横浜映画サークル

サークルメンバーの交流ブログです。

メンバーの鑑賞感想や映画情報など気軽に記述しています。

C.イーストウッドの最新作『運び屋』、少々無難な仕上がり。

2019-03-24 08:30:00 | メンバーの投稿

運び屋』(2018米、監督クリント・イーストウッド、原題:The Mule 直訳:ラバ(荷物運搬用家畜))

イーストウッド、最後の監督、主演作品になるのではないかと噂されている作品を観てきました。

=====あらすじ=====

家庭を顧みず、事業に没頭し、富も名声も手に入れていた主人公アールが、時代の波に飲み込まれ、事業に失敗してしまう。孫の結婚式において、列席者の一人から「モノを運ぶだけで、大金が稼げるとの誘いを受けたアールは、初め拒否していたが、ふとしたきっかけで受けることにした。当初、中身に興味が無かったアールだが、あることで中身(麻薬)を知ってしまう。何度も運び屋を重ねるうちに、アールはその感覚すらも麻痺していく。捜査の手が迫るアールは最後に、贖罪を果たそうとする

=====感想=====

主人公アールは、もっと戸惑いや葛藤があっても良かったのではないだろうか。日本人からすると、犯罪に加担するという重大なことをサラッと流せる感情はなかなか移入をしにくいと思う。そこはもっと時間を使って良い場所だったと思う。

その他、この稼業をしていく上で、恩恵ともいえる艶っぽいシーンもあるが、主人公の年齢を考えると、少し現実的ではないように感じた。反面、自ら招いたとはいえ、不器用な老人が直面する家族との関係は実にわかりやすく、共感を呼びやすい。運び屋稼業を犠牲にしてまでの彼の行動は、家族を大切にするWASP(白人アングロサクソン・プロテスタント)本来の姿といえる。その一端は黒人一家への台詞にも垣間見られる。その場面は必要だったのか、最後まで気になった

おそらく高評価を受けるであろうこの作品だが、他のイーストウッド監督作品と比較して、5点満点の2点(0.5点の刻みナシの5段階評価)とした。脇にブラッドリー・クーパーやアンディ・ガルシアなどを配置しているが、少々贅沢か。それよりも、アールの心の中をもう少し丁寧に描いて欲しかった。それも含めて、全体的にストーリをもう少し練ることが出来たのではないかと思い、この採点にした

(下の画像左は事業に失敗し自宅が差し押さえられた看板(黄色)を見て振り返った主人公アール(C.イーストウッド)。画像中左は運搬の報酬を数えているアール。画像中右は麻薬捜査官の張り込みの場面、向こう側に麻薬捜査官役のブラッドリー・クーパー、手前はマイケル・ペーニャがいる。画像右は麻薬組織ボス役のアンディ・ガルシア)

   

画像出典左:Real Sound映画部イーストウッドが描く前代未聞の実話! 宇野維正がこの春必見の『運び屋』をレビューhttps://realsound.jp/movie/2019/02/post-319135.html (閲覧2019/3/23)  画像出典中左:cinefil 88歳クリント・イーストウッドが麻薬の運び屋に?!監督そして久々に主演の新作を発表!『The Mule』海外予告が公開!http://cinefil.tokyo/_ct/17211553 (閲覧2019/3/23)  画像出典中右:映画ナタリー ブラッドリー・クーパー演じる捜査官が麻薬組織員にラテ渡す「運び屋」本編映像 https://natalie.mu/eiga/news/324718 (閲覧2019/3/23)  画像出典右:トーキョー女子映画部イイ男Selectionアンディ・ガルシア『運び屋』https://www.tst-movie.jp/selemen/selemen_a_Andy_Garcia.html (閲覧2019/3/23)

以上S.Zでした。

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『喜劇・大風呂敷』と上映された南区公会堂近くの看護学校女子寮宿直の思い出

2019-03-04 21:19:05 | メンバーの投稿

喜劇・大風呂敷』(1967日本 監督中平康):南区公会堂での横浜キネマ倶楽部自主上映で3月2日に観た。

映画は大阪的i喜劇の残念な面、身体的特徴や弱者を笑いものにする、わざとらしい、表面的で深みがない笑いが多かった。例えば黒人がただ大阪弁を話すことで笑いを取ろうとするところ、何が面白いのか不明。当時は珍しかったとは思うが、珍しいことの色物と言われるのと喜劇とは違う。四国を独立国にするという野望にまい進する造り酒屋の息子(先代の円楽)が出てきて、失敗破産するが、なぜ独立しようとするのか理由らしい理由は一度も出てこない。円楽に途方もない夢を語らせればいいのに、その場面がなく、ヨナヨナした御曹司役で笑いを取ろうとしているが中途半端で笑えない。主人公藤田まことは、バクチ運が良く、建設会社の社長の夢は運良く実現する、運が憑いている男であるが、ただ運がいいだけで笑いを誘うところはない。台風が近づきライバル建設会社社長の家が壊れないように縄で屋根を支える場面があるが、私なら藤田まことが間違えて縄を張り家が壊れてしまうようにするが、そのようなドタバタはなく、家は壊れない。ドタバタ喜劇としても中途半端な作品。終盤で四国独立の野望が破れ、家をヤクザに取られ、あばら屋住まいの先代の円楽と夫婦になっていた憧れの女性芦川いずみのためにヤクザから家の権利書を奪い、権利書をあばら屋にそっと置いて去っていく。私ならここで先代の円楽が感謝して涙するアップの感動的な場面を入れ、円楽の出番を作り盛り上げるが、その場面はない。人情話としても中途半端な作品になっている。この映画は懐かしい出演者を見るという範囲で楽しむ作品に思える。映画に桂歌丸はあまり出てこない。

下の画像左は左端が建設会社社長役の花沢徳衛。左から2番目に社員役の桂歌丸と柳家小痴楽後の春風亭梅橋がいる。右端は雇われることになる藤田まこと。その隣の女性は社長の娘役の木の実ナナ。画像右は四国独立の話に乗る役の先代の円楽。隣は藤田まことがあこがれていたが、円楽の嫁になった役の芦川いずみ。

画像出典左と右:アパッチの映画EXPRESS喜劇大風呂敷https://ameblo.jp/bareras/entry-11568257582.html(閲覧2019/3/4)

映画の後の講演佐藤利明氏の話が興味深かったので、要点と思うところを以下に記しておきます。

桂歌丸は南公会堂のすぐそばの真金町に当時の郭(売春宿)がありその一つの富士楼の息子として生まれた。富士楼には柳家金語楼が弟子を連れて来たことがあるとのこと。歌丸は春風亭柳昇の落語を聞いて感動し落語家になることを決め、15歳の時に5代目古今亭今輔に弟子入りした。「笑点」の名称は立川談志が当時有名になっていた『氷点』(1966年監督山本薩夫、TVドラマ化もされた)のパロディーで名付けられ、歌丸は1966年の今から53年前の1回目から笑点メンバー。

落語を映画にした落語映画はあるが、落語家が出ていることは少ない。落語映画としてまとまった作品は『幕末太陽伝』(1957監督川島雄三、主演フランキー堺)『運が良けりゃ』(1966監督山田洋次、主演ハナ肇)の2本。

他に長屋3部作(熊さん・八っつぁんもの)『長屋は花盛り』など。『金語楼の大江戸千両祭』『落語天国紳士録』など東宝が年1本のペースで制作していた。

 以下は、直接映画には関係しないが、南区公会堂近くの看護学校女子寮宿直のアルバイトの思い出

私は学生の時、学費生活費はすべて自分で稼ぐ生活をしていて、警備会社に宿直の仕事の登録をしていた。宿直の仕事は夜間に見回りをすることをしっかりやっていれば、勉強時間が取れるので学生の私には都合がいい仕事だった。県立商工高校の宿直が先生の負担を減らすということで、警部会社に任さられるようになり、私に回ってきた。しばらくすると看護学校もやってくれと言われ南公会堂近くの看護学校寮の宿直を行うことになった。そこで印象的な次の3つの出来事に会った

1、寿町の兄弟入浴作戦

夜の11時過ぎに見回りをしていると、会議室で10人近くの人が会議をしている。こんな夜に何の会議と聞くと、寿町に小学生くらいの兄弟がいて、昼間居るから学校に行っていないらしい。服は汚れ、髪の毛もごわごわで風呂に長い間入っていない。会議はどうやってその兄弟を寮の大浴場の風呂に入れるか、というものだった。理由なく風呂に入れれば、両親が怒るかもしれない。そこで寮生が考えた方法は、一緒に遊ぶふりをして、わざと兄弟に泥水を掛けて汚し、申し訳ないので風呂に入れた、というストーリにしよう、と言うものだった。

ある日寮生たちは実行する。兄弟を風呂に入れ、服を洗濯機で洗ってあげて帰した。両親からの苦情があったかどうかは聞いていないので、たぶんなかったと思われる。

寿町は東京の山谷、大阪のあいりん地区と並ぶドヤ街で、昼間から酒を飲んでいる人がいるなど、独特の怖い雰囲気があり、私もつい避けて通る地区であった。看護師の卵たちの勇気ある行動は、今でも忘れられない出来事です。看護師には点滴に毒物を混入するような人がいるが、圧倒的に多くはこの寮の人たちのように魅力的な人たちです。

2、門限過ぎの看護学生

看護学校は高校卒業後2年間の学校。地方から来ていて貧しい家庭の人が多い。ある日門限10時だけれども、11時頃に内緒で門を開けてほしいという寮生がいた。伊勢佐木町付近のバーでアルバイトをして、どうしても10時前には帰れないとのこと。酒はウイスキーと称してウーロン茶を飲むのだそうだ。守衛室は建物の裏側の1階にあり建物に入らないでも窓のところには来られる。以後守衛室の窓を11時ころになると叩く人がいて、そのたびに正門入り口のドアを開けてそっと入れてあげて、規則違反をしていた。あの人は立派な看護師になったに違いないと、勝手に思っている

3、寮自警団の強力さ

寮は160人ほどの寮生がいて、寮生たちで自警団が組織されていた。ある日の夜、2階の窓伝いに男の人が寮生の部屋に入ったことがある。寮生の悲鳴で、自警団が暴漢対策の道具をもって動き、侵入男性はボコボコにされた。この話は私が宿直担当ではなかった時のことで、詳細は不明。また、自警団がどのようなものか私が直接聞いたことはなく、実態は自治会のようなものだったかもしれない。それにしても自警団は宿直員よりよっぽど頼りになる

 映画「喜劇・大風呂敷」を観た後で南区公会堂の近くの看護学校寮のところを見に行った。いろいろ変わっていている。後で調べると横浜市立大学付属病院(市大附属病院)は金沢区へ移り、看護学校は市大医学部の看護学科に吸収され金沢区へ一緒に移っている。移る前に南区公会堂のすぐそばに在った市大付属病院跡地は現在市大付属市民総合医療センターと言う名称で以前と変わらない医療の中心的施設になっている。看護学校寮の跡地は横浜中央病院付属看護専門学校になっているところではないかと思うが、横浜市立中村特別支援学校があるところかもしれない。いずれにしても寮はなくなっている。

以上、S.Tでした。

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F.Iの映画鑑賞ノートから:その1:5作品

2019-03-01 20:55:33 | F.Iの記事コーナー

映画鑑賞大学ノートが6冊になりました。その中から今回は5作品について掲載しました。題名左のAAAA~Dは映画の良かったものをAにしてランク付けしていますが、観た時の雰囲気で記していて、厳密なものではありません。面白くなかったというのもあります。以下ノート抜粋。

AAA’死刑台のエレベーター』(1958監督ルイ・マル原題Ascenseur pour l'échafaud、英:Elevator to the Gallows直訳:絞首台へのエレベーター)

セリフが、気が利いている。主人公の女がひたすら格好良く、話もリアリティあふれている。登場人物(特に女)の表情が良く、白黒画面が効果を上げている。短時間の経過を描写しつつ大人の男と女、若者の男女、刑事の世界をちょっと洒落た言葉で綴っている。クールな夫もかっこいい。

(下の画像左は主人公の女役のジャンヌ・モロー。画像中は女の夫を殺害したあと女に連絡をする恋人役モーリス・ロネ。画像右は殺害後逃げる途中にエレベーターが停止、閉じ込められ、脱出を試みている場面)

画像出典左:翡翠のブログ;フランスの女優ジャンヌ・モローさん死去 89歳 数々の名作https://ameblo.jp/2667/entry-12297752658.html (閲覧2019/3/1)  画像出典中:映画.com死刑台のエレベーター(1958)https://eiga.com/movie/45147/ (閲覧2019/3/1)  画像出典右:シネマトゥデイ死刑台のエレベーターhttps://www.cinematoday.jp/movie/T0009076 (閲覧2019/3/1)

AA駅馬車』(1940米 監督ジョン・フォード 原題Stagecoach直訳:乗合馬車)

単純なストーリであるが、人物描写が鋭く、音楽がいい。医者の表情、強気な女、弱気な酒商人が魅力的

(下の画像左。左側のチェックの服の男が医者。馬車から体を乗り出している女が強気な酒場の女。酒商人、賭博師、将校夫人などいろいろな人が乗り合わせている。右端が脱獄囚で逃げるために乗り合わせた役のジョン・ウェイ。画像右は駅馬車がアパッチ族に襲われ逃げている場面)

画像出典左:- STAGECOACH -「駅馬車」これぞ、西部劇の様式美-追跡の美学http://widewestweb.world.coocan.jp/WstStagecoach.htm (閲覧2019/3/1)画像出典右:シヌマDEシネマ/ハリー東森;西部劇といえば「駅馬車」だなhttp://harry-higashimori.blog.jp/archives/10976926.html (閲覧2019/3/1)

A’ロシュメールの恋人たち(1967仏 監督ジャック・ドゥミ原題Les demoiselles de Rochefor直訳;ロシュフォールの若い女性)

セリフがウイットに富んでいる。踊りがハッキリ、ピリッとしていて、唄や楽器をうまく取り入れている。ロマンチック過剰な感もあるが、嫌味なく楽しめる

(下の画像のトランペットを持っているのがカトリーヌ・ドヌーヴ、その左が姉のフランソワーズ・ドルレアック、右端はジョージ・チャキリス。画像右はカトリーヌ・ドヌーヴ。ロシュメールはフランスの街の名前。ミュージカル作品)

画像出典左:French cinema worldwideロシュメールの恋人たち https://japan.unifrance.org/ (閲覧2019/3/1) 画像出典右:Deskgramカトリーヌ・ドヌーヴhttps://deskgram.net/explore/tags/ (閲覧2019/3/1)

Cアンナ・カレーニナ』(1998米 監督バーナード・ローズ 原作トルストイ)

余り面白くない。主人公の描き方が小説よりおとなしく、魅力がない

(下の画像の左に主人公アンナ・カレーニナ役のソフィー・マルソー)

画像出典:「観たい」にこたえるシネマNAVIアンナ・カレーニナhttps://www.cinemanavi.com/film_detail/film (閲覧2019/3/1)

B↓『悪魔のしたたり』(1974製作米 監督ジョエル・M・リード原題;BLOODSUCKING FREAKS直訳:吸血狂信者

天地茂の明智シリーズの雰囲気に似ている。(音楽)ストーリがひたすらくるっていて気分が悪くなる。ラストで、ザマドゥーと女3人が死ぬのは、予想通りだが、安心した

画像出典:アマゾン;DVD外国映画ホラー『悪魔のしたたり』表紙

以上。F.Iでした。

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