横浜映画サークル

サークルメンバーの交流ブログです。

メンバーの鑑賞感想や映画情報など気軽に記述しています。

『日々是好日』はフェデリコ・フェリーニの『道』が重要な位置を占めていますね。

2019-05-19 23:00:10 | メンバーの投稿

日々是好日』(2018日本 監督大森立嗣)。『』(1954伊 監督フェデリコ・フェリーニ 原題La Strada直訳:道)

サークルメンバーに良かったという人が多かったので、また自宅のすぐ近くの市民館大ホールで上映されたので『日々是好日』を観てみました。ブログ記事で他のメンバーが触れていない、印象に残ったところを以下に記しています。多少ネタバレがあります。

映画は、主人公が小学生の頃に両親に連れられてフェリーニの『』を観て帰り、家に入る場面で、父親が良かったねと言うのに対し、白黒で何がいいんだか分らなかった、というナレーションで始まる。

映画の中盤でもフェリーニの『』のことがナレーションで入る。映画の終盤でも、茶道を13年続け主人公が茶道の先生を高齢になった武田先生(樹木希林)から引き継ぐことになった後の、海岸の砂浜を散歩している場面で「フェリーニのが何で良いか分かったような気がする」とのナレーションで映画は終わる。『日々是好日』と『』は内容が全く異なるが、人生とはどんなものかを表現しようとしている点は似ている。似てはいるが『』は重厚で深みがあり『日々是好日』は深みの点では足元にも及ばないように思う。そのことを『日々是好日』の大森立嗣(たつし)監督は分かったうえで、茶道を通して現代人の人生を淡々と表現したように思う。きっと大森立嗣監督はフェリーニの『』が大好きな作品なのだろうなと『日々是好日』を見て思った。フェリーニの『』は私にとっても影響を受けている最高傑作の一つです。

下の画像左は奥の黄色い服が主人公で20歳の時の家族、小学生の時にフェリーニの『』が良かったと話していた父親役鶴見慎吾が左手前にいる。画像右は砂浜の場面、手前の青い服が主人公役黒木華、向うに年上の従妹役多部未華子。終盤ではこの砂浜を、従妹が結婚し、茶道の先生を引き受けた後、1人で座り、「フェリーニの『』が何で良いか分かったような気がする」とのナレーションが入る。フェリーニの『』も砂浜で涙を流す主人公の場面で終わっている。

画像出典左:『日々是好日』予告編www.nichinichimovie.jp (閲覧2019/5/19) 画像出典中左:映画の時間日々是好日作品情報 ©2018「日日是好日」製作委員会 https://movie.jorudan.co.jp/cinema/35805/ (閲覧2019/5/19)

画像下の左はフェリーニの『』の大道芸で鎖を切る力男の場面。力男は大道芸の「投げ銭」で生活している。力男はある街で身寄りのない知的障害のある女性と知り合い、場を盛り上げるのに使えると思い、女性に太鼓の叩き方を教える。画像中左は太鼓を教えている場面。女性は言われた通りに力男の芸を、太鼓をたたいて盛り上げる。力男はトランペットを女性に教えるが、女性はトランペットが気に入り一人でいる時には簡単な同じ曲を何回も奏でている、画像中右はその場面。画像右は荷台が付いたオートバイが次の街へ移動中に溝に車輪が落ち、出している場面、左のオートバイのところに力男、右の荷台を後ろから押しているのが女性。荷台は2人の寝床で生活の全財産が入っている。この二人の人生が、旅をする道と重なり描かれる。フェリーニの『』は横浜映画サークルが1978年に市従会館で自主上映をしている。本ブログ記事『自主上映の記録 こんなことをやっていました。昔の人はパワーが有りましたね!』参照

画像出典左:Mizumizuのライフスタイル・ブログ2010.05.10フェデリコ・フェリーニの「道」https://plaza.rakuten.co.jp/mizumizu4329/diary/201005100000/ (閲覧2019/5/19) 画像出典中左:フェデリコフェリーニの回顧展<道>から<カサノバ>まで2010年 06月 09日https://kazem2.exblog.jp/12776176/  (閲覧2019/5/19) 画像出典中右:2015年 06月 15日フェデリコ・フェリーニ監督映画『道』https://tarusatoko.exblog.jp/23272360/  (閲覧2019/5/19) 画像出典右:MikSの浅横日記フェリーニの『道(La Strada)』について・・・その1 [探求]https://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22  (閲覧2019/5/19)

以上S.Tでした。

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『バイス』イラク戦争の推進者、副大統領D.チェイニーの伝記作。可もなく不可もなく。

2019-05-05 20:34:51 | メンバーの投稿

バイス』(2018米製作 日本公開2019 監督アダム・マッケイ 原題:Vice直訳:「副」又は「悪」)

その人となりが、一般にはあまり知られていない、元アメリカ合衆国副大統領ディック・チェイニーの伝記作品(まだ存命中ですが)。取り扱う題材もさることながら、彼を演じたクリスチャン・ベール役作りが気になって、平成最後の観賞作品として、この作品を選びました。

=====以下、あらすじ=====

1963年、イェール大学を中退したディック・チェイニーは、後の妻となるガールフレンドのリンに促され、政界へと足を進める。政界では、剛腕ラムズフェルドの元で、政治を学んでいく。

そして、彼は大統領首席補佐官、国防長官を経て、ついに副大統領の座に就く。米国史上、最も権力を握った副大統領といわれる彼は、米国を9・11後のイラク戦争へと導いていく

=====以下、感想=====

物語は伝記作品らしく、事実を淡々と描いている(多少の脚色はあるにせよ)。

その中で、はっきりわかったのはチェイニーが冷血である点だ。元々、口数が少なく、演説も下手な彼は、ボソボソと話し、とても政治家に向いているとは思えないが、テロの加害対象者を躊躇うことなく、拉致を指示するシーンには薄ら寒さを感じる。しかも、そういった行動の一つひとつには必ず法的な裏付けを怠らない。要するに、対象の本体を攻めながら、外堀も埋めている。その風貌からは想像できない、実に狡猾で繊細な動きだ。 

しかし、民主党政権の誕生に伴い、彼は下野することになる。その中でも、彼は民間企業のCEOに就任するなど、転んでもただでは起きない。それも、彼とは対照的な妻リンの功績が大きい。しかし、リンの内助の功は、そこまで大きく描かれないもっと、大きな役割を果たしているはずなのだが。末娘の問題が政治生命の命取りになりそうな時も先回りをして、危機を回避する辺りは流石の一言。

若かりし頃は単なる酒好きの男が、権謀術数を駆使する様は「人間はここまで変わるものか」と、逆にすがすがしささえ感じる。 

その静かなる権力欲に裏打ちされた上昇志向のチェイニーを、体格まで変えたクリスチャン・ベールが熱演。その外見からか、時に滑稽ですらある姿は見事

前述したように、しっかりものの妻リンをエイミー・アダムスが演じているのだが、この作品のキープレイヤーであるのだから、もう少し存在感を出しても良かったのではないだろうか。

スティーブ・カレル、サム・ロックウェルなどが脇を固めて、安定感を醸し出しているので、なおさら惜しい。 

なかなか良い役者を揃えているのだが、作品全体としては、高度な政治的駆け引きによる心理描写などは特に描かれていないため、この作品は2点(0.5点の刻みナシの5段階評価)とした。 

(下の画像左の左は実物のチェイニー、右は役作りのために体重を40ポンド(約18㎏)増量、眉毛などを脱色したベール【情報元ウィキペディア他】。画像右はバットマンを演じていた時のベール)

 

画像出典左:「バイス」で20キロ増量のクリスチャン・ベール、ゲイリー・オールドマンに役作り相談していた!元画像(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC.All rights reserved. https://eiga.com/news/20190130/13/ (閲覧2019/5/5)  画像出典右:テーマ:映画鑑賞、バイスのクリスチャン・ベールhttps://ameblo.jp/getogeto/entry-12443891062.html  (閲覧2019/5/5)

(下の画像左の左にチェイニー役のベール、右に大統領J.W.ブッシュ役のサム・ロックウェルの相談場面。画像右の左はチェイニーを支える実物の妻リン、右はそのリン役エイミー・アダムス、そっくりですね。内容は「全部ホント」と公式サイト)

 

画像出典左:映画の時間、バイス 作品情報“影の大統領”と言われたチェイニーの素顔https://movie.jorudan.co.jp/cinema/36949/ (閲覧2019/5/5)  画像出典右:エイミー・アダムスも激似!? 夫を副大統領に押し上げた妻を熱演!『バイス』https://www.cinemacafe.net/article/2019/02/11/60203.html  (閲覧2019/5/5)

以上S.Zでした。

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『グリーンブック』とてもよかったです。

2019-05-01 20:44:09 | メンバーの投稿

グリーンブック』(2018米製作、日本公開2019 監督ピーター・ファレリー原題:Green Book)

ボヘミアン・ラプソディー』を抑えて、アカデミー賞の作品賞を受賞した作品。 遅ればせながら、朝イチの池袋まで観に行ってきました。個人的には、かなりの評価になりました。もし機会がありましたら、みなさんも観てはいかがでしょう。

=====以下、あらすじ=====

時代は1960年代初頭、NYのナイトクラブで用心棒をしている、無学で粗野なトニーが、黒人の天才ピアニストのドン・シャーリーの演奏ツアーの運転手を務めることから物語は始まる。ツアー先は黒人差別がまだ色濃く残る中西部から南部。わざわざ差別される地域へ自ら向かう中で、当初、御多分に漏れず、黒人を侮蔑していたトニーはウマが合うシャーリーに親近感を覚え、次第に彼の感情も変化していく。

=====以下、感想=====

物語を終始一貫して流れるレイシズム(人種差別)に対して、逃げることなく正面から対峙しているところは素晴らしい。トニーが純粋な白人でなく、イタリアンであることもあるが、彼の心の移ろいが自然に表現されている点は、トニーが自分でも同じように思うのではないだろうか。

物語序盤から張られる伏線もきっちり回収するので、忘れずに観ていないといけないが、そこまで複雑ではない作りのため、構える必要は無く、リラックスして観られる点も良い。

インテリで学識はあるが、黒人であるがために、度重なる差別に対して、耐え続けるシャーリーの心の叫びは胸を打つ。そんなシャーリーのコントラストとして、無学で素行不良のトニーの心の移ろう様は、白人側の論理(大抵、白人はインテリで、黒人は無学)からすると、2人がアベコベになっているところが面白い。 

先に述べたシャーリーの本音は、その場面も相まって心に直接訴えてくるが、この作品の言いたいことは、長旅から戻ってきたトニーが家族に対して放つ一言に集約される。短いながらも重い意味を持つその言葉は、トニーの妻、ドロレスが序盤から持ち続けている考えを表しているといえる。 

役者としては、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで精悍な人間の王を演じた、ヴィゴ・モーテンセンがまったくの別人になってしまったのは時の流れが厳しいものだと感じた。 

前回、前々回のアカデミー作品賞は首をかしげるものばかりだったうえに、今回は『ボヘミアン・ラプソディー』が作品賞を獲るとの見方が多勢だったので、この作品が作品賞を受賞したことで懐疑的だったが、実際に観てみて、この結果が正しいものだと、ホッと胸をなで下ろした。ちなみに、元々『ボヘミアン・ラプソディー』は、個人的に評価していないので、5点満点の2点(参考:0.5点の刻みナシの5段階評価)。そして、この『グリーンブック』は、5点満点の4点(0.5点の刻みナシの5段階評価)とした。自分の中で、4点を付ける作品はそう多くはないのだが、この作品は4点を付けても良いと思う。

(下の画像左はNYのナイトクラブで用心棒をしていたトニー役のヴィゴ.モーテンセン。画像中は演奏ツアーの移動中、運転手トニーの後ろにトニーを雇った黒人の天才ピアニスト、ドン・シャーリーがいる。画像右はドン・シャーリー役マハーシャラ・アリ。学位を持つ知的なシャーリーと素行不良のトニーとの白人側論理が逆転したコントラストが面白い)

  

画像出典左:トーキョー女子映画部イイ男Selectionグリーンブック、ヴィゴ・モーテンセンhttps://www.tst-movie.jp/selemen/selemen_a_Viggo_Mortensen.html (閲覧2019/5/1)  画像出典中:映画『グリーンブック』をもう一度見直してみた(2) https://tevye53.com/111-about-green-book/   (閲覧2019/5/1)  画像出典右:Movie Magic「グリーンブック」ってどんな映画?公開前に知っておくべき 3 選! https://www.shygon.com/entry/greenbook-promotion (閲覧2019/5/1)

(下の画像左はトニーがツアー出発前に妻から「電話は高いから、手紙を出して」と言われて手紙を書くがスペルミスや稚拙な内容、右のシャーリーが相談に乗っている場面。画像中は警官に「黒人の運転手をしているのか」と言われて警官を殴り拘留されているトニー。画像右はトニーの妻ドロレスがトニーをツアーの運転手として送り出す序盤の場面。事実に基づく作品。題名は当時の黒人旅行者向けガイドブック『黒人ドライバーのためのグリーン・ブック』(著者V.H.グリーン)から付けられた【情報元ウィキペディア】。本は映画の中に出てくる)

  

画像出典左:『グリーンブック』最高の角度から描く“最強のふたり”。 3/1(金)~公開https://note.mu/uerei_movielife/n/n6a7eb3cedab4 (閲覧2019/5/1)   画像出典中:実話を元にした友情物語、映画『グリーンブック』を解説【あらすじ、感想、ネタバレあり】https://minority-hero.com/cinema_review/Green+Book/1449/ (閲覧2019/5/1)   画像出典右:Cinema Cafe『グリーンブック』の優しい妻が一変!リンダ・カーデリーニの新作に注目 3枚目の写真・画像https://www.cinemacafe.net/article/img/2019/03/10/60638/421129.html  (閲覧2019/5/1)

以上S.Zでした。 

コメント (3)
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