横浜映画サークル

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-9)北九州監禁殺人(3/6)サイコパス対策の基本他

2016-05-13 16:29:59 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

その(4-8)の続き。

(F)第5の殺人:緒方主也38

主也(かずや)は、松永の度重なる通電とひどい食事で度々嘔吐や下痢をし、痩せて飢餓状態となりまともに歩くことができない。ある日一時的に症状がおさまると、外出しレストランで量の多いセットものを注文して食べるように指示され、丼と小さいうどんのセットとメンチカツを食べる。その日浴室に閉じ込められた主也の嘔吐がひどくなった。上半身を起こすことができなくなり、吐いてもすぐに吐き気を催し、吐くものがないのにむせている状態が続く。その何日か後、松永が浴室で眠気防止ドリンクと300ml缶ビールを全部飲ませて1時間後、衰弱死(p15/42)。この際に、娘彩に浴室での父の死亡を確認させ、松永へ死亡報告をさせた。父親が死んだのは以前彩が父親とけんかした時に「死んでしまえ」と言ったからだと言い聞かせた。主也と彩のけんかも松永に無理やり作られたもの。【父と娘の心の交流は完全に破壊された】。純子は日々悪化する主也について「死亡2日前には病院に連れていかないと死んでしまうと思ったが、母静美の時に病院に入院させる提案が松永に拒否されたので、病院に連れて行こうと考えなかった」。松永の意に沿わない提案をすると通電される。公判では主也の死因は「高度の飢餓状態に基づく胃腸管障害による腹膜炎」と考えるのが妥当とされた。この松永の行為は「監禁し食料を与えず虐待して死んでいくのを見たい」というサイコパスの逆転認知欲求そのものである。死体は純子と娘彩が第1の殺人虎谷と同様に解体処理。純子は解体時に「腹腔内に濃い緑色の液体が広がっており、何かが腐敗するような重たい感じのするにおいがした」と述べている(論告書p15/42)。

(a)元警察官主也がなぜ小柄な松永に屈し、家族を殺し、自らが殺されることになったのか。

腕力でも、会話力でもない。根本原因は主也がそれまでにサイコパスのような人に会ったことがないこと。最初、義理の姉純子が犯罪をしていると聞き「松永にたぶらかされているに違いない」と松永の所へ直談判に行き初めて会い、取り込まれた。正義感が強いものが取り込まれるのは、次の例14「尼崎監禁連続殺人事件」の主犯角田美代子のところへ谷本隆が直談判に行き取り込まれて虐殺されるのと同じ。主也は以下のステップでサイコパスに屈した。虎谷が屈したのと同様のステップであるが、前項「()(b)虎谷久美雄を逃げられなくした松永のアプローチ法」はサイコパス側から見たものである。ここでは、同じステップを主也、犠牲者側から見ることにする。

・ステップ1懐柔期話し合いの努力が無駄になり、逆に利用される時期。相手がどんな人物か探りを入れ、話合える関係にしようと、人間的関係構築の努力の直談判。今までにサイコパスに直面したことがないためサイコパスの巧みなウソ話をまともに聞き、信用できると誤って把握。酒を飲まされ長時間、何日にも亘る話し合いの間にサイコパスの誘いに乗って自分のたわいもない弱点を話す。「農協から30年住宅ローンを借りている」「跡取りなのにまだ土地の名義人になっていない」「妻の理恵子が夜に外出する」などを掴まれる(p14/42)。自分が本音を話せば、和気あいあいの関係になれば、サイコパスも本音を話してくれると、勝手に思い込んでいる状態。サイコパスの本音は一般的には健常者に理解不能。いつまで話し合っても結局サイコパスの本音が全く分からない。弱点吐露と人間的な交流関係ができないことがはっきりする時期。サイコパスから見れば弱みを掴む時期。たわいもない弱みは次のステップで強弁のネタへと変貌していく。また「義理の姉純子が1年前に虎谷を殺した」(実は松永が殺した)ということを口外していいのかという事も弱点として利用された。

・ステップ2、ステップ3(懐柔、豹変の繰り返し)理解不能、思考停止(真白化) :虎谷や緒方誉と同様に強弁長時間拘束眠らさない3大手法をまともに受けたと思われる。「妻の理恵子が夜に外出する」では松永が離婚する旨の「事実関係確認書」を作り、サインさせられた。「土地の売却を親族に邪魔された」「妻の首を絞めて殺害をもくろんだ事実を認める」など何通もの「事実関係確認書」*1にサインさせられた。離婚については、カセットテープに離婚の告白を録音させられ、両親にも異議がないことを言わせ録音させられた(p13,14,15/42)。主也は夫婦の心の交流を完全に破壊された。虎谷が娘沙織を人質に取られたのと同様、主也は子供の彩と優貴の二人を松永のマンションに人質に取られた。もはや、がんじがらめ。主也は言われるままに動くロボット化へと向かっていった。サイコパスから見ればステップ2弱みの実体化(書類化)とステップ3弱みの拡充時期。情報元の「Googleドキュメント」では主也は「心理的ダメージ」により屈服した(p14/42)としている。筆者は、それだけでなく、弱点をいつまでも突き続ける「心理的ダメージ」とともに3大手法の「肉体的ダメージ」により主也は完全に屈服したと分析する。サイコパスは屈服するまでいつまでも3大手法を続ける。主也は松永がなぜ弱点を大げさにして脅してくるのか今までに経験したことのない異常さで理解不能になり、なぜ長時間拘束され、眠らないで同じことを何度も言われるのかわからないまま、頭が真っ白の状態になって、あれよあれよという間にがんじがらめになり、逃げられなくなった。真白化前期

松永は主也の悪いところを緒方誉、静美と恵理子から聞き出し、それを「理由」(カラ理由)に使い通電をし始める。それぞれから悪口を聞き出し全員へ通電するようになった。互いに、あいつが「こんなことを言うから通電される」と憎しみ合う。家族内の心の交流が完全に破壊された。沙織に「父親虎谷の悪いところを10個書いて報告しろ。そうしないと電気を通す」として、虎谷を通電する「理由」(カラ理由)を作り出して親子の心の交流を破壊したのと同じ方法。【松永にとっては通電による虐待とともに、告げ口と通電を組み合わせて家族の心の交流を破壊することが逆転愛情欲求を満足させる。】〔逆転愛情欲求については前項「3)サイコパスの逆転愛情/逆転承認欲求」参照。注*1:情報元で書類の名称が虎谷の場合は「事実確認証明書」と異なっているが、この違いに意味はない。〕

・ステップ4(懐柔、豹変の繰り返し)金銭提供と虐待受け:松永に全く逆らえない真白化後期になり暴力装置の通電を日常的に受ける。農協から金を借りては渡し、取られた金額は約6300万円。この段階では義理の父緒方誉や妻理恵子を松永に言われるままに殴るようになっており、疑似サイコパス前期に移行している。恵理子の殺害では松永に言われなくても実行しており疑似サイコパス後期へ移行した。土地を売るよう動いたが、不自然さが出て警察が動き始めたことを松永が知り、土地は売られなかった(p14,p15/42)。松永の冷静な判断が働いていることが分かる。【松永型サイコパスは、大脳新皮質は『優秀』に機能しているので逆転欲求満足を追求できない状況に対しては、じっと耐える冷静さがある】

・ステップ5、ステップ6(満足期)虐待の本格化と死体解体:借金もできなくなると衰弱死するまで虐待され、死亡後は解体された。内容はこの項「(F)第5の殺人:緒方主也38歳」の始めに記した通り。

(b)主也の対応の誤りとサイコパス対策の基本

主也の対応の根本的誤りは、サイコパスを自分の延長上で理解しようとしたことである。一般的には健常者にサイコパスの行為は理解できない。このことは『サイコパス対策の根本はサイコパスがどのような特性を持つか、健常者が理解できるようにすること』であるということを示している。腕力で勝る主也が松永に抵抗できなかった根本原因はこの項の始めに記したようにそれまでにサイコパスのような人に会ったことがないこと。今までに経験したことのない徹底的な嘘と人が困ることを好んで行い、人を殺害することに何の抵抗もないサイコパスの底知れぬ恐ろしさである。主也はサイコパスの実態に圧倒されて何もできなかった。もし、ルールを決めて戦えば主也が勝つが、サイコパスにはルールがなく手加減がない。健常者はこれ以上やれば関節が折れるとか目を突けば見えなくなるなどで本能的に手加減をする。サイコパスは相手の目がつぶれようが、関節が折れようが、死のうが全く気にしないで攻撃する恐ろしさを持つ。また、武器や毒物などを平気で使い、寝ている時など相手が抵抗できない時を襲う。サイコパスは自分が死ぬことに恐怖がないので躊躇することなく徹底的に相手の弱い所、例えば目を攻撃する。サイコパスの特性を知らずに対峙した健常者は暴力による闘いをする前に、この恐ろしさのために凍り付く。例14「尼崎監禁殺人事件」の角田美代子は女性サイコパスであるが、大の男が美代子の「やるなら殺すまでやって見ろ。殺すことが出来ないで、大きいことを言っているな」と怒鳴る迫力に圧倒され、凍り付き、最後は美代子に虐殺された。

直談判で説得しようとしてもサイコパスは説得を全く受け付けない。人から説得されるということ自体が存在しないサイコパスは相手を理解して全体で物事を考えることがないので、自分の言いたいことだけを、威圧的に連射するだけになる。「元警察分際で偉そうに言うな」「子ネズミがほざくな」「能無しは黙っていればいい」「知識だけを振りまく小心者が」と根拠のない上滑りの言葉だけが次々出てきて、反論すればさらに似たような威圧的な言葉「お前は人間のクズだ」「見え透いた猿芝居するな」を連射され、ついには物理的虐待が待っている。上滑りの言葉は強制力を背景に持つサイコパス強弁になっている。「元警察分際で偉そうに言うな」(カラ理由)と殴る。「お前は人間のクズだ」(カラ理由)と殴る。どういう振る舞いが偉そうなふるまいなのか、や人間のクズとはどういう人を言うのかの説明はない。ただ殴る理由に使っている。この理由に意味はない。サイコパスにとって「殴る」ことに意味がある。健常者はなぜ自分が殴られなければいけないのかが分からないまま殴られ、「カラ理由」が特別な意味があるように錯覚する。例14では角田美代子が「黙ってアメを食べたとんでもない奴だ」「こんな時に横を向いている、人の話もまともに聞けんような奴は性根を入れ替えてやる」と殴っている。健常者は呪縛解放すると「カラ理由」が全く意味のないものだったということに愕然とする。主也は、なぜ自分が妻を殺さなければならないのか、なぜ自分が飢餓状態に衰弱して死ななければならないのか全く理解できないまま虐殺された。サイコパスに殺された人は自分がなぜこんな無残な殺されかたをするかわからないまま死んでいく。サイコパスの方もなぜ虐殺するか自分でもわかっていない。この「なぜ」を理解できるようにすることがサイコパス対策の基本になる。この「なぜ」が逆転欲求の理解により解るようになる。すなわちサイコパス対策の基本は逆転欲求の理解と解明である。

【太平洋戦争では、主也と同じように、自分がどうしてこのような無残な死に方をしなければならないのか、わからないうちに死んでいった兵士や人々は少なからずいた。これは太平洋戦争が「サイコパスの戦争」だったとすると理解できる。「国のために、民族のために、家族のために死ね」「死ぬことが武士道」という「カラ理由」を押し付けられて、主也のように自らサイコパス化して、死んで逝った人たちである】

(G)第6の殺人:緒方優貴5

10歳の少女彩に5歳の弟を殺させたサイコパスは子供であることを全く気にかけない。主也が死亡した1か月後、松永は純子に「子供に情けをかけて殺さなかったばかりに、逆に大きくなって復讐されたという話もある」「そうならないためには早めに口封じをしなければならない」と言い、純子は優貴が生きていても虐待されるだけと考えたため「そうするしかないですね」と同意した。松永は優貴君にも食事制限などの虐待をしていた。彩は松永に「このことは誰にも言いません弟優貴にも言わせません。何も言いません。父親の実家に二人で帰ります」と懸命に誓っていたが、松永は「死体をバラバラにしているから、警察に捕まっちゃうよね。優貴君が何も喋らなければいいけど、そうはいかないんじゃないかな」「俺や彩自身に不利益が生じるが、責任が持てるの?」と尋問し続ける。そして、松永が「優貴君は可哀相だから、お母さんのところへ行かせてやる?」と暗に優貴君を殺すことを命じる。通電を加えられ、ついに彩は「そうします」と答えた。純子は「自分ひとりで優貴を絞める」と言ったが、松永は彩も加えるよう指示を出した。松永は彩に優貴君を殺させ姉弟間の「心の交流を完全に破壊する」逆転愛情欲求の快感を味わっている。さらに沙織にも参加するよう促し、幼い子供をかわいそうと思う心をずたずたにして楽しんだ。純子の証言「彩は優貴君を台所の床に仰向けに寝かせるように指示し、お母さんのところに連れて行ってあげると嘘をついて」「沙織が足を押さえた上で彩と私が二人がかりで絞殺した」。沙織の証言では「殺害場所が台所ではなく浴室」「彩が1人で絞殺して純子は手首を押さえていただけ」と証言している。裁判では前述の純子の証言が採用されたがいずれにしても松永は満足している。死体は解体処分。松永は直接には殺害や死体解体をしてない。情報元には記述がないが、松永はそばで見ていたか、解体の状態を純子に虎谷の時と同じように報告させていたなどで陶酔していたはずである。

(H)第7の殺人:緒方彩10

少女彩を長時間虐待し自ら死を選ばせた。松永は彩に通電を繰り返して衰弱させ、「太っていたら大変だろ?」というカラ理由で食事の量を減らした。彩がいない所で松永は沙織に向かって「アイツは口を割りそうだから処分しなきゃいけない」「アイツは死ぬから食べさせなくていい」(45回公判p28/42)と。純子は優貴君殺害直後に解体道具を多めに買うよう松永が指示したことが彩の死体解体準備と認識した。松永は浴室で彩と2人きりで何度も話し合った。この時に彩の両手両足をスノコにひもで縛り付け顔面(最も思考能力を失わせる)へ30分にわたり通電している。サイコパスは思うとおりになるまで虐待を続ける。その後、純子と沙織の前で松永の「彩は死にたいと言っている」との言葉に彩がうなずき、彩は静かに横たわり、絞め易いように10㎝近く首を持ち上げたという。純子と沙織が彩を絞殺。沙織の証言では「松永が彩に通電し続け、全く動かなくなった時に純子と私で首を絞めた」と証言し、一部が純子の証言と異なる。裁判では前述の彩が締めやすいよう首を上げたという純子の証言を採用。彩は当時小学生たちの体操クラブに所属していて殺される少し前に「今までありがとうございました」とみんなの前で退会のあいさつをしている。指導員は「やる気のある子」だったと述べている。また、捨て犬の飼い主を暗くなるまで探す優しい少女だった(p16/42)。

(I)生き延びた沙織の将来の夢

沙織は小学生の時から酒を飲まされ、監禁状態で成長が阻害されたと思われ、小柄である。接見した人は19歳にしては幼く見えたと話す。掃除など雑用に使われていたため殺害を逃れていた。事件の全体を知る重要な生存者。沙織の右足親指は生爪が剥がれている。これは17歳の時に1度目の逃亡が見つかった時、松永からラジオペンチを渡され、逃亡を理由に5分以内に右足親指の爪を自分で剥ぐよう命じられたため、自分で剥いだ。松永は「あと1分しかないぞ」と急かした。カッターナイフで指を切り血で「二度と逃げません」と誓約書を書かされた。その20日後2度目の逃亡が成功し警察に駆け込み事件が発覚した。逃亡を決意したのは「18歳になったら風俗嬢として働き今まで育ててやった費用(4000万円)を返せ」と言われ、純子にロープで首を絞められことがあり、連日のように通電されていたことと、本人は18歳になったら車の免許を取りたい、美容関係の専門学校へ行きたい、ワープロの勉強を始めたいなどの夢があったことによる(p20/42)。【サイコパスは子供が将来に向けて頑張るということが全く理解できない。人は機械、ロボットでしかなく機械の変化として成長を見る。将来に向けて、情熱を持つ心があることは理解できない。生き延びた沙織が夢に向かって一歩でも進んでほしいと筆者は願っている。】

(J)サイコパスの虐待の構図は「いじめ自殺強要」と同じ構図

自分で爪を剥がさせる構図や前項「(h)第7の殺人」で少女彩に自ら死を決意させる構図は『逃げ場がない状態に追い詰め、頭が真白化になった後もさらに虐待を加えて自殺へ追い込む』、いじめの自殺強要の構図と全く同様。サイコパス特性のある者による、いじめ自殺の犠牲者はこの構図に追い込まれている。サイコパスの狡猾な自己中心の構図。自分に罪は来ないように自殺に仕向け、憎みたい/憎まれたい、苦しむのを見たい、死ぬのを見たいという逆転欲求衝動を満足させる。子供でも大人でも、いじめ自殺の多くは自殺する側に原因はなく、自殺させる側のサイコパスの存在が原因である場合が多いと筆者は考えている。サイコパスは犠牲者に対して、家族にいじめのことを話させない、先生に本当の事を話させない、いじめアンケートで本当の事を書かせない、作文で本当の事を書かせない、ようにすることは難しいことではない。「そんなことをすればどうなるかわかっているな」と脅す必要もなく、脅しと同じ『空気』がひしひしと伝わる。そんなことをすれば本当それまでより何倍も激しい虐待を陰湿にする。特に「成績の良い松永型サイコパスであれば、サイコパスの知識のない教師など簡単に丸め込まれる。本事件の松永や次の例14「尼崎監禁殺人事件」の角田美代子で分かるように、サイコパスは気丈で正義感が強いために反抗するようになった者や逃げようとして失敗した者に対する虐待はその前より遥かにひどい虐待となる。どのような健常者でもまんじゅうサイコパスに遭遇すれば、いじめられる側になり、たやすくは逃れられない。「いじめ自殺」という名称より「サイコパスの虐待自殺強要」が実態に合っている。短い名称にすれば「サイコ虐待自殺」さらに短くすれば「虐待自殺」である。「いじめという言葉は軽すぎる。事故に関するハインリッヒの法則がこの場合にも当てはまると仮定すれば、1人の虐待自殺の重大事態が生じた場合、その周りに約30人の自殺に至らないが中程度の事態が生じていることを示す。ヒャリとする程度の軽い事態であれば約300人に生じていることをハインリッヒの法則は示している。サイコパスの自殺強要は次の例14「尼崎監禁殺人事件」の橋本久芳の飛び込み自殺強要で詳細に見る。〔「虐待集団」については前の項「10)(f)サイコパスまんじゅうのいじめ集団(虐待集団)と反社会性人格障害者のいじめ集団(反秩序集団)」を参照。〕

(K)生き延びた純子の状況(p7,8,9,10/42)

・松永の布団販売の詐欺会社の事務員として雇われた。会社では純子も他の社員と同様に寝具購入や名義貸し契約をし、松永から言われて両親や親族から借金や金を無心している。

・松永により、胸にタバコの火で「太」と焼印、太ももに安全ピンと墨汁で「太」と入墨を入れられた。

・1985年睡眠薬と左手首を切って自殺を図ったが一命をとりとめた。松永は自殺をする純子の心を理解することはなく以後一層激しい暴力で松永に取り込まれた。

・1997年4月逃げ出し湯布院でホステスとして働いた。松永が自殺したという嘘の葬儀に戻り捕まる。〔次項「(L)サイコパス松永の特徴まとめ・執念深く逃亡者を捕まえる」参照〕

・1997年5月郵便投函などのため外出時に門司駅で逃亡を企てるが、タクシーに乗ったところで捕まる。捕まった時に、松永の「なぜ逃げた」に「電気が怖かったんです」と答えると「電気は私の友達ですと言って笑え」と命じ、その通りにすると、松永はそれを見うれしそうに笑った。激しい通電が1か月は続いた。この笑いは、例11「女子高生監禁殺人事件」の小倉が被害者の女子高生を激しく殴り目の位置がわからなくなるほど膨れ上がった顔をみて「なんだお前でっけえ顔になったな」と笑うのと似ている。【サイコパスは逆転欲求が満足された状況で笑うことがある】。純子はその後逃げることはなかった。純子は、他の犠牲者に、松永に代わって通電や死体処理をして、すなわち疑似サイコパス後期となって生き延びた。生き延びたが殺される寸前だった。【健常者はサイコパスまんじゅうに取り込まれると疑似サイコパスにならなければそこに存在することはできない

(L)サイコパス松永の特徴まとめ

ここでは松永の残虐性以外の特徴をまとめる。

・「成績が良く」、「弁がたつ」:これが松永型サイコパス核心をなす。小学校全学年で殆どの科目でオール5。学級委員長や生徒会役員を務め、中学1年時に校内弁論大会で3年生を差し置いて優勝。教師を言い負かせた。部活でキャプテン〔情報元:ウィキペディア北九州監禁殺人事件、以下ウィキペディア〕。「成績優秀」で「頭の回転がいい」からサイコパスでないと考えてはならない。健常者の頭の回転がいいとは異なり、「サイコパス強弁」である〔サイコパス強弁については前の項「(B)第1の殺人(d)サイコパス強弁」参照〕

・性的乱交:純子とその母や妹や離婚した元妻とも同時並行で肉体関係を持つ。同時に言葉たくみに様々な女性遍歴と結婚詐欺で見境がない。サイコパスは心の交流がなく、報酬系のわずかなドーパミン分泌で性的な反応をするので性的乱交や結婚・離婚を異常なまでに繰り返す〔前の項「(1)5)(b)サイコパスの快感は性欲とは別物」及び本シリーズ(その2)「1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動:K.B.症候群(4)性的感覚の異常・亢進」参照〕。

・執念深く逃亡者を捕まえる:純子が逃げてひっそり湯布院でホステスとして働いたときに、松永が自殺したとのうわさを隅々に流し、緒方家の人を取り込んで葬儀を捏造し、松永が死んだと思い込み葬儀に来た純子を、松永が押し入れに隠れて捕まえ、激しく殴った(p8/42)。執念深さが尋常でない。逃亡者を捕まえる執念深さはサイコパスの特徴の一つ。松永は逃げるものの気持ちを理解することはなく、この後純子に対する通電虐待は激しさを増す。例14「尼崎監禁殺人事件」も逃げたものを捕まえた時に虐待の激しさを増している。逃げたものを親族を利用して捕まえるのは例14「尼崎監禁殺人事件」も同様である。〔前の項「8)(b)サイコパスは執念深く何年たっても特定の犠牲者を捕まえようとする」参照〕。

・病的な嘘つき:「村上水軍の末裔」「河合塾の講師」「小説家」「北朝鮮の関係者」などウソの多数の顔。

・寄生的生活他者の資産を奪って生活する。病的な嘘による詐欺生活。映画『凶悪』原作のサイコパス三上静男が「うそつきの先生」として他者から財産を奪って生活するのと類似。以下詐欺会社と結婚詐欺の具体的寄生生活内容。

(a)詐欺会社(p2,3/42):父親の布団販売業を受け継ぎ詐欺会社ワールドを設立1986年25歳。粗悪品を訪問販売で高額で売りつけ、ヤミ金融パクリ行為(支払うつもりがない多額の借金や商品を取り込んで雲隠れする行為)をした。1.8億円を稼ぎ、詐欺罪脅迫罪で指名手配されたが、1992年に石川県に夜逃げをし、時効。夜逃げの前には多数の不渡りを計画的に出した。夜逃げまでの6年間は松永の側近2人を含め常時社員5~6人がいた。社員は布団を買わされ、松永に多額の借金をした。また、社員の母親に金の無心を強要することもあった。地方都市(九州、柳川市)で仕事が少なく社員にとっては貴重な勤め先だった。3階建のビルの3階に社員が「電気部屋」と呼ぶ防音壁の部屋があり、床にコンセントが6つ埋め込まれていた。社員は販売ノルマが果たせないときや松永の気分で、側近の2人に押さえつけられて通電虐待を受けた。松永は側近2人を操り、「でんき!」と言うと通電し、「なぐれ!」というと殴った。側近2人は松永に逆らえない疑似サイコパス前期になっている。松永自身はソファーに横なって見ており手を出すことはない。映画『凶悪』で「うそつきの先生」(サイコパス三上静男をリリー‣フランキーが演じた)がソファーにいて指示を出し須藤(反社会性人格障害後藤良治をピエール瀧が演じた)らが電気屋ジジに通電している場面とほぼ同じ。前の項「(A) (c)暴力装置(通電) 」の証言(元社員)はこれらの社員である。付け加えれば「通電時に両腕がばねのように跳ね上がり、2~3mも吹っ飛んだ」「脳の芯を鉄棒で打たれたような衝撃。一瞬気を失うが。手足の焼けるような痛みでいつも目覚めた」「通電が終わっても、帯電していて、ドアノブを握った瞬間、ビリットはじけ飛ぶことがあった」と述べている。いずれも社員は殺害されずに逃げている。純子はこの詐欺会社ワールドの前身の布団販売有限会社1983年設立の事務員で雇われ、ワールドでは側近の1人になっていた。【1の殺人1996年の約10年前から既に企業内部閉鎖環境詐欺会社ワールドで虐待の構図ができている】。ワールドを夜逃げで計画破産させてから4年後に第1の殺人になる。

松永と側近の関係は例14の角田美代子とマサの関係と同様。角田が「マサ殴ったれ」と言うとマサが犠牲者を殴り「マサやめ」と言うまで殴り続けた。側近とマサはサイコパスまんじゅうの暴力装置に位置づけられる疑似サイコパス前期者にあたる。

(b)結婚詐欺(p5,6/42):被害届などで確認されているだけで被害女性は25人以上。その例を以下に記す。

・結婚詐欺例1:松永は京都大学で物理学を研究している村上と名乗る。ワインレッドのアタッシュケースから取り出したビデオ、アインシュタインみたいな人が講義しているのを見せ、解説をして信用させる。大学をやめ小説を書くからどこか落ち着いたところに部屋を借りてくれと頼む。信用させるために純子を姉と紹介し口面を、合わす。560万円だまし取ると、初めて会った時は誠実そうに見えた松永が豹変する。髪の毛を掴む、殴るなどのすさまじい暴力が始まり何日も監禁された。2階から飛び降り逃げた。あまりの恐怖体験で当時警察に届けることができなかった。サイコパスは犠牲者からこれ以上金がとれなくなったところで、逃げられない状態〔監禁〕にして豹変し、サイコパスの逆転欲求の餌食にする。〔豹変は本シリーズ(その4-4)「7)サイコパスが優しい顔から悪魔に豹変するとき」参照〕

・結婚詐欺例2:松永は医師タシロと名乗る。夫の暴力に悩んでいた中年女性の相談に乗った。「働いている病院をやめるのに、支度金を返さなければならない」と困り果て表情を見せて、数百万円を融通させた。

・結婚詐欺例3:松永はコンピュータ技師ミヤザキと名乗る。カラオケボックスで会った女性に「米国が使用した弾道ミサイルの軌道計算のために、戦場にいた。人が死ぬのをたくさん見た。戦争はよくない、心からそう思った…」と。おどおどした感じで、スーツも地味。うだつの上がらないサラリーマン風。ミヤザキは女性の近くで、携帯電話で外部と英語を交えて話をすると、女性の心をとらえた。幸いこの女性は金を奪われる前に監禁殺人が発覚した。警察に呼ばれミヤザキの正体を告げられても「あの人は、そんな人じゃない」と強く抗議していた。

これらの例からわかるように、サイコパスは嘘で人の心を操ることに何の躊躇もなく徹底しているばかりでなく、相手の信頼を裏切り愛情をズタズタに破壊することに、人間的な心の本質を破壊すること、すなわち逆転愛情欲求に、「逆転快」を感じている。サイコパスの寄生的生活は、金品を奪われる犠牲者の苦痛を、サイコパスが「逆転快」と感じることに本質があり、限りなく奪いつくす。「逆転快」を求める欲求は際限がない。金品そのものは寄生的生活に必要なものであるが、サイコパスにとっては「逆転快」の付随物でしかない。そのことは金品を奪い尽くした後の虐待で表面化する。

(M)松永の無罪弁明にみるサイコパス裁判と科学的犯罪心理学の課題

「純子がやった」「私に殺す理由はない」「殺害現場にいなかった」「風呂掃除のときに転び、頭を打った」などたわいもない言い逃れや嘘で無罪を主張(8回公判など)。「自分は何でもできると錯覚した全能感を持っており、罪悪感がなく自信満々だった」。この弁明の態度は本シリーズ(その1)に説明した凶悪サイコパスのテッド・バンディの全能感に酷似。弁護士の「純子は言うことを聞いていたか?」の問いに。松永「聞かないときにはげんこつで殴るか、通電をする。通電しつけの意味があり教師のげんこつと同じ」と答えた。弁護士「20年、内妻の純子と暮らして2人の関係は?」。松永「日本の伝統的な雷オヤジと家長を併せ持ったような感じです」と答え、死の恐怖に追い込み、虐殺や死体解体を強制した罪を微塵も認めようとしない。テッド・バンディと同様に、相手の苦痛を読み取れないだけでなく、逆転欲求満足を感じているため、事の深刻さがわからない。逆転欲求は健常者には自分の延長上で理解できないので、その論理も理解できない。判決は死刑確定。本シリーズ(その1)でも述べたが、サイコパスがウソ(カラ理由)を繰り返すので、サイコパスでない無実の人の発言がサイコパスと同様の嘘と受け取られて、冤罪を生む。サイコパスは冤罪を生む間接的な元凶である。サイコパスのウソ(カラ理由)と健常者の真実を見分ける方法の確立が法廷の課題であり、科学的犯罪心理学の課題である。そのために、サイコパスの脳活動の特殊性解明を含めた研究に多くの人と資金を注ぎ込む必要があると筆者は考える。〔サイコパスが作り出すウソ「カラ理由」「サイコパス強弁」については本シリーズ(その4-4)「9)(d)虐待行為にどうでもいい理由を必要とする」、前の項「(B)(d)サイコパス強弁」参照〕

純子は無期懲役が確定した。日本の裁判では、サイコパスまんじゅうに取り込まれ疑似サイコパス化して他者を殺害した場合が想定されていない。情状酌量の範囲で考慮されるが、本人の意思で殺害したことになり、重い刑になる。これもサイコパスの研究とともに見直されなければならない。松永に逆らえば純子は殺され、逆らうという選択肢は純子になかった。純子の無期懲役は重過ぎる。

純子に再犯の可能性はない。サイコパスの皮となった人の量刑はサイコパスまんじゅうに取り込まれて犯した罪を主体とするのではなく、①再犯の可能性と②サイコパス化にどれだけ抵抗したかの2点を加味しなければならないと筆者は考える。すなわち呪縛解放(偏桃体機能回復)の程度と健常者としての反サイコパスの行動を考慮しなければならない。そのためにも呪縛解放したかどうかの判定方法と健常者のサイコパス化のメカニズムの解明を医学的に科学的犯罪心理学として確立する必要がある。それはまた、サイコパス犯罪を認定し、サイコパスに対して病状の改善度合い(偏桃体の機能回復度合い)で刑期を柔軟に変更する方法を確立することにもなる。量刑を単純に刑期で測る現状の方法は健常者には有効で、罪を犯すことを押しとどめる作用を持つが、死刑や量刑を恐れないサイコパスにはその有効性に限界がある。サイコパス犯罪者を残虐性による刑期で処理することは根本的な解決にならず、いつまでも社会からサイコパス犯罪と戦争を求める脅威がなくならない

N)松永の無罪弁明はいじめを行う児童生徒の言い訳と共通点が多い

自殺に追い込む生命に係る深刻ないじめ虐待を行う児童生徒の言い訳「じゃれていただけ」「ふざけていただけ」「かわいがっていただけ」というのは、松永の「命にかかわる通電虐待」を「教師のげんこつ」に置き換える言い訳と似ている。教師の中には、自殺などの深刻な事態に対しても「じゃれていただけと思った」とサイコパスの言い訳(カラ理由)に乗っていることがある。本当にふざけているだけか、サイコパスの深刻ないじめかを見分ける方法、陰湿に隠れて行う深刻ないじめの対処方法の確立が急務であるが、そのためにサイコパスの本質理解を基盤にしてサイコパス特性を持つ児童生徒に対処する方法の確立が教育現場の課題になる。

その(4-10)へ続く。

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1 コメント

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Unknown (緒方純子さんのため)
2020-08-21 22:55:24
このブログの筆者にお願いがあります。緒方純子さんの量刑を軽くする新たな理由が見つかったのなら、ぜひとも緒方純子さんを説得して、再審請求をお願いしたいです。

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