メンバーからメールで頂いた2021年前半に観た映画で良かった、又は印象的な作品は次の通りです。作品西暦は特記がなければ日本公開年度、次に製作国です。メンバーが2021年前半に観たもので公開年度や劇場で観たかに拘っていません。TVやレンタルBDなどを含めて選んでいます。これから見たい映画も取り上げていいとしています。今回は新型コロナのため映画館自粛があり、観る機会が限られていますので、2021年前半に観た映画でなくてもいいとしています。
FMさん
①『ノマドランド』(2021米 監督&脚本 クロエ・ジャオ 原作ジェシカ・ブルーダー[ノマド:漂流する高齢労働者たち] 原題Nomadland:グーグル翻訳:「遊牧民」)
リーマンショック後、企業の倒産と共に、住み慣れたネバダ州の企業の城下町の住処を失った60代のファーン(フランシス・マクドーマンド)。キャンピングカーにての車上生活者、現代のノマド(遊牧民)として、過酷な季節労働の現場を渡り歩く。原作ノンフィクションを基に、実在のノマド達と共に広大な西部の自然の中で、今を見つめるロードムービー。
皆様もご存知の通り、アカデミー賞はじめ数々の賞を受けた作品で(年代も同じになり)やはり色々な意味で、印象的な映画となりました。現実問題として、健康ではなくなった時にはどうするのかがどうしても気になってしまいました。
いずれにしても、静かに淡々と描かれていて、見るモノの判断に委ねる姿勢を感じました。
気付けば、この半年で映画館で見た唯一の映画になりました。
(下の画像は、夫とは死別し、教師の職を失い、家を失い、仕事を求めて移動生活をする主人公役フランシス・マクドーマンド。左の車が家代わり)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/14/a05f02ab0e2f3b28e6835870904d802b.jpg)
画像出典:映画は娯楽だ!ノマランド https://plaza.rakuten.co.jp/mag7cup/diary/202103310000/ (閲覧2021/7/11)
②『歓喜の歌』(2008日本 監督&脚本 松岡錠司(東京タワー/オカンとボク、時々、オトン等を監督))
落語家立川志の輔の新作落語を映画化した人生喜劇。みたま町の文化会館に勤める飯塚主任(小林薫)が、大晦日に開催されるママさんコーラスグループのコンサートをダブルブッキングしてしまった事により起こる騒動をユーモラスに描く。
キャッチフレーズが[きっとあなたの心にあかりを灯す、涙と笑いの音楽喜劇]と有り、まさに単純に楽しめて、こんな時だからこそ、私もコーラスグループに入りたくなりました♪笑
(下の画像左は文化会館のダブルブッキングをした役の小林薫。画像中はママさんコーラス、左にリーダ役安田成美がいる。画像右はダブルブッキングのもう一つのママさんコーラス、中央に由紀さおりがいる)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/cb/9294511e4c455e4309818b8953b46907.jpg)
画像出典左:シネマトゥデイ 歓喜の歌 https://www.cinematoday.jp/movie/T0005685 画像出典中:ココログ やられたらやりかえす 歓喜の歌 http://hotchoco.cocolog-nifty.com/yararetarayarikaesu/2008/02/post_434d.html 画像出典右:UkiUkiれいんぼーデイ 歓喜の歌 http://nagisanodate.jugem.jp/?eid=693 (閲覧2021/7/11)
☆見逃してしまって見たかった映画 『すばらしき世界』西川美和監督
☆その他
NHKBSプレミアムの日曜夜のドラマ(今は[ライオンのおやつ]小川糸さん2020年本屋大賞2位)これらのドラマが、いつも面白いのでオススメです‼︎
あと(ギフトチケットが当たったのをきっかけに)Amazonのプライム会員になり(もちろん作品の制約はかなり有りますが)月500円で見逃していた映画が簡単に見れるのには、改めてビックリしています。
Aさん
巣ごもり生活の中、たくさんの映画をテレビやビデオなどで観ましたが、今回は選りすぐって劇場鑑賞した二本、『すばらしき世界』と『夏への扉』、ビデオ鑑賞した『スタンド・バイ・ミー』について書きます。
●『すばらしき世界』(2021日本 監督・脚本/西川美和 原案/佐木隆三『身分帳』)
『すばらしき世界』のリーフレットを手に取った時、色彩が綺麗だなと思った。雲が浮かぶちょっとくすんだ青空の窓を背景に、肩に彫り物をした役所広司が立っている。その視線は厳しい。初めはピンク色の彫り物かと思った。が、彫り物は墨色で、ピンク色は手前に置かれてカメラフォーカスでぼやけたコスモスだった。このコスモスが映画ラストでは大きな意味を持つ。
役所広司が演じる三上は、殺人罪で長い間服役し、13年ぶりに出所した男。直情的でかっとなりやすいが、弱い者に対してはとことん心優しく、彼なりの正義を貫く。時としてそれが行き過ぎて過激な暴力につながる。もともと極道の三上は、殴りこんできた男から妻を助けるために殺人を犯したのだった。(彼は出所する間際でもこれを正当化している)。
出所した三上は極道から足を洗い、まっとうな生活を始めようとするが、世間になじめずなかなかうまくいかない。身元保証人の弁護士(橋爪功)や役場の相談係(北村有起哉)、行きつけのスーパーの店長(六角精児)など、周りの人々はそんな三上に思いやり深く接する。それは三上の持つ優しさや憎めない素直さに惹かれたからだろう。
「出所した男の更生」を描こうとした若いTVディレクター(仲野太賀)は、三上の一面である凶暴性を垣間見て恐ろしさから仕事を降りる。が、個人的に彼の生き様をドキュメンタリーに書こうと思い立ち、行動を共にするうちに彼の複雑な生い立ちを知るようになる。彼は幼い時に生き別れた母をずっと探していたのだ。
なかなか仕事に就けなかった三上が、ようやくつかんだ介護施設の仕事。これで何もかもうまく行くと思われた。だが、世間はそう甘くはない。その描き方が実にリアルで切ない。コスモスの束が揺れる。彼の人生に優しく寄り添うように。
役所広司が凄い。目の色まで「出所したての三上」になり切っている。彼を追いかけるTVディレクターの仲野太賀もまた良い。なぜそこまで彼を追うのか納得できる演技だ。そして監督の西川美和は『ゆれる』『ディア・ドクター』『永い言い訳』などオリジナルの優れた映画を撮り続けている人。私は特に『ゆれる』が大好きで、『藪の中』を思わせるような表現と語り口、人間の持つ多面性の描き方に魅了され、西川美和の最高傑作と思っていた。
今回の『すばらしき世界』は『ゆれる』に匹敵する映画。実在の人物がモデルの、佐木隆三の『身分帳』を原案としたすばらしい脚本になっている。個人的な葛藤に社会問題や目をそらすことのできない現実問題を加味して、一人の男の生き様を哀切に丁寧に浮かび上がらせている。
(下の画像左は、肩に彫り物をした三上(役所広司)が、カメラフォーカスでぼやけたコスモスの向こうに立っている。画像中は三上が殺人で逮捕された場面。画像右は出所後TVディレクター(仲野太賀)が右の三上と焼き肉屋で話している場面)
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画像出典左:JFDB日本映画データベース すばらしき世界 https://jfdb.jp/title/9240 画像出典中:YouTube役所広司・仲野太賀・長澤まさみが共演『すばらしき世界』予告編https://www.youtube.com/watch?v=WEdC71z-RBg 画像出典右:映画.com すばらしき世界 https://eiga.com/movie/92069/ (閲覧2021/7/7)
●『夏への扉』(2021日本 監督/三木孝浩 原作/ロバート・A・ハインライン『夏への扉 The Door into Summer』)
『夏への扉』原作は1956年に書かれたSFの古典的名作と言われている。私は未読だが、この映画を観た後で早速図書館の貸し出し申し込みをした。読むのが楽しみである。
映画『夏への扉』は時代設定を1995年の日本にしている。主役の宗一郎を演じるのは山崎賢人。子供のころに両親を亡くし父親の友人夫妻に育てられ、その娘璃子(清原伽耶)ときょうだいのように育つ。友人夫妻も事故で亡くなってしまうが、若きロボット開発の科学者として愛猫ピートとともに穏やかな毎日を送っていた。ピートは真冬でもいつも、夏への扉を探している。それがタイトルにつながる所。
物語は宗一郎が共同経営者と自身の婚約者に騙され、すべてを失ってから動き出す。さらに生命保険会社のコールド・スリープのカプセルに入れられて30年後の2025年に目を覚ます。そこで驚愕の事実を知って、璃子を救うべくタイムマシンのようなもので、もう一度1995年に戻る。やるべきことを終えて、その後またコールド・スリープで2025年へ。そこは果たして夏への扉に続いていたのか。
と、粗筋を書くだけで大変。この壮大な物語を2時間と少しの映画にまとめたのだから、ちょっと無理がある。できれば10回連続のテレビドラマなどにして、じっくりと描いて欲しかった。ただ、山崎賢人の熱演は見応えがある。清原伽耶も清々しい。未来の世界で出会い行動を共にするアンドロイドのピート(藤木直人)は、時々人間っぽいとぼけた味わいがあって面白い。観終わった後は、夏への扉を開けたような爽やかな気持ちになれる映画だ。
余談だが、主題歌は今話題のLiSAなのだが、あまり印象に残らなかった。ネット上で山下達郎の方が良かったという意見を多数見つけ、調べてみたら1980年に『夏への扉』というタイトルの曲がすでに出ていた。詩の内容を見るとハインラインのこの小説がベースになっている。曲調は緩やかでちょっとノスタルジックで、この映画には山下達郎の方が合っていると私も感じた。ラストにこの曲が流れたらもっと完成度が上がったのに、と思う。
(下の画像左は1995年の宗一郎(山崎賢人)と璃子(清原伽耶)。画像中はコールド・スリープのカプセルに入れられた宗一郎、30年後2025年に目を覚ます。画像右は2025年のアンドロイドのピート(藤木直人))
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画像出典左:THE SANKEI NEWS清原果耶、女優でいる喜び満喫 映画「ジョゼと虎と魚たち」https://www.sankei.com/article/20210102-4LQFGYINPZISZNRLMHLPETENFQ/ 画像出典中:公式サイトhttps://natsu-eno-tobira.com/ 画像出典右:FASHION PRESS ニュース 名作SF小説『夏への扉』主演・山﨑賢人で初実写映画化、30年の時を超えたタイムトラベルの冒険物語 https://www.fashion-press.net/news/62044 (閲覧2021/7/7)
●『スタンド・バイ・ミー』 (1986米 監督/ロブ・ライナー 原作/スティーヴン・キング『The Body(死体)』)
同じくスティーヴン・キング原作のホラー『シャイニング』鑑賞後に観たのだが、こちらの『スタンド・バイ・ミー』の方は青春映画の傑作と言われている。私は30年以上前の公開当時に映画館で観た。あの名曲の主題歌と、どこまでも続く汽車の線路と、早世したリヴァー・フェニックスの繊細な演技が印象に残っている。
今回もう一度観て、子供たちの自然な演技に圧倒された。家族関係に問題を持つ一人一人の個性の設定が際立っているのだが、それを四人とも見事に演じている。また、伏線がしっかりしており、汽車道で汽車に立ち向かうシーンと汽車から逃げるシーン、犬に追われるシーンとヒルに噛まれるシーン、ブルーベリーの劇中小説とブルーベリーを採りに行った少年の死、兄の死の記憶と少年の死の現実などそれぞれのエピソードが重なり合って物語に厚みが生まれている。
大人になった主人公の「あの12歳のような友達はもうできない」も名言だが「たった二日の旅だったが帰って来たら町が小さく見えた」も印象に残った言葉だ。小さな冒険を重ねて大人になっていく子供時代の思い出とノスタルジーは、男性の方がより強く感じるのではないだろうか。
ちなみに主題歌、ベン・E・キングが歌う「スタンド・バイ・ミー」は、もともとあった歌だが、詩などが映画の内容にマッチしているので選ばれたらしい。キングの原作の題名は『The Body(死体)』なので、タイトルそのものも拝借した形かもしれないが、タイトルと曲の良さがこの映画のヒットの大きな一因だったと思う。私はジョン・レノンがカヴァーで歌った『スタンド・バイ・ミー』を先に知っていて好きだったのだが、ジョンがロック調なのに対してベン・E・キングの歌い方はソウルフル。さすがに元祖で、素晴らしいと思った。
(下の画像は小さな冒険に出かける12歳の四人、大人になった主人公は「あの12歳のような友達はもうできない」と話す)
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画像出典:CINEMORE永遠に忘れない――。12歳の自分に戻ってしまう『スタンド・バイ・ミー』という魔法https://cinemore.jp/jp/erudition/770/article_771_p3.html (閲覧2021/7/7)
Y.Tさん
今年度前半は「光の旅人K-PAX」以外、一本も観ることなく終わってしまいました…。
家事の済んでいない散らかったリビングで映画を観る気も起きずバタバタとまた次の朝が来る、の繰り返しです。
地元、小倉に「昭和館」という昔ながらの小さな映画館があり、そこでゆっくり映画が観たいなと思う日々です。
今年度後半は一本でもみれますように。少し遅いですが、七夕のお願いにします。
O.Aさん
1本目『パーム・スプリングス』(2021米・香港合作/90分/PG12監督マックス・バーバコウ原題Palm Springs:カリフォルニアのリゾート地名)
ループ映画と言えば『恋はデジャ・ブ』に始まり『リバース』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ミッション:8ミニッツ』『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』『時をかける少女』『魔法少女まどか☆マギカ』最近では『ハッピー・デス・デイ』シリーズと、もはや1ジャンル化しています。そんな沢山あるループ映画の新作がこの『パーム・スプリングス』です。
ポスタービジュアルはまるで恋愛映画なのですが、まさかこれがループ映画だったとは...この映画の新機軸は、ループしている人が複数いる点でしょう。
しかも、誰がループの渦中にいるかを途中まで明確にしないため、ループ映画と知らずに見るとかなり困惑します。
ループ映画のメリットはある程度の面白さが保証されている点でしょう。どの作品も主人公が死ぬという最悪の事態が訪れても何度も繰り返せるのでストーリーをいくらでも広げられる。ループ映画に外れが少ないのはこのためでしょう。この映画も面白さはかなり保証されています。是非皆様もご覧ください。
個人的にはループ映画で好きなのは、主人公が事態を収拾しようとすればするほど、状況が悪くなって行くパターンですね。
予告編等 https://eiga.com/movie/94242/
(下の画像左はポスタービジュアル(宣伝ポスター)。画像中は始めの結婚式の場面、中央に主人公がいる。画像右は主人公に、弓で襲いに来る謎の老人。襲われて逃げると光とともに結婚式の朝に戻るなどのタイムループを繰り返す)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/a7/b8ef2927d63b2574aaf5ba91fc929b41.png)
画像出典左:映画.comパーム・スプリングス : ポスター画像https://eiga.com/movie/94242/photo/ 画像出典中:映画.comパーム・スプリングス。タイムループの世界で永遠に暮らしてみたらどうなる?映画ファン必見! 斬新&センス良すぎのラブコメディhttps://eiga.com/movie/94242/special/ 画像出典右:映画ナタリー J・K・シモンズが何度も襲いに来る…「パーム・スプリングス」悪夢の場面写真https://news.line.me/articles/oa-natalie-eiga/30ca62b06dc7 (閲覧2021/7/6)
2本目『ザ・スイッチ』(2021米/102分/R15+ 監督クリストファー・B・ランドン原題:Freakyグーグル翻訳:気まぐれ)
入れ替わり映画と言えば『転校生』に始まり『ハモンド家の秘密』『映画 あたしンち』『ホット・チック』『フォーチュン・クッキー』『山田ババアに花束を』『累-かさね-』『パパとムスメの7日間』(これはドラマ)そして、何と言っても2016年の大ヒット作『君の名は。』があります。こちらも完全に1ジャンル化しています。
アメリカでは入れ替わり映画の代名詞は、若き日のジョディ・フォスターが出演した『フリーキー・フライデー』です。
この『ザ・スイッチ』の原題はこの『フリーキー・フライデー』から命名されています。
ループ映画と異なり入れ替わり映画はシチュエーション(誰と誰が入れ替わる)によって面白さが結構左右されます。
この映画では「殺人鬼」と「女子高生」が入れ替わるので面白そうなのですが、一応ホラー映画なので、お笑いの要素はいらない気もしますが劇中で爆笑シーンはあります。でもホラー描写はかなりエグイので要注意。
よく映画で女性が男性をやっつけるシーンが多々ありますが、この映画はそこはリアルに女性の腕力不足をキチンと表現しています。なので女子高生と入れ替わった殺人鬼はパワーダウンします。ホラーを期待してみると少し物足りないかもしれませんが、個人的には大満足の映画でした。
予告編等https://eiga.com/movie/94139/
(下の画像左は、入れ替わった後の外見は女子高生だが中身は残虐殺人鬼。画像右は、外見は殺人鬼だが中身は女子高生)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/97/f88b11dea7b1717e1994495f7c6be36c.png)
画像出典左:MOVIE Collection 映画『ザ・スイッチ』特報https://www.moviecollection.jp/movie/56513/ 画像出典右:Filmarks映画情報ザ・スイッチhttps://filmarks.com/movies/92729 (閲覧2021/7/7)
S.Tさん
1番目『モスクワは涙を信じない』(1982ソ連 監督ウラジーミル・メニショフ 原題ロシア語Москва Слезам Не Верит:グーグル翻訳:モスクワは涙を信じない)
ユーモアを含み、深みのある魅力的な作品でしたのでベスト作品に挙げておきます。
ストーリー:田舎から大都会モスクワに夢を持って出て来た3姉妹の人生、特に長女を中心に描かれる。末っ子は手堅くモスクワ近郊の農村男性と結婚。次女は金持ちを探そうと高級マンションを自宅と偽ってパーティを計画、アイスホッケー選手を見つけて結婚する。長女は次女計画のパーティでテレビ局に勤めるエリートから見染められ、妊娠までするが、工場の女工であることがばれて絶縁され、一人で子供を育てることになる。
それから20年後。末っ子は農村で子供に恵まれ生活。次女はアイスホッケー選手だった夫と離婚、元夫はアル中となり、時々次女に金をせびりに来る。長女は労働者3000人の工場長になっていた。
ある日、電車の中で長女に「あなたの目は男を求めている」と言って男が話しかけてきて、始めは無視するが、そのまじめな姿勢に、話すようになる。男は、実験機器を作る職人で職場の同僚から人望を得ていた。男は日曜日に、長女とその娘を職場の同僚とのピクニックに誘う。長女が大工場の工場長であることを知ると、男は自分の身分が低すぎると感じ、身を引く。しばらくたって、末っ子の夫が男のところへ行き、長女が探している、もう一度会ってみないかと話し、男は長女に会い「しばらく音信不通にして悪かった」と話すと、長女は「もっとずっと長い間あなたを探していた」と応えた。
感想:映画での長女の最後の言葉「もっとずっと長い間あなたを探していた」がこの映画の最も輝く場面に思う。大工場の女性工場長は日本では考えられないこと以外、ほとんど日本の庶民と変わらない。大事な「幸せ」はソ連社会でも、どのような社会でも、身近にあるがなかなか探し出せないことを、この映画が表現しているように思う。また、何が幸せかも表現しているように思う。
題名は「泣いたところで誰も助けてはくれないものだ」という意味を持つロシア語の格言(情報元:ウィキペディア『モスクワは涙を信じない』)。以下の2予告編は内容が異なります。ロシア語版の方がうまくまとめている。
ロシア語版予告編2分歌がいい:https://www.youtube.com/watch?v=UwpMKETIPa8
英語版予告編2分23秒:https://www.youtube.com/watch?v=z1GcUobfFIE
(下の画像左は、次女がモスクワ国立図書館には金持ちエリートが来ると考えて、身ぎれいにして図書館でいい男を探している場面。画像中は20年後、工場長になった長女が部下の幹部に指示を出している場面。画像右は実験器具職人の男とのピクニック場面、右が長女、中央はその娘、手前が職人の男)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/2b/aa11c76db2d31100d38779e0fa7cb0b4.jpg)
画像出典左、中、右共:映画「モスクワは涙を信じない」ソ連映画 監督:ウラジーミル・メニショフhttps://odakyuensen.blog.fc2.com/blog-entry-1933.html (閲覧2021/7/4) 予告編のURL元もここ。
2番目『ストーカー』(1981ソ連 監督アンドレイ・タルコフスキー原題ロシア語Сталкерグーグル翻訳:ストーカー)
人に付きまとう犯罪のストーカーとは関係ありません。未知の生き物や宇宙船などは出て来ないSFです。
ストーリー:隕石が落ちたらしい場所の空間が歪んで、その空間に入ると戻れなくなる。軍が戦車で空間に入るが全滅。危険地帯として長い間立ち入り禁止になる。空間の歪みを検知しながら中を移動する方法を見つけた人が空間内の案内人(ストーカー)と名乗って案内料を稼ぐ仕事を始める。作家と科学者(教授)がストーカーに空間内の中央まで案内を依頼する。ストーカーは案内しながら、それまでに案内した人の経験を話す。経験では中央まで行った人は心に潜む願望が実現するとのこと。
作家と科学者は中央近くまで到達すると、自分の潜在願望があからさまになることに不安になり、中央に入るか躊躇する。最後は見てのお楽しみにしておきます。
感想:空間内を案内する方法、小石に1㎝ぐらいの幅がある布を巻き付け1mくらいの長さのひらひらするところを作る。空間にその石を放ると布のひらひらぐあいで、空間の歪みの有無が分かるという。この方法がユニークで、SFの面白さを味わわせてくれる。潜在願望が実現するというところの会話は哲学的で難解な部分があるので、その部分はあらかじめそのつもりで観るといい、フロイト精神分析の影響があるように思う。
(下の画像左は案内人(ストーカー)。画像右は廃墟となった建物の中を進む3人)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/f2/f51fb10200930d8beeca87f4986ef399.png)
画像出典左:RUSSIA BEYOND誰もが見るべきタルコフスキーの7本の映画https://jp.rbth.com/arts/81176-mirubeki-tarukofusuki-no-eiga 画像出典右:映画 ストーカー(1979)人間心理を見事に表現した傑作https://blog.goo.ne.jp/goo0348_2007/e/b429d909283fb9d9978c778cf192c980 (閲覧2021/7/5)
3番目『ちはやふる3部作:上の句、下の句、結び』(上2016下2016結び2018、監督小泉徳宏)
さわやかな青春映画として、とても好感が持てる、魅力的な作品なので採り上げます。
ストーリー:主人公千早(ちはや:広瀬すず)の高校1年から3年までを描く。
上の句:高校1年:千早は子供のころ幼馴染3人で競技カルタの面白さを知り、高校に入ったらクラブを作ると決めていた。いろいろ苦労してなんとか幼馴染の1人(野村周平)と5人のカルタ部を作る。
下の句:高校2年:競技カルタ全国大会に挑む。ライバル校には子供のころ一緒に競技カルタをした幼馴染(新田真剣佑)がいる。千早は幼馴染(真剣佑)と再び競技カルタをしたくてカルタ部を作ったらしい。
結び:高校3年:高校生活最後の全国大会、再びライバル校幼馴染たちのチームや全国最強高校(賀来賢人ら)のチームも勝ち上がってきて激戦。
感想:競技カルタに打ち込む高校生たちが皆輝いて見える。広瀬すずをはじめ、出演した若い俳優たちの何人かは日本映画を支える大俳優、個性派俳優になるような気がします。芸能界は華やかな分だけ、いじめや暴力団が背後に絡んだ興行などが、一般の企業勤めより厳しいと思うので、若い俳優たちがSNSのいじめや理不尽なマスコミやサイコ特性を持つ周囲の人などに負けないよう頑張ってほしいと思う。魅力的な俳優竹内結子や三浦春馬が自殺したことから特にそう思う。吉永小百合はインタビューで「多数の映画に出演したが、一番好きな作品は」と聞かれ「最初の『キューポラのある街』」と答えた。広瀬すずが俳優人生を続けた後に、同じ質問を投げかけられたとき、きっと『ちはやふる3部作』と答えるのではないかと思う。この作品は広瀬すずの青春そのもののように輝いている。『キューポラのある街』では主人公純は吉永小百合の青春そのもののように輝いていた。
題名は古今和歌集「千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがは)からくれなゐに 水くくるとは」から。
歌の解説:【千早(ちはや)ぶる】次の「神」にかかる枕詞で、「いち=激しい勢いで」「はや=敏捷に」「ぶる=ふるまう」という言葉を縮めたもの。【神代(かみよ)もきかず】「神代」とは、「(太古の)神々の時代」という意味。不思議なことが当たり前に起こった「神々の時代でも聞いたことがない」という意味。下の句に記すのは、それほど不思議な現象だということを言っている。【竜田川】は、紅葉の名所で、現在の奈良県生駒郡斑鳩町竜田にある竜田山のほとりを流れる川のこと。【からくれなゐに】「鮮やかな紅色」という意味。「から」は「韓の国」や「唐土(もろこし)」を意味する言葉で、「韓や唐土から渡ってきた素晴らしい品」を表す接頭語。当時の韓や唐土というと先進国で優れた品が日本に渡ってきていたので、こういう意味となった。【水くくるとは】「くくる」は「括り染め」、つまり「絞り染め」。「(竜田川が)川の水を括り染めにしてしまうとは」という意味で、紅葉が川一面を真っ赤にして流れていることを、竜田川を主語にして「擬人法」を使い、「とは」は上の句の「神代も聞かず」につながるので、倒置法も使われている。
まとめると『さまざまな不思議なことが起こっていたという神代の昔でさえも、こんなことは聞いたことがない。龍田川が(一面に紅葉が浮いて)真っ赤な紅色に、水をしぼり染めにしているとは』
以上の情報元「ちょっと差がつく『百人一首講座』 長岡京小倉山荘公式ブランドサイト」https://ogurasansou.jp.net/columns/hyakunin/2017/10/17/1039/ (閲覧2021/7/6)
(下の画像左はカルタ部の5人左から野村周平、上白石萌音、広瀬すず、森永悠希、矢本悠馬が演じる。画像右は最強ライバル若宮(左手前:松岡茉優)と対決している千早(右:広瀬すず))
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/a3/90799f400272efe5bd86472c41fa0372.jpg)
画像出典左:ツイッター #ちはやふる上の句見た人https://twitter.com/hashtag/%E3%81%A1%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%B5%E3%82%8B%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%8F%A5%E8%A6%8B%E3%81%9F%E4%BA%Bart 画像出典右:ツイッター アンク@金曜ロードショー公式 千早さん「もっと、もっと、もっと繋がれーーーー!」 涙が出て止まりませんhttps://twitter.com/kinro_ntv/status/974642973932584960?lang=id (閲覧2021/7/6)
(2/2)へ続く。