メンバーからメールで頂いた2019年後半に観た映画で良かった、又は印象的な作品は次の通りです。作品西暦は特記がなければ日本公開年度、次に製作国です。メンバーが2019年後半に観たもので公開年度や劇場で観たかに拘っていません。TVやレンタルBDなどを含めて選んでいます。
Uさん
1)『ターミネーター ニューフェイト』(2019米国 監督ティム・ミラー原題Terminator: Dark Fate 訳ターミネーター:暗い運命)
この作品はターミネーター(1984年)、ターミネーター2(1991年)、ターミネーター3(2003年)、ターミネーター4(2009年)、ターミネーター ジェネシス(2015年)に続くシリーズ6作目の映画です。第1作から35年も経っているのに続編が作られるというのは驚きでしたが、1、2作目の主役であったリンダ・ハミルトン(サラ・コナー)とアーノルド・シュワルツェネッガー(ターミネーターT-800)が再び登場しているのにとても親近感を感じました。
シリーズになっていますが、1、2作目では原作書のジェームズ・キャメロンが製作に加わっていましたが、3、4、5作目は別の製作者が手がけています。このため、3作目以降は意図する作品になっていないと原作者からクレームがついていたそうです。ターミネーターは私の大好きな映画の1つだったのでこのシリーズは全て映画館で観ました。1作目では映画全体の発想の面白さに興奮しました。2作目も1作目に続きストーリーに一貫性があり、また科学的発想、アクション、人間的な暖かさも納得できるものでした。しかし3作目では、前作で阻止されたはずのスカイネットが誕生し核戦争が起こってしまい、4,5作目では地球破壊後のマシンと人との戦闘場面がメインとなっています。このため私は3、4,5作目の映画にはあまりストーリーの面白さを感じませんでした。アクション場面はすごいのですが、後の作品には1、2作に見られた繊細さや暖かさがほとんどありませんでした。
今回のニューフェイトはジェームズ・キャメロンが2作目の正当な続編であると言うように、2作目を正確に踏襲した作品であり、リンダ・ハミルトンやアーノルド・シュワルツュネッガーの年齢も考慮されています。
1995年にスカイネット誕生阻止に成功したサラ・コナーとジョン・コナーは平和な生活をしていました。しかしその3年後の1998年、いきなり現れたターミネーターT-800によりジョンが殺害される場面から映画が始まります。
場面が変わりさらに22年後の2020年がこの映画の舞台です。2体の物体が未来から送られメキシコに表れます。それらは未来世界のAI「リュージョン」が送り込んだターミネーター「Rev9」と、抵抗軍が送り込んだ改造人間「グレース」です。Rev9は未来世界の抵抗軍リーダーである「ダニー・ラモス」を殺害するために送り込まれたのであり、グレースはそれを阻止するために送り込まれたのでした。これら2体に加えて、かつてジョンを失った悲しみを、時折送られてくるターミネーターを破壊することに余生を捧げていたサラ・コナーと、ジョン殺害後に母親と子供の面倒を見ているうちに人間性を持ち始めた旧式ターミネーターt-800がさらに加わり、ストーリーが展開していきます。
前作では人類を破滅させるほどに進歩した人工知能「スカイネット」は、未来からもたらされたICチップにより誕生するのですが、本作品の「リュージョン」は人類の手を離れたAIが独自の進歩により誕生したものです。私は、人類を越える人口知能は1作目では実現は遥か先だろうと感じていたのですが、35年後の本作品を観ると、人類の未来を破壊する人口知能の誕生は近い将来に起こりうると感じました。最近のコンピューター技術の進歩を実感します。改造人間「グレース」を演じているマッケンジー・デイヴィスはさすがに若くてパワフルで魅力的でした。リンダ・ハミルトンは懐かしいアクションを見せてくれましたが、あと10年若いときの出演ならもっと良かったのにと思いました。
映画の最後の場面では水力発電所の発電用タービンに巻き込まれ粉砕されたても再生してしまうRev-9を、「グレース」と「T-800」のダブル犠牲により破壊するのでした。これでシリーズは完結するように思えましたが、未来社会のAI「リュージョン」の出現を阻止できるかはその後の人々の手に委ねられることになったということですね。
(下の画像左は未来人類のリーダーになることが予期されているダニー右。左はダニーを守るため未来人類から送り込まれた改造人間「グレース」。画像中左はダニーを抹殺するため未来から来たターミネーターRev9が分身した場面、この後後ろの黒いからだと手前の「人」は一体となる。Rev9は体を二つに分けたり一つになったりできる。画像中右はRev9と戦うサラ(リンダ・ハミルトン)。画像右はRev9と戦うT-800(シュワルツェネッガー)右)
画像出典左:海外ドラマNAVI来日決定でさらに注目度アップ!『ターミネーター:ニュー・フェイト』の新ヒロイン、戦士グレースとは!? https://dramanavi.net/movie/news/2019/10/post-475.php (閲覧2020/1/11) 画像出典中左と中右:chicosia【 ターミネーター ニュー・フェイト 】予告編から予想・考察できること、見所と疑問点を考えるhttps://chicosia.com/terminator-dark-fate/ (閲覧2020/1/11) 画像出典右:Kazuログ『ターミネーターニューフェイト』T-800はどうやって復活したの?年を取った意味や今まで何をしていたのか解説https://kazuhand2017.com/movie/taminenewfate_t-800/ (閲覧2020/1/11)
2)『パッチ・アダムス』(1998米国製作1999年日本公開 監督トム・シャドヤック原題Patch Adams)
ビデオ視聴。本作品は実在の医師ハンター・キャンベル・アダムスの半生を描いたもので、ロビン・ウイリアムズが医師に扮したドラマです。自殺未遂をした後に、自らの意思で精神病院に入院したアダムスは患者が置かれた環境に疑問を持ち、心のケアが重要との確信を持ちます。その後、自分はもうケアが十分と判断して退院します。(本人の意思で精神病院を退院できるのは意外でした。日本ではありえないのでは?)その後彼は医学の道を目指して勉強し2年後にヴァージニア大学医学部に入学します。学生であるにも関わらず、アダムスは白衣を着て病院に潜入し、元気をなくしている患者たちの心を笑いでほぐしていくのでした。当時(1969年)の病院では心のケアは医療行為とは考えられていませんでしたが、アダムスの行為は患者や看護婦たちの応援が得られるようになります。しかし、学部長や医療関係者の目は冷たいものがありました。その後、当時の病院に疑問を持ち、無料の病院を開設し患者の心を捉えた独自の治療方法を進めていくのでした。
現在でも医療や病院の抱える問題は多く、特に海外で活躍している医師の苦労は計り知れないものがあります。昨年、アフガニスタンで殺害された中村哲医師は用水路を作って食生活からの改善を行っていました。私は、「ドクターなんとか」と言ったテレビ番組は観ませんが、「パッチ・アダムス」のような患者の心に入り込んだ物語の映画はもっと観たいですね。
(下の画像左はロビン・ウイリアムズ扮するアダムスが患者に笑いを生み出す場面。画像右は実際のアダムス、来日し講演した2000年頃。2020.1月現在74歳で健在)
画像出典左:マックスメディカル 病院にユーモアを!映画にもなったホスピタルクラウンの始祖「パッチ・アダムス」をご存知ですか?https://maxmed.jp/off/003268/ (閲覧2020/1/11) 画像出典右:パッチ・アダムスが贈る心のメッセージ「愛と友情とユーモアこそ最良の薬」http://toshimitakano.c.ooco.jp/2-2/10.html (閲覧2020/1/11)
O.Aさん
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。2019年後半の印象的な映画は、日本以外の国で製作された長編アニメ2本です。
(1本目)『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』(2019中国製作2019/9/20日本公開 監督MTJJ木頭 原題:罗小黑战记:グーグル翻訳より、羅小黒の戦い)
予告編⇒ https://www.youtube.com/watch?v=xO-6zysNBHw
【概要】妖精と人間が共存する世界を舞台に、猫の妖精・羅小黒(ロシャオヘイ)が旅をしながら人間社会を理解していく姿を描いた中国製の劇場アニメ。この世には妖精が実在し、彼らの中には人間の格好をして社会に溶け込んでいるものいれば、山の奥で隠れて暮らすものもいた。森で楽しい日々送っていた猫の妖精・羅小黒(ロシャオヘイ)は、人間たちによって森が切り開かれてしまったことから、暮らす場所を探して各地を放浪する。
(2本目)『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(2015フランス・デンマーク合作2018/9/6日本公開)
予告編⇒ https://www.youtube.com/watch?v=fJs-7fNmFdQ
【概要】行方不明の祖父を捜すため北極点を目指す旅に出た少女の冒険を描いたフランス・デンマーク合作による長編アニメーション。19世紀ロシア、サンクトペテルブルグで暮らす14歳の貴族の子女サーシャ。大好きな祖父は1年前に北極航路の探検に出たきり行方不明となり、捜索船は出たものの、いまだに見つからずにいた。
2作品とも東京・恵比寿にある「東京都写真美術館」で鑑賞しました。どちらの作品も大手の配給会社が付かず、美術館での上映を余儀なくされた作品ですが、内容は、とても良作でした。特に『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』は、常に毎回満席の大盛況で、作品を見るとその人気も納得の大傑作でした。チラシを見るとカワイイ黒猫の動物アニメみたいですが、これがアクションアニメでした。キャラクターが滅茶苦茶に動きまわります。2019年の9月に中国で公開されて大ヒット。その勢いで日本公開されたのですが、邦題も付けず原題での公開なので、人に薦めにくいです。タイトルを言っても通じない。また、吹き替版も製作していないので、日本語字幕を読むのが大変です。お子様には鑑賞が大変になっています。是非、日本語吹替版で見たい作品です。
『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』は吹替版があり、これがとてもよかったです。
『羅小黒戦記』に比べると作画やキャラクターが、かなりシンプルなので、最近の日本アニメを見慣れています人にはもの足りないかもしれません。昔の日本アニメーションが製作していた日曜日19時30分から放送していた「世界名作劇場」みたいな感じのアニメでした。
(下の画像左は『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』パンフレットの主人公の妖精の子猫、羅小黒(ロシャオヘイ)。画像右は『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』の行方不明の祖父を探しに行く船の甲板、右に主人公の少女。文字はフランスの新聞ル・モンドの批評で映画のセリフではありません。J.ヴェルヌは冒険物「海底二万里」「80日間世界1周」を書いたフランスの小説家)
画像出典左:ユジク 羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)/THE LEGEND OF HEIhttps://www.yujikuasagaya.com/film (閲覧2020/1/10) 画像出典右:映画.com ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺんhttps://eiga.com/movie/91500/video/ (閲覧2020/1/10)
Aさん
今回は劇場公開の中から、昨年物議をかもし話題をさらった2本を選んだ。
●『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年アメリカ 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 原題Once Upon a Time in Hollywood)
かつて、シャロン・テートというアメリカの若い女優がいた。ある日、夫の映画監督ロマン・ポランスキーの不在時に、ハリウッドの大邸宅で居合わせた客人とともに狂信的なカルト信者に惨殺された。彼女は妊娠中だった。私はこの事件のニュースを今でも薄っすらと覚えている。
この映画には、タランティーノ監督の古き良きハリウッド映画への愛が込められている。あの事件は起きてはならなかった。ハリウッドは夢を売る場所なのだから。そんな思いが映画の根幹にあるのではないだろうか。
1969年のハリウッドで、ディカプリオ演じる売れなくなった男優リックは、親友のブラピ演じるスタントマンのクリフとともに夢を追う。助け合いながら色々チャレンジするがなかなか上手くいかない。前半の展開は二人の相性抜群でコミカルな演技も楽しめる。だが後半、カルト集団が出てくる辺りから雰囲気は怪しくなる。そして若く美しいシャロン・テートが登場する。まだ観ていない人のために、「心配はいらない」とだけ伝えておきたい。タランティーノは往時のハリウッドを忠実に再現し、こうあるべきだったというハリウッドを見事に創り上げているのだから。そしてラストに向けて、闇から光へと転換するハリウッドを鮮やかに映し出す。
ちなみにクリフが飼う忠犬がクールでブサ可愛いことにも注目したい。カンヌで、優れた演技をした犬に送られる「パルムドッグ賞」を受賞したそうだ。
(下の画像の左に売れなくなった男優役ディカプリオ。右に親友のスタントマン役ブラピ。画像中はシャロン・テート役マーゴット・ロビー。画像右は「パルムドッグ賞」受賞の犬)
画像出典左:MAiDiGiTV【動画】レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットの肩で涙… 映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」本編映像公開https://maidigitv.jp/movie/ENDf5aDZkzM.html (閲覧2019/1/10) 画像出典中:CinemaCafe.netマーゴット・ロビーがシャロン・テートを蘇らせた!『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』本編映像https://www.cinemacafe.net/article/2019/08/09/62946.html (閲覧2019/1/14) 画像出典右:USA TODAY ENTERTAIMENT Delaware pit bull stars as Brad Pitt's dog in 'Once Upon a Time In Hollywood' Ryan Cormier Delaware News Journalhttps://www.usatoday.com/story/entertainment/2019/07/25/delaware-pit-bull-stars-brad-pitts-dog-once-upon-time-hollywood/1796177001/ (閲覧2019/1/10)
●『ジョーカー』(2019年アメリカ 監督トッド・フィリップス 原題Joker)
この映画には衝撃を受けた。人に薦めたいとか、良い映画だったとか、優れた作品とかいうのは多分当てはまらない。ただ単に「凄い映画」だと思った。それはもともと喜劇畑出身だというトッド・フィリップスの演出と、かのリヴァー・フェニックスの弟であるホアキン・フェニックスの怪演に集約されるだろう。
確かに喜劇と悲劇は紙一重だという。主役のホアキン演じるアーサー(後のバットマンの宿敵ジョーカー)は、荒んだゴッサムシティで病気の母の介護をしながら大道芸人の仕事で身を立てる優しい青年。自身も精神を病み、貧困や差別と戦いながらも成功することを夢想している。だが、誤解や裏切りがきっかけとなり、次第に社会や人々に恨みを募らせていく。
自らの出自に疑問を持ち、唯一の家族とのつながりや夢も絶たれた時、アーサーはピエロの仮面をかぶった殺人鬼へと変身していく。ただ一つ、自分に優しかった昔の仲間の小人を助けるという人間らしい救いのシーンもあるが。
殺人鬼となったアーサーが、吹っ切れたように痩せさらばえた体でダンスを踊るシーンは圧巻。だが、この映画は謎がいっぱいだ。どこまでがアーサーの妄想でどこからが現実なのか、わかりにくい点もある。また、アーサーはジョーカーではなく、ラストの暴動シーンの多数のピエロの中から本物のジョーカーが生まれたのではという説もあり、なるほどと思った。つまり、多種多様な解釈ができる映画なのだ。そんな深みを堪能できるのも映画を観る楽しみの一つだ。そして、暗い、重い、恐い、だがほんの少し残るアーサーへの共感。それは不思議にも、誰もが感じてしまうことではないだろうか。
(下の画像左は普段の顔のアーサー。画像右はピエロのメイクをしたときのアーサー)
画像出典左:映画.com 心優しき男はなぜジョーカーになってしまったのか? トッド・フィリップス監督が言及 https://eiga.com/news/20190919/16/ (閲覧2019/1/10) 画像出典右:FRONTROW『ジョーカー』最新作、あることに関して「ファンは怒るだろう」と監督が告白https://front-row.jp/_ct/17286630 (閲覧2019/1/10)
Nさん
今年もよろしくおねがいします。印象に残った作品を1本だけで。
『Girl/ガール』(2019ベルギー 監督ルーカス・ドン 原題Girl)
男性の体に生まれたトランスジェンダーの16歳のララはバレリーナになることが夢で、名門バレエ学校への入学が認められるが、成長とともに変わっていく体に次第に心身ともに追い込まれていくストーリーです。ララのバレエレッスンシーンが多用されていて、そのレッスンの厳しさがララの心身の痛みとリンクさせていてよく伝わってきました。そのララを前身全霊で支えている父親の姿には感動します。
ララの主治医から「2年後に手術が決定ですよ」と言い渡されても16歳のララにとっては果てしなく遠く長い年月に感じられたことは私も理解しますが、ラストは複雑でした。ドキュメンタリー作品を見終わった感じでした。
(下の画像左はバレリーナを目指すララ中央。画像中は普段着のララ。画像右は自分の体を鏡で見ているララ)
画像出典左:映画.com「Girl ガール」https://eiga.com/movie/89979/ (閲覧2019/1/10) 画像出典中:映画natalie夢はバレリーナ、トランスジェンダーの少女の素顔収めた「Girl」新写真https://natalie.mu/eiga/news/335999 (閲覧2019/1/10) 画像出典右:FILMEST映画「Girl/ガール」ネタバレ感想・解説・考察!トランスジェンダーと差別、難しい問題を繊細に描いた作品!https://filmest.jp/girl/ (閲覧2019/1/10)
(2/3)へ続く。