メンバーからメールで頂いた2020年後半に観た映画で良かった、又は印象的な作品は次の通りです。作品西暦は特記がなければ日本公開年度、次に製作国です。メンバーが2020年後半に観たもので公開年度や劇場で観たかに拘っていません。TVやレンタルBDなどを含めて選んでいます。これから見たい映画も取り上げていいとしています。今回は新型コロナのため映画館自粛があり、観る機会が限られていますので、2020年後半に観た映画でなくてもいいとしています。
O.A さん
『サイレント・トーキョー』と『ジョゼと虎と魚たち』の2作品です。両作品とも映画と原作との違いついて書きました。
『サイレント・トーキョー』〔(99分)2020年12月4日公開〕
(ストーリー)
クリスマスイブの東京。恵比寿に爆弾を仕掛けたという一本の電話がテレビ局にかかって来た。半信半疑で中継に向かったテレビ局契約社員と、たまたま買い物に来ていた主婦は、騒動の中で爆破事件の犯人に仕立て上げられてしまう。
(スタッフ・キャスト)
監督:波多野貴文、原作:秦建日子、脚本:山浦雅大
出演:佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也、広瀬アリス、勝地涼、財前直見、鶴見辰吾
(感想)
テロリストと警察との攻防戦を描いた娯楽エンターテインメント映画ですが、上映時間を99分に納めるために原作をかなり省略しているせいか、メインキャストの佐藤浩市と石田ゆり子の関係性が全く分かりませんでした。映画を観た知人にも確認しましたが、やはりよくわからなかったとの返事。ならば、原作を読んでみようと原作本を購入して年末年始で読破しました。原作を読んでやっと謎が解けました。原作では佐藤浩市と石田ゆり子をつなぐキーパーソンが存在するのですが、映画ではこの人物が登場しません。名前すら出てきません。これでは、映画だけ観てもわかる訳がない。この変更の原因は脚本にあるのでは?と思いました。他にも原作からの変更箇所で気になる部分が多々ありました。この映画の脚本を担当した山浦雅大(やまうら・まさひろ)の過去の作品を調べてみると『亜人』(2017年)と『ハルチカ』(2017年)の脚本を担当していました。両方とも鑑賞した映画ですが、原作からの改変が酷い映画だったことを思い出しました。『亜人』は原作では、平凡な高校生の主人公を映画では26歳の研修医に変更していました。非力な高校生が不死身の身体になるのが面白いのに…。『ハルチカ』では、推理小説の原作から推理の要素を完全に排除していました。推理の部分が面白いのに…。でも、今年『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』『ブレイブ -群青戦記-』の2作品が公開予定とのこと売れっ子脚本家なのですね。
〔下の画像左は爆発予告現場にいる群衆の一人(佐藤浩市)。画像右は爆発予告の混乱に巻き込まれる主婦(石田ゆり子)〕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/9b/6128ba20a039323c83bfe50ce66cd3b8.jpg)
画像出典左:FASHION-PRESS映画『サイレント・トーキョー』佐藤浩市×西島秀俊共演、クリスマス前に起きた連続爆破テロ事件を描く https://www.fashion-press.net/news/55272 (閲覧2021/1/8)画像出典右:CINRA.NET恵比寿がパニック、佐藤浩市主演『サイレント・トーキョー』本編映像公開https://www.cinra.net/news/20201130-silenttokyo (閲覧2021/1/8)
『ジョゼと虎と魚たち』〔(98分)2020年12月25日公開〕
(ストーリー)
大学で海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコに生息する幻の魚を見るという夢を追いながら、バイトに勤しむ日々を送っていた。そんなある日、坂道を転げ落ちそうになっていた車椅子の女性ジョゼを助ける。
(スタッフ・キャスト)
監督:タムラコータロー、原作:田辺聖子、脚本:桑村さや香
声の出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn、松寺千恵美
(感想)
2003年に妻夫木聡と池脇千鶴で実写映画化された『ジョゼと虎と魚たち』のアニメ版です。実写版も観ていますが、なんだか印象が全く違う映画になってました。実写版はすごく切ない映画だったような気がしたのだが…。今回のアニメはすごく前向きな映画になってました。こちらも原作が気になって原作本を購入しました。原作本は、短編集で『ジョゼと虎と魚たち』はたったの26ページしかありませんでした。なので、上記ストーリーにある"幻の魚を見るという夢"とか"バイトに勤しむ"といった描写は原作には微塵もありません。完全にアニメ用のオリジナル設定です。原作の短さを補うため、映画用に登場人物やエピソード、設定を大幅に創作して増やしています。結末も原作にないアニメオリジナルの結末が用意されていました。原作ではジョゼと恒夫の関係性に明確なオチをつけないまま終わります。なので、実写版もアニメ版も結末は映画独自のオリジナルとなっていて、実写とアニメで鑑賞後の印象が異なるもの合点がいきました。ここまで映画独自の要素が多いと原作というよりも原案に近い気がしました。
(下の画像は、左に海洋生物学を専攻する恒夫、右に車椅子の女性ジョゼがいる)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/d1/65c461ad53b3a837feb34b3fee61a412.png)
画像出典:映画.com ジョゼと虎と魚たち https://eiga.com/movie/92249/ (閲覧2021/1/8)
Y.Tさん
2020年に見た印象的だった映画です。色々と悩んで、この量の文しか書けませんでした。文を書いたり、発信することの凄さを知りました。
『チョコレートドーナツ』(2012アメリカ、監督トラビス・ファイン、原題 Any day now)
「1970年代のニューヨークのブルックリンでゲイの男性が育児放棄された障害児を育てた」という実話に着想を得て製作された映画
(ストーリー)1979年のカルフォルニア。薬物中毒の母親から育児放棄されているダウン症の少年マルコ、その隣に住むゲイのパフォーマールディルディと検事局に勤めるポールは恋に落ちる
それと同時に、マルコの養育環境の酷さに見兼ねたルディはマルコを強引に引き取り、マルコ・ルディ・ポールの3人は“家族”になる。そして、一瞬の幸せは引き裂かれていく
(感想)バッドエンドです。フィクションだと分かっていても、涙が止まりませんでした。
原題のAny day now、今の時代が、今日が、過去が望んだ「いつの日か」になっているのだろうか…と思います。
(下の画像の中央に育児放棄されたダウン症の少年マルコ、両側にマルコを育てるゲイの二人。英語のゲイgayには「陽気な人」という意味があります)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/84/664642cf2ff29262968a3b853dec2ae9.jpg)
画像出典:MOVIE-CFH【実話感想・考察】映画『チョコレート・ドーナツ』ラスト結末が切なすぎる※ネタバレあり https://movie-c-f-h.com/anydaynowkanso (閲覧2021/1/10)
A さん
今回はコロナ禍の中、厳選して観た劇場公開作品3本について書きます。
●『劇場』(2020年日本 監督/行定勲 原作/又吉直樹)
又吉直樹原作、行定勲監督、山崎賢人主演というだけで、観る価値ありの映画だ。しかし、これは日本では「映画」というカテゴリーに入れないらしい。ミニシアターでの劇場公開より一足早くネット配信したからだ。各映画賞への参加も難しかったらしく残念に思う。
いつになく長髪で汚れ役の山崎賢人が良い。傲慢で嫌な男、でも演劇という自分の世界には信念があり、女にとって放っておけない男、永田を好演している。そんな永田に紗希(松岡茉優)は献身的な愛を捧げるが、耐え忍ぶ日々からいつしか精神を病んでしまう。
私が好きなのは、浮気をした沙希を後ろに乗せた永田が桜のトンネルの中を自転車で走るシーン。永田は沙希を責めない。自分にも非があるのはわかりきっていて、後ろめたさと照れと不器用な愛がないまぜになる。ずっと長く独り言のようにおちゃらけた言葉を後ろの彼女に語り続ける。彼女はいつしか彼の服をそっとつかみ嗚咽する。
ラストの仕掛けには賛否両論があるが、概ね好評のようだ。私もこのラストには驚いたが、見せるインパクトという意味でとても映画的だと思った。別れた後で、永田が沙希のことを演劇化したということは彼女に未練ありと思う。が、それを観終わった紗希のちょっと暗さとあきらめと前を見据えた表情から、彼女はきっと新しい生活に向かうのだろうと感じた。
(下の画像左の左に長髪の永田(山崎賢人)、右に献身的な愛を捧げる紗希(松岡茉優)。画像右は沙希を後ろに乗せた永田が桜のトンネルの中を自転車で走るシーン)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/94/07fbc8b78284c27a64c2145297977798.png)
画像出典左:映画.com 劇場 https://eiga.com/movie/91527/ (閲覧2021/1/9) 画像出典右:夢を追う主人公と支える彼女…すれ違っていく山﨑賢人&松岡茉優の姿が切ない 又吉直樹原作『劇場』本予告映像 https://times.abema.tv/news-article/7042106 (閲覧2021/1/9)
●『スパイの妻』(2020年日本 監督/黒沢清)
ベネチア国際映画祭の監督賞を受賞したことで話題になった作品。黒沢監督の作品を観るのは『トウキョウソナタ』『岸辺の旅』に続いて三作目。
太平洋戦争前夜の神戸が舞台となる、ある貿易会社社長夫婦の物語。もともとはNHKの8Kドラマだったということで、高精細のためかやや綺麗すぎる感はあるにしても服装やインテリアも含めその時代の雰囲気が良く出ている。高橋一生演じる社長と蒼井優演じるその妻の心理劇がサスペンス・タッチで進む。話は関東軍の人体実験にまで及び、その実態を映したフィルムの存在を巡って、夫がスパイなのではないかと疑う妻は、夫と共に生きることを誓いある行動を起こす。その先に待ち受けていたのは、離れ離れになる運命だった。
映画後半、どんでん返しが続くので、ラストはいかようにも解釈できる。光と闇の映像は美しく、高橋一生や東出昌大の安定した演技もさることながら、夫を愛し信じぬき、狂気をはらむ演技を見せた蒼井優の存在感はさすが。いつかもう一回、じっくりと観てみたい映画だ。
〔下の画像左は奥に貿易商の夫(高橋一生)、手前に妻(蒼井優)。画像右は夫をアメリカのスパイではないかと取り調べる憲兵(東出昌大)。ウイキペディア「憲兵 (日本軍):軍警察、治安維持、防諜を主要任務」〕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/26/77765f07700ade1204f8cfdb657ed232.png)
画像出典左:映画.com スパイの妻 劇場版 https://eiga.com/movie/93378/ (閲覧2021/1/10) 画像出典右:映画「 スパイの妻 」ネタバレあり解説、今作は和製マリアンヌとでも言いましょうか https://chicosia.com/spynotsuma-review/ (閲覧2021/1/10)
●『マーティン・エデン』(2019年伊仏 監督/ピエトロ・マルチェッロ 原題Martin Eden。原作/『MARTIN EDEN』ジャック・ロンドン)
原作者のアメリカの作家ジャック・ロンドンは工場労働者や漁船乗組員などの仕事を経て、冒険小説で名を馳せ世界的な作家となって成功するが、1916年に40歳で自らの命を閉じている。
映画『マーティン・エデン』はそんな破天荒な人生を送ったジャックの自伝的作品である。特筆すべきは、舞台をイタリアのナポリに移し、主役のマーティンを「イタリアのアラン・ドロン」と言われベネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞した注目の俳優ルカ・マリネッリが演じていること。(個人的にはアラン・ドロンとは似て非なるものと思ったが。)
舞台をナポリに移したことで味わいは深まっている。貧しく無学な青年がブルジョワの美しい女性に恋をして、その位置まで上り詰めたくて、文字を教わることから始めて作家になることを夢見ていく。そのサクセス・ストーリーはいかにもアメリカ的だが、すべてがうまく進むわけではない。インテリになった彼は、あらゆる職種の人々と知り合い、政治思想にものめり込んでいく。若い日の情熱は移ろいやすく、人生は時にほろ苦い。
観る前には『風と共に去りぬ』のような大河ドラマかと思っていたのだが、イタリアのエッセンスのあるドキュメンタリー的な作品だった。観た後で大きな感動が押し寄せるわけではなかったが、ジャック・ロンドンの人生とその著作に興味を持ったのは確かである。
(下の画像はマーティン・エデン役を演じた俳優ルカ・マリネッリ)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/3d/cfb336dc3ffc3f0825d847cbae9f9a91.png)
画像出典:Ameba ルカ・マリネッリ(Luca Marinelli)イタリア俳優https://ameblo.jp/lingtositetk1223/ (閲覧2021/1/10)
N さん
『ミッドナイトスワン』(2020日本 監督内田英治)
あらすじ:新宿のニューハーフショークラブで四羽の白鳥を踊っていたトランスジェンダーの凪沙(なぎさ)が、母親から育児放棄されている姪で中学生の一果(いちか)を預かることになった。一果のバレエの才能を見出されたことによって、凪沙は彼女の母親になる決心をするが…さまざまな葛藤が描かれる。
感想:凪沙と一果の内に秘めた苦悩・痛み・悲しみ・叫び、がひしひしと伝わってきました。
ラストシーンは、一果役の若干13歳の服部樹咲(みさき)さんが“白鳥の湖の主役のソロパート"を見事に踊りきり、暗く重いこの作品自体と凪沙役の草彅さんに光を当ててくれるようで、胸が熱くなりました。
(下の画像左はニューハーフショークラブの楽屋で白鳥の衣装の凪沙(草彅剛)。画像中は左に凪沙、右に一果(服部樹咲)。画像右はバレエ教室での一果)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/99/10967258cc7daecef7d9b6d03a4ba1f0.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/fa/eb9e4a2e6b843cde4802f13d6bc8bd0b.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/ee/b9de916433667f7aa038a4dd8fdc24b9.png)
画像出典いずれも:Mirtomo『ミッドナイトスワン』あらすじ・ネタバレ感想!草彅剛がトランスジェンダーを熱演!とことん切ない愛の物語https://mirtomo.com/midnightswan-review/
『劇場』(2020年日本 監督 行定勲 原作 又吉直樹)
あらすじ:解散状態になってしまった劇団主催者の永田と彼の才能を信じた女優志願の大学生沙希。その二人の7年間の物語。
感想:切ない恋愛映画でした。山崎賢人さんのやさぐれ感が秀逸でした。テレビでキングダムを見た後だったので、出演者の名前を確認してしまいました。
(下の画像左はやさぐれ感が秀逸の永田役の山崎賢人。画像右は「キングダム」で信(しん)役の山崎賢人)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/91/fbb7ab64d841c59e2948399a27b26be7.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/c0/3b2884050b1d7a81fe8a3063c588256f.png)
画像出典左:シネマトゥデイ 山崎賢人が主演!又吉直樹「劇場」映画化!ヒロインは松岡茉優https://www.cinematoday.jp/news/N0109968 (閲覧2021/1/11) 画像出典右:ORICON NEWS映画『キングダム』写真集の一部カット公開 山崎賢人&吉沢亮&橋本環奈ら熱演の姿。トリミング。https://www.oricon.co.jp/news/2132901/full/ (閲覧2021/1/11)
その2/3へ続く