その(4-9)の続き。
(N)7殺人の要点まとめ
下記表のとおり。松永は被害者全員に通電を行っている。通電には殴る蹴るが伴う場合が多い。有機への通電は見ていないと沙織の証言があるが、サイコパスは子供を特別視することはないので筆者は沙織の見てないところで行ったと思う。第3の殺人では、サイコパス同席の、すなわち「隣在の『空気』」で子供3人が母親殺害を「自主的」に決意した。殺害実行はサイコパスが見ているところで「自主的」に行った。松永は「自主的」と言う形式で、家族間の心の交流を完全に破壊し、殺し合わせるという逆転愛情欲求の満足を得ている。母親殺しで3人は疑似サイコパス前期になった。第4の殺人ではその場にいないサイコパスの意思、すなわち「遠在の『空気』」で、主也と純子が恵理子殺害の決意、計画、実行を「自主的」に行った。この二人は疑似サイコパス後期になっている。殺害に加わった彩は父親の主也に言われるまま行ったもので真白化状態と考えられる。松永は第5の殺人の主也のみ自分の手で最後のとどめを刺している。他の殺害は疑似サイコパスにした家族に代行させる形式をとっている。元警察官の主也が最も手ごわい相手だった。そのため松永は自分の手で最後の虐待を味わいたかったと思われる。死体はいずれも首が切断され、脳が取り出され、頭の皮が剥され、内臓が取り出された。その状況は詳細に松永へ報告する形式をとっている。バラバラになった死体は、最後は大鍋で煮詰めて近くの公園の便所や海や下水に廃棄された。下記表の死体処理関係者欄の(純子,沙織)は松永が望む処理手順を知っており、「自主的」に緒方家の人々に指示を行った。
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第1の殺人 |
第2の殺人 |
第3の殺人 |
第4の殺人 |
第5の殺人 |
第6の殺人 |
第7の殺人 |
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外部犠牲者の位置(殺害された人) |
虎谷*1 沙織の父 |
緒方誉*1 純子の父 |
静美*1 純子の母 |
恵理子 純子の妹 |
主也 恵理子の夫 |
優貴5歳*1,恵理子/主也の子 |
彩10歳, 恵理子/主也の子 |
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アン |
サイコパス松永の役割 |
純子へ虎谷の通電指示 死体解体手順の詳細指示 |
純子へ誉の通電指示 死体解体指示 (詳細指示無くても、純子は松永の望み通りに解体する) |
静美をどうしたらいいか純子、理恵子、主也に考えさせ、隣在の『空気』で殺す結論にする。 死体解体指示 |
起きるまで結論を出し終わっておけと遠在の『空気』で恵理子殺害指示。計画にも実行にも同席せず。 死体解体指示 |
松永が自分の手で最後の虐殺。 死体解体指示 |
優貴を助けてという彩を通電し「そうします」と言わせる。純子と沙織に手伝指示。 死体解体指示 |
彩を風呂場スノコに仰向けに縛り通電30分、自殺強要。純子と沙織への自殺幇助指示。 死体解体指示 |
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暴力装置 |
通電(武器)、監禁マンション、逃走防止用の鍵、身体拘束用ロープ、解体用ノコギリなど多くの道具類 |
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まんじ ゅうの皮 |
純子 |
殺害概要 |
純子の通電で虎谷最後の衰弱死。沙織が死体解体手伝い |
家族3人(静美,恵理子,主也)が正座の前で純子が誉に通電殺害 |
純子と恵理子が静美の体を押さえ主也が電気コードで絞殺 |
純子、主也、彩が相談し実行。彩足押え主也が首にコードで恵理子を絞殺 |
彩に父の死を確認させ松永へ報告させた。彩絶望*2 |
沙織が足を押さえ彩と純子の2人で絞殺 |
松永「彩は死にたいと言っている」彩がうなずき純子と沙織が絞殺 |
沙織 |
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恵理子 |
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主也 |
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彩 |
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死体処理関係者 |
純子,沙織 |
(純子,沙織) 静美,恵理子,主也,彩 |
(純子,沙織) 恵理子,主也,彩 |
(純子,沙織) 主也,彩 |
(純子,沙織) 彩 |
(純子,沙織) 彩 |
純子,沙織 |
*1:虎谷、緒方誉、緒方静美、緒方優貴の4名は他者を虐待していず、一貫して外部の犠牲者の位置である。恵理子、主也、彩の3名は虐待する側に回ってまんじゅうの皮を形成するが、順次転落して外部の犠牲者の地位になり、殺害されている。
*2:彩が父主也の死体を確認したとき、彩がすべての希望を失った瞬間と筆者は思う。元警察官で最も頼りにしていた父が殺された。彩に、この「絶望」を与えることが松永の「逆転快」になっている。この絶望と通電虐待によりあれだけ助けてくれと懇願していた弟優貴5歳の殺害を言われるままに行うことになる。また「死にたい」と松永の意志の通りに言わされ、自ら殺されるのを望む。松永の言われるままになる背景に「絶望」がある。〔「絶望」については本シリーズ(4-11)「(a)()健常者は絶望を契機にサイコパス化へ移行していく」参照〕
(O)北九州監禁殺人事件のサイコパスまんじゅう基本構造
下記表の通り。表の青文字は殺害された7人。真白化の人は他者を虐待していない。疑似サイコパス前期の人は松永のいる前で他者を虐待している。精神病院に入った証人は3か月監禁され、松永の指示で自分の子供を虐待したので疑似サイコパス前期とした。疑似サイコパス前期のものは後期に移行する前にサイコパスから逃走を試みるものがいるが、この証人も試みて成功し生存した。この逃走は人間であろうとする最後の力である。この逃走に失敗し絶望すると疑似サイコパス後期へ移行し、以後逃走することがなくなるが、純子がそれである。。優貴君5歳は真白化(偏桃体機能停止期)を経ずに殺されたと思われる。
サイコパスまんじゅう基本構造 |
基本構造内容 |
北九州監禁殺人事件の基本構造 |
中心のアン |
サイコパス |
松永太 |
暴力装置 |
通電、監禁マンション、解体道具、電気部屋 |
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まんじゅうの皮 (サイコパスに取り込まれて、サイコパス化したもの。犠牲者に転落する) |
疑似サイコパス後期 |
緒方純子、緒方主也 |
疑似サイコパス前期 |
理恵子、彩、沙織、精神科の証人、元社員幹部 |
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真白化 |
虎谷、誉、静美、元社員、松永の元妻*1 |
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外部の犠牲者 |
資産収奪、虐待受 |
優貴、詐欺にあった人々 |
松永の元妻については次項表の注*1で説明。純子と松永には2人の子供が生まれたが逮捕時に施設に入った。子供の将来のために本シリーズではこれ以上触れない。他に双子の子供を松永のところで預かっていたが不明部分が多く割愛した。
基本構造の説明とサイコパスまんじゅうの持つ支配の階級構造については本シリーズ(4-4)「10)(f)サイコパスまんじゅうの構造」参照。そこで述べたA)~H)の「サイコパス」を「松永」にして以下に再度記した。
A)階級序列は頂点の松永が必要に応じて自在に変える。
B)暴力装置を松永に代わって使うものが松永の右腕として虐待実行の最上位になる。この位置は疑似サイコパス後期者が占める。最上位のものは下位、例えば疑似サイコパス前期のものとともに複数で、外部犠牲者やまだ真白化段階の者を虐待する。
C)B)をまとめれば上位の者が下位の者に対して虐待する。最下位が外部の犠牲者の位置になり、最も激しく虐待される。
D)松永に逆らえば序列の下位に落とされる。「誰かが下位に下がれば他の者は安堵」する(例13北九州監禁殺人事件の公判での純子証言)。「自分より下位が現れて怒られていれば矛先が向いてこないので安心する」(例14「尼崎監禁殺人事件」公判での瑠衣証言)。
E)まんじゅう内部では松永の機嫌を損ねないよう絶対服従するようになる。
F)まんじゅう内部で他者の「問題点」「悪口」を述べれば序列の下位から免れるように仕向けられ、互いが「悪口」を言い合い憎み/憎まれる関係が増幅する【まんじゅう告げ口システム】。「悪口」を言わないものは下位へ落される。「悪口」はどのようなものでもよく、言われた者は制裁虐待の理由に使われ虐待される。【サイコパスは虐待にどうでもいい理由を必要とする】
G)相互の会話を禁じる。盗聴していることを匂わせるなどで、松永がいない場所で逆らう話しをさせない。逆らう話をしたと思われるものは、見せしめに虐待される。
H)以上のため、まんじゅうの皮を構成する人は数が多くても一致団結して松永に逆らうということが無い。
(P)北九州監禁殺人事件のサイコパスまんじゅう形成から衰退の全過程
下記表の通り。皮となった犠牲者を全員殺害してサイコパスまんじゅうの1サイクルが終わる基本形である。
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布団販売社 |
ワールド社 |
第1の殺人 |
第2の殺人 |
第3の殺人 |
第4の殺人 |
第5の殺人 |
第6の殺人 |
第7の殺人 |
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時期。( )内は前の殺人からの期間 |
1983~1986,約3年間 |
1986~1992,約6年間 |
監禁約1年後に死亡1996/2/26 |
1997/12/21,(1年10か月後) |
1998/1/20,(2か月後) |
1998/2/10,(20日後) |
1998/4/8,(2か月後) |
1998/5/17,(40日後) |
1998/6/7,(20日後) |
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形態推移 |
松永単独期 |
皮形成初期 |
皮形成中期 |
皮完成期 |
同左 |
同左 |
同左 |
皮衰退期 |
同左*10 |
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アン松永 ‘61/4/28生 |
22-24歳 |
25-32歳 |
34歳 |
36歳 |
37歳 |
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暴力装置:通電、電気部屋、監禁マンション、拘束道具類、身体解体道具類など |
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皮 |
後期 |
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― |
― |
純子*7 |
純子 |
純子,主也*8 |
純子 |
純子 |
純子 |
前期 |
― |
純子*3、側近社員 |
純子*5,沙織*6 |
沙織 |
恵理子, 主也*8,沙織 |
沙織 |
沙織 |
彩*9,沙織 |
沙織 |
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真白化 |
純子*2 |
社員*4 |
沙織*6 |
静美, 恵理子, 主也*8 |
彩 |
彩 |
彩*9 |
― |
― |
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外 |
犠牲者 |
元妻*1純子*2 |
最下位社員(虐待) |
虎谷(殺害) |
緒方誉(殺害) |
静美(殺害) |
恵理子(殺害) |
主也(殺害) |
優貴(殺害) |
彩(殺害) |
この表の注*1~*10は、文字数制限で、その(4-11)へ続く。