横浜映画サークル

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「アフター・アース」残念なでき。「恐怖心を完全に消し去ることが英雄の条件」も若干疑問。

2013-07-01 11:42:26 | メンバーの投稿

 「シックスセンス」のM・N・シャラマンが監督・脚本をやっているというので期待しすぎた。「オブリビオン」を10点とすれば6点ぐらいのでき。「シックスセンス」を見てない人もいるでしょうが、「シックスセンス」は緻密に練られた脚本のオカルト映画で、結末も魅力的でした。「アフター・アース」は比較すると、脚本が雑で、緻密さや完成度が低いと思える。進化したサル、ライオンや植物の登場も唐突で登場までのワクワク感がなく、断片の継ぎはぎが目立つ。がっかり作品でした。プログラムを読んでその理由がはっきりした。原作が助演のウィル・スミスで、息子ジェイデン・スミス(14歳)の主演映画を作りたかったということ。インタビューに答えて「この映画を通じて息子が成長し、僕たちにとって素敵な思い出となることがなによりたいせつになったんだ」と言う。見る人のためより自分の息子のためと、自分と息子の関係のために作った映画だったわけです。シャラマンも「ハリウッドの代表でもあるウィルと一緒に仕事をするのは、僕にとってもすばらしい機会」「僕らが目指したのはウィルとジェイデンのふたりが舞台で演じる劇みたいにすること」と述べ、ウィルの意図に応えている。

 ウィルのジェイデンに対する姿勢は本物の親の愛情だろうか?息子ジェイデンは才能が有るかもしれないが親の七光りと思える影響でいろいろな映画に出ている。若いうちからこんなに甘やかされて、いい俳優になるだろうか?ジェイデン・スミスのファンには申し訳ないが、とても素直に見えるジェイデンが近い将来、強烈な壁にぶつかるような気がする。逆に、壁にぶつかり苦労しないと人の心を演じることができず、いい俳優になれないのではないかと思う。余計なお世話ですが。

 ストーリの中で「恐怖心を完全に消し去ることが英雄の条件」になっている。身の毛もよだつような残虐な凶悪殺人犯人は「恐怖を感じていない」と犯罪者精神鑑定医の権威マイケル・ストーンが述べている。「英雄の条件」は「凶悪殺人犯の条件でもある。

 ストーンはカリフォルニア刑務所の凶悪殺人犯300人の脳をMRIで調べ、感情を豊かにする扁桃体が一般の人と異なる反応をすると言う。一般の人であれば顔を背けたくなるような残酷な、恐怖場面を見ても、凶悪殺人犯は扁桃体の反応がなく、恐怖を感じていない。恐怖を感じないので、死刑が求刑されても怖くなく、動揺がない。また、他の人が悲しんでいるのを見て自分も悲しく感じ、喜んでいるのを見てうれしく感じる、他の人の感情を鏡のように映す脳の機能のミラーニューロンが一般の人には存在するが、凶悪殺人犯はミラーニューロンが極めて不活発で、存在していないかのごとくである、とストーンは言う。

 これらのストーンの見解は、「何が彼を殺人犯にしたか」(2011、浦谷計子訳、イースト・プレス発行)やディスカバリーチャンネルの「殺人犯の心理学」(確か1時間の7回シリーズ、計7時間)で見ることができる。米国の軍隊も、「敵」を殺害する時の「恐怖心を消し去る」ための訓練がある。これは、米軍を取材したBSドキュメンタリーで見た。

 「本物の英雄」は、感情豊かで、他の人より恐怖心を持ち、人の心がよく理解できる人なのではないかと思うのですが、どうでしょう。「アフター・アース」はSFの設定なので気にしなくてよいのですが、逆の設定「恐怖心が強いことが英雄の条件」のSFは無理ですかね?単に弱虫映画で、ゴールデンラズベリー賞(最低映画賞)になりますかね?

尚、ロンドン大学のジェームス・ブレアらは5つの論文を紹介して「恐怖心の強い子は道徳や良心をより高次に発達させる。」と述べている。(「サイコパス」ジェームス・ブレア、星和書店、2009年、p110) 以上テッシー

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