われた「三億円の出所が焦点になっている」と説明、三億円が墓苑
事業会計から支出されていることから、第二次調査で「これに課税しないのはマズイ」と話し
────────────────改頁──────198
ていた。
「取りはぐれは裏の補助金に当たる。これは憲法に反するのではないか。これでは検察•警察
も怒るだろぅ」と山口氏は語気を強めた。
憲法八九条は国家が宗教団体に「公金の支出」をすることを禁じている。税金を取らないで
見過ごすことは国家が宗教体に補助金を与えるのも同然だから憲法に違反するといぅ論理で
ある。
山口氏との電話が終わると、八尋氏から「ルノワール事件で特捜部が動いているらしい」と
急ぎの電話が入った。八尋氏は、自分の弁護のために福島啓充副会長(元検事)ら二人の弁護
土に動いてもらうと話していた。八尋氏が続けた。
「三菱商事が(行方がわからない)ー五億円について決算で使途不明金扱いにした。三菱商事
からの連絡はないがファックスでその旨の通知が来ていた。学会の別の幹部二人のところに検
察が来ているかもしれない」
この日の午前の決算発表で、三菱商事は、ルノワール絵画取引がらみのー五億円について
「この金の使途については説明することができない。当局の指摘に従い、この金を課税対象の
交際費として申告し直す」と説明した。同社の太田信一郎専務は使途不明金扱いにしたことに
ついて「売り先を特定できない取引をした当方にも手落ちがあった」と話し、五億円の仲介手
数料を受け取ったとされるコンサルタント会社経営者の役割は「わからない」とし、「今後は
当局が(八尋副会長以降の)金の流れについて解明し、関係者が修正申告することを期待する」
────────────────改頁──────199
と語つた。
────────────────◇────────────(引用ここまで、つづく)
今回のコメントは、前回と同じく、前大阪市長の〝平松〟さん…その3…で、再々登場です。
平松…「ハッハッハッ…とにかくですね、前回の府・市ダブル選挙‥公明の固定票8割が〝平松〟‥ここで、橋下が動いた?‥公明からが先との説(維新のシンパ)があるが、わしは、橋下だと思う。そう選挙協力、先の先の衆議院選挙(小選挙区)で大阪4と兵庫2の、(他は東京1のみ、詳細はパス)創価学会の池田名誉会長が、悪事を逆手にして築いた〝常勝関西〟の初の全敗、この敗北に池田はキレに切れていた。脳溢血とか脳梗塞で倒れた噂の原因とも言われている。‥時の神崎公明委員長・北側副委員長・冬柴国土大臣(順に東京・大阪・兵庫)落選、又、矢野元公明委員長の〝黒い手帖返還訴訟事件〟で敗北もし、このブログの〝乱脈経理=脱税教唆〟続いて〝池田の黒い影=暴力団?〟の出版の噂もでていた」
「〝創価学会を守れ!!、師匠を守れ!!〟〝貴様はす何様のつもりだ!!〟〝師匠が地獄なら、弟子も地獄ダ〟〝お前はなんの役にもたたない!!〟‥等々‥何日も荒れ続けたらしい?
昨日までラブラブの西口関西長(副会長)にも、お前はクビだ!!‥東京に来て〝俺の尻を拭いて修行しろ〟‥もっとも、これは‥半分冗談というか‥ヘッヘッ!!‥。
え?‥コメント、元にもどします‥橋下市長の大阪市議会‥維新が断トツだか、中選挙区制なので議員数で過半数は難しい、公明が一番憎いが‥一番弱点を持っている‥次の衆議院選挙(小選挙区)で、関西のこの6つ‥維新の候補者なしです。応援もします。‥その代わり、大阪市議会の都構想‥住民投票まで協力して下さい。提案は、橋下からだと思いますよ?‥公明からの提案なら?、橋下は疑ったはずですよ‥池田の〝ウソつき〟〝はしごはずし〟や〝池田恫喝教・傲慢教・詭弁、すり替え、自分教・ブーメラン教〟〟のことは、府長・市長になる前から知っていた筈ですからね‥しかも、弁護士ですよ‥これを〝上手の手から水漏れる!!〟〝魔は天上界に住む!!〟徒然草の〝木登りの男!!〟〝猿知恵!!〟まァ‥、こんなところ‥〝ハニートラップ〟‥あんさん‥都市伝説中毒でっせ!!‥ハッハッハッ…愉快!!、愉快!!‥」
(誤字・脱字、文法無視、パクリ・援用・重複・勝手編集も‥笑って♪♪‥許して♪♪‥)