前半はジジイが思い上がった若造を懲らしめる展開で痛快さがある。7人が集まってくる過程はネーミングを含めて「たけしギャグ」が面白い。だが、面白さはここまでで、中盤以降は、できが悪い。
中盤はドタバタだけになり、喜劇がない。ドタバタ喜劇には、よしもと劇場でも人情が絡むものがあるが中盤以降にはそういうものはない。唐突で単純なドタバタが好きな人はいいかもしれない。「どうだ、お前たち、こういうのが好きなんだろう」と押し付ける、わざとらしさがある。オレオレ詐欺の犯人を懲らしめるのも「たけしギャグ」で面白いが、オレオレ詐欺を題材にすれば話題になりやすいという表面的な思惑を感じ、世間をバカにしてかかっているようにさえ思える。7人の子分たちの間にも友情らしきものはほとんど感じない、死んだ「はばかりのモキチ」を車いすに乗せて殴り込みをかけるところはヤクザの友情を表現できるチャンスであったが、何もなく、ドタバタで終わらしている。
終盤はジジイが粗暴なだけで、情や人への信頼は無い。刑事も粗暴なだけで終わる。カミソリでのどを切るなど残忍な場面もあり、子供向けではない。暴力をそのまま賛美し、弱いものを馬鹿にしている北野流のまとめ方。後味の悪い作品でした。
ヤクザの悲哀を表現していると評価することも出来なくはないが、ヤクザもバカにしている作り方に思える。「ただ面白ければいい」としているようにも思えなくもないが、中盤以降はそれも失敗している。
北野映画の粗暴な人は反社会性人格障害者と考えられる。コメディとして取り入れているうちはいいが、人の残忍性を肯定的に描く北野映画の特徴は問題を感じる。この粗暴な人の統計的割合は50人に１人程度で決して多くはない。（映画『凶悪』残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする（その３）「1.11 サイコパスの統計的特徴」の反社会性人格障害者の割合を参照）
おそらくこの中途半端な出来は、北野武が年を取って丸くなってきて、中途半端な状態になっていることを反映したのかもしれない。前半のおもしろさは、丸くなった深みのある北野武。中盤以降は以前の粗暴で暴力賛美が年を取って中途半端に丸くなった北野武。
プログラムを見ると次の２人のように高い評価をしている人もいますので、見方はいろいろあるものですね。
ドキュメンタリー監督松江哲明：この作品は『お笑い芸人としても映画監督としても頂点を極めなければ撮れないエンタテインメントなのだ。』
映画『0.5m』の監督安藤桃子：『日本人ならではのペーソスと、ビートたけしのコメディアンとしての天才ぶり、そして優しさが真っ直ぐに胸に刺さり、本来、我々が映画に何を期待するべきなのかが見えた気がする。』
画像出典：映画.com http://eiga.com/movie/81333/ （2015/4/26閲覧）
上の画像はそれぞれ個性的で重厚な名優たち。一人一人が画面に出てくるだけで絵になる『本物の俳優』たちです。この俳優の実力を、後味のいい映画にまとめてほしかった。本当に残念です。テッシー。
